シェアリングエコノミーの未来

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August 15, 20

スライド概要

コロナ禍で世界中の人々がほとんど自宅で過ごす事態になったことで、旅行・観光業界は特に大きな影響を受けた。最近までもてはやされてきたUber,Airbnbに代表されるシェアリングエコノミーもすっぽりこの領域に入る。
両社は5月に全従業員の約25%を解雇する大規模リストラを断行した。そこで、シェアリングエコノミーの今後について考えてみる。このような場合、両社が代替しようとしていた既存業界(タクシー業界やホテル業界)との今後の競争力の予想を客観的手法で比較・分析するのが良いと思われる。比較手法としては、プラットフォーム理論と取引コスト理論を採用した。おおざっぱな評価とそれから示唆されるシェアリングエコノミーの今後を示す。

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定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。

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各ページのテキスト
1.

シェアリングエコノミーの未来 B-frontier研究所 高橋 浩

2.

問題意識 • コロナにより、UberもAirbnbも大きなトラブルに 巻き込まれた。 • その延長でのWith/Afterコロナの取組みで、 Uber, Airbnb間にやや違いが生じている。 • また、シェアリングエコノミーは今まで大きな話題 になってきたが、Uber,Airbnbに続くビッグネーム が登場しない。 • そこで、そろそろシェアリングエコノミーの未来を 考察する頃合いではないだろうか? • ・・どんな未来の姿が登場するのだろう。 2

3.

目次 • コロナで弱点が露呈 • 何故弱かったか? 弱点は永続的か? • シェアリングエコノミーの経済学 – プラットフォーム理論の立場から – 取引コスト理論の立場から • シェアリングエコノミーのビジネスモデル検証 • UberとAirbnbの相違 • シェアリングエコノミーの未来 3

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コロナで弱点が露呈 Airbnbは、5月5日従業員の約25%に当た る1900人の大リストラを実施 ITmedia NEWS 2020.5.6 – 新しい世界での旅行は違ったものになるでしょう。 – Airbnbもそれに合わせて進化する必要があります。 – 人々は、より家に近く、より安全で、より手頃な価格 のオプションを求めるようになるでしょう。 – 「人と人とのつながり」もより強く求められるようにな るでしょう。 – 今回の危機により、私たちはもう一度原点に立ち返 り、基本に立ち返ることが必要になったのです。 4 CEO Brian Cheskyが出したレイオフを伝える従業員向けレターより

5.

Uberは、5月7日3700人、5月18日3000人、合計 従業員の約25%の6700人の大リストラを実施 CNET News 2020.5.19他 – 当社の中核サービスであるライドシェアリング部門 は、2020年4月の売り上げが前年比80%ダウンした (CEO Dara KhosrowshahiはUberの配車事業が約80 %減少したことを、全従業員にメールで通知) – 5月7日はカスタマーサポート部門のリストラ – 5月18日は45カ所のオフィス閉鎖に伴うリストラ – シリコンバレー企業による最大規模の人員削減の1 つ • ただし、フードデリバリーのUber Eatsは2020年1-3月期決 算では約53%増収 5

6.

何故弱かったか? 弱点は永続的か? 相対的に新たな取組みへの模索は早い • 世界中の人々がほとんど自宅で過ごすように なったことを受けて、業績が特に急激に悪化 したのは旅行・観光業界 • この影響はUberと対比されるタクシー業界、 Airbnbと対比されるホテル業界でも同様、ま たはそれ以上 • 寧ろ、Uber,Airbnbなどの方がデジタル化の新 たな試みに早期着手 – Uber:外食産業と連携した宅配 (UberEats)など – Airbnb:オンライン体験の拡充など 6

7.

Airbnb、世界各地でオンライン体験プログラムを提供開始 7

8.

