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March 16, 20
スライド概要
日常生活において,選択をする場面は多く存在する.この選択における問題点として,迷いが生じることによる時間の消費や,人気な商品ばかりが選ばれてしまうといったことが挙げられる.これらの問題の解決策として,我々はポップアウトという視覚的特性に着目し,ポップアウト機能をもつサイネージ型の自動販売機を提案してきた.またポップアウトを提示することで選択時間が短くなること,幅広い選択を促せることを明らかにした.本研究ではこれまでの実験をさらに長期的に実施し,約 6000 件の販売情報からポップアウトの影響について詳細な調査分析を行った.具体的には,平日と休日では休日の方がポップアウトの効果があったこと,気温が寒くなるほど,また暑くなるほど選択時間が短いこと,商品位置が上段にあるときにポップアウトの効果が高いことなどを明らかにした.
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室
ポップアウトによるサイネージ型自動 販売機の商品購入行動変容 杉本知佳(明治大学 総合数理学部 3年) 細谷美月 佐々木美香子 中村聡史(明治大学 総合数理学部) 角南尚幸 高松英治(富士電機株式会社)
背景 商品を選択する場面はたくさんある 人は選択において 何に影響されているのだろうか?
商品選択する上での様々な要因 属性の提示順序[浜田ら 2019] 時計の販売において、属性の提示順序によって絞り込みの容易性や、 決定しやすさが異なる おとりを混ぜる[Wedellら 1996] おとりを混ぜると決め方の順序が変わり、選択されるものが変化する フォントに着目 [Doyleら 2004] 適切でないフォントを使用したチョコレートの箱よりも適切なフォントを使用した チョコレートの箱の方が2倍選択される フォントに着目 [濱野ら 2019] うまい棒や蒟蒻畑の味選択において、フォントが影響した
視覚効果に着目 ポップアウト 複数の同じ視覚刺激群の中に一つだけ異なる視覚 刺激が存在すると、その刺激を即座に知覚できる視 覚的特性
これまでの研究 ①無料の飴の配布 ②飲料の販売 [山浦ら 2018] [細谷ら 2019] 飴の味の種類を表示させ、一つにポッ ポップアウトを利用した自動販売機を プアウトを提示 稼働させ、有用性を検証 • ポップアウトされた商品の選択率が 高く、選 択にかかる時間が短い • HOT商品とCOLD商品が混在すると ポップアウトの効果が薄れる可能性
これまでの研究の問題点 自動販売機の実験 約半年間のみの運用であり、データとして不十分 商品選択におけるポップアウトの効果について、 詳細な分析を行うことができていなかった
研究の目的 商品選択における ポップアウトの効果について、 詳細な分析を行い検証 例)気温による差、慣れによる差
調査内容 ポップアウトの効果(選択率・選択時間)について ①長期間による分析 ②慣れによる影響 ③気温による影響 ④位置による影響
実験概要 実際に稼働するポップアウト機能を適用させた 自動販売機を用いて調査 • 実験環境 明治大学中野キャンパス6階に 設置されている自動販売機 • 実験期間 2018年9月1日〜2019年8月7日 • 実験協力者 自動販売機に飲み物を購入しにきた不特定多数の人
データ件数 購入件数 6037件 • cold1期間(1099件) 2018年9月1日〜10月31日13時まで • hot/cold期間(2281件) 2018年10月31日13時〜2019年4月11日14時まで • cold2期間(2657件) 2019年4月11日14時〜2019年8月7日
取得している情報 • 販売日時 • お金を投入する前に商品を選択したのかお金を 投入した後に商品を選択したのかについての情報 • 商品の選択時間 • 販売商品位置 • ポップアウト提示位置
実験システム ポップアウトあり・なしがランダム ポップアウトの対象もランダム ポップアウトあり条件 2975件 ポップアウトの様子… ポップアウトなし条件 3062件
調査内容 ポップアウトの効果(選択率、選択時間)について ①長期間による分析 ②慣れによる影響 ③気温による影響 ④位置による影響
選択率について 期待値 =ランダムに商品が選択されると仮定した場合の数 =ポップアウトあり条件全件数÷33箇所(商品位置) 比率 =実際に選択された件数÷期待値 比率が1を上回っていれば ポップアウトされた商品が選択されやすいことがわかる
結果①:期間ごとの選択率 期間 ポップアウト あり条件 ポップアウト 選択件数 期待値 比率 cold1 532 24 16.12 1.48 hot/cold 1116 41 33.81 1.21 cold2 1327 50 40.21 1.24 ポップアウトされた商品は選択されやすい
結果②:期間ごとの平均選択時間 平均選択時間…最初に金銭が投入されてから 商品が選択されるまでの時間の平均のこと • 金銭を投入した後に選択したデータのみを使用 • 明らかに長すぎたり短すぎる記録があった →全体件数の上下5%を占める 1.06秒以下と16.5秒以上の記録 については外れ値とし、分析対象から除外
結果②:期間ごとの平均選択時間 平均値 ポップアウト 選択者 ポップアウト 非選択者 ポップアウト なし cold1 4.73 5.12 5.03 hot/cold 3.70 5.23 5.31 cold2 5.17 5.01 4.75 cold2期間ではポップアウト選択者の中に10秒以上の ユーザがかなり多くいたためこのような結果になった
調査 ポップアウトの効果(選択率、選択時間)について ①長期間による分析 ②慣れによる影響 ③気温による影響 ④位置による影響
仮説:平日・休日の比較 • 平日の購入層:主に学生 いつもある自動販売機を見慣れている →選択時間が短い • 休日の購入層:授業ない学生または外来の一般人 見慣れていない →選択時間が長く、選択率が高くなる
