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February 07, 16
スライド概要
第5期科学技術基本計画では「我が国の目指すべき社会を『超スマート社会』と定義し、・・・システム化・サービス化を加速することにより商品・サービスの価値と新たなビジネスモデルの創出を目指す」とされている。これを見て、インターネット時代に相応しい要件を満たしたビジネスモデル創出の経験がない我が国にとって、この目標は結構高い目標だと思った。また、そもそも“新たなビジネスモデルの創出”に至るプロセスをあまり承知していないのではないか、という問題意識も持った。そんな背景から「新たなビジネスモデルの創出」をまとめてみた。
定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。
新たなビジネスモデルの創出 - 新たなデジタル化進展: IoTを例題として 高橋 浩
目標として“新たなビジネスモデルの創出”を提示の例 第5期科学技術基本計画 『我が国の目指すべき社会を「超ス マート社会」と定義し、・・・・ ICTの進展を積極的に取り込み、・・ システム化・サービス化を加速する ことによって、・・・・ 商品・サービスの価値と新たなビジネ スモデルの創出を目指す』 2
日本発のビジネスモデルの例 ・アスクル ・富山の薬売り ・コンビニのサービス・プラットフォーム化 ・i‐モード ・ファミコン ・JRのエキナカ ・私鉄の郊外住宅/デパート ・クロネコヤマト ・ゼネコン ・公文教育 ・デパチカ 日本発ビジネスモデルの特徴: ① 情報/インターネット産業系の事例が少なく、 ② エコシステム(多様なパートナーとの役割を持っ た連携)の事例が少なく、 ③ “無料”の課題を克服し、グローバルに“規模”拡 大できたビジネスモデルは皆無 3
日本のビジネスモデルへの取組みの特徴 イノベーションや戦略から、 ①ビジネスモデル・タイプにマッピングさせると か、・・・ ②ビジネスモデルと戦略を対応させる、・・・ などの系統的取組みが実施されてこなかった。 ビジネスモデル・デザインと競争戦略の適切な結合 が無かったので、 ①横並び企業の集約、そのためのM&A、 ②スピーディーな意思決定、 ③グローバルな市場拡大に向けた戦略推進、 なども発生してこなかった。 4
目標は実に遠いと言わざるを得ないのではないか? そもそも、我々は“新たなビジネスモデルの創 出”に至るまでのプロセスをどれほど承知してい るだろうか? 5
このような問題意識から、以下の構成で“新たな ビジネスモデル創出”までのプロセスを考える 1. 価値創造のための新たな環境 IoTとは何か? 2. デジタル化ステップアップへの適応 デジタル化とは何か? 3. ビジネスモデル論からの示唆 ビジネスモデルとは何か? ビジネスモデル論からの考察 6
1. 価値創造のための新たな環境 IoTとは何か? IoTとは❝モノが常にネットワークにつながる世界❞の創出のこと モノのIoT化: ①物理的要素:機械部品と電気部品 ②情報処理要素:センサー、マイクロプロセッサー、データ・スト レージ、制御装置、ソフトウェア、組み込みOS、ユーザー・ インターフェースなど ③接続機能:インターネット接続するためのポート、アンテナ、 プロトコルなど モノを・・・・・ 製品機器やクラウド 上の遠隔コマンド/ アルゴリズムによっ センサーと外部デー て制御可能 タを使って製品状 態、稼働状況、外部 制御 環境を監視可能 監視データを製品 の働きを制御する 機能と組み合わせ 最適化可能 + クラウド ビッグデータ 監視、制御、最適化を 結びつけて高レベル の自律化可能 自律化 最適化 監視 マイケル E. ポーター、ジェームズ E. ヘプルマン、“IoT時代の競争戦略”、 April 2015 Diamond Harvard Business Review.
