2.5K Views
January 25, 25
スライド概要
Japan Power Platform Community Caravan in Hiroshima 発表資料です(https://jppcc.connpass.com/event/339631/)
Jan 25th, 2025 Japan Power Platform Community Caravan in Hiroshima システム再考 ― DX停滞の原因を探る kuro.(a.k.a.隅田智尋) 無所属
本イベントのサポーター様 (アルファベット順) 2
思い浮かべてもらえる人であり続ける 3
自己紹介 kuro. : https://kuro96.myportfolio.com/ : https://twitter.com/eigogakuto フリーランス(2023~) Power Platform 講習/内製開発支援/ヘルプデスク Power Platform を起点に、市民開発者の養成を支援しています。 自身が非開発者の出身であることや、非IT部門の方々に対する技術・教育支援の経験を活かし、 みなさまの「できるようになりたい」という声に(ほどほどに)応えます。 職歴 : 高校教員(外国語科)→ 求職者支援事業(コンピュータ)→ 現職 趣味 : 読書、旅、写真撮影(風景、野鳥、動物ポートレート)、他 近況 : Power Platform はお仕事のみに留め、DB設計の書籍を眺めて過ごしています 4
目次 01. 「システム」 について考える 0 2 . チームで働く 5
01.「システム」について考える A) 「システム」とは何か B) 優先順位を決める C) 誰が欠けても/頑張っても成功しない 6
A)「システム」とは何か • system [sístəm] ➢ メカニズムの一部、または相互接続されたネットワークの一部として 連携して動作する一連のもの 参考:Oxford Dictionary of English. 2nd ed., edited by Angus Stevenson, Oxford University Press, 2005. 拙訳. 7
A)「システム」とは何か • で、どういうことなの? ➢ 連携して動作する複数の要素から成立する「全体」 ✓ 敷衍すれば「部品」の存在を意識させない「全体としての働き」 ➢ 例(1):人体 ✓ 人体は、各器官がバランスよく連携して働くシステムである ✓ 高血圧も良くないし、低血圧も良くない ➢ 例(2):時計 ✓ 時計の内部には歯車やばね、針などの部品がたくさんあり、 ✓ それぞれの部品が単独で動いているわけではなく、すべてが組み合わさって時間を正確に示す 8
A)「システム」とは何か • 働く環境にも目を向けなければならない ➢ アプリやフローを作ることばかりが注目されている ➢ 誰かの努力だけに頼るのは、システムの定義から逸脱している 9
B) 優先順位を決める • よく出会う、お客さまのDXに対する解像度 人員不足の解消 ツール導入 運用コスト削減 無料/安価でできる 業務の効率化 素人でもできる 目標達成 ✓ ツール導入前にできる「原因」と「対策」を考えていない ✓ ツール導入の「結果(=他社事例)」をなぞろうとしているだけ 10
B) 優先順位を決める • これが原因で生じたこと:講習を例に ➢ コストを抑えたいので、1グループ10名前後で講習をお願いします ➢ グループには製造部、経理部、営業部…と、各部署の業務内容がバラバラ ➢ 業務内容がバラバラということは、必要なソリューションもバラバラ ➢ 業務改善できても部署内で留まり、本当の意味でデータが「一元管理」されない ➢ 講習終了後、IT部門のお仕事が増えるだけで終わる 11
B) 優先順位を決める • 実際に考える必要のある項目(例) 労働環境 の見直し 対象業務 の見直し ガイドライン セキュリティ データ RPA (設計) (代替) アプリ化 フロー化 目標達成 ✓ どうしても要求水準が高くなる ✓ 手戻りもあるし、同時進行もある 12
B) 優先順位を決める • ツール導入前も大切に 労働環境 の見直し 対象業務 の見直し 有識者の知見 が必要な部分 ガイドライン セキュリティ データ RPA (設計) (代替) アプリ化 フロー化 目標達成 教育機会の提供 13
「システム」である以上は… 14
C) 誰が 欠けても/頑張っても 成功しない 1. 対象業務の担当者 (業務の専門家) ✓ デジタル化、業務効率化 ✓ 業務 (の見直し) 2. 導入を支援する人 (ITの専門家) ✓ プロ開発者との協働 ✓ 教育サービスの提供 ✓ ガイドラインの策定 ✓ ライセンス、セキュリティロールの管理 3. 意思決定をする人 (経営層) ✓ DX推進のサポート ✓ 業務効率化で得た時間と費用の運用 15
C) 誰が 欠けても/頑張っても 成功しない • 「労働環境の見直し」と「対象業務の見直し」にも時間をかける ➢ 解決すべき組織課題は明確になっていますか? ➢ それは、具体的な数値で目標が示されていますか? ➢ 全従業員が理解しやすく、何をすべきかイメージできますか? ➢ 各部署の見解や業務課題に落とし込めていますか? ➢ 組織課題が集中している(=優先的にDXを進めるべき)部署はどこですか? https://www.frog-pod.com/FrogTechLog/2024/10/achieving-success-in-internal-digital-transformation.html 参考: 参考:https://www.frog-pod.com/FrogTechLog/2024/10/achieving-success-in-internal-digital-transformation.html 16
