デジタル市場の管理と競争

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May 10, 22

スライド概要

デジタル市場の管理や競争が一段と重要性を増している。この状況を分析するのに、プラットフォーム、組織的ネットワーク、エコシステムなど、相互に重複した意味合いを含む多様な用語や概念が用いられている。但し、適切な分析が行われているとは言えない。とは言え、ビジネス環境が複雑なため、早期に統一的理論構築を期待できる環境も熟していない。そこで、まずはデジタル市場への対応により実践的に有用な概念の整理や指針となる暫定的枠組みの登場が望ましいのではないか?そんな問題意識から、このようなニーズに有用そうな研究を発掘し、これらを独自に整理してみた。その結果を報告する。

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定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。

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各ページのテキスト
1.

デジタル市場の管理と競争 ー プラットフォームとネットワーク、エコシステムの視点から ー B-frontier研究所 高橋 浩

2.

問題認識 • デジタル化の進展で多くのサービスが距離を超越し、 市場がプラットフォーム化している。 • ネットワークとエコシステムの形態も複雑化した。 • 現在、このような現象を分析する理論は不完全で部 分的捉え方に留まる。 • また、プラットフォーム、ネットワーク、エコシステムは、 相互に重複した意味合いで使用されており、それで も捉えきれない現象が登場している印象がある。 • そこで、デジタル市場の管理と競争の理解に資する 考え方を、内容の精粗に捕らわれずに探索する。 • そして、どのような取組みが適切なのかについて考 えてみる。 2

3.

目次 1.はじめに 2.さまざまなデジタル市場の見方 3.組織的ネットワークとエコシステム 4.プラットフォームの価値 5.プラットフォーム価値に基づく分析 6.デジタル市場の管理と競争の今後 3

4.

1.はじめに はじめに • デジタル化は企業が市場で競争する方法を 大きく変化させた。 プラットフォーム競争の登場、など – 従来企業と比較して、プラットフォームからの収益 が50%以上の企業の収益成長率は32%高い。 – 世界最大企業100社の内、60社はプラットフォー ムからの収益を少なくとも半分以上獲得している。 本稿は、主として、1) Carmelo Cennamo, “Competing in Digital Markets: A Platform-based Perspective”, Academy of Management Perspectives 35 (2), 265-291, 2021., 2) Andrew Shipilov and Annabelle Gawer, ”Integrating Research on InterOrganizational Networks and Ecosystems“, Academy of Management Annals 14 (1), 92-121, 2020. を参考にして作成した。 4

5.

典型はNokiaの終焉 • Nokiaは誰もが認める市場リーダーであった。 – スマホ製品のラインを最初に導入し、積極的価格 設定、市場の先取り戦略で先行した。 – しかし、プラットフォーム競争戦略は効果的では なかった。 – 個々の製品属性とそれに関する市場セグメントに 拘り、最後まで製品ベースの競争戦略を取り続け た。 • 結果、新規参入のApple, Googleに敗退した。 • 彼らはプラットフォームに焦点を当て、競争を 再定義していた。 5

6.

プラットフォーム競争戦略とは • 競争は製品間ではなくプラットフォーム市場 間で争われる。 – プラットフォーム市場は複数の製品市場に跨って いる。 – そして、複数製品間の相互接続や相互依存を目 指した統合製品/サービスを消費者に提供する。 • 結果、プラットフォームベースの競争は価値 創造、即ち、拡大し続ける消費者ニーズに対 しより大きな消費者価値を提供する方法に重 点を移した。 ⇒次頁に従来との比較を示す。 6

7.

伝統市場とデジタル市場との比較 伝統市場 競争は特定の市場/ 業界の製品/企業間 で行われる。 競争はプラットフォーム市場 間で行われる。 競争の駆動 確固たる競争力/利 益保護 者 プラットフォームユーザーの ための価値創造 競争レベル デジタル市場 競合分析の 企業間の競争が企業 ネットワーク効果とプラット の業績を牽引 フォームの競争 焦点 市場における独占的 プラットフォーム市場アーキ 価格 テクチャの制御 競争上の優 競争への障壁 間接的なネットワーク効果 位性(源) 独自のプラットフォーム属性 と優れた消費体験 7

8.

