12.6K Views
May 10, 25
スライド概要
(AIによる要約)
老舗製造業であるコニカミノルタが、プロダクトの品質向上を人間関係の品質向上を起点に実現しようと試行錯誤しています。アジャイルな企業文化を推進する中で、社内での対話や情報伝達の質を高める重要性を認識し、具体的な提案や活動を通じて、関係の質を向上させようと努力しています。しかし、全ての人に受け入れられるわけではなく、目の前の仕事に追われる中での課題も残っています。
コニカミノルタ株式会社のAgile CoE(Center of Excellence)です。
老舗製造業が「人間関係の品質向上」 を起点にしてプロダクトの品質向上を 実現しようと試行錯誤している事例を紹介します 2025/05/10 コニカミノルタ株式会社 Agile CoE 原田聡、樋上直樹、清水隆史 © KONICA MINOLTA
アジャイル三銃士を連れてきたよ がんばり ます、よ ろしく。 よっす、 どうも。 うっす、 よろしく。 Satoshi Harada Naoki Hinoue Takashi Shimizu 焼肉おじさん 2025年JOYSOUND 本人映像デビュー!? 肉の焼け具合が 判別できないおじさん 焼肉役員会議おじさん コニカミノルタ Agile CoE メンバー SIerやSaaSスタート アップなどを経験し 2023年から現職 コニカミノルタ Agile CoE メンバー カテゴリの違う老舗製造業 を経て現職 コニカミノルタ Agile CoE リーダー SIer・新規事業開発等を 経て現職 © KONICA MINOLTA 1
私たちはこれから紹介する活動を通じて、以下の価値に至った。 プロセスやツールよりも ・一人ひとりが自分の頭で 考えて柔軟に行動 ・職責やロールを超えた対話 を価値とする。
私たちはこれから紹介する活動を通じて、以下の価値に至った。 プロセスやツールよりも ・一人ひとりが自分の頭で 考えて柔軟に行動 ・職責やロールを超えた対話 を価値とする。 うわぁ! いきなり 落ち着くな!
老舗製造業で何が起きているのか
会社紹介 • コニカミノルタ株式会社 • 製造業(精密機器) • グループ従業員4万人(大企業) • 創業152年(老舗企業) • 私たち • Agile CoE (CoE:Center of Excellence) • ミッションはアジャイルの全社展開 • 実は品質本部の所属 *画像はイメージです © KONICA MINOLTA 5
老舗製造業で起きている問題 • みんなとにかく忙しそうにしている • 資料づくりや会議が多い • その割には成果に繋がっていない気がする • 他の部署のことがわからない • 話が通じなくてモヤモヤする • 納得感のない数字に追いかけられている なぜなのか? © KONICA MINOLTA 6
現場を見て世の中にある情報を調べてみた • 現場を観察&ヒアリング • 野中郁次郎先生が著書の一人であ る「失敗の本質」を読んだ • “竹内・野中論文”(The New New Product Development Game)も読んだ 問題の根本が見えてきた! [出典]失敗の本質: 日本軍の組織論的研究 [出典]新たなる新製品開発の方法 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文 https://amzn.asia/d/fZ1ouZi https://amzn.asia/d/0qCwvEc © KONICA MINOLTA 7
【問題例1】情報伝達の兵站問題 • トップ(経営層)・ミドル (管理職層)・ボトム(一般 職層)の間が長すぎて、途中 で情報が劣化・分断される • 現場の解像度はボトムの方が 高いのに権限はトップの方が が大きい • 「失敗の本質」のオマージュ で「情報伝達の兵站問題」と 命名 解像度 トップ 権限 トップ ミドル ミドル ミドル ボトム ボトム © KONICA MINOLTA 8
【問題例2】意図の空洞化問題 • 規約やルールに則って仕事をするこ とが最優先となり、肝心の意図 (Why、想い)がすっぽりと抜け 落ちてしまう • 意図が伝わらないから、なんのため にその規約やルールがあるのかが分 からないまま仕事をしている • 意図の空洞化問題と名付けた 規約 意図 ルール © KONICA MINOLTA 9
解決に向かって進みだすかに思えた… • これで問題は整理できた! • 後は問題に対して対応していけばいいだけ! • 会社も改革が進んでめでたしめでたし! …とは ならなかった! © KONICA MINOLTA 10
