青木島遊園地廃止・市民検証報告書 第1章「案」「1軒の苦情→こども公園廃止 望んだのは、誰?」--検証: 信州・長野県 小さな遊園地の大きな問い 青木島遊園地廃止検証市民委員会

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July 24, 25

スライド概要

この検証報告書へのご意見をお願いします。
報告書に反映させて、長野市に提出する予定です。
2025.08.08.締め切り
こちらまで↓
https://bit.ly/aokijimagorm
青木島遊園地廃止検証市民委員会

第1章 時系列からの概観
「近隣一世帯の苦情で、長野市が遊び場を子どもたちから取り上げた」-青木島遊園地の廃止は、分かりやすくも衝撃的な物語として広く知られています。その背景には、あるべき行政プロセスの欠落、市と地域社会との対話の失敗が絡み合っています。
ベビーカーのバスへの持ち込みや、落ち着いた雰囲気の店などでは、常に小さな子の親たちは緊張しています。とがめる視線が自分たちに向けられるたら察知し、頭を下げなければならないからです。世間に心無い人がいるのは我慢しなければならないが、行政までが子どもがうるさいという苦情に加担して遊園地を取り上げるなら、自分たちはどこでこどもを遊ばせればよいのですか。次は、自分の街かもしれない…そんな声なき悲鳴が日本中を覆い、未だに払拭されていません。

遊園地廃止の発覚それ自体に次いで、最も注目されたのは、長野市長・荻原健司氏が、存続も含めた「再検討」を行うと明言した場面でしょう。そして、ひと月もたたずに市長が廃止を「再決定」した場面もまた、不透明感と失望を市民の間に一層増幅させたと特筆されるべきです。

市が市検証報告書作成のため設置した外部委員検討委員会は、行政手続き上の問題を指摘し、ルールに基づいた透明性の高い行政運営の必要性を「外部委員会検討結果報告書」(以下「外部委員会検証報告書」)で説いています。しかし外部委員には市の利害関係者が選任され、「市長判断」等は「市の政策判断」に関わることから「必要な範囲での検討」と、限定されていました。市がコントロールする下での外部委員の検証活動には、当初から構造的な限界を抱えており、外部委員会検証報告書には物足りなさが残っています。

2004年の遊園地開設から、2024年に市役所内外の委員によって作成された「長野市事務処理の在り方検討委員会検討結果報告書」(以下「市検証報告書」)提出に至るまでを時系列で整理し、基礎的な検証を試みます。

表1:主要な出来事の時系列概要
日付/期間 主要な出来事 主な関係者
2001年10月 地元区が長野市長に対し、児童センターに隣接する遊園地の設置を陳情。
青木島地区、市公園緑地課
2004年4月1日 地元要望に基づき、市が青木島遊園地を設置。民有地(1376㎡)の賃貸借料は、当初地元が負担した。
青木島地区、市公園緑地課
2004年以降 開設直後から、近隣世帯より「騒音」等に関する苦情が寄せられ始める。
近隣世帯、市公園緑地課
2008年度末 市は執拗な苦情に対応し、植栽の追加や出入り口の変更などの対策工事を実施。
近隣世帯、市公園緑地課
2017年頃 遊園地の維持管理を担っていた児童センターが、愛護会活動の継続困難を市更北支所に相談。
市青木島児童センター、市更北支所
2021年3月

近隣世帯が、児童センターに直接、遊園地の静かな利用を要請。これを受け、児童センターは遊園地の利用を全面的に中止。 近隣世帯、市青木島児童センター

2021年10月-12月 公園緑地課がこども政策課、児童センター、区長会等と協議。こども政策課が児童センター利用児に遊園地で遊ばせる意思がない旨発言。愛護会の担い手を求められた区長会は「廃止やむなし」と判断。 市公園緑地課、市こども政策課、市青木島児童センター、市青木島保育園、市青木島小学校、青木島地区区長会
2022年1月19日 区長会が、市に対して遊園地「廃止届」を提出。 青木島地区区長会、市公園緑地課
2022年2月(上旬) 公園緑地課長「決裁」により遊園地の廃止を内部的に決定。部長や市長への報告は行われず。 市公園緑地課
2022年2月-3月 公園緑地課が遊園地敷地を賃貸借している地権者に廃止伝達し手続的な打合せ。当初、地権者は「苦情が寄せられたら廃止か」等と疑義を述べた。 市公園緑地課、青木島遊園地地権者
2022年7月19日 遊園地敷地の境界確認の立会に隣接地権者の参加が求められる。 市建設部、不動産業者、隣接地権者
2022年7月26日 原形復旧費の補正予算計上について副市長
レク。地元住民との再協議の指示
副市長、市都市整備部長、市公園緑地課
2022年8月2日 苦情元近隣世帯と公園緑地課長が協議。こどもが遊園地で「元気に遊ぶこと」に理解を求めたが、「宅地化は大賛成」とされ決裂。
市公園緑地課、近隣苦情世帯
2022年8月25日 市長レク 市都市整備部長、公園緑地課長ほか
2022年10月1日 青木島地区内に遊園地廃止を知らせる回覧文書(公園緑地課長・区長会長連名)が回付される。 市公園緑地課、青木島地区区長会
2022年10月30日 K市議が初めて遊園地廃止についてSNS上で発言。以後、廃止決定の不透明性を訴え続ける。 K市議
2022年12月2日 信濃毎日新聞が「声のチカラ」欄で「公園廃止、うるさいから?」と報道。社会問題化し、全国的に注目される。 信濃毎日新聞
2022年12月9日 長野市議会でK市議が廃止方針の見直しを要求。荻原健司市長は「苦しい判断だが、手続きを進める」と答弁。 K市議、荻原健司市長
2022年12月22日 市民有志による「青木島遊園地を考える会」が存続を求める署名運動を開始。 青木島遊園地を考える会
2023年1月6日 同会が4,574筆の署名を市長に提出。後に累計8,286筆の署名を提出した。 青木島遊園地を考える会、荻原健司市長
2023年2月11日 市が住民説明会を開催。多くの廃止反対意見を受け、荻原市長は存続も含めて「再検討」する考えを表明。 荻原健司市長、地域住民
2023年3月1日 荻原市長が市議会で、地権者が土地の利用計画を進めていることから、最終的に遊園地を廃止する方針を表明。 荻原健司市長、長野市議会
2023年4月14日 児童センター利用児らの感謝表現が制止される 長野市社会福祉協議会、青木島児童センター利用児童
2023年4月17日 廃止に反対する市民の抗議活動の中、遊園地の原形復旧工事(解体・撤去)が開始される。 市公園緑地課、反対住民
2023年4月30日 遊園地跡地が更地となり、地権者に返還される。 市公園緑地課、地権者
2024年3月 市が弁護士ら外部の専門家3名を含む「事務処理の在り方検討委員会」を設置し、一連の経緯の検証を開始。 西澤雅樹副市長、市総務課、外部委員検討委員会
2024年10月10日 外部委員検討委員会が報告書を市に提出。市の意思決定プロセスにおける多数の問題点を指摘し、ルールの明確化などを勧告。 外部委員検討委員会、長野市