デジタル市場の特徴 • デジタル化は製品/サービスへの接続方法、統 合方法で用途や機能を進化させる。 – 事前に定義された用途向けに設計され、価値が消費 者に認識されている製品/サービスとは異なる。 • デジタル市場では製品/サービス価値は使用シ ステムの文脈でユーザーと共同で生み出される。 • 即ち、デジタル製品/サービスの価値自体が境 界を超え新しい市場に波及する点で制限がない。 • 結果、デジタル市場は従来の産業境界を解体し、 ビジネスモデルを破壊し新たな機会を生み出す。 8

9.

2.さまざまなデジタル市場の見方 デジタル市場の2つの見方を取り上げる • デジタル市場の見方-1. –ビジネス的現象の相違に着目 • デジタル市場の見方-2. –各種アクション間の連携の仕方(契 約や補完性など)の相違に着目 9

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デジタル市場の見方-1. • さまざまなタイプのデジタル市場を特定できる。 – ユーザーとプロバイダー間のトラフィックを通じて 効率的にニーズを合致させるサービス(Amazon マーケットプレースなど) – コア製品の機能を補完するイノベーションを通じて 統合ソリューションを提供するサービス(Appleの iOSなど) – プラットフォームの規模や範囲を活用して関連情 報の検索や共有を提供するサービス(Google Searchなど) • 3タイプのデジタル市場*を次頁以降に示す。 * 1) Carmelo Cennamo, “Competing in Digital Markets: A Platform-based Perspective”, Academy of Management Perspectives 35による。

11.

マルチサイド・トランンザクション市場 • 商品やサービスのプロバイダー(販売者)を 最終顧客に接続させ、両者間の価値交換を 促進させるインフラストラクチャとして機能す る。 – 顧客は独立した販売者が提供するさまざまな製 品/サービスにアクセスできる。 – 販売者は幅広い市場にアクセスすることで、プ ラットフォームの恩恵を受けられる。 11

12.

マルチサイド・トランザクション市場 プラットフォームは、売り手と買い手を直接接続し、それら間の価値 交換取引を促進するデジタル市場インフラストラクチャである。 • エンドユーザーのメリット:さまざまなサービスへアクセスできる。 • 補完者(販売者)のメリット:潜在的に幅広いプラットフォーム ユーザーの市場へアクセスできる。 プラットフォームの例: ✓買い手と売り手間のeコマースプラットフォーム(例:Amazon マーケットプレイス、eBay…) ✓ライドヘイリングプラットフォーム(例: Uber、Lift…) ✓ユーザーと地元商人をつなぐ共同購入プラットフォーム(例: Groupon…) 12

13.

補完品イノベーション市場 • 複数の製品間のデータ交換、相互運用を可 能にすることで、さまざまな製品を提供する。 • 製品システムは、個々のコンポーネントが独 立し相互接続された企業によって提供されて いるにもかかわらず、統合されたソリューション を提供する。 – プラットフォームはAppleのAppStoreなど、追加の マーケットインフラストラクチャも提供できる。 – この場合、イノベーション(iOS)とトランザクション (AppStore)の両市場が共存し、一つの統合サー ビスとして提供できる。 13

14.

補完品イノベーション市場 プラットフォームは、他の企業が補完的な製品/サービスを作成するためのコア 技術アーキテクチャを提供するイノベーションエンジンである。 • エンドユーザーのメリット:相互接続された製品システムにアクセスし、統合さ れたソリューションの提供を受けられる。 • 補完者(外部イノベーター)のメリット:イノベーションと労働のモジュール化 された分割で専門分野からのリターンを享受できる。 プラットフォームの例: ✓モバイルシステムプラットフォーム(例:AppleのAppStoreやGoogle Playなどのインフラストラクチャも販売しているApple iOSやAndroid) ✓コンピューティング・プラットフォーム(例:ビジネスソリューション用アプリケー ションのカスタム開発を可能にするSAP NetWeaver) ✓データ製品プラットフォーム(例:外部開発者によるデジタル製品の作成を可 能にするNike +) 14

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情報市場 • プラットフォームはユーザー起因のパラメターに 従って情報をフィルタリングあるいはグループ化 し、ユーザーが最も関心をもつ情報を提供する。 • プラットフォーム価値はユーザーが最も関心の ある情報の検索や共有を容易化することにか かっている。 • 多様な手段があるが次のような特徴がある。 – 情報を提供する人と情報を求める人の間で直接的金 銭取引はない。 – 情報の交換・共有はユーザーにとって独立した価値 がある。 – 情報はニーズに合致するより高レベルのサービスに ユーザーを誘導する能力がある。 15

