142 Views
January 13, 25
スライド概要
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室
英 文選択肢の長さが 発話選択による選択に及ぼす影響 明治大学3年 村上楓夏 重松龍之介,大石琉翔,中川由貴,中村聡史,柴﨑礼士郎(明治大学) 鳥居武史,高尾英行,清水紗英里,水原悠貴(株式会社S U B A R U) 1
背景 人は多くのタスクを抱えている 例えば,テスト勉強にて どの教科を勉強しますか? 数学 社会 情報 2
背景 人は多くのタスクを抱えている 例えば,テスト勉強にて どの教科を勉強しますか? 数学 社会 情報 3
背景 人は多くのタスクを抱えている 例えば,テスト勉強にて どの教科を勉強しますか? 数学 社会 情報 選択を誘導できる可能性がある 4
関連研究 選択の偏りに関する研究 ディスプレイの両脇よりも中央にある選択肢の方が選ばれやすい [Valenzuelaら 2009] 先行表示した選択肢は通常速度で表示したものよりも選ばれやすい [木下ら 2023] A. Valenzuela and P. Raghubir. Position-based beliefs: The center-stage effect. Journal of Consumer Psychology, Vol. 19, No. 2, pp. 185–196, 2009. 木下 裕一朗, 関口 祐豊, 植木 里帆, 横山 幸大, 中村 聡史. “選択肢の時間差表示が選択行動に及ぼす影響”, 信学技報 ヒューマン コミュニケーション基礎研究会(HCS), HCS2023-39, vol.123, no.24, pp.194-199, 2023. 5
先行研究 選択肢の表現が音声入力での選択に及ぼす影響 [重松ら 2023] 選択肢の読み上げにくさが発話選択に影響を与えている →選択肢の副詞的表現に注目 クリック選択: 選択肢をクリックして選択する 発話選択(音声入力): 選択肢を読み上げて選択する 重松 龍之介, 大石 琉翔, 中川 由貴, 中村 聡史, 鳥居 武史, 澄川 瑠一, 高尾 英行. “選択肢の表現が音声入力での選択に及ぼす影 響”, 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol.2023-HCI-205, No.34, pp.1-8, 2023. 6
先行研究での結果 副詞的表現ごとの選択率(%) 45 40 クリック選択: 表現による大きな差はない 35 30 25 20 15 10 5 30.9 33.3 できるだけ 可能な限り 35.8 0 クリック選択 やれる範囲で最大限に 発話選択 7
先行研究での結果 副詞的表現ごとの選択率(%) 45 40 35 30 14.2 25 20 発話選択: 「やれる範囲で最大限に」と他2つの 表現の間に差がある 15 10 5 38.4 37.4 できるだけ 可能な限り 24.2 0 クリック選択 やれる範囲で最大限に 発話選択 8
先行研究での結果 副詞的表現ごとの選択率(%) 45 40 クリック選択: 表現による大きな差はない 35 30 25 20 発話選択: 「やれる範囲で最大限に」と他2つの 表現の間に差がある 15 10 5 30.9 38.4 33.3 37.4 35.8 24.2 できるだけ 可能な限り やれる範囲で最大限に 0 クリック選択 →選択肢の文字数の影響 発話選択 9
目的 発話選択において英文選択肢の長さが 選択率に与える影響を明らかにする 先行研究は日本語を対象としており,他言語での 選択肢の文字数が選択に与える影響は明らかに されていない 10
仮説 英語の選択肢において,選択肢の内容が 長いほど発話選択での選択率が低くなる 日本語を対象とした先行研究と同様の結果が 得られるのではないか 11
実験(ポインティングタスク) • ランダムな位置にランダムな大きさの 円形のターゲットが表示され, それを必要回数(20回)クリックする • 実験ではカーソルの形の影響を考慮して カーソルを黒い点で表示している 12
選択肢設計 計15種類の選択肢を用意 タスク内容: ポインティングタスクを 「どのように行うか」 長さのテンプレート • 円を速くクリック • short • 円を正確にクリック • medium • 円を同じリズムでクリック • long • 円の中心をクリック • 円周上をクリック 13
選択肢設計 長さのテンプレート short :as possible. medium:as I can manage. long :as is feasible to the greatest extent possible. • 3つのテンプレートで同じ意味になるように • 英語教師である第六共著の先生に相談して作成 14
選択肢設計 タスク内容 + 長さのテンプレート 速くクリック short:Click on the circle as quickly as possible. medium : Click on the circle as quickly as I can manage. long : Click on the circle as quickly as feasible to the greatest extent possible. 15