私たち自身に起きたこと 実は私たち自身にも 似たようなことが起きた! 【背景】 • 全社課題に取り組むタスクフォースにAgileCoEの メンバーが手を挙げた • ミッションは開発プロセスをもっと良くすることと 聞いたが詳細はよく分からない(意図の空洞化) • タスクフォースのメンバーで打ち合わせを始めたが、 結局よく分からない © KONICA MINOLTA 11
私たち自身に起きたこと • トップに提案を持っていくにあたって長い兵站をた どっていくことになった(情報伝達の兵站問題) • 途中、話が噛み合わなくて戸惑った • ミドル・トップの人柄が分からなかった • 提案を持っていっても無反応だった 私たち自身が問題に ハマってしまった… © KONICA MINOLTA 12
老舗製造業で起きている問題を 私たちはどう解釈し、仮説を立てたか
人間に起因する問題では? 作業指示や作成物だけが引き 渡され、意図が伝わっていない →意図の空洞化問題 意図の共通理解 [出典・参考] Harvard Business Review – The New New Product Development Game https://hbr.org/1986/01/the-new-new-product-development-game 自分の担当領域が完了するまで 周囲に開示しない場合も… →情報伝達の兵站が伸びる (情報伝達に時間がかかる) © KONICA MINOLTA 14
いま私たちに必要なのは プロセスやツールよりも 対話
そして”人間関係の品質”があると考えた ここから 始めたい • グッドサイクル 1. 対話や交流を通じて信頼を深める 2. 多様な視点から、気づきが生まれる 3. 自主的に行動し、共創が起きる 4. 良い結果につながる 5. 信頼が深まりさらに良い関係になる 関係の質 結果の質 思考の質 行動の質 • バッドサイクル 1. 関係性構築の前に結果を求める 2. 摩擦や対立が生じる 3. 不安や疑心暗鬼から守りに入る 4. 行動が消極的になり、共創は生まれ にくい 5. さらに結果が悪くなる [参考] 成功循環モデル ※関係の質とグッドサイクルを参考にしつつ、私たちは”人間関係の品質”として解釈した © KONICA MINOLTA 16
老舗製造業で起きている問題に 私たちはどう立ち向かっているか
関係の質を高めよう!の提案 役員会議に「対話」を提案 今よりも結果の質を 求めるなら「もっ と」関係の質を高め るところから ……が、この提案の 意図はうまく伝えら れなかった © KONICA MINOLTA 18
関係の質を高めよう!の提案 なぜうまく伝わらなかったか 情報の兵站問題にハマった • 具体的な課題からこの提案に 至る経緯を、都度伝え、公開 していたつもりが、実際は十 分伝わらず 役員との関係の質が不足 • 普段役員層との接点が多いと はいえず、提案をしている自 分たちこそ関係性が不十分 © KONICA MINOLTA 19
自分たちを知ってもらう まず自分たちが周囲との関係の質を高める • 直属の担当役員や事業の前線メ ンバーもRSGT2025現地にお 誘いして参加いただけた 欠席 • 普段、社外でどんな情報、文化に 触れているのか • 自分たちはどんな発信をしている のか • 包括的なドキュメントよりも動く ソフトウェアで示す © KONICA MINOLTA 20
役員のことを知る、周囲に知らせる • 役員ラジオ • 社内ラジオに役員を招き、 パーソナリティとして人柄を引き出す • 直属の役員でもなければ 普段絡みが無さ過ぎるので、 皆に知ってもらえる様、全社に公開 • 後の対話のきっかけに する、してもらう ※コニカミノルタは4事業領域で13ほどの 事業内容をやってるので、役員の人数規模もそれなり。 ・デジタルワークプレイス事業、インダストリー事業、 プロフェッショナルプリント事業、画像ソリューション事業 © KONICA MINOLTA 21
対話でお互いを知る • 様々なテーマについて対話する「対話の場」を開催 • 取り組みを透明性をもって全社公開 (録画の公開、社内ポータルでのニュース公開) © KONICA MINOLTA 22
老舗製造業で起きている問題に どのような進展があったか
進展したこと • 協力してくれる役員が少しずつ出てきた • 私たちが所属する部のトップ(品質担当の執行役)に 対話の重要性を理解してもらうことができた • 部長に対して対話の重要性を説明する機会を得られた • 部長からメンバーへの初年度方針展開に「対話」という言葉が 盛り込まれた • 社長の年度初めのコメントに「対話」という言葉が 盛り込まれた • 私たちの活動から繋がったかはわからないけど結果オーライ © KONICA MINOLTA 24