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情報市場 プラットフォームは、関連情報の分類、検索、共有を可能にし、ユーザーの情報 交換と照合を容易にする情報チャネルのインフラストラクチャである。 • エンドユーザーのメリット:関連性に応じてフィルタリングされた幅広い情報へ のアクセスができる。 • 補完者(情報提供者)のメリット:大規模なユーザーベースとの情報共有 や交流を可能にする。 プラットフォームの例: ✓ 検索エンジンプラットフォーム(例:Google Search、Bing…) ✓関連情報の交換に基づいた対話を可能にするソーシャル/メディアプラット フォーム(Twitter、Facebook、LinkedInなど) ✓ユーザーが生成したコンテンツを活用して関連情報を収集および提供するピア ツーピア旅行情報プラットフォーム(TripAdvisorなど) ✓出会い系サービスプラットフォーム(Match.com、eHarmonyなど) 16

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デジタル市場の見方- 2. 組織的ネットワークとエコシステムの組合せと見る* • 組織の成功・失敗は外部環境との依存関係をど のように管理するかに依存する。 • 組織間ネットワークとエコシステムは組織がこの 依存関係を管理する主要な2つの方法である。 • この流れの論考例(下記): プラットフォーム・リーダーシップ By A.Gawer and M.Cusumano 組織がプラットフォームを強化す るイノベーションを生み出すため に補完者を重視 ワイド・レンズ By R.Adner 補完的イノベーション が組織の成功にとって 重要 * 2) Andrew Shipilov and Annabelle Gawer, ”Integrating Research on Inter-Organizational Networks and Ecosystems“, Academy of Management Annals 14 (1), 92-121, 2020. による。

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伝統市場、組織的ネットワーク、エコシステムの比較 伝統市場 組織的ネットワーク エコシステム 調整のメカニズム 価格 正式な契約または非公 式のコラボレーション + 非一般的な補完性 完全な階層制御がない場 合の非一般的な補完性 事例 企業は市場価格に 基づいて固定サプライ ヤーから紙など文房 具を購入する。 ハードウェアとソフトウェア の企業が正式な提携を 結び、共同研究開発に 従事する(例:Intelと MicrosoftのWintel連 合)。 企業は独自ハードウェアを 構築する(例:CPU)。 独立した開発者は、この ハードウェア用に最適化さ れたソフトウェアを作成する。 顧客は2つを組み合わせて 最終製品を作成する (例:適当なソフトを搭 載したPC)。 非一般的補完性: 製品コンポーネント間の相互補完性の特定の性質を指す ⇒ 例:次頁の破線の相関 (一般的補完性:お茶を飲む際の「ティーカップ、お湯、ティーバッグ」の関係など) 18

19.

組織的ネットワーク vs. エコシステム 組織間ネットワーク エコシステム 実線(組織的ネットワーク): Apple製品向けサイバーセキュリティソリューション提供のための正式な提携 (但し、この解は4社間の非一般的補完性の上に構築されている) 破線(非一般的補完性(エコシステム)) 非一般的補完性の完全なパターンがiPhone(iPad)エコシステムを形成 AppleのiPhoneはiOSプラットフォームをベースとした組織的ネットワークとエコシステムの組 合せで構成されている。

20.

組織的ネットワーク • 主として企業を分析の単位とし、組織のネット ワーク位置(ポジション)がパフォーマンスに どのように影響するかに関心がある。 • 組織はネットワークを構築する際、補完性を 活用して関係を形成することが多い。 • また、モジュール性が企業間同盟構築の活動 に関係する。 • ネットワーク構造全体を見た「スモールワー ルド(小さな世界)」なども含まれる。 • ハブと呼ばれる接続に良好な組織も登場す る。 20

21.

エコシステム • 分析単位はエコシステム全体またはエコシステ ムによって提供されるオファーである。 • エコシステムには様々なテーマが含まれる。 – イノベーション、顧客ニーズ、コラボレーション、競争、共 進化、など • エコシステムは次の3つにグループ化できる。 – 企業とその環境に焦点を当てた「ビジネスエコシステ 1) ム」 – 特定のイノベーションまたは新しい価値生成とそれを 2) 支援するアクターとの連携に焦点を当てた「イノベー ションエコシステム」 3) – 技術プラットフォームを中心として編成される「プラット フォームエコシステム」 21

22.