シェアリングエコノミーの可能性を再考 • 弱点は永続的だろうか? • これからのシェアリングエコノミーを 再考する。 –理論的立場から • プラットフォーム理論 • 取引コスト理論 –ビジネスモデルの立場から –これからの見通し 8

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シェアリングエコノミーの経済学 最も注目されているシェアリングエコノミーは 下記の領域 • 容量に制約のある資産、リソースの共有(車、自 転車、部屋など) – ピアツーピア共有(例:Airbnb,Uber) – プラットフォーマー提供の共有資産(例:ZipCar) ⇒2者の比較は次頁 • その他のシェアリングエコノミーは労働力共有: TaskRabbit、資金共有:Kickstarter、など

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リソース提供形態と所有権譲渡による分類 ピアツーピアで提供されるリソース eBay, Etsy Uber, Airbnb • ピアが資産(車 、部屋)を所有 • 間接ネットワー ク効果が働く • 新領域 アクセスベース (所有権の譲渡なし) 所有権の譲渡 Amazon, 伝統的な e-retailing Zipcar, タイムズカーシェア プラットフォーマーが提供するリソース • プラットフォーマ ーが資産所有 • 間接ネットワーク 効果が弱い • 既存ビジネスに 類似 物理リソースに関わるシェアリングエコノミー領域 Jochen Wirtz et al., “Platforms in the peer-to-peer sharing economy”, Journal of Service Management Vol. 30 No. 4, 2019, pp. 452-483

11.

Uber, Airbnb 注目されている領域の特徴Ⅰ • Uber,Airbnb等は空き資産(車、自転車、部屋 など)の共有であって、下記の特徴がある。 – 物理媒体の共有 – リソースの容量に制限あり – ピアツーピア(運転手対乗客、ホスト対ゲスト)に 直接相互作用が働く。 (⇒次頁) • この領域はタクシー会社の代替、ホテルの代 替を超えて、従来なかった新たなビジネス領 域(“シェア”による無駄活用、廉価、アクセス容易性、新たな “信頼”構築、など)を切り拓いた。 11

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プラットフォーム理論の立場から Uber, Airbnb 容量制約有り・ピアツーピア共有市場 は既存の両面市場と同じではない • ピア間に直接相互作用が働く。 – 運転手と乗客(Uber)やホストとゲスト(Airbnb) – 両ペアはプラットフォームに一定の加入(affiliate) 手続き(評価などを含む)を行うことが求められる。 サービスプロバイダー 直接相互作用 顧客 プラットフォーム A. Hagiu, J. Wright, “Multi-sided platforms”, International Journal of Industrial Organization 43 (2015) 162–174 12

13.

両面市場と異なる特徴(1) • この領域はプラットフォーマー、サービスプロ バイダー、顧客の3者関係で捉えられる。 • サービスプロバイダーはマイクロ起業家として も捉えられる。 • サービスプロバイダーと顧客間の相互作用の 強さがプラットフォーマーの持続的成功を決 定づける。 • プラットフォーマー視点では、サービスプロバ イダーと顧客のバランスの取れた参加勧誘、 維持、および利益獲得が重要になる。 13 V. Kumara et al., “A strategic framework for a profitable business model in the sharing economy”, Industrial Marketing Management 69 (2018) 147–160

14.

下記対比領域と比較して また、次のような特徴もある • 対比される領域:容量に制約のない共有リソ ース(ファイル、音楽、情報の共有)(例:Apple のAppstoresなど) • 間接ネットワーク効果と取引量(車の台数や宿のリス ティング数と相関)は、サービスプロバイダーの異質 なリソースとのマッチング品質を向上させる。 (⇒ 次頁:特徴(2)) • その一方、一定の閾値以上に達すると、間接ネットワ ーク効果との関連性は低下し、高品質なマッチング技 術の可否(例:高度な検索機能やリコメンデーション 水準など)が差別化に必要になってくる。 (⇒次々 頁:特徴(3) ) 14

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両面市場と異なる特徴(2) • プラットフォームは非常に異種の資産と多様 な消費者ニーズに対する最適マッチングが求 められる。 • この前提条件をクリアするには一定量以上の 流動性(例:Airbnbのリスティング数量およ び質の多様性など)と適切な分析力が必要に なる。 • 両条件を達成した結果として、高品質のマッ チングサービスを提供でき、顧客に満足して もらえる価値創造が可能になる。 15

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両面市場と異なる特徴(3) • その一方、閾値を超えてリスティング情報な どが増加すると、顧客とサービスプロバイダ ー双方にとって情報過多、選択肢過剰の負 荷が生じる。 • その結果、検索コストが上昇し検索摩擦が発 生する。 • これは、一定以上の閾値に達すると間接ネット ワーク効果が重要でなくないことを意味する。 • この状況で競争力を維持するには信頼性の 醸成が重要になる。 16