1.1設立と官尊民卑(2001年~2004年)
小学校、保育園、児童センター建設予定地に隣接した場所に子どもたちが遊びを通じ連帯感や精神の発達を養う場として、公園の整備をお願いしたい。
これは、長野市の文書に残された、公園設置に期待する青木島地区住民の言葉です。青木島遊園地は、平成13年(2001年)10月に長野市長へ提出された「公園」整備の陳情が元となっています。
保育園と児童センターに挟まれた1,376平方メートルの敷地について、地権者との賃貸借の交渉は、主に地元自治組織が進めました。市は、地域からの陳情を受け入れる形で、2004年4月1日に遊園地を開設しました。
事業を担当したのは公園緑地課でしたが、「遊園地設置の際の近隣住民への説明や合意形成等には主体的に関与していなかった」と、外部委員検討委員会が認定しています。つまり、市は陳情を受け入れはしたものの、遊園地設置に伴う利害調整について、本来の役割を十分に果たさなかったということです。この点は、後に近隣世帯が苦情を述べる際に、市の失策として繰り返し批判することになります。
都市公園法に基づく「都市公園」とは異なり、市はより簡易な施設として、遊園地を位置づけています。都市公園よりも格が低く、地域要望で設置してあげたのだから地域が合意形成や管理に責任を持つのが当然と、公園緑地課は上から目線で住民に対応してはいなかったでしょうか。安易な遊園地廃止事象には、「市が上にあり、住民を従える」という官尊民卑の思想が、その後も垣間見えます。
地域住民が要望したのは、初めから「公園」でした。敷地の買収や施設の充実等を市に要望する時も、地域住民は「公園」という言葉を使い続けています。都市公園法は、みだりに都市公園を廃止してはならないと定めており、仮に遊園地でなく公園だったら、本件廃止はもっと困難でした。
では、長野市における公園と遊園地の違いとは、何でしょうか。市は、都市公園法の下で「都市公園条例」を定めていて、そこには次のような条文があります。

第2条の2 次に掲げる都市公園を設置する場合においては、(略)次に掲げるところによりその配置及び規模を定めるものとする。
(1) 主として街区内に居住する者の利用に供することを目的とする都市公園は、街区内に居住する者が容易に利用することができるように配置し、その敷地面積は、0.25ヘクタールを標準として定めること。
いわゆる「街区公園」は条例上、都市公園の最小単位で、敷地面積は0.25haが標準です。青木島遊園地は0.1376haですから、一見、公園としての位置づけは無理に見えます。そして0.25ha未満の小敷地を、遊園地として整備したことは市の温情ある措置のようにも思えてきます。
しかし、そうでもないのです。市内に青木島遊園地より小さい面積の都市公園は、44か所もあります。最も小さい公園は0.03haです。市の前例から見れば、青木島遊園地は街区公園としても、面積的には大きな矛盾はなかったことになります。
では、敷地が「借地」であったことが、不都合だったのでしょうか。都市公園法上は、借地公園も可能となっています。例えば、横浜市は借地公園の条件として、面積0.05ha以上とホームページで明示しています。
公園名称 開設
面積(ha)
稲田東公園 0.03
綿内町中央公園 0.03
三本柳5号公園 0.04
りんどう公園 0.05
上松南公園 0.06
参考
(旧)青木島遊園地 0.138
長野市では公園と遊園地の境目が曖昧で、はっきりとした基準もありません。公園緑地課の匙加減で決まるように見えます。そしてその様な恣意的な公園行政が、恣意的にも見える遊園地廃止に至る背景にあるとすれば、公明正大な公園行政として更生されなければなりません。

表2:長野市内の小面積公園5例と青木島遊園地 (長野市ホームページから作成。2025.07.07.現在) 
1.2 安全よりも大事なもの: 第1期苦情
(2004年~2009年)
青木島遊園地は、開設直後の2004年から、近隣世帯が市に対して苦情を寄せるようになります。苦情は遊園地に隣接する児童センターの「子どもたちの声」、宅地内へのボールの飛び込み、ボールを拾う際の花壇の踏み荒らし、夜間の花火などに対するものでした。
これに対し、市の対応は概ね場当たり的なものとなりました。2008年度には、近隣世帯の求めに応じ、子どもたちを住居から遠ざけるため、園内にツツジの植栽を追加し、遊具を移設し、出入口の場所を変更するなどの対策工事を実施しました。このとき、公園緑地課は交通安全上の理由から出入口移設には抵抗しました。「安全確保以前に出入り口を移してもらわないと困る」、「以後、とにかく出入り口を移設するよう何度も求められる」との交渉記録が残されています。結局、出入り口の移設要求を、市は受け容れてしまいます。記録から判断する限り、近隣世帯の要求は、青木島保育園の利用を拒否するなど強硬で執拗なものであったことがうかがえます。しかし対応は公園緑地課が単独で対応しており、市の強みである組織力を活用していませんでした。過剰な要求に市が応じてしまったことは、これ以降、近隣世帯が苦情を申し入れる契機となった可能性があり、本委員会としては、市の不当要求対処要綱等により組織的に対応する必要があったと指摘します。

2009年4月9日、苦情元世帯と公園緑地課の電話交渉記録(抜粋)

1.3遊園地の危機: 第2期苦情(2021年)
青木島遊園地の草刈りや清掃といった日常的な維持管理は、「愛護会」と呼ばれるボランティア組織によって担われていました。愛護会は、遊園地に隣接する青木島児童センター(放課後子どもプラン施設)の職員と、その利用児童の保護者たちによって運営されてきました。
2021年3月、転機が訪れます。かつて苦情を申し立てていた近隣世帯が、遊園地を利用している児童センターを訪れ、「子どもを静かに遊ばせるよう良く考えてほしい」と要請したのです(FNNプライムオンライン 2022.12.10.)。児童センター館長は、トラブルを避けるため遊園地の利用を停止し、こども政策課も追認します。
こうして遊園地は児童センターという最大の利用者を失い、後に公園緑地課は「遊園地がほとんど使われていない状況」と主張しています。
児童センターの子どもたちを遊園地で遊ばせないとのこども政策課の判断は、児童センター主体の愛護会活動の意義まで脅かすようになります。
長野市ホームページから抜粋
1.4廃止は「地域の総意」(2021年10月~2022年1月)
児童センターが遊園地の利用を停止した後、市は地域との協議を開始します。2021年10月から12月にかけて、公園緑地課、こども政策課、児童センター、保育園、小学校、そして青木島地区内の各区長の集まりである区長会は、2回の会合を持ちました。
この協議の場で、こども政策課は、苦情の下では児童センターに遊園地を使わせることはなく、愛護会活動を担う意思のないことを表明。公園緑地課は新たな愛護会の担い手を各施設や区長会に打診しましたが、引き受け手は現れませんでした。この状況を受け、区長会は「ほとんど使用されていない状況や愛護会活動が継続できないことを踏まえると、遊園地の廃止はやむを得ない」という結論に追い込まれてゆきます。
2022年1月19日、区長会は市に対して「青木島遊園地の廃止について」と題する書面を提出します。
市は後に、これを区長会からの「要望」と称し、廃止決定の重要な正当化根拠として主張するようになります。「設置を要望した地元区長会からの廃止の要望」があった、というわけです。しかし、区長会の意思は、必ずしも遊園地を実際に利用する子どもたちやその保護者、あるいは地域全体の住民の総意を代表するものではありませんでした。本当委員会の調査に対し、遊園地に隣接する本委員会の委員は、廃止について区長経由で事前の周知・意見集約はなかったと証言しています。青木島地区内の他の各区でも大同小異と見られます。
本委員会としては、区長会が、区内住民の意思を集約することなく遊園地廃止を申し入れ、市がそれをもって廃止の根拠としたことは、市・区長会の双方に不適切な事務があったと指摘します。
市は、この区長会の判断を「地域の総意」として取り扱うことで、より広範な住民、特に最も影響を受ける子どもをはじめとする利用者たちとの対話を完全に省略してしまいました。市は、自らの決定責任を形式的な「地域の総意」に被せてしまったのです。
地域の合意形成のあり方と、市がそれにどのように関与し、取り扱うべきなのか。市は課題を整理した上で対処方針を住民に示し、新たな信頼関係を住民と築くべきです。

