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January 14, 26
スライド概要
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室
第216回 HCI研究会 2026.01.14 ⾳声聴取におけるDeceptive Pattern: 発話速度の操作による⾮⺟語話者の 選択誘導可能性の検証 ⽊下 裕⼀朗,中村 聡史(明治⼤学)
Deceptive Pattern Deceptive Pattern (Dark Pattern) - ユーザの⾏動を誘導するデザイン トイレットペーパー ¥500 定期便で購入 ひとつ購入 メールマガジン登録 ショップからのお知らせ レビューのお願いメール DPはTop240のモバイルアプリの95%に存在 [Di Geronimo+ 2020] ユーザに経済的損失や⼼理的な負担を与えるため問題視 Di Geronimo, L. et al.: UI Dark Patterns and Where to Find Them: A Study on Mobile Applications and User Perception, CHI’20. 2
GUI以外にも潜むDeceptive Pattern これまでの研究は主にGUIにおけるDPを対象 スクリーンベースのインタフェース以外にもDPは存在 • ホームロボット [Lacey+ 2019] • IoTデバイス [Kowalczyk+ 2023] • VUI [Owens+ 2022] Amazon Echo Dot Lacey, C. and Caudwell, C.: Cuteness as a ‘Dark Pattern’ in Home Robots, HRI’19. Kowalczyk, M. et al.: Understanding Dark Patterns in Home IoT Devices, CHI’23. Owens, K. et al.: Exploring Deceptive Design Patterns in Voice Interfaces, EuroUSEC’22. RoBoHoN 3
VUIの普及とDPの使⽤可能性 今後VUIはさらに普及すると予想される 商業施設などで,サービス特化した VUIが⽤いられる可能性 GUIでDPが出現したように, VUIにも出現する可能性 意図的にインタラクションの ⼀部で⾮⺟語を使⽤させる [Hidaka+ 2023] 試着室の鏡にVUIが 搭載される可能性 Hidaka, S. et al.: Linguistic Dead-Ends and Alphabet Soup: Finding Dark Patterns in Japanese Apps, CHI’23. 4
VUIにおけるDeceptive Pattern 発話 聴取 発話 - ⾮⺟語のとき発⾳容易性の違いにより選択が誘導 (HCI215@淡路島) 聴取 - ⾳声の発話速度と⾼さを操作することで選択を誘導 [Dubiel+ 2024] - 発話速度を操作すると同意しやすくなる傾向 [Leschanowsky+ 2025] ⾮⺟語のとき発話速度の操作による誘導効果は変化する? ⽊下裕⼀朗 他: ⾮⺟語話者の発話選択におけるDeceptive Pattern: 英語選択肢の発⾳容易性による選択誘導可能性の検証, HCI215. Dubiel, M. et al.: Impact of Voice Fidelity on Decision Making: A Potential Dark Pattern?, IUI’24. Leschanowsky, A. et al.: Exploring the Impact of Modality and Speech Rate Manipulation in Voice Permission Requests―Limits of Applicability and Potential for Influencing Decision-Making, International Journal of Human-Computer Studies, 2025. 5
リサーチクエスチョン RQ1: 発話速度の操作によりユーザの選択は誘導されるか? RQ2: ⺟語,⾮⺟語で選択に及ぼす影響は異なるか? 6