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パイプライン領域 弱 い 間 接 ネ ッ ト ワ ー ク 効 果 タクシー業界 、ホテル業 界など既存 業界 Uber, Airbnb 全体の中での位置づけ 容量に制約のある資産、リソースの共有 Zipcar, タイムズカーシェア Uber領域と類似戦略を 取っても効果はより小? パイプライン領域 的性格を残存 Uber, Airbnb シェアリングエコノミー プラットフォーム領域 流通量・分析力 信頼性の醸成ほか 対比領域(容量に制約のない資産、リソースの共有) Appstore など 強 い 非対称価格戦略 (顧客側優遇、アプリ 開発者優遇など) プラットフォーム領域 弱い プラットフォーム競争力 強い 17

18.

中間まとめ • 容量に制約のある資産をシェアするプラットフ ォームは、制約のない資産(例:Appstoreにお けるアプリ等)に比べ、一定限度以上を超すと プラットフォーム競争力が低下する。 • 差別化には流通量(シェア資産の数や質)やそ れを巧みに提示する分析力が重要になるが、 • 加えて、プラットフォーマー、サービスプロバイ ダー、顧客の3者関係なので、プラットフォーム を訴求するパートナーの信頼やサービスプロ バイダー、利用者の忠誠心が重要になる。 18

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プラットフォーム理論から見た シェアリングエコノミーの特性 • シェアリングエコノミーの代替業界に対する強 さの本質は今後も維持される可能性が高い。 • ただし、(Uber,Airbnbなど)容量に制約のある 資産の共有に関する課題はより顕在化して いる。 • これらの課題を克服するには、(例;オンライ ン体験等)デジタル化を一層活用した新たな ニーズに対応する取組みが必要である。 19

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取引コスト理論の立場から 取引コスト理論からの視点 • 取引コスト理論は大企業成立の論理を明 確化 • 「 もし市場に取引コストが存在しなかったら 産業構造は個人/小企業で構成されるはず 。大企業は取引コストを最小化させる存在と して登場した」・・・ Coase, 1937 • Coaseはさらに、他の説明、例えば、労働 Ronald Coase 1991年ノーベル 経済学賞受賞 の分割、専門化による効率効果をも破棄した。 20

21.

取引コスト理論の問題点 問題点:確立された市場(例えば、タクシー事業 やホテル事業など)へのシェアリングエコノミー (Uber,Airbnbなど)の侵略を説明できない。 結果:しかし、デジタルプラットフォームは取引コ ストを減少させたので新たな経済(即ち、シェ アリングエコノミー)が登場した。 推測:Coaseは企業管理コスト(内部取引コスト )は認識していたが、・・ “外部取引コストの削 減も新企業設立の強力なメカニズムになること を充分認識していなかったのではないか?” 21

22.

新たなアプローチ! • 取引を内部化しなくても、“ユーザーが容 易にサービス利用が可能になる手段”を登 場させれば、取引コストは低減する。 • また、Coaseが捨てた他説明フレームワ ーク(労働の分割、専門化ほか)も新た な経済説明に活用できる。 Anders Henten Aalborg University (デンマーク)教授 22

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Uber, Airbnb 注目されている領域の特徴Ⅱ • プラットフォーマーとサービスプロバイダーが補 完関係になっている。 – Uber:車を持たない運輸業プラットフォーマー • サービスプロバイダーは車保有の運転手 – Airbnb:部屋を持たない旅館業プラットフォーマー • サービスプロバイダーは空き部屋保有の貸主 • 全世界に共通サービスをどのように提供するかも 生命線 (⇒規模拡大で下記などの効果も) – 代金回収、各国税制対応、など・・ – 安全性や信頼性を担保しながら、グローバルにサー ビス提供する手法を浸透 • サービスプロバイダー、顧客間の直接相互作用 をフィードバックし、継続的&スピーディーに経営 革新することが可能 23

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Uberの取引コスト理論からの解釈の概要 運転手が乗客を評 価するフィードバック Uber から70-80% の支払い 運転手 Uberプラットフォーム ・プロバイダー サービス料20%-30 % ・手数料ベース ・市と競争による ・動的料金体系:ピ ーク時間 乗客がドライバーを評 価するフィードバック クレジットカードで Uberに支払う: ・運賃 ・+乗車料金$ 1 乗車サービスを提供する 乗客 乗車を求める プラットフォームはホスト、ゲスト 間外部取引コストの低減に特化 Henten, A., Windekilde, I., “Transaction costs and the sharing economy”, 26th European Regional Conference of the International Telecommunications Society(ITS), 24 Spain, 24-27 June 2015

25.