1.5 「報告」が「決裁」? (2022年2月)
区長会からの「要望」を受け、2022年2月上旬、公園緑地課長の「決裁」によって、青木島遊園地の廃止が決定されたことになっています。
しかし、本委員会は、廃止決定の決裁文書が残されていないことを指摘しなければなりません。本委員会が確認できたのは、区長会からの「廃止届」が提出されたことを「報告」する文書のみで、決裁日は2022年1月19日となっています。
一方、外部委員会検証報告書には、次のように記載されています。
「公園緑地課は、区からの青木島遊園地廃止届(「青木島遊園地の廃止について」)の提出を受け て、令和4年1月19日、課長決裁により当該遊園地の廃止を決定した。」
外部委員検討委員会は、この「報告」を決裁文書と誤認した可能性が高く、責任と見識ある検証体制が敷かれていたかについて疑問の余地を残す結果となったことは残念です。本委員会の行政実務経験者は、何れもこの「報告」文書をもって遊園地廃止決定とする事務はありえないと指摘しています。「廃止決定」を報告と書き間違えただけとか、書き忘れただけなどという釈明は通用しません。市民が窓口で手続書類を提出するとき、そう言い訳すれば、市役所が不備を見逃してくれるでしょうか?
百歩譲って、この「報告」文書を廃止決裁文書と見做すとしても、廃止に至った理由についての記載がないことから、手続としては不当です。
なお、一部メディアは廃止決定を2月上旬と伝える場合があります。本委員会でも市の文書上で、2月上旬に「廃止の判断」をしたとの記載を確認しています。
1月19日に廃止決定したと主張する公園緑地課にその決裁文書がなく、その後、2月上旬、今度は廃止「判断」をしたとは、どういう意味なのか。本委員会としては理解できません。





何れにせよ、決裁文書が残されていなかったり、廃止の日付が定かに分からなかったりするようでは、行政の決定プロセスとしては杜撰であると言わなければなりません。課長決裁ではなく、部長決裁とすることが適当であったとの指摘が外部委員会検証報告書ではなされています。しかし、それ以前の話として、遊園地廃止決定の決裁文書がないのに、遊園地の土地賃貸借契約を解除し、原形復旧工事を契約し、工事費の支出負担行為・命令ができるのでしょうか。
本委員会としては、長野市・公園緑地課は文書作成という行政事務の根幹に立ち返って、適正な手続ができる組織として再生することを要請します。
決裁文書なき支出負担行為は、地方自治法に抵触する重大な疑義があることを、会計管理者も認識すべきです。

2023年7月21日付け 青木島遊園地廃止手続きに係る審査請求に対する処分庁弁明書から抜粋
「令和4年2月上旬、公園緑地課が遊園地廃止の判断をした」とある。
1.6 発覚と反発(2022年10月~12月)
「青木島遊園地の廃止について」と題する公園緑地課と区長会の連名文書が地域内で回覧されたのは、2022年10月1日です。遊園地には「令和5年3月31日をもって廃止いたします」と看板が設置されました。
2月の遊園地廃止決定からそれまでの8ヶ月の間、その事実は水面下にあり、市民・利用者に知らされることはありませんでした。
10月30日、この情報を入手した長野市議会議員のK氏が、自身のSNS等を通じ、行政プロセスの不透明性を追及し始めます。
決定的だったのは、12月2日の信濃毎日新聞朝刊の報道です。「公園廃止、うるさいから? 子どもの声への苦情おさまらず」という見出しでこの問題を取り上げ、ネットに転載されると、全国的な注目を集める社会問題に発展しました。長野市役所には廃止に反対する電話やメールが全国から数百件も寄せられたといいます。
この国民的な反響は、この問題を我が事として受け止めた、全国の子育て世帯からの悲鳴でもありました。子どもの声を「騒音」と断ずる一軒の苦情を前に、行政が子どもたちの「遊ぶ権利」を簡単に手放してしまったという事実。子育てを通じ、日頃から社会の不寛容や孤立感を感じている子育て世帯にとって、それは遠くの出来事ではなく、身近な脅威として映りました。「子育て世帯の自分たちに、社会はいつでも罰を与えられる」という恐怖と失望を、広く植え付ける結果となったのです。

1.7 抵抗: 議会と市民(2022年12月)
長野市議会12月定例会一般質問で、K市議は、「廃止ありき」で青木島遊園地の手続きが進められたのではないかと追及。こどもの遊び声は受忍限度内にあり市に法的問題はないとの見解に加え、苦情主の言動が「脅迫罪、業務妨害に当たる可能性がある」との市顧問弁護士の見解が都市整備部長から市長に伝わっていなかったことを明らかにし、方針の見直しを迫りました。これに対し、荻原健司市長は「私としても非常に苦しい判断」としながら「このまま手続きを進めさせていただきたい」と廃止方針維持を明言しました。
苦情元世帯の言動が違法である可能性を指摘されても、遊園地廃止を再検討するとも言えない市長に、正義の実現を求める市民の失望は深まったと、本委員会は指摘します。
遊園地の存続を願う地域住民や市民有志によって「青木島遊園地を考える会」が結成され、12月22日から廃止撤回を求める署名運動を開始しました。この動きは、市が「地域の総意」とした区長会の判断が、必ずしもそうではなかったことを明確に示しています。青木島遊園地を念頭に、「公園とは何か」をテーマに設定した哲学対話イベントが開催されたのも、この時期です。
こうして遊園地廃止は、単なる一施設の存廃を巡る地域の問題から、長野市行政の意思決定プロセスの正当性を問う政治問題へと発展しました。



1.8 市長の「再検討」(2023年1月~2月)
「青木島遊園地を考える会」は、わずか2週間余りで集めた4,574筆の署名を2023年1月6日、荻原市長に直接手渡しました。同会代表は「住民にとっては一方的に遊園地が廃止になった。対話の場を持ってほしい」と訴えています。新型コロナ感染症の流行という困難の下で同会が集めた署名数は、最終的には実に累計8,286筆にまで至ります。
この直接的な民意の表明と、依然として収まらない全国からの批判に追い詰められた市は、2月11日、更北公民館で住民説明会を開催します。報道機関の入場を制限し、参加者の録音・撮影を禁じるなど、市の姿勢はここに至ってもなお閉鎖的でした。
このような権威主義的な市政に対し、会場には多くの住民が詰めかけ、遊園地の存続を求める声が次々と上がったのです。
住民からの批判の声に直面し、荻原健司市長の姿勢は明らかに変化しました。それまで廃止方針を頑なに掲げ続けていた市長でしたが、「継続も含めて、もう一度、熟考し、廃止か存続か判断する」と約束し、廃止決定を「再検討」する意向を表明したのです。市民だけでなく、国民の問題解決への期待は最高潮に達していました。