つつなぐ先に新たな ビジネスモデル創 出を展望できる http://www.sapjp.com/blog/archives/10936
IoTによる変化はシステムの本質変化でもある IoTによる新たな価値の創造 デジタル化とIoT化が共振 IoT化促進 ・ 共振化 デジタル化 促進 IoT普及はデジタル化を促進 デジタル化はIoT化を促進 モノ単体の変化から❝システムの変化❞へ 9
IoT化は「情報化社会」をステップアップさせる これまでの「情報化社会」 大半はアナログデータのまま データは散在 利用はローカルネットワーク内 デジタル⇔アナログ連係には 物理的制約 これからの「IoT社会」 ≈「超スマート社会」? 全てデジタルデータ 全データが集中的に管理 利用が実世界の社会規模で 可能に 供給側ドリブンからユーザー 側ドリブンへ IoTによる技術革新 物理要素:小型化・省電力化・低廉化 情報処理要素:クラウド大規模化/低廉 化・分散処理高度化・人工知能 接続機能:通信費用低廉化 10
IoT化は全ての企業にチャンスと脅威を創出 これまでの「情報化社会」 これからの「IoT社会」 「コンテンツ」を集める機構 「コンテンツ」を集める機構 SNSなど SNSなど 「行動情報」を集める機構 「行動情報」を集める機構 パーソナライズなど パーソナライズなど 「モノの情報」を集める機構 「モノの機能」を訴求する機構 宣伝/HPなど 消費者向け、企業向けにギャップ モノとモノに関わるコンテンツ、顧 客行動情報間にギャップ デジタル化領域が局在 IoT化 チャンス 脅威 消費者向け/企業向け一体化 コンテンツ、顧客行動情報、モノ 情報一体化 遍くデジタル化した環境活用可 11
価値創造と新たな価値獲得のための再構成へ 製品やサービスが複雑化する。それに連れて、 それらを作成する関係性が重要化する。 価値提供のための製品、サービスのエンジニア リングに加えて、・・・ バリューチェーン設計のエンジリアリングが必要に なる。・・・・(エコシステム形成、ビジネスモデル最 適形態の構築など)
2.デジタル化ステップアップへの適応 デジタル化への適応を過去の事例を通して検証する 新たな環境登場はシステムの複雑性への 対応を誘発する。 1. 3つの事例を比較 ① デジタル放送 ② モバイル端末 ③ IoT(予想) 2. 同等基準による評価 3. 変化を観察 13
デジタル化ステップアップへの適応 ①デジタル放送 • 2000-2008年の欧州、米国放送業界 • 3つの異なる技術世代(アナログTV、デジタル TV、マルチサイデッド・デジタルプラットフォー ム)を通過 • 漸進的イノベーションと産業境界を超えた混乱 が発生 • 研究アプローチ M.Pagani EMLyon ビジネススクー ル准教授(デジ タルマーケティング: フランス) – 2000-2008年の指導的業界誌から放送業界イノ ベーションの全問題を摘出した。 – 欧米主要国の変革経緯を図式化した(次ページは イタリアの例) – 欧州、米国の大手企業15社の業界専門家と多数 回インタビューを実施した。 – インタビュー結果のまとめを再度確認してもらい合 意を得た(内容は論文に掲載)。 M. Pagani, “DIGITAL BUSINESS STRATEGY AND VALUE CREATION: FRAMING THE DYNAMIC CYCLE OF CONTROL POINTS”, MIS Quarterly, Vol. 37 No. 2, pp. 617-632/June 2013. デジタル・ビジネス戦略と価値創造(マルゲリータ・パガニ) 14
イタリアの デジタル TV図式 コンテンツ・プロバイダー ネットワーク・プロバイダー ライセンス・オーナー 広告 ホールディング 所有TVチャンネル 3rdチャネル 技術開発 15 M. Pagani, “DIGITAL BUSINESS STRATEGY AND VALUE CREATION: FRAMING THE DYNAMIC CYCLE OF CONTROL POINTS”, MIS Quarterly, Vol. 37 No. 2, pp. 617-632/June 2013.
