エキセントリックトレーニングにおける適切な動作速度を維持するための聴覚フィードバック手法の検討

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January 13, 25

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明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

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各ページのテキスト
1.

エ キ セ ン ト リ ッ ク ト レ ー ニ ン グ に お け る 適切な動作速度を維持するための 聴 覚 フ ィ ー ド バ ッ ク 手 法 の 検 討 明治大学 大石琉翔,中村聡史

2.

背景 ひとりで筋トレを行う機会が増えている – chocoZAPやエニタイムフィットネスなどのセルフ型ジムの普及 トレーニング効果を十分に引き出すのが難しい – フォームが崩れて狙っていない筋肉を使ってしまう – 一定の速度を維持すべき運動で動作速度が速くなってしまう 2

3.

エキセントリックトレーニング 筋肉が収縮した状態から筋肉を伸長させて行うトレーニング ダンベルカール • 腕を下ろすこと(エキセントリック収縮)に 重点をおいた筋トレ • 腕を下ろすのを3〜5秒かけて行うと一番効果的 例)ダンベルカール 3〜5秒かけて下ろすのがかなり負荷がかかる 無意識に動作が速くなってしまう 3

4.

エキセントリックトレーニング 筋肉が収縮した状態から筋肉を伸長させて行うトレーニング ダンベルカール 大目的 • 腕を下ろすこと(エキセントリック収縮)に エキセントリックトレーニングにおいて 重点をおいた筋トレ 適切な速度を維持してトレーニングできるようにすること • 腕を下ろすのを3〜5秒かけて行うと一番効果的 例)ダンベルカール 3〜5秒かけて下ろすのがかなり負荷がかかる 無意識に動作が速くなってしまう 4

5.

これまでの研究(EC71) 「ゆるやかな動作を促す効果音」を鳴らし 動作速度に基づいてフィードバックする手法を提案 • 動作速度が適切 :チャージ音 • 動作速度が不適切:パワーが抜ける音 – パワーが抜けないようにエネルギーを貯める感覚で 自然に速度を調節できる フィードバックがない条件と比較して 動作速度を一定に保つ効果があることが明らかになった 大石 琉翔, 中村 聡史. エキセントリックトレーニングにおける動作速度の安定性向上のための効果音フィードバック, 情報処理学会 研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC), Vol.2024-EC-71, No.24, pp.1-8, 2024. 5

6.

関連研究 腕の位置に基づいて音階を鳴らす手法を提案[Yanら 2013] – 腕の位置が特定の範囲に達するごとに音階が変化し 動作の進行状況を段階的に示す 主観評価で有効性が示されているものの 動作速度の抑制効果については十分に検証されていない Yang, J. and Hunt, A.: Sonic trainer: real-time sonification of muscular activity and limb positions in general physical exercise, Proceedings of the ISon 2013, 4th Interactive Sonification Workshop, pp. 44–51 (2013). 6

7.

フィードバック手法の検討 「どのようにフィードバックするのか」ではなく 「どのようなデータをフィードバックするのか」に着目 動作を安定させるためのフィードバック手法 速度に基づくフィードバック 腕の位置に基づくフィードバック 7

8.

目的 下記2手法を比較し 動作時間や速度の一貫性に与える影響を検証する – 動作時間 :3〜5秒で動作できているか – 速度の一貫性:1回の動作において一定の速度で動作できているか • 速度に基づいたフィードバック(SpeedFB) • 腕の位置に基づいたフィードバック(PositionFB) 8

9.

SpeedFB Apple Watchから角速度を取得 動作速度が3〜5秒で下ろす速度:チャージ音 動作速度が3秒より速い速度 :パワーが抜ける音 「パワーが抜ける音」が鳴らないように動作することで 適切な速度でトレーニングできる 9

10.

SpeedFB 動作が適切な場合 動作が不適切な場合 10

11.

PositionFB 動作の可動域を8段階に分割し音階を割り当てる – 開始位置:ドの音(C) – 終了位置:1オクターブ上のドの音(C’) 動作が進むにつれ音階が上昇していく 音階の幅を意識することで 速度を一定に保ってトレーニングができる 11

12.

PositionFB 動作が適切な場合 動作が不適切な場合 12

13.

仮説 仮説1 SpeedFBの方が3〜5秒で下ろす速度を維持でき 動作時間が長くなる 仮説2 PositionFBの方が1回の動作において速度を一定に保て 速度の一貫性が向上する

14.

実験概要 実験参加者 – 男性16名,女性5名の合計21名 実験内容 – ダンベルカールでのエキセントリックトレーニング – 扱う重量は1RM(1回の最大挙上重量)測定の結果をもとに設定 実験者内比較により2つの手法をそれぞれ体験してもらう 14

15.

実験手順 練習 準備運動 2セット トレーニング 10回 休憩 3分 アンケート 3セット繰り返す 手法に合わせた練習 – SpeedFB :チャージ音に合わせて動作する練習 – PositionFB:3,4,5秒で動作した際のお手本の音階を確認して 音の進行に合わせて動作する練習 15

16.

結果|動作時間 仮説1:SpeedFBの方が3〜5秒で下ろす速度を維持でき動作時間が長くなる 動作時間の中央値 SpeedFB:4.78秒 PositionFB:4.66秒 F検定を実施 PositionFBは 有意に分散が大きい SpeedFB :動作時間が4〜6秒に集中している PositionFB:6秒以上の動作時間の頻度が高い 16

17.

結果|各動作の速度の標準偏差 仮説2:PositionFBの方が1回の動作において速度を一定に保て 速度の一貫性が向上する 標準偏差の中央値 SpeedFB:9.80°/s PositionFB:9.03°/s 17

18.

考察|動作時間 中央値が3〜5秒の適切な動作時間範囲に収まっていた – フィードバックが動作時間を調整するのに有効 PositionFBの動作時間の分散が大きい – 動作時間にばらつきが生じやすい可能性 18

19.

考察|動作時間 PositionFBでは6秒以上の動作時間の頻度が高い – PositionFBは動作が遅すぎる場合に知らせる機能がない – SpeedFBはフィードバック音が最大5秒で終わるため 動作が遅すぎることを認識できた ある程度高い負荷環境で行うことを前提 一部の実験参加者の負荷が十分ではなかった – 可変式のダンベルで重量の幅が大きく設定できる重量が決まっており 1RMによる適切な重量設定ができなかった 19

20.

考察|各動作の速度の標準偏差 SpeedFBとPositionFBで大きな差はなかった – SpeedFB手法も1回における動作速度を一定にできる可能性 • 速度が速い場合にフィードバックされることによる 速すぎる動作を避けるための意識によるもの • フィードバック音が連続的に上がっていく特徴によるもの 20

21.

結論 SpeedFB – 動作時間を適切な3〜5秒で安定 – 一定の動作速度でトレーニング可能 PositionFB – 動作時間のばらつき – 一部の参加者は動作が遅くなる傾向 21

22.

展望 筋電図を用いた筋活動の計測 SpeedFBとPositionFBを組み合わせた 新たなフィードバック手法を検討 22

23.

まとめ 問題|エキセントリックトレーニングの動作が速くなってしまう 背景|「どのようなデータをフィードバックするか」に着目 実験| SpeedFBとPositionFBを比較 結果| SpeedFB:適切な速度かつ一定の速度で動作可能 PostionFB:動作時間はばらついたが動作を遅くする傾向 展望|筋電図を用いた筋活動の計測 2手法を組み合わせたフィードバック手法を検討 23