住民説明会の会場に入れず、外で待機する報道陣 2023.02.11.
1.9 再び廃止へ(2023年3月)
2023年3月1日、長野市議会での質問に答え、荻原健司市長は再検討の結果として「遊園地は廃止」と再び言明しました。
青木島遊園地の土地所有者は、既に前年2月に市から賃貸借契約解除の方針を伝えられたことから「新たな土地利用を計画していて、これ以上、土地を借りることができない」と市長は説明。
この説明は、2月の「再検討」表明が、いかに空虚なものであったかを露呈しました。2022年2月の廃止「決定」と、その後の地権者との契約解除交渉の進展により、もともと望みの薄い「再検討」ではなかったのでしょうか。市長が2月に「再検討」を約束した時点でこの件を把握していたとすれば、市民の怒りを一時的にかわすための、不誠実なポーズであったことになります。
見え透いた責任転嫁。市長への期待のピークが過ぎ去った後に来たものは、不信感のピークでした。
荻原健司市政を批判する当時のSNS上の発言の例 2023.03.01.
1.10 禁じられた「ありがとう」 (2023年3月)

児童センターの子どもたちが掲出を禁じられた遊園地へのお別れメッセージ

遊園地の原形復旧工事が目の前に迫った2023年4月14日、隣接する青木島児童センターの子どもたちが「公園への感謝を示す模造紙を掲げて記念撮影しようとしたところ、センターを管理する市社会福祉協議会が『子どもへの押し付けだ』として模造紙掲示を一方的に制限」しました (信濃毎日新聞2023.04.15.)。週明けの17日から工事が予定されており、この日が遊園地を利用できる最後の日であることから、遊園地内で記念撮影するため「センター職員が事前に、以前にセンターを利用していた小中学生と相談して内容を考え、赤い模造紙に白い絵の具で手書きして用意した」(同)ものでした。児童センターの子どもたちはうるさいからと黙らされ、遊園地廃止への意見も言えず、最後には遊園地への感謝も愛着も表現することを禁じられたのです。
憲法21条が保障する表現の自由を、子どもたちから奪う行為であることは明白です。一体、誰に気を遣っているのでしょうか。なぜこのような事案が発生してしまうのか、何が問題視されたのか、理解に苦しみます。
本委員会は、この一事だけでも、重大な権利侵害であると考えます。社会福祉協議会の関係者が一人も責任をとらないのは全く不可解です。
1.11声も公園も消す工事(2023年4月)
2023年4月17日、重機が園内に搬入され、青木島遊園地設備の解体と撤去作業が始まりました。
工事現場では、最後まで廃止に反対するK市議や住民たちがプラカードを掲げ、抗議の声を上げました。市の職員に詰め寄ったある住民は、「地主のせいにして、長野市の理不尽さが今回、とことん分かりました」と怒りを顕わにしました(FNNプライムオンライン2023.04.18.)。一部の保護者は、子どもたちが「慣れ親しんだ遊園地が無残に壊される様子を目にしてショックを受けている」と市に訴えました(信濃毎日新聞2023.04.19.)。
工事は4月20日に完了しました。
(工事が完了した20日午後) 5時過ぎ、作業が終わった公園跡地の脇を自転車に乗った女児3人が通りかかり、1人が跡地に向かって「私たちの公園、戻ってこーい!」と叫んでいた。
信濃毎日新聞 2023.04.21.

1.12未熟な検証(2023年7月~2024年10月)
青木島遊園地の廃止が残した行政への不信。長野市は自らの対応を検証し、説明責任を果たすことを迫られます。
厳しい世論を受け、市は一連の経過を客観的に検証し、再発防止策を検討するため、2023年7月、「長野市事務処理の在り方検討委員会(青木島遊園地廃止関連)」を設置しました。
この委員会は、市職員で構成される「庁内検討委員会」と、客観性と専門性を担保するための「外部委員検討委員会」の二層構造で組織されたものです。特に重要なのは外部委員検討委員会であり、弁護士、大学教授、元県職員3名よって構成されました。
2024年3月から複数回の会合を重ねた外部委員検討委員会は、同年10月10日、その調査結果をまとめた報告書を市に提出しました。報告書の内容は、市の行政プロセスに対して部分的・微視的には批判的な検証が行われたと評価できるものです。市役所内の行政手続き面または制度上の不備を指摘する点では有益でありました。
しかし一方で、「一軒の苦情」を契機とする遊園地廃止の判断の妥当性や、職員の執務上の責任の有無については、検証の対象とされませんでした。そのため、市民から全面的な納得が得られる検証とはなりえていません。そもそも、市検証報告書に足らざるものを感じたことが、本委員会による当検証報告書作成の動機の一つとなっています。





「検討結果報告書」
長野市事務処理の在り方検討委員会
外部委員検討委員会

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◆徹夜必至につき閲覧注意の「〇見え通信」https://linktr.ee/koizumikazuma◆長野市議4期◆自称スーパー無所属◆情報公開徹底◆市民第一主義◆主著「長野県庁の『不都合な真実』」は平安堂ランク最高2位◆元長野県庁職員◆大北森林組合事件で住民監査請求成功◆一軒の苦情で!? 青木島遊園地廃止に大反対◆URLまとめhttps://bit.ly/m/kazuma◆以前使っていた資料公開サイトhttps://www.slideshare.net/kazumakoizumi1/documents

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1.

第1章 1

3.

内容 第 1 章 時系列からの概観 ........................................................................ 4 1.1 設立と官尊民卑(2001 年~2004 年) ........................................... 8 1.2 安全よりも大事なもの: 第 1 期苦情 (2004 年~2009 年) ......... 11 1.3 遊園地の危機: 第 2 期苦情(2021 年) ........................................ 12 1.4 廃止は「地域の総意」(2021 年 10 月~2022 年 1 月) ................ 13 1.5 「報告」が「決裁」? (2022 年 2 月) ....................................... 14 1.6 発覚と反発(2022 年 10 月~12 月)........................................... 18 1.7 抵抗: 議会と市民(2022 年 12 月) ............................................. 19 1.8 市長の「再検討」(2023 年 1 月~2 月) .................................... 21 1.9 再び廃止へ(2023 年 3 月) ........................................................ 22 1.10 禁じられた「ありがとう」 (2023 年 3 月) ................................ 23 1.11 声も公園も消す工事(2023 年 4 月) ........................................ 24 1.12 未熟な検証(2023 年 7 月~2024 年 10 月).............................. 25 3