その結果、3タイプが発生しその間を遷移と断定 タイプ1 タイプ2 タイプ3 クローズド垂直統合 モデル ルーズリー・カップルド・ モデル マルチサイデッド・ プラットフォーム・モデル 価値を創造し獲得する巨 大で強力な連結コンポーネ ントを通じて価値を生成 異なるプレーヤー達は、 プールされた逐次的で相反 する主要活動の相互依存 性を通じて価値を生成 2つ以上のグループを結集し、 分配、取引、検索コストの削 減を通じて価値を生成 • • • • • TCIとマイクロソフトの提 【デジタル放送システム • 携 の登場】 ベルテルスマンとBスカ • 多数テレビチャンネル配 イBの提携 信と高精細(HDTV)形式、 BスカイBとBTの提携 EPG、VOD、インタラク ベル、NYNEX 、ビデオト ティブ広告 • ロンとマーキュリーの合 • 競合プラットフォームと 併 技術(衛星、ケーブル、 MicrosoftとNBCによる 地上波、IP)間でデジタ MSNBC設立 ルテレビ市場が複雑化 米CATV最大手のテレ・コミュニケーショ ンズ社(TCI)は、2000年から開始するデ ジタルCATVでマイクロソフトと提携。 コンテンツ制御、規制、消 費者とIP保護、消費者経 験、ソフトウェア配布、 ソーシャルネットワーキン グ、ストレージ、などで複 数の混乱と衝突が発生 新ビジネスモデル(Google TV, Brightcove, Hulu, Joost)、新双方向サービス、 伝統的視聴習慣の変化 が発生 タイプ3の例: Netflixなど 安さからコンテンツ勝負へ
“2重螺旋モデルによる適応”と説明されている タイプ3 マルチサイデッド・ プラットフォーム タイプ1 クローズド 垂直統合 集中制御型 垂直統合 漸進イノ ベーション オープンアーキテクチャ 型活気ある先端 活動主体の出現 先端活動主体の 不満/言い逃れ 政策の 乱闘 タイプ2 ルーズリー・ カップルド 産業境界を跨 いだ業界混乱 イノベーターの 市場寡占力 オープン化/現状 破壊の圧力 優位に統合&囲 い込みの動機 ? 既存システム の採算性 巨大な要素/ソ リューションの出現 17 M. Pagani, “DIGITAL BUSINESS STRATEGY AND VALUE CREATION: FRAMING THE DYNAMIC CYCLE OF CONTROL POINTS”, MIS Quarterly, Vol. 37 No. 2, pp. 617-632/June 2013.
観察されたこと①:関係性知性の重要化 • 組織知性が新たな関係性知性に変換されていた。 クローズド垂直統合モデル:組織知性を最大化させ るのでなく、それを集中するように設計されており、も はや最良の組織構造ではない。 ルーズリー・カップルド・モデル:価値創造エコシステ ム中での連携プレーが価値ある状態に対応する。 マルチサイデッド・プラットフォーム・モデル:伝統的 な境界のある世界とは非常に異なった動作をする。 即ち、現代は、特定組織構造でいれば安泰とい う時代ではなくなった。
3タイプ間遷移の過程で非線形変化も発生していた • 3タイプは変化の特性から下記2種にも分類可 能である。 1. クローズド垂直統合モデル、ルーズリー・カップ ルド・モデル ⇒線形システム 2. マルチサイデッド・プラットフォーム・モデル ⇒非線形性システム この進化パターンは複雑なシステムは途中で非 線形的ダイナミクスを示すことを示している。 即ち、3タイプ間遷移には断絶が介在している。
デジタル化ステップアップへの適応 ②モバイル端末 3タイプ間遷移はモバイル業界でも発生していた T.Hazlett George Mason大学教授 タイプ1 タイプ2 タイプ3 i-mode(ドコモ) BlackBerry( RIM ) Nokia+Vodafone iPhone( Apple) Android( Google ) クローズド垂直統合 モデル ルーズリー・カップルド・ モデル マルチサイデッド・ プラットフォーム・モデル サードパーティ製アプリを 厳しく管理し初歩的“塀に 囲まれた庭”作成で価値生 成 ネットワーク・イノベーション とアプリ/コンテンツ・イノ ベーションをグローバル/地 域/技術毎に調整/統合して 価値生成 アプリケーション・プラット フォーム(Appstoreなど)を確 立することで革新的“塀に囲 まれた庭”作成で価値生成 • • 統合(キャリア)の管理 機能は複雑化するが、 価値創造と価値獲得を 容易化 • キャリー、端末ベンダー共 • 存・連携の状態 ユーザーのアプリケー ション選択と無線インフ ラの希少性の重要性が • 拮抗している状態 統合(端末ベンダー)の管 理機能は複雑化するが、 価値創造と価値獲得を爆 発的に拡大可能 加えて、Apple等は“塀に 囲まれた庭”内でオープ ンイノベーション実施 Thomas Hazlett, David Teece, and Leonard Waverman,“Walled Garden Rivalry :The Creation of Mobile Network Ecosystems”, George Mason University Law and Economic Research Paper Series 11-50 (2011).
“塀に囲まれた庭”競争の世界(タイプ3)への移行と言われる図式 タイプ3 タイプ1 タイプ2 最近のワイヤレス産 伝統的米国/日本ワイ GSMモバイル主流時代 業の市場構造 ヤレス産業の市場構造 の市場構造 プラットフォーム 無線 Apps・ コンテンツ 端 末 Apps・ コンテンツ 端 末 無線 キ ャ リ ア ー インフラ 端末 キ ャ リ ア ー Apps・ コンテンツ クローズド 垂直統合 ユ ー ザ ー ユ ー ザ ー ユ ー ザ ー 無線 キ ャ リ ア ー インフラ ルーズリー・ カップルド インフラ 2重螺旋モデル マルチサイデッド・ プラットフォーム 21
観察されたこと②:ビジネス・エコシステム主導 • ライバルのエコシステム間競争(Apple盟主エコ システム vs Google盟主エコシステム)から斬新な製 品やサービスが登場していた。 • エコシステム内のビジネス戦略は、集合的に調 整され、水平方向の競争を改善させていた。 • ライバル間の競争は効率化をもたらす垂直統 合によっても堅牢に成っていた(特にApple陣 営)。 • 従って、効率性は、“オープン”か“クローズ”か によるのではなく、垂直統合とプラットフォーム の協調度合い等による。
デジタル化ステップアップへの適応 ③IoT 参考例:Cisco 「超スマート社会」 は更にSMART XX をつなぐビジョン 23
IoT現況を3タイプにマップングしてみると・・ タイプ1 タイプ2 ? ? タイプ3 GEのジェットエンジン コマツの建機 GE:Predix(各社相当品) 日本のコンソーシアム IVI 新サービス登場の兆し クローズド垂直統合 モデル ルーズリー・カップルド・ モデル マルチサイデッド・ プラットフォーム・モデル 断トツのハード商品特性を IoTで本質転換させ、サー ビス水準を高度化する垂 直統合モデル洗練化で価値 生成 共通プラットフォーム上に各 種イノベーション/アプリケー ションを共存・連携させて、 これらを調整/統合して価値 生成 IoT能力を活用して機器販売 ビジネスを機器機能のサービ ス・ビジネスに転換することで 価値生成 • • 統合(メーカー)の管理 • 機能は複雑化するが、 価値創造と価値獲得を 容易化 既存ハードの高シェア • を基盤に一層の寡占化 目指す勢い プラットフォームをコアと • したコンソーシアム(IICな ど)を形成し、多様な取 り組みを開始 タイプ1型の成功モデル • を多様な分野でも成立 させるのはどのようにす べきか挑戦中の状態 • 従量課金型サービスビジネ スが登場(LEXMARK(プリン ター)、ケーザー・コンプ レッサーetc) 新規ではあるが、マルチ サイデッド・プラットフォム 型では無い この延長線上に新サービ スの可能性
