プログレスバーと周辺の視覚刺激の進行方向が体感時間に与える影響

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February 04, 21

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プログレスバーと周辺の視覚刺激の進行方向が体感時間に与える影響

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明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

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1.

プログレスバーと周辺の視覚刺激の進⾏⽅向が 体感時間に与える影響 明治⼤学3年 中村瞭汰 松⼭直⼈ 中村聡史(明治⼤学) ⼭中祥太 (ヤフー株式会社)

2.

はじめに PCを利⽤している際に,待機時間を短く体感させる ⽅法として, プログレスバーが⽤いられることが多い 2

3.

はじめに PCの処理速度は年々向上している →しかし,画⾯の読み込みやファイルのアップロード などの待機時間は無くなっていない 3

4.

はじめに 待機時間の問題点 • ユーザーのストレスを引き起こす要因となる • 他のタスクに取り組むことが難しい 4

5.

関連研究 • プログレスバーを提⽰した場合,何も提⽰しなかった 場合と⽐較してユーザの満⾜度が⾼い [Grunierら, 2008] • リング型のプログレスバーにおいて,リングの中⼼⾓ を⼤きくするほど体感時間が⻑くなる [⼤坪ら, 2016] 5

6.

関連研究 • プログレスバー上に,進⾏⽅向と逆向きに動く模様を 描画することで,約11%体感時間の短縮された [Harrisonら, 2010] • 中⼼視野へのプログレスバー提⽰と周辺視野への 視覚刺激提⽰を組み合わせることで, 体感時間がより短縮された [松井ら, 2018] 6

7.

関連研究より • プログレスバーの形状や模様のデザインにより, 体感時間を短縮できる • プログレスバーを直接変化させるのではなく,周辺に 視覚刺激を提⽰することで体感時間を短縮できる →体感時間の短縮に効果的な視覚刺激については 明らかになっていない 7

8.

⽬的 プログレスバーの周辺に提⽰する視覚刺激として 体感時間を短縮するために効果的な視覚刺激を明らかにする 8

9.

検討刺激 プログレスバーは左から右へ進⾏していることに着⽬ →進⾏速度の知覚によって体感時間が変化すると予想 9

10.

検討刺激 速度対⽐: 異なる速度や⽅向に運動する刺激を隣接して同時に 提⽰することによって,運動速度が増加したり 減少したりして知覚される現象 プログレスバーの進⾏速度の知覚は視覚刺激の進⾏⽅向 に影響されると予想 10

11.

検討刺激 プログレスバーの進⾏⽅向と同⼀⽅向に運動する 視覚刺激を2種類⽤意した 継続的な視覚刺激 断続的な視覚刺激 11

12.

検討刺激 松井らが提案した視覚刺激と同じ範囲に提⽰されて, 運動⽅向を持たない視覚刺激 12

13.

予備実験 先ほど提⽰した3つに松井らが⽤いていた視覚刺激と 刺激なしの場合を加えた計5パターンを⽤いて, 体感時間の調査を⾏う 13

14.

予備実験: 提⽰秒数 • 待機時間は2〜12 秒を想定 時間条件はこの待機時間を 1 秒ごとに区切ったもの とした • 提⽰パターンと秒数の組み合わせ5×11=55通りを ランダムな順番で提⽰した 14

15.

予備実験: 回答⽅法 体感時間の回答には0〜15 秒までの0.5 秒刻みの ボタンを⽤いて⾏ってもらった 15

16.

予備実験 以上の実験を⼤学⽣4名(男⼥それぞれ2名)に取り組んで もらった • 灰⾊の丸がプログレスバーと同⼀⽅向に運動するもの が体感時間の短縮に効果的であることが⽰唆された • 提⽰した視覚刺激の刺激量に差があるという問題が あげられた • 体感時間の回答UIに問題がある 16

17.

本実験設計: 提⽰秒数 クラウドソーシングでの実験において, 実験時間の制約上,条件が多すぎるのは好ましくない 2~4秒については待機時間として短く適していないと 考えて除外して,5~12秒の1秒区切りで⾏った 17

18.

本実験設計: 視覚刺激 • 背景⾊変化の視覚刺激は他の視覚刺激と⽐べ, 刺激量が多かった • 背景⾊変化の視覚刺激に代わって, プログレスバーの進⾏⽅向と逆向きに運動する 正弦波の視覚刺激を追加した 18

19.

本実験設計: 視覚刺激 no_stimulate rotate_balls wave slide_balls wave_reverse 19

20.

本実験設計: 視覚刺激 実験協⼒者に対して,刺激なしの場合と いずれかの視覚刺激1パターンの場合を提⽰した (刺激なし+4種類の視覚刺激のうち1種類)×(5~12秒で1秒刻み) = 2×8 = 16(回) 20

21.

本実験設計: 秒数回答⽅法 • 回答がしづらい • 0.5 秒刻みの枠組みによって,細かい体感時間の回答 が⾏えない 0~15秒の間の0.1秒刻みのスライダーを⽤いた回答 21

22.