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第 1 章 時系列からの概観 「近隣一世帯の苦情で、長野市が遊び場を子どもたちから取り上げた」 -青木島遊園地の廃止は、分かりやすくも衝撃的な物語として広く知られ ています。その背景には、あるべき行政プロセスの欠落、市と地域社会と の対話の失敗が絡み合っています。 ベビーカーのバスへの持ち込みや、落ち着いた雰囲気の店などでは、常 に小さな子の親たちは緊張しています。とがめる視線が自分たちに向けら れるたら察知し、頭を下げなければならないからです。世間に心無い人が いるのは我慢しなければならないが、行政までが子どもがうるさいという 苦情に加担して遊園地を取り上げるなら、自分たちはどこでこどもを遊ば せればよいのですか。次は、自分の街かもしれない…そんな声なき悲鳴が 日本中を覆い、未だに払拭されていません。 遊園地廃止の発覚それ自体に次いで、最も注目されたのは、長野市長・ 荻原健司氏が、存続も含めた「再検討」を行うと明言した場面でしょう。 そして、ひと月もたたずに市長が廃止を「再決定」した場面もまた、不透 明感と失望を市民の間に一層増幅させたと特筆されるべきです。 市が市検証報告書作成のため設置した外部委員検討委員会は、行政手続 き上の問題を指摘し、ルールに基づいた透明性の高い行政運営の必要性を 「外部委員会検討結果報告書」(以下「外部委員会検証報告書」)で説いて います。しかし外部委員には市の利害関係者が選任され、「市長判断」等 は「市の政策判断」に関わることから「必要な範囲での検討」と、限定さ れていました。市がコントロールする下での外部委員の検証活動には、当 初から構造的な限界を抱えており、外部委員会検証報告書には物足りなさ が残っています。 2004 年の遊園地開設から、2024 年に市役所内外の委員によって作成さ れた「長野市事務処理の在り方検討委員会検討結果報告書」(以下「市検証 報告書」)提出に至るまでを時系列で整理し、基礎的な検証を試みます。 4

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表 1:主要な出来事の時系列概要 日付/期間 主要な出来事 主な関係者 2001 年 10 月 地元区が長野市長に対し、児童センターに 隣接する遊園地の設置を陳情。 青木島地区、市 公園緑地課 2004 年 4 月 1 日 地元要望に基づき、市が青木島遊園地を設 置。民有地(1376 ㎡)の賃貸借料は、当 初地元が負担した。 青木島地区、市 公園緑地課 2004 年以降 開設直後から、近隣世帯より「騒音」等に 関する苦情が寄せられ始める。 近隣世帯、市公 園緑地課 2008 年度末 市は執拗な苦情に対応し、植栽の追加や出 入り口の変更などの対策工事を実施。 近隣世帯、市公 園緑地課 2017 年頃 遊園地の維持管理を担っていた児童センタ ーが、愛護会活動の継続困難を市更北支所 に相談。 市青木島児童セ ンター、市更北 支所 2021 年 3 月 近隣世帯が、児童センターに直接、遊園地 の静かな利用を要請。これを受け、児童セ ンターは遊園地の利用を全面的に中止。 近隣世帯、市青 木島児童センタ ー 2021 年 10 月12 月 公園緑地課がこども政策課、児童センタ ー、区長会等と協議。こども政策課が児童 センター利用児に遊園地で遊ばせる意思が ない旨発言。愛護会の担い手を求められた 区長会は「廃止やむなし」と判断。 市公園緑地課、 市こども政策 課、市青木島児 童センター、市 青木島保育園、 市青木島小学 校、青木島地区 区長会 2022 年 1 月 19 日 区長会が、市に対して遊園地「廃止届」を 提出。 青木島地区区長 会、市公園緑地 課 5

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2022 年 2 月 (上旬) 公園緑地課長「決裁」により遊園地の廃止 を内部的に決定。部長や市長への報告は行 われず。 市公園緑地課 2022 年 2 月- 3月 公園緑地課が遊園地敷地を賃貸借している 地権者に廃止伝達し手続的な打合せ。当 初、地権者は「苦情が寄せられたら廃止 か」等と疑義を述べた。 市公園緑地課、 青木島遊園地地 権者 2022 年 7 月 19 日 遊園地敷地の境界確認の立会に隣接地権者 の参加が求められる。 市建設部、不動 産業者、隣接地 権者 2022 年 7 月 26 日 原形復旧費の補正予算計上について副市長 レク。地元住民との再協議の指示 副市長、市都市 整備部長、市公 園緑地課 2022 年 8 月 2 日 苦情元近隣世帯と公園緑地課長が協議。こ どもが遊園地で「元気に遊ぶこと」に理解 を求めたが、「宅地化は大賛成」とされ決 裂。 市公園緑地課、 近隣苦情世帯 2022 年 8 月 25 日 市長レク 市都市整備部 長、公園緑地課 長ほか 2022 年 10 月 1日 青木島地区内に遊園地廃止を知らせる回覧 文書(公園緑地課長・区長会長連名)が回付 される。 市公園緑地課、 青木島地区区長 会 2022 年 10 月 30 日 K 市議が初めて遊園地廃止について SNS 上で発言。以後、廃止決定の不透明性を訴 え続ける。 K 市議 2022 年 12 月 2日 信濃毎日新聞が「声のチカラ」欄で「公園 廃止、うるさいから?」と報道。社会問題 化し、全国的に注目される。 信濃毎日新聞 2022 年 12 月 9日 長野市議会で K 市議が廃止方針の見直しを 要求。荻原健司市長は「苦しい判断だが、 手続きを進める」と答弁。 K 市議、荻原健司 市長 6

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2022 年 12 月 22 日 市民有志による「青木島遊園地を考える 会」が存続を求める署名運動を開始。 青木島遊園地を 考える会 2023 年 1 月 6 日 同会が 4,574 筆の署名を市長に提出。後に 累計 8,286 筆の署名を提出した。 青木島遊園地を 考える会、荻原 健司市長 2023 年 2 月 11 日 市が住民説明会を開催。多くの廃止反対意 見を受け、荻原市長は存続も含めて「再検 討」する考えを表明。 荻原健司市長、 地域住民 2023 年 3 月 1 日 荻原市長が市議会で、地権者が土地の利用 計画を進めていることから、最終的に遊園 地を廃止する方針を表明。 荻原健司市長、 長野市議会 2023 年 4 月 14 日 児童センター利用児らの感謝表現が制止さ れる 長野市社会福祉 協議会、青木島 児童センター利 用児童 2023 年 4 月 17 日 廃止に反対する市民の抗議活動の中、遊園 地の原形復旧工事(解体・撤去)が開始さ れる。 市公園緑地課、 反対住民 2023 年 4 月 30 日 遊園地跡地が更地となり、地権者に返還さ れる。 市公園緑地課、 地権者 2024 年 3 月 市が弁護士ら外部の専門家 3 名を含む「事 務処理の在り方検討委員会」を設置し、一 連の経緯の検証を開始。 西澤雅樹副市 長、市総務課、 外部委員検討委 員会 2024 年 10 月 10 日 外部委員検討委員会が報告書を市に提出。 市の意思決定プロセスにおける多数の問題 点を指摘し、ルールの明確化などを勧告。 外部委員検討委 員会、長野市 7