観察されること③:顧客との親密な関係性の重要化 • 新しいサービスの傾向は登場している。 – プリントサービスで顧客の印刷環境構築から運用まで トータルでサポートするコンサルティングサービス、マネージ ド・プリント・サービス(MPS)などが登場している。 – スマートホーム、スマートファクトリー、ヘルスケアなど も同様か? • 新たな複雑性を保有するシステム登場には向かう だろう。 • トータルサービス化の要望の結果、特定プラット フォーム上への集積を通じてマルチサイデッド・プ ラットフォーム型モデルが登場する可能性は高い。 • 但し、IoT世界でもタイプ1⇒タイプ2⇒タイプ3型 遷移がメインストリームかは現時点では分からな い。 25
3.ビジネスモデル論からの示唆 ビジネスモデルとは何か? ビジネスモデル論に関わる学術的業績を紐解くと・・ • 新しいタイプの経済主体間の技術相互作 用を容易にしたICTの急速な進歩が重要 な偶発的(コンティンジェンシー)要因と なった。 ・・・Geoffrion and Krishnan, 2003 Arthur M. Geoffrion カリフォルニア大学 • 技術進歩は、企業、パートナー、顧客間 の組織的取り決め(≒ビジネスモデル)を作 成するための新たな機会をもたらした。 ・・・Geoffrion and Krishnan, 2003 26
ビジネスモデルは、財務モデルというよりは、 ビジネス概念モデル • 「ビジネスモデルは、ビジネスの組織的、財務 的アーキテクチャに他ならない」 ・・・H. Chesbrough and R. S. Rosenbloom,2002 (「オープン・イノベーション」で有名なチェスブローはビジネスモ デル論でも主要な論客) • ビジネスモデルの変化駆動要因は次々に発生 勃興してきた知識経済 インターネットや電子商取引の普及 事業活動のアウトソーシングやオフショアリング 世界的な金融サービスの再編 IoTの普及、・・・ David J. Teece,“Business Models, BusinessStrategy and Innovation”, Long Range Planning 43 (2010) 172-194 27
ビジネスモデル論の代表的論文著者/論客一覧 大御所 話題になった論文/ 著書の書き手 代表選手 オープン・ イノベーション Henry Chesbrough Joan Magretta C. Zott and R. Amit Jonathan D. Linton オタワ大学教授 ノーベル経済 学賞 プラットフォーム の経済学 Insead ペンシルベニア大 (フランス) ワートンスクール Jean Tirole ダイナミック・ ケーパビリティ アレックス・オスターワルダー 『ビジネスモデル・ジェネレーション』(2010)の著者 ビジネスモデル・キャンバス提唱者 David Teece
ビジネスモデル論で最も著名なAmit & Zott論文一覧 次ページ以降に3部作の要点を記す。 著者 第 1 作 タイトル R. Amit, C. Value creation in e-business Zott C.Zott & R.Amit 第 C.Zott & 2 作 R.Amit SCOPUSの引用 出展 Strategic Management Journal, 22, (2001),pp. 493-520. 回数 1226 Business Model Design and the A working paper in the INSEAD Working Performance of Entrepreneurial Firms Paper Series, 5, (2005) Business model design and the performance of entrepreneurial firms Organization Science, 18:(2007), 181-199. C.Zott & The fit between product market strategy and business model: Implications for firm performance Strategic Management Journal, (2008), 29, 253 pp. 1-26. C.Zott & R.Amit Business model design: An activity system