選択画面 クリック選択 16
選択画面 発話選択 17
実験の流れ 実験協力者:14名ずつ 計28名 (留学生,海外への長期留学経験者,帰国子女など) タスク内容選択 実験説明・ チュートリアル アンケート ポインティング タスク マウスの感度に慣れてもらうため ポインティングタスクの練習を行う (回数制限なし) 18
実験の流れ 実験協力者:14名ずつ 計28名 (留学生,海外への長期留学経験者,帰国子女など) タスク内容選択 実験説明・ チュートリアル アンケート ポインティング タスク タスク内容選択→ポインティングタスクのセット を20回ずつ行う(10回終了時点で5分間の休憩) 19
実験の流れ 実験協力者:14名ずつ 計28名 (留学生,海外への長期留学経験者,帰国子女など) タスク内容選択 実験説明・ チュートリアル アンケート ポインティング タスク 選択基準,英語を話す頻度など 20
結果(長さごとの選択率) 長さごとの選択率(%) 50 45 • クリック選択でも発話選択でもlong 40 35 の選択率が最も低い (期待値以下) 30 25 20 15 10 5 35.4 48.6 35.7 33.9 28.9 17.5 short medium long 0 クリック選択 発話選択 21
結果(長さごとの選択率) 長さごとの選択率(%) 50 45 • クリック選択でも発話選択でもlong 40 35 31.1 6.8 30 の選択率が最も低い (期待値以下) 25 20 • 発話選択の方が選択率の差が大きい 15 (二項検定よりshortとlongの選択率に有意差あり) 10 5 35.4 48.6 35.7 33.9 28.9 17.5 short medium long 0 クリック選択 発話選択 22
結果(長さごとの選択率) 長さごとの選択率(%) 50 45 • クリック選択でも発話選択でもlong 40 33.3 35 の選択率が最も低い (期待値以下) 30 25 20 • 発話選択の方が選択率の差が大きい 15 10 5 35.4 48.6 35.7 33.9 28.9 17.5 short medium long 0 クリック選択 二項検定よりshortとlongの 選択率が特異 発話選択 23
結果(タスク内容と長さの関係) 期待値 ↓ 高 低 クリック選択での選択率(%) 速く 正確に 同じリズムで 中心を 円周上を short 68.4 20.0 29.8 29.9 27.1 medium 55.4 29.1 32.1 27.9 34.6 long 44.8 16.4 33.3 28.9 21.4 24
結果(タスク内容と長さの関係) 期待値 ↓ 高 低 クリック選択での選択率(%) 速く 正確に 同じリズムで 中心を 円周上を short 68.4 20.0 29.8 29.9 27.1 medium 55.4 29.1 32.1 27.9 34.6 long 44.8 16.4 33.3 28.9 21.4 「速く」のタスク内容では全ての長さで期待値以上に選択されているが, 「正確に」「中心を」のタスク内容はどの長さの選択肢でも選択率が期待値未満 →長さの影響よりも,タスク内容の影響を受けて選択されている 25
結果(タスク内容と長さの関係) 期待値 ↓ 高 低 クリック選択での選択率(%) 速く 正確に 同じリズムで 中心を 円周上を short 68.4 20.0 29.8 29.9 27.1 medium 55.4 29.1 32.1 27.9 34.6 long 44.8 16.4 33.3 28.9 21.4 「速く」のタスク内容では全ての長さで期待値以上に選択されているが, 「正確に」「中心を」のタスク内容はどの長さの選択肢でも選択率が期待値未満 →長さの影響よりも,タスク内容の影響を受けて選択されている 26
結果(タスク内容と長さの関係) 期待値 ↓ 高 低 発話選択での選択率(%) 速く 正確に 同じリズムで 中心を 円周上を short 70.5 38.3 43.4 43.6 43.8 medium 51.9 31.0 24.4 32.1 30.0 long 28.6 15.2 19.7 15.0 10.2 27
結果(タスク内容と長さの関係) 期待値 ↓ 高 低 発話選択での選択率(%) 速く 正確に 同じリズムで 中心を 円周上を short 70.5 38.3 43.4 43.6 43.8 medium 51.9 31.0 24.4 32.1 30.0 long 28.6 15.2 19.7 15.0 10.2 全てのタスク内容でshort選択肢の選択率が期待値以上,long選択肢の選択率が 期待値未満 →タスク内容の影響よりも,選択肢の長さの影響を受けて 選択されている 28
結果(タスク内容と長さの関係) 期待値 ↓ 高 低 発話選択での選択率(%) 速く 正確に 同じリズムで 中心を 円周上を short 70.5 38.3 43.4 43.6 43.8 medium 51.9 31.0 24.4 32.1 30.0 long 28.6 15.2 19.7 15.0 10.2 全てのタスク内容でshort選択肢の選択率が期待値以上,long選択肢の選択率が 期待値未満 →タスク内容の影響よりも,選択肢の長さの影響を受けて 選択されている 29