結果:平日・休日の比較 選択率 ポップアウト あり条件 ポップアウト 選択件数 期待値 比率 平日 2235 84 67.7 1.24 休日 740 31 22.4 1.38 平均 選択時間 ポップアウト 選択者 ポップアウト 非選択者 ポップアウト なし 平日 4.59 5.13 4.99 休日 4.37 5.68 5.31
考察:平日・休日の比較 •休日の方が選択率が高い • ポップアウト選択者の選択時間は休日<平日 →休日にいる人にとってポップアウトは珍しく、 ポップアウトの影響を受けた 慣れていない人にポップアウトをすると 効果がある
調査 ポップアウトの効果(ポップアウトの商品の選択率、 選択時間)について ①長期間による分析 ②慣れによる影響 ③気温による影響 ④位置による影響
仮説:気温による比較 気温の高い日や低い日に ポップアウトを提示することでよりポップアウトを 知覚し、選択行動が変化するか調査 暑すぎたり、寒すぎたりする日は 過ごしやすい日よりも思考が停止し、 つられて選択してしまう
結果:気温による比較: 選択率 ポップアウト あり条件 ポップアウト 選択件数 期待値 比率 10度以下 171 8 5.2 1.54 10-15度 511 21 15.4 1.36 15-20度 543 15 16.4 0.91 20-25度 868 38 26.3 1.44 25-30度 655 20 19.8 1.00 30度以上 248 13 7.5 1.73 30度以上の日、10度以下の日が他の日よりもポップアウトされた 商品の選択率が高い
結果:気温による比較: 選択時間 ポップアウト ポップアウト 選択者 非選択者 ポップアウト なし 10度以下 3.67 5.17 4.96 10-15度 4.21 5.37 5.31 15-20度 4.61 5.11 5.31 20-25度 4.87 5.12 5.01 25-30度 4.69 4.98 4.82 30度以上 4.35 5.31 4.59 • 10度以下の日のポップアウト選択者の選択時間が最も短い • 20-25度以上の4.87秒が最高で、気温が高くなるほど、 低くなるほどポップアウト選択者の選択時間が短い
考察:気温による比較 • 暑い日と寒い日にポップアウトをすると その商品が選ばれやすい …提示された商品につられてそのまま買う傾向あり • 暑いほど、寒いほど、ポップアウトをすることで 選択時間を短くすることができる
調査 ポップアウトの効果(選択率、選択時間)について ①長期間による分析 ②慣れによる影響 ③気温による影響 ④位置による影響
仮説:商品位置による比較 • 人は上から下にものを見る • また、自動販売機のお金の投入口が右側にあるので、 右から左に見ると考えられる ポップアウトがあると 見る順番が変わって、 結果として選択時間が 変化するかを調査
仮説:上中下分割による比較 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 hot商品 cold商品 上段の商品の方がポップアウトされた商品は 選択率が高くなり、選択時間も短くなる
仮説:左右分割による比較 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 hot商品 cold商品 右側の方が選択されやすく、選択時間も短い
結果:上中下分割による比較 平均選択時間の比較 • 上段 選択 中段 非選択 cold1 なし 下段 選択 非選択 hot/cold なし 選択 cold2 非選択 なし
考察:上中下分割による比較 • 全ての期間において上段は ポップアウトの効果がある • hot/cold期間ではhot商品のある中段が 一番選択時間が伸びたことから、 hot商品があると一度hot商品 or cold商品を購入 するかの迷いが生じている可能性
結果:左右分割による比較 平均選択時間の比較 • 左側 選択 右側 非選択 cold1 なし 選択 非選択 hot/cold なし 選択 非選択 なし cold2 基本右側の選択時間が短い ※論文での図9,図10が逆です。こちらの情報が正しいです。
考察:左右分割による比較 hot/cold期間の右側がポップアウトされた時、 最も選択時間が短くなった →hot商品がある右側にポップアウトの効果あり これは先のhot/cold期間の中段のポップアウトが迷い が生じている可能性があるのと矛盾している
結果⑧:商品位置による比較 cold1期間 hot/cold期間 cold2期間 上段選択 中段選択 下段選択 4.87 4.85 5.39 4.46 4.68 6.54 4.94 5.06 6.20 上段選択 中段選択 下段選択 5.03 4.76 4.79 5.70 5.14 5.98 4.73 5.74 5.74 上段選択 中段選択 下段選択 4.85 4.90 4.77 4.92 5.00 4.95 6.23 5.84 6.28
考察⑧:商品位置による比較 • 上段にポップアウトをすると全体的な選択時間を 短くすることにより効果がある • 逆に中段・下段はポップアウトをしてもあまり短くならな かった
結果のまとめ • 普段見慣れていない人に対してのポップアウトは効果 あり • 気温が高いほど、また低いほどポップアウトが あることでつられて買ってしまう • 上段にポップアウトをするとより有用 • 右側にポップアウトをするとより有用
応用 影響の要因がわかれば、幅広い選択を促せる 今回の結果も商品選択をする上での要因として使用 今後も選択をする上での要因を調査
まとめ 背景 商品選択にはそれを変化させうる様々な要因がある 目的 商品選択におけるポップアウトの効果について、 詳細な分析を行い検証 実験概要 ポップアウト機能を適用した自動販売機にて データ収集 結果 見慣れていない人に対してのポップアウトは効果あり 気温が高いほど、また低いほどポップアウトが あることでつられて選択してしまう 上段・右側にポップアウトをするとより有用