perspective Long Range Planning 43 (2010) 216-226 256 C.Zott ,R. Amit, L. Massa The business model: Recent developments and future research Journal of Management , Vol.37, Issue 4, (2011), Pages 1019-1042 335 MITSloan Management Review, Vol.53, No.3Vol.53, Issue 3, (2012), Pages 41-49 70 Strategic Organization, Vol.11, Issue 4, (2013), Pages 403-411. 8 第 3 R.Amit 作 R. Amit, C. Creating value through business Zott model C. Zott & R.Amit, The business model: A theoretically anchored robust construct for strategic analysis 184 29
第1作 (2001) ビジネスモデル・デザインの条件は4つ タイプ3マルチサイデッド・プラットフォーム・モデル (4) 新奇性(Novelty):取引主体との関 係性や構造に変革を起こす(「イノベー ティブなビジネスモデル・デザイン」) 。 タイプ1クローズド垂直統合モデル (1)効率性 (Efficiency) :従来よりも取 引上のコストを 抑えられる。 (3)囲い込み (Lock-in): 顧客を同業競 合他社の製品・ サービスに流出 しにくくする。 タイプ2ルーズリー・カップルド・モデル (2)補完性(Complementarity): 複数の取引主体を結びつけることで、 単体では得られない効果を得る。 Amit, R., Zott, C., “Value creation in e-business”, Strategic Management Journal , Vol. 22, Issue 6-7, June 2001, pp.493-520. 30
第2作 (2007) 企業価値を押し上げるビジネスモデルの要件 結果1:「効率性」の高いビジネスモデルを持 つ企業は、企業価値が高いこともあるがそうで ないこともある。 結果2:「補完性」と「囲い込み」は、企業価値 と有意な関係を持たない。 結果3:「新奇性」が高いビジネスモデルの企 業は、一貫して高い企業価値を実現する。 結果4:しかし「新奇性」と「効率性」の両方が 高いと、むしろ企業価値が低下する。 「新奇性」と「効率性」の二兎を追わず、メリハリ をつけた方が良い。 31 Zott, C., Amit, R., “Business model design and the performance of entrepreneurial firms ”, Organization Science, Volume 18, Issue 2, March 2007, pp.181-199.
第3作 (2008) ビジネスモデルと競争戦略 • 競争戦略とは業界内で企業がどのようなポジ ショニングをとるかの行動パターン 結果1:ビジネスモデルの「新奇性」が高い企業 は、企業価値が高い。 結果2:差別化戦略は一貫して企業価値を高め、 その効果は、ビジネスモデルの「新奇性」が高 い時にさらに強まる。 結果3:コスト優位戦略は、企業価値と有意な関 係を持たない。 結果4:但し、ビジネスモデルの「新奇性」が高 いときに限り、コスト優位戦略も企業価値を押し 上げる可能性がある。 「新奇性」が最も重要 32 Zott, C., Amit, R., “The fit between product market strategy and business model: Implications for firm performance ”, Strategic Management Journal , Vol. 29, Issue 1, January 2008, pp.1-26.