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1.1 設立と官尊民卑(2001 年~2004 年) 小学校、保育園、児童センター建設予定地に隣接した場所に子ども たちが遊びを通じ連帯感や精神の発達を養う場として、公園の整備 をお願いしたい。 これは、長野市の文書に残された、公園設置に期待する青木島地区住民 の言葉です。青木島遊園地は、平成 13 年(2001 年)10 月に長野市長へ提出 された「公園」整備の陳情が元となっています。 保育園と児童センターに挟まれた 1,376 平方メートルの敷地について、 地権者との賃貸借の交渉は、主に地元自治組織が進めました。市は、地域 からの陳情を受け入れる形で、2004 年 4 月 1 日に遊園地を開設しました。 事業を担当したのは公園緑地課でしたが、「遊園地設置の際の近隣住民 への説明や合意形成等には主体的に関与していなかった」と、外部委員検 討委員会が認定しています。つまり、市は陳情を受け入れはしたものの、 遊園地設置に伴う利害調整について、本来の役割を十分に果たさなかった ということです。この点は、後に近隣世帯が苦情を述べる際に、市の失策 として繰り返し批判することになります。 都市公園法に基づく「都市公園」とは異なり、市はより簡易な施設とし て、遊園地を位置づけています。都市公園よりも格が低く、地域要望で設 置してあげたのだから地域が合意形成や管理に責任を持つのが当然と、公 園緑地課は上から目線で住民に対応してはいなかったでしょうか。安易な 遊園地廃止事象には、「市が上にあり、住民を従える」という官尊民卑の 思想が、その後も垣間見えます。 地域住民が要望したのは、初めから「公園」でした。敷地の買収や施設 の充実等を市に要望する時も、地域住民は「公園」という言葉を使い続け ています。都市公園法は、みだりに都市公園を廃止してはならないと定め ており、仮に遊園地でなく公園だったら、本件廃止はもっと困難でした。 では、長野市における公園と遊園地の違いとは、何でしょうか。市は、 都市公園法の下で「都市公園条例」を定めていて、そこには次のような条 文があります。 8

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長野市「陳情処理記録票」平成 13 年(2001 年)10 月 16 日 「…子どもたちが遊びを通して連帯感や精神の発達を養う場として、公園の整備をお 願いしたい」との、青木島地域の願いが謳われています。大人たちは連帯できていた のでしょうか… 9

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第2条の2 次に掲げる都市公園を設置する場合においては、(略) 次に掲げるところによりその配置及び規模を定めるものとする。 (1) 主として街区内に居住する者の利用に供することを目的とす る都市公園は、街区内に居住する者が容易に利用することができる ように配置し、その敷地面積は、0.25 ヘクタールを標準として定め ること。 いわゆる「街区公園」は条例上、都市公園の最小単位で、敷地面積は 0.25ha が標準です。青木島遊園地は 0.1376ha ですから、一見、公園とし ての位置づけは無理に見えます。そして 0.25ha 未満の小敷地を、遊園地 として整備したことは市の温情ある措置のようにも思えてきます。 しかし、そうでもないのです。市内に青木島遊園地より小さい面積の都 市公園は、44 か所もあります。最も小さい公園は 0.03ha です。市の前例 から見れば、青木島遊園地は街区公園としても、面積的には大きな矛盾は なかったことになります。 では、敷地が「借地」であったことが、不都合だったのでしょうか。都 市公園法上は、借地公園も可能となっています。例えば、横浜市は借地公 園の条件として、面積 0.05ha 以上とホームページで明示しています。 長野市では公園と遊園地の境目が曖 開設 昧で、はっきりとした基準もありませ 公園名称 面積 ん。公園緑地課の匙加減で決まるよう (ha) に見えます。そしてその様な恣意的な 稲田東公園 0.03 公園行政が、恣意的にも見える遊園地 綿内町中央公園 0.03 廃止に至る背景にあるとすれば、公明 三本柳 5 号公園 0.04 正大な公園行政として更生されなけれ りんどう公園 0.05 ばなりません。 上松南公園 0.06 表 2:長野市内の小面積公園 5 例と青木 島遊園地 (長野市ホームページから作 成。2025.07.07.現在) 参考 (旧)青木島遊園地 0.138 10

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1.2 安全よりも大事なもの: 第 1 期苦情 (2004 年~2009 年) 青木島遊園地は、開設直後の 2004 年から、近隣世帯が市に対して苦情 を寄せるようになります。苦情は遊園地に隣接する児童センターの「子ど もたちの声」、宅地内へのボールの飛び込み、ボールを拾う際の花壇の踏 み荒らし、夜間の花火などに対するものでした。 これに対し、市の対応は概ね場当たり的なものとなりました。2008 年度 には、近隣世帯の求めに応じ、子どもたちを住居から遠ざけるため、園内 にツツジの植栽を追加し、遊具を移設し、出入口の場所を変更するなどの 対策工事を実施しました。このとき、公園緑地課は交通安全上の理由から 出入口移設には抵抗しました。「安全確保以前に出入り口を移してもらわ ないと困る」、「以後、とにかく出入り口を移設するよう何度も求められ る」との交渉記録が残されています。結局、出入り口の移設要求を、市は 受け容れてしまいます。記録から判断する限り、近隣世帯の要求は、青木 島保育園の利用を拒否するなど強硬で執拗なものであったことがうかがえ ます。しかし対応は公園緑地課が単独で対応しており、市の強みである組 織力を活用していませんでした。過剰な要求に市が応じてしまったこと は、これ以降、近隣世帯が苦情を申し入れる契機となった可能性があり、 本委員会としては、市の不当要求対処要綱等により組織的に対応する必要 があったと指摘します。 2009 年 4 月 9 日、苦情元世帯と公園緑地課の電話交渉記録(抜粋) 11

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1.3 遊園地の危機: 第 2 期苦情(2021 年) 青木島遊園地の草刈りや清掃といった日常的な維持管理は、「愛護会」 と呼ばれるボランティア組織によって担われていました。愛護会は、遊園 地に隣接する青木島児童センター(放課後子どもプラン施設)の職員と、そ の利用児童の保護者たちによって運営されてきました。 2021 年 3 月、転機が訪れます。かつて苦情を申し立てていた近隣世帯 が、遊園地を利用している児童センターを訪れ、「子どもを静かに遊ばせ るよう良く考えてほしい」と要請したのです(FNN プライムオンライン 2022.12.10.)。児童センター館長は、トラブルを避けるため遊園地の利用 を停止し、こども政策課も追認します。 こうして遊園地は児童センターという最大の利用者を失い、後に公園緑 地課は「遊園地がほとんど使われていない状況」と主張しています。 児童センターの子どもたちを遊園地で遊ばせないとのこども政策課の判 断は、児童センター主体の愛護会活動の意義まで脅かすようになります。 長野市ホームページから抜粋 12