C) 誰が 欠けても/頑張っても 成功しない • 「労働環境の見直し」と「対象業務の見直し」にも時間をかける ➢ 例:来年度に向けて残業を減らそう (残業代の削減) ✓ 1人あたり、週5時間は減らそう。 毎日1時間早く帰れるようにしよう ✓ 余計な業務を無くして、時間のかかる業務は効率化すれば残業時間は減らせそう ✓ 直接顔を合わせていた会議の代わりに Teams を使ったら移動時間が減る、 Excel 転記作業と集計業務をシームレスにできれば、出張対応に割ける人員を確保できる、等 ✓ まずは事務/経理部門内で自動化/削減できる業務を洗い出し、必要なツールを選定しよう ✓ 対象ツールに触れる時間を勤務時間内で工面する ✓ 手当や成果に対するボーナスを提供する(評価) https://www.frog-pod.com/FrogTechLog/2024/10/achieving-success-in-internal-digital-transformation.html 参考: 参考:https://www.frog-pod.com/FrogTechLog/2024/10/achieving-success-in-internal-digital-transformation.html 17
本題(?) 18
02. チームで働く A) DXが進みにくい理由 B) 人間には何が残るか 19
A) DXが進みにくい理由 1. いっぱい関わる/関われる人がいるから? ➢ それぞれの抱える「熱量」や「役割」に大なり小なり差がある 2. ツール導入が目的になっているから? ➢ 歯車を1つ追加するだけでは、全体として動きが悪くなる 3. すでに最適化されているから? ➢ DXの旗を挙げなくても利益が出ている 4. どうしても予算や時間を捻出できないから? ➢ 従業員数50名未満の企業は余裕がないところが多い 20
A) DXが進みにくい理由 • 「欲求」や「不安」も原因の一つ ➢ 人間は、まだ見ぬ世界や存在を見たいために「言葉」や「体験」を通じて出会おうとする ✓ 新しい事業はないのか、もっと効率の良い稼ぎ方はないのか、スキルを得られそうだ...etc. ➢ 互いの「~したい/したくない」という欲望自体が、DXが上手く進まない原因を作っている 21
A) DXが進みにくい理由 • 「欲求」や「不安」も原因の一つ ➢ 生活において“DX”は、多くの人々に直接関わりのない言葉や現象であり、 その馴染みがない状態の“DX”を私たちが浸透させようと頑張りすぎている ✓ “DX”という一種の「虚構」を作ることによって、調和と共に混沌も生み出している 参考 Harari, Yuval Noah. Sapiens: A Brief History of Humankind. Harper, 2015. 22
「チームで働く」とは 23
B) 人間には何が残るか • 現代のパラドックス ➢便利になっているのに、人類の多くは悲観的になっている 参考 Pace, Carl Benedikt. The Technology Trap: Capital, Labor, and Power in the Age of Automation. Princeton University Press, 2019. Harari, Yuval Noah. Nexus: A Brief History of Information Networks from the Stone Age to AI. Fern Press, 2024. 24
B) 人間には何が残るか • 便利だと分かれば、どんな情報でも明け渡すのが「ヒト」 ➢ メリットを提供する前の段階で「データ活用」ということだけを言葉や計画として公開する から炎上しがちなのではないか ✓ リスクよりもメリットが上回れば次第に機能するようになる ✓ その素地が培われていない段階で「がむしゃら」になるからシステムが崩壊する 25
B) 人間には何が残るか • まず、急激な変容(どうにもできない現実)を受け入れる ➢ AIの発達により、技術格差が減り、私たちのスキルはあまり意味を持たないものになる ✓ せいぜいAIのミスを探すくらいで、プログラミングができたり、外国語を話せたりすることに 対する価値が徐々に減る ✓ AIの推薦(suggestion)により、自分で判断する力(主体性)が徐々に失われる 参考 Pace, Carl Benedikt. The Technology Trap: Capital, Labor, and Power in the Age of Automation. Princeton University Press, 2019. Harari, Yuval Noah. Nexus: A Brief History of Information Networks from the Stone Age to AI. Fern Press, 2024. 26
B) 人間には何が残るか • 思い浮かべてもらえる人であり続ける ➢ AIは、富(≒文化)を独占しない ✓ 職業は奪うかもしれないが、富と対話は残る ✓ 「あなたと一緒に働きたい」や「あなたの作るものが欲しい」と言ってもらえることの価値: コンテンツではなく、キャラクターの価値が高まる ✓ 「チームで働く」という価値観に変えていくことで自分の市場価値が高まる 参考 Pace, Carl Benedikt. The Technology Trap: Capital, Labor, and Power in the Age of Automation. Princeton University Press, 2019. Harari, Yuval Noah. Nexus: A Brief History of Information Networks from the Stone Age to AI. Fern Press, 2024. 27
B) 人間には何が残るか • DXを過度に意識せず、適応に集中する ➢ 例(1):「平和」という語が存在する限り「戦争」は無くならない ➢ 例(2):「多様性」という語を発した時点で一種の分断が生まれている ✓ DXという言葉を掲げている以上、DXは起こり得ない(?) ✓ 「適応」に集中し、自分にできることを粛々と取り組み続ける 28
思い浮かべてもらえる人であり続ける 29
Thank You!