3部作論文の結論 ビジネスモデルは企業境界をまたぐ構造を捉える 新コンティンジェンシー要因と強く関係している。 組織デザイン・アプローチは「企業の伝統的境界 を越えて拡張された新アプローチ」である。 「新奇性」と様々な製品市場戦略には正の相関 がある。 ビジネスモデルと製品市場戦略は区別され、 両者は代替というよりは補完の関係にある。 ビジネスモデル論と製品市場戦略の両方から 競争優位性が出てくる。 経営者は、ビジネスモデルと製品市場戦略が、 独立と共同の双方で企業パフォーマンスに影響 を与えることを承知しておく必要がある。 33
3. ビジネスモデル論からの示唆 ビジネスモデル論からの考察 ー3事例の比較からー IoTが今後のビジネス環境にもたらすものは・・ • 技術的進歩は一層進展 • 偶発的要因は一層複雑化 • ビジネス概念モデルとしてのビジネスモデ ルの必要性は一層増加 • ビジネスモデル論に関連する領域も加えた考 慮が必要に エコシステム論、メタ組織、プラットフォーム論など • IoT化は新たなデジタル化促進要因であり、 論述したような考慮が一層必要になる。 34
3事例3タイプ一括比較にビジネスモデル論をマッピング デジタル 化事例 ①デジタ ル放送 ②モバイ ル端末 ③IoT (予想) ビジネスモデ ル・デザイン タイプ1 タイプ2 タイプ3 クローズド垂直統合モ デル ルーズリー・カップルド・モ デル マルチサイデッド・ プラットフォーム・モデル 価値を創造し獲得す る巨大で強力な連結 コンポーネントを通じて 価値を生成 異なるプレーヤー達は、 プールされた逐次的で相 反する主要活動の相互 依存性を通じて価値を生 成 2つ以上のグループを結 集し、分配、取引、検索 コストの削減を通じて価 値を生成 サードパーティ製アプ リを厳しく管理し初歩 的“塀に囲まれた庭” 作成で価値生成 ネットワーク・イノベーショ ンとアプリ/コンテンツ・イ ノベーションをグローバル /地域/技術毎に調整/統 合して価値生成 アプリケーション・プラッ トフォーム(Appstoreな ど)を確立することで革 新的“塀に囲まれた庭” 作成で価値生成 断トツのハード商品 特性をIoTで本質転 換させ、サービス水 準を高度化する垂直 統合モデル洗練化で 価値生成 共通プラットフォーム上に 各種イノベーション/アプ リケーションを共存・連携 させて、これらを調整/統 合して価値生成 IoT能力を活用して機器 販売ビジネスを機器機 能のサービス・ビジネスに 転換することで価値生成 No.1 「囲い込み」 No.2 「効率性」 No.1 「補完性」 No.2 「新奇性」or「効率性」? No.1 「新奇性」 35
タイプ2⇒タイプ3遷移における断絶まで視 野に置いた戦略的取組みを図式化すると 価値創造 要因 担い手 アイディア タイプ1 タイプ2 タイプ3 クローズド 垂直統合 ルーズリー・ カップルド マルチサイデッド・ プラットフォーム (1) 囲い込み (2) 効率性 (1) 補完性 (2) 新奇性or効率 既存ビジネスの 覇者 資金力 多くの企業のアイ ディア 連携を主導する コーディネータ (1) 新奇性 性? 「拡散」の過程 既存業界秩序 を破壊する名分 強力な企業家 精神 「縮小」の過程 新サー ビス インパクトが 最も大きい 但し、最初 から考えるこ とはできない 顧客が望 んでいる 断絶 36
IoTアプリケーション領域のこれからは長く広い(公開ロードマップの例) プラグインプレイのスマートオブジェクト ア プ リ ケ ー シ ョ ン 領 域 トランスポーテーション ユーティリティ スマート製販(エンタープライズ) スマートホーム(ホーム&パーソナル) 2010 ・グローバル・アドレス ・相互接続性標準 ・低消費電力、薄 型電池 ・クラウド基盤 ・RFID/クラウド・セ キュリティ ・ヘルスケア用センサー ・データセンター ・WSNテストベット J.Gubbi, R. Buyya, S.Marusic,M. Palaniswamia, “Internet of Things (IoT): A Vision, Architectural Elements, and Future Directions”, Journal Future Generation Computer Systems, Vol.29 Issue 7, Sep., 2013, pp.1645-1660. 