発話速度の操作による誘導検証実験 質問に対して2択の選択肢から1つを選び回答する実験 - 海外旅⾏時における選択というシナリオ - ⺟語条件,⾮⺟語条件 全15問のうち,5問において発話速度を操作 - ⼀⽅の選択肢を標準的な発話速度*で⾳声提⽰ - もう⼀⽅を0.8倍速で⾳声提⽰ ⺟語条件 標準 遅い ⾮⺟語条件 標準 遅い ⾳声はGoogle Cloud Text-to-Speechを⽤いて作成 * ⾮⺟語条件については,英語ネイティブの平均発話速度よりも遅く設定した 7
実験結果 [1/4] Yahoo!クラウドソーシングを利⽤して参加者を募集 - ⺟語条件: 175名,⾮⺟語条件: 177名 発話速度を操作した5つの質問における選択肢内容による偏り* - ⺟語条件では5問すべてで偏りなし - ⾮⺟語条件では3問で偏りなし - 偏りがなかった質問のデータを分析 * ⼆項検定を実施 8
実験結果 [2/4] 標準/遅い発話速度で⾳声提⽰された選択肢が選ばれた回数 ⺟語条件 ⾮⺟語条件 標準発話速度 434回 (49.6%) 279回 (52.5%) 遅い発話速度 441回 (50.4%) 252回 (47.5%) 両条件とも選択の偏りはみられなかった* 発話速度の操作は選択を誘導しない可能性 * ⼆項検定を実施 9
実験結果 [3/4] ⺟語条件 ⾮⺟語条件 各参加者が何問で標準/遅い速度の選択肢を選んだか ⺟語条件: 分布が類似 ⾮⺟語条件: 最頻値が異なり,分布に違いがみられた 10
実験結果 [4/4] 実験後のアンケート - Q1: ⾳声提⽰された選択肢内容を理解することができた - Q2: ⾃分の選択をコントロールできていると感じた - 7段階リッカート尺度(1: 強く反対,7: 強く同意)で回答 理解度の平均 (Q1) コントロール感の平均 (Q2) ⺟語条件 6.69 (SD=0.54) 6.34 (SD=0.97) ⾮⺟語条件 4.63 (SD=1.34) 5.12 (SD=1.31) 理解度,コントロール感ともに⾮⺟語条件の⽅が有意に低かった* * Brunner-Munzel検定を実施 11
考察 [1/2] RQ1: 発話速度の操作によりユーザの選択は誘導されるか? ⺟語,⾮⺟語条件ともに速度操作による誘導はみられなかった 本研究の結果からはDPとして機能しない可能性 Leschanowskyらと同様に速度差を20%程度に設定 速度差が異なると誘導効果は変化する可能性 Leschanowsky, A. et al.: Exploring the Impact of Modality and Speech Rate Manipulation in Voice Permission Requests―Limits of Applicability and Potential for Influencing Decision-Making, International Journal of Human-Computer Studies, 2025. 12
考察 [2/2] RQ2: ⺟語,⾮⺟語で選択に及ぼす影響は異なるか? ⺟語では選択数の分布形状が速度間で類似,⾮⺟語では異なっていた 意味は同じでも⺟語では選択が偏らず,⾮⺟語では偏った質問が存在 ⾔語の違いによってユーザの選択傾向が変化する可能性 ⾮⺟語では理解度や⾃⼰コントロール感が⺟語と⽐べて低下 情報を正しく理解した上で意思決定を⾏うことを阻害 13
制約と展望 ⺟語=⽇本語,⾮⺟語=英語と設定 異なる⾔語や異なる⽂化背景の参加者では結果が変わる可能性 異なる状況下での選択に対して,結果が適⽤できるとは限らない • 発話速度の差を⼤きくした場合の検証 • 同⼀の参加者に対して⺟語/⾮⺟語それぞれで⾳声提⽰した場合 に選択が⼀致するか検証 • ⾳声で提⽰し,参加者が⾳声で選択を⾏う場合の検証 14
まとめ 背景: VUIにも⾔語障壁を悪⽤したDPが出現する可能性 RQ: 発話速度の操作によりユーザの選択は誘導されるか? ⺟語,⾮⺟語で選択に及ぼす影響は異なるか? 結果: ⺟語,⾮⺟語ともに速度操作による選択の偏りはなかった ⾮⺟語では理解度やコントロール感が低下 考察: 速度操作はDPとして機能しない可能性 ⾮⺟語は情報を正しく理解した上での意思決定を阻害 15