ダンス動画への軌跡の重畳付与が動きの理解に及ぼす影響

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December 15, 22

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ダンス動画への軌跡の重畳付与が動きの理解に及ぼす影響

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明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

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各ページのテキスト
1.

ダンス動画への軌跡の重畳付与が 動きの理解に及ぼす影響 明治大学 中村瞭汰, 藤原優花,中村聡史

2.

背景・問題 • 踊ってみた動画が流行している • ダンス動画を見て練習する人が多い →しかし,ダンス初心者が動画から振り付けを 理解し,真似することは容易ではない

3.

理解が難しい動きの例 見本 間違いの例

4.

理解が難しい動きの例 見本 間違いの例

5.

理解が難しい動きの例 見本の動き: 「手を体に沿って肩の位置まで 上げて横に伸ばす」 見本の動き 間違った動き: 見本を「手を肩の横に出す」と理解し, 再現した動き 間違った動き

6.

理解が難しい動きの例 見え方の違い 見本の動き: すっきりした動き 間違った動き: ぼやけた動き 見本の動き 間違った動き

7.

関連研究 指導者の動きを撮影し,練習者の身長に合わせた ボーン情報に変形したものを重ねて提示する [Fujimotoら, 2012]

8.

関連研究 このシステムは振り付けを覚える段階よりも, 覚えた振り付けを練習する段階で効果的だった

9.

関連研究 • VRなどを用いたダンスの練習支援に関する 研究が多い • ダンス習得支援システムの多くが持ち運びが 難しく,実際の練習環境で用いることが難しい [Rehebら,2020]

10.

関連研究 見本のダンスの動画にオノマトペの文字を 付与して,振り付けのニュアンスを伝えやすくする [斎藤ら, 2020]

11.

関連研究 オノマトペは動きの緩急を表すことには 適しているが,動き方の違いを表すことは難しい

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大目的 見本のダンス動画に情報を付与することによって 動き方の習得を支援する

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過去の研究 見本のダンス動画に対して,手の軌跡を 付与することでダンスの習得に影響するか調査 中村 瞭汰, 藤原 優花, 古市 冴佳, 中村 聡史. 見本のダンス動画に対する手の軌跡の付与が 動きの習得に及ぼす影響の調査, 情報処理学会 研究報告 ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol.2022-HCI-198, No.11, pp.1-8, 2022

14.

過去の研究 腕の動きが似ているか

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過去の研究 考察: 動画1, 2に関しては腕の動きよりも足などの動きの 印象が強く,あまり腕の動きが注視されなかった

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過去の研究で明らかでないこと • 軌跡提示によって動きの理解度が上がり, 評価値も上がったのか • 軌跡提示に対する慣れが表れ,評価値が 上がったのか

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本研究の目的 ダンス動画に対する軌跡提示によって, 動きの理解度が上がるのか調査する

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提案手法 no: 軌跡提示なし

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提案手法 back: 手が通った箇所に軌跡が提示される

20.

提案手法 front: 手がこれから動く先に軌跡が提示される

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提案手法

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実験 実験内容: ダンス動画を見てもらい,腕の動きについての 穴埋め問題に解答してもらう 穴埋め問題1 手を「どこ」から「どこ」へ「どのように」動かす

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実験 実験協力者: ダンスを習っていた経験が3年未満の大学生 (男性10名,女性10名)

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実験 実験で用いるダンス動画: AIST Dance Video Databaseから,腕の動きに 目が向きやすい動画を6本選定 それぞれの手法を2本ずつ,順番はランダムで提示

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穴埋め問題一覧 動画番号 動画1 動画2 動画3 動画4 動画5 動画6 穴埋め問題 手を「どこ」から「どこ」へ 「どのように」動かす 右手を「どこ」から上げる→ 「どこ」まで下げる→「どこ」に伸ばす 手を「どこ」から「どこ」に上げる →「どこ」に上げる 手を「どこ」から,「どこ」を支点として, 「どのように」動かす 右手を「どこ」から「どこ」まで回す →「どこ」まで下げる 右手を「どこ」から「どこ」へ 「どこ」を支点として回す

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実験手順 はじめに問題文を確認 1回目: 動画を1回見る→穴埋め問題に回答 2回目: 動画をもう一回見る→穴埋め問題に回答 3回目: ゆっくり流したり,何度見ても良い →穴埋め問題に回答する

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実験手順 穴埋め回答を3回にした理由: • 動画の視聴回数によって理解が変化すると 考えられる • 振り付けを覚える際にも,数回しか見ない 場合と,何回も見返す場合がある

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実験 採点方法: 採点基準をもとに,著者が1~3点の3段階評価で, 各空欄の採点を行った.

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採点基準 1点 「上」などの 「どこ」の空欄 位置の情報が ない 「どのように」 の空欄 動かし方に 関する情報 がない 2点 3点 位置が 模範回答と 少し異なる 模範回答の 位置が再現 できる 動かし方が 模範回答と 少し異なる 模範回答と 同じ動きが 再現できる

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結果 no: 軌跡提示なし back:手が通った箇所に軌跡が提示される front:手がこれから動く先に軌跡が提示される

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結果 どの提示方法でも,徐々に点数が増加している 動画の視聴回数による平均点の推移 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 1回目 2回目 no back 3回目 front

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結果 空欄を4種類(「どこ」から,「どこ」へ, 「どのように」,「どこ」を支点として)に分類

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結果 「どのように」の空欄は軌跡提示がある場合の 点数が高かった 「どこ」から no back front 2.28 2.49 2.34 「どこ」へ 2.59 2.57 2.41 「どのように」 2.58 2.82 2.89 「どこ」を 支点として 2.58 1.63 2.21

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結果 「どこ」を支点としての問題においてはback, frontの点数が低かった 「どこ」から no back front 2.28 2.49 2.34 「どこ」へ 2.59 2.57 2.41 「どのように」 2.58 2.82 2.89 「どこ」を 支点として 2.58 1.63 2.21

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考察 軌跡の提示が手を「どのように」動かすかを 理解するのに効果的であることが示唆された 「どこ」から no back front 2.28 2.49 2.34 「どこ」へ 2.59 2.57 2.41 「どのように」 2.58 2.82 2.89 「どこ」を 支点として 2.58 1.63 2.21

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考察 模範回答:「弧を描くように」動かす 回答例:「外に膨らむように」動かす 「ハイパーヨーヨーをするように」動かす

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考察 支点が問われているが,解答としては腕が通った 箇所を誤って解答したものが多かった 「どこ」から no back front 2.28 2.49 2.34 「どこ」へ 2.59 2.57 2.41 「どのように」 2.58 2.82 2.89 「どこ」を 支点として 2.58 1.63 2.21

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考察 模範回答: 肩を支点として回す 多かった間違い: 胸を支点として回す

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今後の展望 軌跡の効果がある動きにのみ軌跡の提示する動画を 作成し,手法の有用性の調査を行う

40.

まとめ 背景・問題: 初心者がダンスを動画から学ぶの難しい 実験: ダンス動画を見てもらい,その動きを説明する穴埋め問題に 回答してもらった 結果・考察: 軌跡が手を「どのように」動かすかの理解に効果的であることが 示唆された