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1.4 廃止は「地域の総意」(2021 年 10 月~2022 年 1 月) 児童センターが遊園地の利用を停止した後、市は地域との協議を開始し ます。2021 年 10 月から 12 月にかけて、公園緑地課、こども政策課、児童 センター、保育園、小学校、そして青木島地区内の各区長の集まりである 区長会は、2 回の会合を持ちました。 この協議の場で、こども政策課は、苦情の下では児童センターに遊園地 を使わせることはなく、愛護会活動を担う意思のないことを表明。公園緑 地課は新たな愛護会の担い手を各施設や区長会に打診しましたが、引き受 け手は現れませんでした。この状況を受け、区長会は「ほとんど使用され ていない状況や愛護会活動が継続できないことを踏まえると、遊園地の廃 止はやむを得ない」という結論に追い込まれてゆきます。 2022 年 1 月 19 日、区長会は市に対して「青木島遊園地の廃止につい て」と題する書面を提出します。 市は後に、これを区長会からの「要望」と称し、廃止決定の重要な正当 化根拠として主張するようになります。「設置を要望した地元区長会から の廃止の要望」があった、というわけです。しかし、区長会の意思は、必 ずしも遊園地を実際に利用する子どもたちやその保護者、あるいは地域全 体の住民の総意を代表するものではありませんでした。本当委員会の調査 に対し、遊園地に隣接する本委員会の委員は、廃止について区長経由で事 前の周知・意見集約はなかったと証言しています。青木島地区内の他の各 区でも大同小異と見られます。 本委員会としては、区長会が、区内住民の意思を集約することなく遊園 地廃止を申し入れ、市がそれをもって廃止の根拠としたことは、市・区長 会の双方に不適切な事務があったと指摘します。 市は、この区長会の判断を「地域の総意」として取り扱うことで、より 広範な住民、特に最も影響を受ける子どもをはじめとする利用者たちとの 対話を完全に省略してしまいました。市は、自らの決定責任を形式的な 「地域の総意」に被せてしまったのです。 地域の合意形成のあり方と、市がそれにどのように関与し、取り扱うべ きなのか。市は課題を整理した上で対処方針を住民に示し、新たな信頼関 係を住民と築くべきです。 13

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1.5 「報告」が「決裁」? (2022 年 2 月) 区長会からの「要望」を受け、2022 年 2 月上旬、公園緑地課長の「決 裁」によって、青木島遊園地の廃止が決定されたことになっています。 しかし、本委員会は、廃止決定の決裁文書が残されていないことを指摘 しなければなりません。本委員会が確認できたのは、区長会からの「廃止 届」が提出されたことを「報告」する文書のみで、決裁日は 2022 年 1 月 19 日となっています。 一方、外部委員会検証報告書には、次のように記載されています。 「公園緑地課は、区からの青木島遊園地廃止届(「青木島遊園地の 廃止について」)の提出を受け て、令和 4 年 1 月 19 日、課長決裁 により当該遊園地の廃止を決定した。」 外部委員検討委員会は、この「報告」を決裁文書と誤認した可能性が高 く、責任と見識ある検証体制が敷かれていたかについて疑問の余地を残す 結果となったことは残念です。本委員会の行政実務経験者は、何れもこの 「報告」文書をもって遊園地廃止決定とする事務はありえないと指摘して います。「廃止決定」を報告と書き間違えただけとか、書き忘れただけな どという釈明は通用しません。市民が窓口で手続書類を提出するとき、そ う言い訳すれば、市役所が不備を見逃してくれるでしょうか? 百歩譲って、この「報告」文書を廃止決裁文書と見做すとしても、廃止 に至った理由についての記載がないことから、手続としては不当です。 なお、一部メディアは廃止決定を 2 月上旬と伝える場合があります。本 委員会でも市の文書上で、2 月上旬に「廃止の判断」をしたとの記載を確 認しています。 1 月 19 日に廃止決定したと主張する公園緑地課にその決裁文書がなく、 その後、2 月上旬、今度は廃止「判断」をしたとは、どういう意味なの か。本委員会としては理解できません。 14

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青木島遊園地廃止届報告送付票 令和 4 年(2022 年)1 月 19 日 15

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青木島遊園地廃止届 令和 4 年(2022 年)1 月 19 日 16

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何れにせよ、決裁文書が残されていなかったり、廃止の日付が定かに分 からなかったりするようでは、行政の決定プロセスとしては杜撰であると 言わなければなりません。課長決裁ではなく、部長決裁とすることが適当 であったとの指摘が外部委員会検証報告書ではなされています。しかし、 それ以前の話として、遊園地廃止決定の決裁文書がないのに、遊園地の土 地賃貸借契約を解除し、原形復旧工事を契約し、工事費の支出負担行為・ 命令ができるのでしょうか。 本委員会としては、長野市・公園緑地課は文書作成という行政事務の根 幹に立ち返って、適正な手続ができる組織として再生することを要請しま す。 決裁文書なき支出負担行為は、地方自治法に抵触する重大な疑義がある ことを、会計管理者も認識すべきです。 2023 年 7 月 21 日付け 青木島遊園地廃止手続きに係る審査請求に対する 処分庁弁明書から抜粋 「令和 4 年 2 月上旬、公園緑地課が遊園地廃止の判断をした」とある。 17

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1.6 発覚と反発(2022 年 10 月~12 月) 「青木島遊園地の廃止について」と題する公園緑地課と区長会の連名文 書が地域内で回覧されたのは、2022 年 10 月 1 日です。遊園地には「令和 5 年 3 月 31 日をもって廃止いたします」と看板が設置されました。 2 月の遊園地廃止決定からそれまでの 8 ヶ月の間、その事実は水面下に あり、市民・利用者に知らされることはありませんでした。 10 月 30 日、この情報を入手した長野市議会議員の K 氏が、自身の SNS 等を通じ、行政プロセスの不透明性を追及し始めます。 決定的だったのは、12 月 2 日の信濃毎日新聞朝刊の報道です。「公園廃 止、うるさいから? 子どもの声への苦情おさまらず」という見出しでこの 問題を取り上げ、ネットに転載されると、全国的な注目を集める社会問題 に発展しました。長野市役所には廃止に反対する電話やメールが全国から 数百件も寄せられたといいます。 この国民的な反響は、この問題を我が事として受け止めた、全国の子育 て世帯からの悲鳴でもありました。子どもの声を「騒音」と断ずる一軒の 苦情を前に、行政が子どもたちの「遊ぶ権利」を簡単に手放してしまった という事実。子育てを通じ、日頃から社会の不寛容や孤立感を感じている 子育て世帯にとって、それは遠くの出来事ではなく、身近な脅威として映 りました。「子育て世帯の自分たちに、社会はいつでも罰を与えられる」 という恐怖と失望を、広く植え付ける結果となったのです。 「令和 4 年 12 月から閉 鎖します」 告知文が掲示された青木島 遊園地 2022.11.09. 18

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1.7 抵抗: 議会と市民(2022 年 12 月) 長野市議会 12 月定例会一般質問で、K 市議は、「廃止ありき」で青木島 遊園地の手続きが進められたのではないかと追及。こどもの遊び声は受忍 限度内にあり市に法的問題はないとの見解に加え、苦情主の言動が「脅迫 罪、業務妨害に当たる可能性がある」との市顧問弁護士の見解が都市整備 部長から市長に伝わっていなかったことを明らかにし、方針の見直しを迫 りました。これに対し、荻原健司市長は「私としても非常に苦しい判断」 としながら「このまま手続きを進めさせていただきたい」と廃止方針維持 を明言しました。 苦情元世帯の言動が違法である可能性を指摘されても、遊園地廃止を再 検討するとも言えない市長に、正義の実現を求める市民の失望は深まった と、本委員会は指摘します。 遊園地の存続を願う地域住民や市民有志によって「青木島遊園地を考え る会」が結成され、12 月 22 日から廃止撤回を求める署名運動を開始しま した。この動きは、市が「地域の総意」とした区長会の判断が、必ずしも そうではなかったことを明確に示しています。青木島遊園地を念頭に、 「公園とは何か」をテーマに設定した哲学対話イベントが開催されたの も、この時期です。 こうして遊園地廃止は、単なる一施設の存廃を巡る地域の問題から、長 野市行政の意思決定プロセスの正当性を問う政治問題へと発展しました。 廃止は、市民間 に議論を巻き起 こした。 哲学対話に用いら れたホワイトボー ド 19