まだまだなところ • 対話のアプローチがすべての人に受け入れられた わけではない • 対話が不要と思っている人はいないが • 目の前の仕事に忙殺されている • きこりのジレンマ • 対話による人間関係の品質向上は中長期的な アプローチではある • 短期的にすべてが解決する銀の弾丸はない • 目の前の仕事に忙殺されている人にとっては、短期的に何かが 改善しないと手を付けにくいのも事実(銀の弾丸を欲している) © KONICA MINOLTA 25
プロセス化の落とし穴 • プロセスを規定にしてプロセス通りにやってもらう ほうが即効性があり近道…と感じる落とし穴がある • 消費者が求めているものがわかっていた時代はこれでもよかった (白物家電三種の神器、自動車など) • 消費者のニーズが多様化し、何が売れるのかわからない現代 • プロセス通りに正しく動くだけでなく、自分の頭で 考えて柔軟に行動できることが必要となってきた © KONICA MINOLTA 26
銀の弾丸がないなら、私たちは何ができるか Journey into quality forever ずっと「品質とは何か」を考え続ける [出典] DevOpsDays Tokyo 2021 - Yasuharu Nishi 製造業の品質管理の考え方をイマドキのスタイルで読み解いてみよう https://www.youtube.com/watch?v=HcTnUz55trg © KONICA MINOLTA 27
人間関係の品質向上はプロダクト品質に影響したか • 悪い方向に影響した例 • 自動車メーカーの認証不正 • 良い方向に影響した例 • ホンダのワイガヤ • 撮りっきりコニカ 人間関係の品質が悪いとプロダクトの品質に 悪い影響があることは過去の事例からわかっている。 人間関係の品質が良いとプロダクトの品質に 良い影響があるかは考え続けなければいけない。 © KONICA MINOLTA 28
老舗製造業で起きている問題と解決策を パターンとして捉えてみよう
なぜパターンの話なのか • 具体と抽象を行き来することで視点の行き来ができ、 全体を深く把握することが出来る 虫の目 具体 抽象 • 事例 • 現場 • パターン • 経営 鳥の目 © KONICA MINOLTA 30
価値 信念 私たちは今回の活動を通じて、以下の価値に至った。 プロセスやツールよりも ・一人ひとりが自分の頭で 考えて柔軟に行動 ・職責やロールを超えた対話 を価値とする。
より良くするために考え続ける 抽象 プロセス・規定・ルールになっているけど このままでいいのかな? 職責やロールで分断されているけど 直接話したほうがいいのかな? 意図の共通理解 [出典・参考] Harvard Business Review – The New New Product Development Game https://hbr.org/1986/01/the-new-new-product-development-game © KONICA MINOLTA 32
具体的には? 具体 • 上の立場の人が正解を知っているとは限らない • 視点ごとに見えていることや感じていることが違う • 残念ながら私たちはテレパシーを使えない • ”率直に質問してみる”パターン • ”情報を公開する”パターン 抽象 • 単に話すだけで解決すること・進展することは多い • 職責が異なる人の対話と、ロールが異なる人の対話が難しい • 勝手には対話が起きない&「対話しなさい」号令でも対話は起きない • 対話が起きるようなしかけが必要 抽象 • ”良い対話の場を自分たちがまず作る”パターン © KONICA MINOLTA 33
具体と抽象を行き来しながら 老舗製造業をより良くする方法を 私たちは考え続けている そして私たち自身がまず やってみせて手本となる やってみせ 言って聞かせて させてみて 誉めてやらねば 人は動かぬ
できることからやってみよう!
一人ひとりが身の回りからできる事例 • グループの「週報会」の位置づけ、やり方を変えた • 「報告」の場ではなく、「相談」や「対話」の場 • グループ内に2チームあったが、 他方のチームの内容にも質問したり、一緒に考えたり • 部長も聞いてたり指摘するだけではなく「対話」に巻き 込んだ • 今年度はGrにチームが増えて3チーム • 部長も交代 • 今日も会場に来てるので 皆さんとも是非「対話」をさせてください! © KONICA MINOLTA 36
一人ひとりが身の回りからできる事例 • 勇気を出して役員にも話しかけてみた • 定期的に対話の時間・機会をもらえるかお願いしてみた ⇒快諾いただけた • 席にいるときに話しかけた • とはいえお邪魔にはならないように… • 昼食に同席させてもらって雑談 © KONICA MINOLTA 37
あなたも「人間関係の品質向上」を起点にして プロダクトの品質向上を実現してみませんか? 日本の製造業をより良くするために 一緒に頑張ろう!
39