Uberの“規約と条件”から • Uberは独立3rdパーティー輸送プロバイダーや ロジスティクス・プロバイダーとも一緒になって輸 送や物流サービスを提供するプラットフォーマー • 提供するコアバリューは、運転手と乗客双方が 検索し取引コストを削減すること – 交通ブランド:Uber、uberX、uberXL、UberBLACK、 UberSUV、UberLUX、ほか – 物流ブランド:UberRUSH、UberFRESH、UberEATSUber ほか – 更に、Uber+ for Xとして、タクシーサービス以外の、あ らゆる個人サービスを提供(UberEats他) 25

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Airbnbの取引コスト理論からの解釈の概要 ホストレビューのフィ ードバック チェックインから24時 間後のホストへの支払 い 予約ごとに1泊料金 の3%のサービス料 ホスト Airbnbプラットフォー ム・プロバイダー ・サービススペース ・プロフィール ・お支払いの取り扱い ・保険 ・写真サービス 空きスペースの提供 ゲストレビューのフィ ードバック ・支払い ・予約ごとに6〜12 %のサービス料(取 引額に基づく) ゲスト 空きスペースを借りる サービス料に加えての 支払い: ・地方税等:例えば 占有税、宿泊税、観 光税、使用税、宿泊 税等 ・VAT プラットフォームは ホスト、ゲスト間外 部取引コストの低 減に特化 サービス料に加えての 支払い: ・掃除代金 ・敷金 ・追加ゲスト料金 ・3%換算/外為手数 料(調整後為替レー ト) ・VAT Henten, A., Windekilde, I., “Transaction costs and the sharing economy”, 26th European Regional Conference of the International Telecommunications Society(ITS), 26 Spain, 24-27 June 2015

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“Airbnbサービス規約”から • Airbnbは資産の所有、販売、再販、賃貸、 再賃貸、管理、制御を行わない。 • 責任は、サイト、アプリケーション、サービスを 機能させ、ホストに代わってゲストからの代金 回収サービスなどに特化 • プラットフォーム使用に対しては、ゲスト、ホス ト両方に課金する。 – 対ゲスト:予約を行う度に6-12%のサービス料を 課金(連泊数を増やすことで料率低下) – 対ホスト:一泊毎に3%課金 27

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中間まとめ • 劇的な外部取引コスト削減が従来不可能であ ったサービスを可能にした。 • 新市場が作成され、新市場事業者が既存事 業者を置換して行く可能性が登場した。 • 但し、既存事業者が新環境に適応できないと は想定できない。 • 最も可能性が高いシナリオは、需要側、供給 側の適応が進み、適応度合いに応じて分野 毎の置換や補完が登場すること 28

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取引コスト理論から見た シェアリングエコノミーの特性 • 外部取引コストを削減するシェアリングエコノ ミーの強さの本質は今後も維持される可能性 が高い。 • ただし、(Uber,Airbnbなどは)代替業界の新ビ ジネス環境への適応を上回る更なる外部取 引コストの削減を継続して行く必要がある。 • それには新たなニーズに対応した一層のデ ジタル化への取組みが必要になる。 29

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シェアリングエコノミーのビジネスモデル検証 プラットフォーム理論から想定されるビジネス環境 シェアリングエコノミー領域は独自のビジネス領域を切り拓いてはいるが、容量制限 なし領域ほどの競争力はない 弱 い 容量に制約のある資産、リソースの共有 間 接 ネ ッ ト ワ ー ク 効 果 流通量・分析力 信頼性の醸成ほか Uber, Airbnb ⇒断片化が起きやすい シェアリングエコノミープラットフォーム領域 容量に制約のない資産、リソースの共有 プラットフォーム領域 強 い (良い) Appstore など 非対称価格戦略 (顧客側優遇、アプリ 開発者優遇など) ⇒寡占化が起きやすい 弱い プラットフォーム競争力 強い 30

31.

