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January 23, 25
スライド概要
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室
スポーツ記者の試合の振り返りを容易化する フラグ付与手法の取材現場における実践的検証 明治大学 萩原亜依,中村聡史
背景:スポーツのインタビュー 「今日の調子はいかがでしたか?」 「今回の勝因/敗因は何ですか?」 選手が回答しづらい質問 曖昧な質問ばかりしていると信頼関係を損なう − 選手も自分のプレーをしっかりと見て考えた上で 質問をされると喜んで話してくれる − 試合を掘り下げた質問をすることが理想 2025/2/20 1
背景:理想的な質問が思いつかない要因 マルチタスク 時間的制限 プレーに関するメモ 記事構成・質問作成 取材開始までの 時間が短い 写真撮影,SNS投稿 カメラマンや広報的役割も 担うことがある 2025/2/20 私はいつも10〜15分後に 取材が始まるスケジュール感 2
背景:理想的でない質問しか思いつかない要因 プレーに関するメモ 余裕がないから 取材開始までの 記事構成・質問作成 時間が短い 理想的な質問が思いつかない 写真撮影,SNS投稿 カメラマンや広報的役割も 担うことがある 2025/2/20 私はいつも10〜15分後に 取材が始まるスケジュール感 3
振り返り手法:試合を深掘りする質問作成支援 フェンシングにおける選手の立ち位置を可視化 選手Aの立ち位置 選手Bの立ち位置 2025/2/20 4
振り返り手法:試合を深掘りする質問作成支援 振り返りたいと感じたシーンをフラグとして利用 ポジティブフラグ ネガティブフラグ 2025/2/20 5
振り返り手法:利点 必要最低限の操作で これまで見れなかった 情報を提示 フラグによって 短時間で振り返り可能 記者は試合前撮影開始ボタンを押し フラグを記録するだけ 試合中にフラグ付与することで 振り返る場所が即座にわかる 2025/2/20 6
振り返り手法:利点 必要最低限の操作で これまで見れなかった 情報を提示 実際の業務を行いながら フラグ付与可能か? 2025/2/20 フラグによって 短時間で振り返り可能 これまでに検証済み 理想的な質問が増加 選手からも記者からも高評価 7
フラグ付与手法:入力機器 n PCの利用が難しい要因:写真撮影 − 観戦中は望遠レンズを装着した一眼レフカメラを所持 − スマートウォッチを採用 n ウェアラブルデバイスを用いた入力 − スマートウォッチの方が記録回数が多い [Volsa+ 2024] − 快適性が高く,反応時間が短い [Hernandez+ 2016] • Volsa, S., Lewetz, D., Mlakic, V., Bertagnoli, C., Hochsto g̈ er, S., Rechl, M., Ser=c, H., Ba=nic, B. and S=eger, S.: Development of an open-source solu=on to facilitate the use of one-buGon wearables in experience sampling designs, Behavior Research Methods, pp. 1–24 (2024). • Hernandez, J., McDuff, D., Infante, C., Maes, P., Quigley, K. and Picard, R.: Wearable ESM: differences in the experience sampling method across wearable devices, Proceedings of the 18th interna=onal conference on human2025/2/20 computer interac=on with mobile devices and services, pp. 195–205 (2016). 8
フラグ付与システム n シングルタップでフラグを記録 n フラグ付与時の思考を減らす − フラグの種類を2種類から1種類に n 1試合に複数セット含まれていることを考慮 セット開始 セット終了 2025/2/20 自動遷移 スライド フラグ 試合終了まで繰り返す セット開始 セット終了 9
実験目的 実際の取材現場で業務をこなしながら あとで振り返りたいシーンに フラグ付与可能かどうかを検証 2025/2/20 10
試合会場におけるフラグ付与実験:概要 n 明大スポーツOGOB 2名 − スポーツ記者経験は4年 − 明大フェンシング部の取材経験が3年 n 10, 11月に行われたフェンシングの2大会 − フラグ付与実験 − 半構造化インタビューを実施 2025/2/20 11
実験1:関東学生選手権の結果 付与フラグ数 n 個人戦7試合に30個,団体戦3試合に21個のフラグ 半構造化インタビューの結果 n 業務を行いながらのフラグ付与は問題なくできた n 写真撮影を優先しつつフラグ付与を行った n フラグの種類を1種類にしたことで迷いなく ボタンを押せた n セット開始・終了を押し忘れて嫌な気持ちになった 2025/2/20 12
実験2に向けたシステム改良 n セット管理機能の削除 − 動画の撮影時間,再生時間をもとにフラグ付与箇所を特定 試合終了まで繰り返す 2025/2/20 13
実験2:全日本選手権における結果 付与フラグ数 n 団体戦3試合に20個のフラグ 半構造化インタビュー結果 n 業務を行いながらのフラグ付与は問題なくできた n 体感5秒遅れほどで付与 n 直前のフラグを削除する機能があるとよりよい n フラグの種類を増やしてもいい 2025/2/20 14
実験結果 実際の取材現場で業務をこなしながら あとで振り返りたいシーンに フラグ付与可能かどうかを検証 フラグ付与可能であることが明らかになり 提案手法の実現可能性が示された 2025/2/20 15
考察:ラウンドごとのフラグ付与傾向 初戦のフラグ数が少ない − 序盤から点差を広げる展開 − 試合が圧倒的な展開だとフラグ数が減少する可能性 フラグ付与者 記者1 記者2 2025/2/20 ラウンド フラグ数 (個) 試合結果 2回戦 4 45-21 準決勝 9 45-34 決勝 8 45-32 2回戦 4 45-32 準決勝 6 45-34 決勝 10 45-32 16
考察:各試合のフェーズごとのフラグ付与傾向 記者1は,相手と点差が小さいシーンで 特にフラグ数が多い傾向 ラウンド セット フラグ数(個) 2回戦 準決勝 決勝 1~3 4~6 7~9 1~3 4~6 7~9 1~3 4~6 7~9 2 2 0 1 3 5 5 1 2 記者2は,各選手の最終出場試合で意識的に付与し 決勝は試合終盤にフラグが集中 ラウンド セット フラグ数(個) 2025/2/20 2回戦 準決勝 決勝 1~3 4~6 7~9 1~3 4~6 7~9 1~3 4~6 7~9 3 0 1 3 1 2 1 1 8 17
考察:点差とフラグ数の関係 点差とフラグ数には強い負の相関あり(相関係数:-0.88) 2025/2/20 18
フラグ付与タイミング 動 き 他 者 2025/2/20 牽制しあって試合が動かない場面 普段と違う動きをしたシーン 選手がガッツポーズや雄叫びを上げた場面 ベンチの選手や観客が盛り上がった場面 19
記事執筆への応用可能性 記者2 「記事を書く際に振り返るためにフラグ付与した」 「通常の取材では,記事を書くために試合の内容について 質問することもあったので,このシステムがあれば そういう質問をしなくて済む」 不必要な質問を聞く必要がなくなり 取材の質が向上する可能性 記事執筆においても活用できる 2025/2/20 20
展望 n 実際の取材現場で使えるシステムの開発 − 動画のリアルタイム処理 − 可視化方法や提示する情報の検討 − スマートフォン用のインタフェースの検討 n 実際にインタビューをやってもらう実験 − 記者・選手のコミュニケーションの変化 2025/2/20 21