結果(アンケート結果からの分析) 「速くクリック」のタスクの選択率(%) アンケートで「速くクリックする」タスク を多く選んだと回答した実験協力者 (クリック選択:6名,発話選択:4名) 90 80 70 29.4 60 50 55.5 40 30 20 10 81.8 78.6 58.6 55.6 52.4 23.1 short medium long 特に発話選択で,選択肢が長いほど 選択率が低くなる ↓ 発話選択はタスク内容よりも, 選択肢の長さの影響を強く受ける 0 クリック選択 発話選択 30
結果(アンケート結果からの分析) 選択基準に明確な理由がない実験協力者の 選択率(%) 60 クリック選択 発話選択 特定のタスク内容や選択肢の長さに言及 していない回答について分析 (クリック選択:6名,発話選択:4名) 50 発話選択の方が偏りが大きく, 選択肢が長いほど選ばれにくい 40 33.3 30 20 →選択が選択肢の長さに 10 30.0 48.8 43.3 40.0 26.7 11.3 short medium long 誘導されている可能性 0 31
結論 ・選択肢の長さごとの選択率 特に発話選択で選択肢の長さによる選択率の偏りがあり,仮説が支持された (選択肢が長いほど選択率が低い) ・タスク内容と選択肢の長さの影響 クリック選択ではタスク内容の影響を受け,発話選択では選択肢の長さの 影響を受ける ・アンケート結果からの分析 発話選択では自身が短い選択肢を選んでいることを自覚しないまま, 選択が短い選択肢へと誘導される可能性 32
展望 • 英語圏に在住する人を対象とした実験を行い,本研究の結果と 同様の結果が得られるかを調査する • 選択肢の長さの違いによってユーザを無意識に選択を避けている タスクに誘導し,より苦手なタスクの技能向上をサポートするこ とができるのかを検証する(例:運転練習) どの教科を勉強しますか? 数学 社会 情報 を精一杯勉強する を勉強する を一生懸命勉強する 33
まとめ 背景:選択には偏りが生じ,それを誘導できる可能性がある 目的:選択肢の長さが選択に与える影響の調査 手法:クリック選択と発話選択で選択率を比較 結果:特に発話選択で選択肢が長くなるほど選択率が低くなる 展望:英語圏在住の人を対象とした実験を行う 34
選択肢設計 タスク内容 + 長さのテンプレート 速くクリック short:Click on the circle as quickly as possible. medium : Click on the circle as quickly as I can manage. long : Click on the circle as quickly as feasible to the greatest extent possible. 正確にクリック short:Click on the circle as accurately as possible. medium : Click on the circle as accurately as I can manage. long : Click on the circle as accurately as feasible to the greatest extent possible. 35
選択肢設計 タスク内容 + 長さのテンプレート 同じリズムでクリック short:Click on the circle with as consistent a rhythm as possible. medium : Click on the circle with as consistent a rhythm as I can manage. long : Click on the circle with as consistent a rhythm as feasible to the greatest extent possible. 中心をクリック short:Click in the center of the circle as precisely as possible. medium : Click in the center of the circle as precisely as I can manage. long :Click in the center of the circle with as much precision as is feasible to the greatest extent possible. 36
選択肢設計 タスク内容 + 長さのテンプレート 円周上をクリック short:Click on the edge of the circle as precisely as possible. medium :Click on the edge of the circle as precisely as I can manage. long :Click on the edge of the circle with as much precision as is feasible to the greatest extent possible. 37