シェアリングエコノミーの競争力 • シェアリングエコノミープラットフォーム領域に おける競合他社間の競争は(プラットフォーム 競争力がさほど強くないので)激しくなる可能 性がある。 • 通常、新しいシェアリングエコノミープラットフ ォームが注目を集めると、同様のプラットフォ ームが早期に出現する。 – 米国でもUberの他にLyft、Gett、Juno、Curb、Via などが登場。海外ではDiDi、GRABなど • これらはすべて、サービスプロバイダーと顧 客の両方を競い合う。 31

32.

取引コスト理論から想定されるビジネス環境 シェアリングエコノミー領域では、内部化により取引コストを削減した既存大企業よ りより取引コストを削減した優位な領域を切り拓いている 小企業 水平連携企業 高 市場的資源配分 システム 既存大企業 大企業 垂直統合企業 組織的資源配分 システム 取 引 コ ス ト 外部取引コ ストの削減 新規企業 サービス プロバイダ- 取引 顧客 デジタル・プラットフォーム 低 (良い) シェアリングエコノミープラットフォーム領域 低 高 (分業化、専門化などで)外部化

33.

ビジネスモデル革新の方向性 • 容量に制約のあるプラットフォームの弱点は 一層のデジタル化で補完の可能性がある。 – バーチャルサービス(例;オンライン体験等)でメ インサービスを補完あるいは補強など • 加えて、(分散化、専門化など)外部化による 取引コスト削減の一層の拡大の可能性があ る。 • 結果、両者の合わせ技による洗練化の可能 性がある。 – 共通サービスの一層の規模拡大やサービス内容 のオンライン化、適正サービスへのシフトなど 33

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UberとAirbnbの相違 シェアリングエコノミー支配的動機を金銭と見れば・・ • シェアリングエコノミーの魅力は、フルタイム の収入に加えてお金を稼ぐことであった。 • お金を稼ぐことが主要な動機と考えた場合、 プロバイダーの経済状態は大きく異なっていた。 • Airbnbが最良の機会を提供 • 1つの不動産を貸して年間30,000ドル以上を稼ぐ人も • Airbnbでアパート全体を貸すと通常の賃貸収入の3倍 から4倍の収入 • 豪華マンションに1泊約350ドルの料金を請求し、年に 34,000ドル稼いだ人も • 資産価値提供者と労働力提供者の差が拡大 して行ったと考えられる。 34

35.

UberとAirbnbの比較 消費財を投資財へ変換するプラットフォーム 資産ベース 労働力ベース キャピタル・プラットフォーム 労働力プラットフォーム (資産を共有するプラットフォーム; 例:AirBnBなど) (労働力を共有するプラットフォーム; 例: Uber, TaskRabbitなど) 資産価値+おもてなし 労働品質〜スキル 資産ベースの例: ・宿泊サービス+おもてなし・・ “SuperHost” ・駐車場 ・自宅+シェフ料理・・Eatwith 労働力ベースの例: ・弁護士(法律相談) ・会計士(会計相談) ・コンサルタント ・床屋 ・シェフ(素敵な料理とおもてなし) ・車+運転手(Uberなど) ・日常業務遂行レベル(TaskRabbitなど) 35

36.

顧客とのトラブルよりは、プラットフォーマーとサ ービスプロバイダー間のトラブルが課題に • トラブルが起きやすいのは労働力ベースの方 – 特に低スキル労働力ベースの場合 • プラットフォーマーがドミナントになるまではパ ートナーであったサービスプロバイダーを、ド ミナントになりだした途端にいじめ出す状況も 発生 – その背景にプラットフォーム競争力が相対的に弱 く、寡占化が難しいことが・・Uber,TaskRabbitなど 36

37.