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長野市顧問弁護士への相談記録 20

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1.8 市長の「再検討」(2023 年 1 月~2 月) 「青木島遊園地を考える会」は、わずか 2 週間余りで集めた 4,574 筆の 署名を 2023 年 1 月 6 日、荻原市長に直接手渡しました。同会代表は「住 民にとっては一方的に遊園地が廃止になった。対話の場を持ってほしい」 と訴えています。新型コロナ感染症の流行という困難の下で同会が集めた 署名数は、最終的には実に累計 8,286 筆にまで至ります。 この直接的な民意の表明と、依然として収まらない全国からの批判に追 い詰められた市は、2 月 11 日、更北公民館で住民説明会を開催します。報 道機関の入場を制限し、参加者の録音・撮影を禁じるなど、市の姿勢はこ こに至ってもなお閉鎖的でした。 このような権威主義的な市政に対し、会場には多くの住民が詰めかけ、 遊園地の存続を求める声が次々と上がったのです。 住民からの批判の声に直面し、荻原健司市長の姿勢は明らかに変化しま した。それまで廃止方針を頑なに掲げ続けていた市長でしたが、「継続も 含めて、もう一度、熟考し、廃止か存続か判断する」と約束し、廃止決定 を「再検討」する意向を表明したのです。市民だけでなく、国民の問題解 決への期待は最高潮に達していました。 住民説明会の会場に入れず、外で待機する報道陣 2023.02.11. 21

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1.9 再び廃止へ(2023 年 3 月) 2023 年 3 月 1 日、長野市議会での質問に答え、荻原健司市長は再検討の 結果として「遊園地は廃止」と再び言明しました。 青木島遊園地の土地所有者は、既に前年 2 月に市から賃貸借契約解除の 方針を伝えられたことから「新たな土地利用を計画していて、これ以上、 土地を借りることができない」と市長は説明。 この説明は、2 月の「再検討」表明が、いかに空虚なものであったかを 露呈しました。2022 年 2 月の廃止「決定」と、その後の地権者との契約解 除交渉の進展により、もともと望みの薄い「再検討」ではなかったのでし ょうか。市長が 2 月に「再検討」を約束した時点でこの件を把握していた とすれば、市民の怒りを一時的にかわすための、不誠実なポーズであった ことになります。 見え透いた責任転嫁。市長への期待のピークが過ぎ去った後に来たもの は、不信感のピークでした。 荻原健司市政を批判する当時の SNS 上の発言の例 2023.03.01. 22

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1.10 禁じられた「ありがとう」 (2023 年 3 月) 児童センターの子どもたちが掲出を禁じられた遊園地へのお別れメッセージ 遊園地の原形復旧工事が目の前に迫った 2023 年 4 月 14 日、隣接する青 木島児童センターの子どもたちが「公園への感謝を示す模造紙を掲げて記 念撮影しようとしたところ、センターを管理する市社会福祉協議会が『子 どもへの押し付けだ』として模造紙掲示を一方的に制限」しました (信濃 毎日新聞 2023.04.15.)。週明けの 17 日から工事が予定されており、この 日が遊園地を利用できる最後の日であることから、遊園地内で記念撮影す るため「センター職員が事前に、以前にセンターを利用していた小中学生 と相談して内容を考え、赤い模造紙に白い絵の具で手書きして用意した」 (同)ものでした。児童センターの子どもたちはうるさいからと黙らされ、 遊園地廃止への意見も言えず、最後には遊園地への感謝も愛着も表現する ことを禁じられたのです。 憲法 21 条が保障する表現の自由を、子どもたちから奪う行為であるこ とは明白です。一体、誰に気を遣っているのでしょうか。なぜこのような 事案が発生してしまうのか、何が問題視されたのか、理解に苦しみます。 本委員会は、この一事だけでも、重大な権利侵害であると考えます。社 会福祉協議会の関係者が一人も責任をとらないのは全く不可解です。 23

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1.11 声も公園も消す工事(2023 年 4 月) 2023 年 4 月 17 日、重機が園内 に搬入され、青木島遊園地設備 の解体と撤去作業が始まりまし た。 工事現場では、最後まで廃止 に反対する K 市議や住民たちが プラカードを掲げ、抗議の声を 上げました。市の職員に詰め寄 ったある住民は、「地主のせい にして、長野市の理不尽さが今回、とことん分かりました」と怒りを顕わ にしました(FNN プライムオンライン 2023.04.18.)。一部の保護者は、子 どもたちが「慣れ親しんだ遊園地が無残に壊される様子を目にしてショッ クを受けている」と市に訴えました(信濃毎日新聞 2023.04.19.)。 工事は 4 月 20 日に完了しました。 (工事が完了した 20 日午後) 5 時過ぎ、作業が終わった公園跡地の 脇を自転車に乗った女児 3 人が通りかかり、1 人が跡地に向かって 「私たちの公園、戻ってこーい!」と叫んでいた。 信濃毎日新聞 2023.04.21. 24

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1.12 未熟な検証(2023 年 7 月~2024 年 10 月) 青木島遊園地の廃止が残した行政への不信。長野市は自らの対応を検証 し、説明責任を果たすことを迫られます。 厳しい世論を受け、市は一連の経過を客観的に検証し、再発防止策を検 討するため、2023 年 7 月、「長野市事務処理の在り方検討委員会(青木島 遊園地廃止関連)」を設置しました。 この委員会は、市職員で構成される「庁内検討委員会」と、客観性と専 門性を担保するための「外部委員検討委員会」の二層構造で組織されたも のです。特に重要なのは外部委員検討委員会であり、弁護士、大学教授、 元県職員 3 名よって構成されました。 2024 年 3 月から複数回の会合を重ねた外部委員検討委員会は、同年 10 月 10 日、その調査結果をまとめた報告書を市に提出しました。報告書の 内容は、市の行政プロセスに対して部分的・微視的には批判的な検証が行 われたと評価できるものです。市役所内の行政手続き面または制度上の不 備を指摘する点では有益でありました。 しかし一方で、「一軒の苦情」を契機 とする遊園地廃止の判断の妥当性や、職 員の執務上の責任の有無については、検 証の対象とされませんでした。そのた め、市民から全面的な納得が得られる検 証とはなりえていません。そもそも、市 検証報告書に足らざるものを感じたこと が、本委員会による当検証報告書作成の 動機の一つとなっています。 「検討結果報告書」 長野市事務処理の在り方検討委員会 外部委員検討委員会 25