本実験 Yahoo!クラウドソーシングを⽤いて男⼥それぞれ300名 に依頼(依頼対象から901名除外) 実験開始前に実験⼿順の説明と注意事項 • 秒数を数えないこと • プログレスバー提⽰時はプログレスバーを注視する 22

23.

本実験の流れ 待機画⾯ ↓ プログレスバー提⽰ ↓ 体感時間回答 ↓ インターバル画⾯ 23

24.

本実験の流れ 待機画⾯ ↓ プログレスバー提⽰ ↓ 体感時間回答 ↓ インターバル画⾯ 24

25.

本実験の流れ 待機画⾯ ↓ プログレスバー提⽰ ↓ 体感時間回答 ↓ インターバル画⾯ 25

26.

本実験の流れ 待機画⾯ ↓ プログレスバー提⽰ ↓ 体感時間回答 ↓ インターバル画⾯ 26

27.

本実験の流れ 待機画⾯ ↓ プログレスバー提⽰ ↓ 体感時間回答 ↓ インターバル画⾯ ユーザーid提⽰画⾯ ×16 27

28.

不真⾯⽬な回答の抽出 • 実験終了後に提⽰されるidをYahoo!クラウドソーシング のページで⼊⼒してもらう • 体感時間回答の際に⽤いるスライダーの初期位置を 0秒に設定 • 体感時間の回答までにかかった秒数の取得 28

29.

不真⾯⽬な回答の抽出 1. 不適切なユーザidを⼊⼒した18名 体感時間の回答で0秒という回答があった49名 を分析対象から除外 2. 実験協⼒者ごとに待機時間と体感時間のずれを計算 →平均値±2SDの間に含まれなかった28名を分析対象 から除外 3. 体感時間の回答までにかかった秒数をもとに, 1つでも平均値±2SDの間に含まれていなかった107名 を分析対象から除外 29

30.

不真⾯⽬な回答の抽出 以上の除外の結果, 600名中 398名(男性203名,⼥性195名)が分析対象 として残った 30

31.

本実験結果: 全体の結果 刺激ごとの体感時間の平均 31

32.

本実験結果: 全体の結果 刺激ごとの体感時間の平均 32

33.

本実験結果: 全体の結果 灰⾊の円が左から右へ運動する 視覚刺激が特に体感時間の 短縮に効果的だった 刺激ごとの体感時間の平均 33

34.

本実験結果: 全体の結果 正弦波の進⾏⽅向が プログレスバーと同⼀⽅向 →体感時間の短縮 プログレスバーと逆⽅向 →体感時間の延⻑ 刺激ごとの体感時間の平均 34

35.

本実験結果: グループ分け ⼈によって体感時間の正確さは異なると考えられるため, 体感時間の正確さをもとにグループ分けを⾏った グループ分けの基準として,プログレスバーのみを 提⽰した場合の体感時間のずれを採⽤した 時間評価の正確さ ⾼ high_score 群 middle_score 群 低 low_score 群 35

36.

本実験結果: プログレスバーのみ • low_score 群では 5〜10 秒 といった,特に短い待機時間 において体感時間のずれが ⼤きい • 提⽰時間が短いときのほうが basis の直線からずれている 各群の視覚刺激提⽰なし場合の体感時間 36

37.

本実験結果: グループ分け high_score 群 middle_score 群 low_score 群 37

38.

本実験結果: グループ分け high_score 群 middle_score 群 low_score 群 38

39.

結果まとめ • プログレスバーと同⼀⽅向に運動する視覚刺激 → 体感時間の短縮 • プログレスバーと逆⽅向に運動する視覚刺激 → 体感時間の延⻑ • 断続的かつ左から右へ運動する視覚刺激は 特に体感時間が短縮された • プログレスバーのみを提⽰した場合に 体感時間のずれが⼤きい群 → 視覚刺激の影響を受けやすい 39

40.

考察 外れ値を取り除いた上でもデータの信憑性にはまだ問題 があると考えられる • high_score 群 不正を⾏って正確な回答をしたユーザが含まれている 可能性 • low_score 群 外れ値とはならなかったが不真⾯⽬な回答をしたユーザ が含まれている可能性 • middle_score 群 どちらも混⼊しにくいと考えられる 40

41.

今後の展望 • プログレスバーと視覚刺激を提⽰した際にどこを 注視していたかは体感時間に影響すると考えられる →実験中のユーザの視線をとった実験を今後検討 • 視覚刺激の速度や加速度を変化させた場合 41

42.

まとめ • ⽬的 プログレスバーの周りに提⽰する視覚刺激として 効果的なものの調査 • 実験 クラウドソーシングを⽤いて,体感時間の調査を実施 • 結果 断続的かつ同⼀⽅向に運動する視覚刺激は 体感時間の短縮に効果的だと考えられる 42