2015 2020 2025&それ以降 ・グローバル・アドレス ・ネットワーク型センサー ・高水準セキュリティ ・小型化リーダー ・RFID,WSN間相互 接続性 ・クラウドコンピューティング ・環境発電 ・インテリジェント分析 ・無線能力 ・環境発電とリサイクル ・大規模無線セン サー・ネットワーク ・超高水準セキュリティ ・Deploy and Forget センサー・ネットワーク ・自己適応システム ・クラウド/オンライン解析 ・生分解性材料とナ ノパワー装置 ・製販用RFID ・産業エコシステム ・低コストSCADAシステム ・超感度インフラ監視 ・スマートグリッドと家庭 用計量計 ・物流、車管理用 スマートタグ ・インフラ整合の車 ・システム・レベル分析 ・IoTサービス使用の 自律的車 ・他サブネットワークと インタラクションを持つ 異種システム ・スマート・トラフィック ・自動駆動車 ・インテリジェ゙ント交通 37 と物流
IoT領域では必ずしも公式的3タイプ遷移が発生せず、モ ノに依存して多様化・共存化が発生するかもしれない タイプ2 タイプ1 タイプ3 Caas (グーグル) 風車 predix Akippa Airbnb 建機 (コマツ) ジェットエンジン (GE) ロボット (ファナック) クローズド 垂直統合 ビジネスモデル・ デザイン (1) 囲い込み (2) 効率性 自動運転 (車) ルーズリー・ カップルド (1) 補完性 (2) 新奇性or効率性? Uber (空き駐車場) (空き家) (空き車と 運転手) マルチサイデッド・ プラットフォーム (1) 新奇性 38
克服すべき日本企業のビジネスモデル構築時の傾向 従来、明白な質問リストを持ち、ビジネスに関する 適正なアーキテクチャ、価格モデル選択を意識して、 ビジネスモデル構築に取り組んできたかは疑わしい。 その背景に、インターネット、通信、コンピュータ革 命などによって、ビジネス環境が根本的に変化した との“進化の現実の基本認識”の不徹底さがある。 この要因に、よく謂われる①製造業での成功体験、 だけでなく、②不確実性回避型願望の強さ、③概念 思考よりも即物思考への嗜好、④IT要員がIT企業 に偏在、などの文化的/歴史的要因もある。 39
まとめと日本の課題 組織構造のダイナミックな変革に挑戦すべ き!(ベンチャー活性化も含めて) 新ビジネスモデル創出に向けて、非線形的ダイ ナミズム発動の準備・意識を考慮すべき! 複雑性(≃システム化)に対するダイナミズム 許容と実践スキルの保持も希求すべき! 画期的新サービスは上記ダイナミズム発動 と連動した行動の延長線上に登場する。 ⇒新しい取組み、例えばMVE(Minimum Viable Ecosystem)への圧倒的シフトなども重要 40
しかし、お題目では分かりにくいので、乱暴に平たく言えば • GEのジェットエンジンやコマツの建機などにあまり 幻惑されず、 – これらは特別の高価・高付加価値製品・高シェア保有企業の事例であな たの会社の通常の状態とは著しく異なる。 • 自らのビジネスゾーンを出発点に、徹底した顧客目 線で新たな取り組みを開始し、 – MVE、クラウドソーシング、クラウドファンディング、など何でも • 標準化活動にもあまり惑わされず、類似ゾーンの他 社失敗・成功も含めて新たな変化の兆しを鋭利に 察知し、 – 標準規格化はいずれ個別化に道を譲ることが多い(OSI,インターネット、モ バイル・インターネット標準化の歴史がそれを物語っている)。 • その中から、分配、取引、検索コスト削減などが期 待できるプラットフォーム生成の機会を探索する。 • 「新奇性」狙いで、かつ、持久戦可能なタイミングの 待機もおこないながら。 – 持久戦可能な(資金面、意識面での)準備も怠りなく実施が必要 41
参考資料 MVE実践によ る新ビジネス モデル発生の 典型例 MVEとは 詳しくはロン・アドナー著 「ワイド・レンズ」を読むこ とをお勧めする。 42 C.Zott & R.Amit, “Creating Value Thorough Business Model Innovation”, MITSloan Management Review,(2012), Vol.53, No.3, p.4