デジタル技術とプラットフォームが仕事の 構造と経験を変化させている • シェアリングエコノミーのサービスプロバンダ ーは、オープン性に対する要望へのバランス も取らされている。 • 結果、特に低スキル労働力ベースの場合、労 働の交渉力を弱めさせ、希少な労働を巡って 労働者(サービスプロバイダー)を互いに競争 させる労働慣行を蔓延させることになる。 • 一方、資産ベースのAirbnbの場合は、ほぼ60 %がフルタイムの別の仕事を持っているとさ れる。 37

38.

シェアリングエコノミー登場後の これまでの傾向 1. 労働条件がサービスプロバイダーにとって不利に なりつつある。・・特にUberなど、低スキル労働力 ベースで 2. 激しいプラットフォーム間競争、価格競争、取引 量増加に対する圧力が、賃金の下落と労働条件 の腐敗をもたらしている。 3. シェアリングエコノミーの形式的オープン性にも かかわらず、資産やスキルに応じてサービスプ ロバイダーを階層化する可能性が生じている。 4. 結果、今後のUber,Airbnb他の進化の方向に相 違が発生すると予想される。 38

39.

シェアリングエコノミーの未来 サービスプロバイダーの働く動機を探求 • デジタルプラットフォームの能力はレベルアッ プしており、・・ • サービスプロバイダーと顧客間はリアル空間 に近い一定の信頼醸成環境が整い出してい る。 • サービスプロバイダーはこのような環境を活 用して新たなインセンティブで新たな働き方を 追求できる可能性がある。 – プラットフォーム理論の立場から ⇒探求(1) – 取引コスト理論の立場から ⇒探求(2) 39

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プラットフォーム理論からの示唆:探求(1) • ピア間相互連携や外部取引コスト低下による 環境変化は代替ビジネスモデル(例:既存業 界の垂直統合モデル)とのトレードオフ検討 ができる枠組みを提示している。 • サービスプロバイダーがいずれを選ぶかの変 数の例として個人情報、マイクロ起業家の意 思、ボーナス、価格決定権などがある。 • サービスプロバイダーは本質的動機に基づい て上記環境を踏まえた新たな取組みに挑戦 できる可能性がある。 40

41.

取引コスト理論からの示唆:探求(2) • サービスプロバイダーは取引コスト理論では 破棄された労働の分割、専門化による効率効 果を回復させられる。 • 取引コスト低下が多様な事業基盤上に各種 の低コスト・サービス提供を切り拓くかもしれ ない。 • そして、構造的に過剰能力を持ち高取引コス トと同居している既存構造を改善し、取引コス ト理論に含まれている限定合理性、不確実性 、日和見主義、資産特異性などを見直す機会 にできる可能性がある。 41

42.

2理論の統合の試み • ピア間相互作用や取引コスト低減により発生 する変化を利用して、サービスプロバイダーが顧 客との間に新たなサービスを提供できる可能 性がある。 • 既存ビジネスモデルとのトレードオフを検討で きる枠組みを示しており、いずれを選択するか の検討が可能になる。 ⇒2理論統合の概念図(次頁) 42

43.

2理論統合の概念図 弱い プラットフォーム競争力 ≒(分業化、専門化などで)外部化 強い 43

44.

シェアリングエコノミーの未来例 • Uberの先に・・・ – UberEatsの拡大など新たなニーズ対応だけ でなく、自動運転車なども加え、低スキル労 働者ベースの課題も解決した新たな進化の 可能性を訴求 • Airbnbの先に・・・ – オンライン体験などを拡充して、既存の(部 屋中心の)リアルサービスに体験などの要素 を一層拡大した新しい旅の進化の可能性を 訴求 44

45.

シェアリングエコノミーの未来 • これからは、“シェア”のレトリックだけでの新規 参入は難しいと思われる。 • 特定の既存業界を見定め、サービス改善、コ スト削減したサービス提供が強く求められる。 • 既存業界の大半はリアルビジネスなので、それ らを代替し、なお且つ、ニーズに合わせた、デ ジタル化の一層の拡大が望ましい。 • 長期的にはサービスプロバイダーとの共存が 重要であり、グローバルに共通性があるサー ビス内容であることも重要と考えられる。 45

46.

シェアリングエコノミーの解釈 • 「シェアリングエコノミー」は、ま ったく新しいアイディアというより は、・・ • サービス化とデジタル化の進 行で必然的に登場してくる形態 の先行指標であったとも考えら れる。 46