次節以降の進め方 • 共通点: – どちらの見方も研究対象の典型事例はAppleの iOS/iPhoneモデルなどで想定分野は同じである。 • そこで、次節以降では次のように進める。 – より基本的連携の仕方で区別している見方-2. の構造を分析 ・・・・・3節 – ビジネス形態を大括りする見方-1.に有用な 「プラットフォーム価値の枠組み」に基づく分 析 ・・・4節、5節 22

23.

3.組織的ネットワークとエコシステム 組織的ネットワークとエコシステムの相違点 • 組織的ネットワーク研究は単一業界内の関係 性に焦点を当てる傾向がある。 – 主に2者間の相互依存を管理するための信頼、 社会規範、などを特定する。 • エコシステム研究は業界の境界を越えた関係 性に焦点を当てる傾向がある。 – 主に多者間の依存関係の協力あるいは競争の 推進力などを特定する(モジュール性、ガバナン スルール、など) 23

24.

他の事例 例1:Amazonの電子書籍端末Kindle コンテンツ 発行者 例2:Philipsのヘルスケア用ウェアラブル端末システム コンテンツ 作成者 保険会社 Radbaud病院 Salesforce.com クラウドサービス 他の病院 Philipsの医療サービ ス用ウェアラブル機器 他のウェア ラブルデバ イス企業 Foxconn ハードメーカー Amazon Kindle 慢性疾患(糖尿病、ガンなど)の患者が使用する ウェアラブル電子機器の実現/商品化のための提携 実線(組織的ネットワーク): 破線(非一般的補完性(エコシステム)) 24

25.

ハブアンドスポーク型エコシステムと 統合型エコシステム • エコシステムはコンポーネントのモジュール性 とそれら間の非一般的補完性から生じる。 • コンポーネント間には2つのタイプの非一般 的補完性が存在する。 1)– ハブアンドスポーク型補完性 2) – 統合型補完性 • ネットワークでは結びつきの強さはアクターの 相互作用の強さに反映する。 • この状況を次頁表に示す。 25

26.

補完性の強さと構造による2パターン コンポーネント コンポーネント 1 統合型の補完性 3 ハブアンドスポーク型 の補完性 26

27.

2パターン間の移行の可能性 • 当初、AppleのiOSエコシステムはハブアンド スポーク型補完性に基づいていた。 – MS WordやDropboxはiOS/iPhoneを補完 • ところが、iOSがMS WordとDropbox間のファイ ル転送を可能にした。 – 結果、Dropboxでファイルを開いてMS Wordで編 集できるようになった。 • ・・統合型補完性に移行する場合がある。 • このことは、Appleエコシステムの多数のアプ リが、これからも一定範囲で統合型補完性に 移行することを示唆する。 27

28.

ボトルネックの発見と適応 • エコシステム内の全ての補完性をプロットす ると、一部コンポーネントが中心的であること がある。 – 中心性の高いコンポーネントがパフォーマンスが 低いと多くのコンポーネントに悪影響を与える。 • 幾つかの中心性がある。 – 例:次数の中心性:一人のアクターが持つ接続数 とともに変化する。 ⇒ 次頁に示す。 • 高度に集中したエコシステムは顕著なボトル ネックになる可能性がある。 • コンポーネントの中心性が高いほどこのコン ポーネントへの投資がプラットフォーム出現に 繋がる。 28

29.

中心性とボトルネックコンポーネント BはC,Dよりもボト ルネックになる 可能性が高い。 事例: 半導体製造装置エコシステム(下図)において、 リソグラフィー装置は、レンズ、光源、マスク、レジス トなど他コンポーネントに比較して中心性が高い。 レンズ マスク リソグラフィー装置 光源 Aの中心性次数は2 B、Eの中心性次数は3 レジスト 半導体製造業 破線(補完性(エコシステム))

30.

組織的ネットワークとエコシステムの組合せ 2つのエコシステム(ハブアンドスポーク型、統合型)と 2つのアライアンスネットワークの組合せを想定できる。 オープン オ ー プ ン エ コ シ ス テ ム の タ イ プ ク ロ ー ズ 組織的ネットワークのタイプ ハブアンドスポーク(オープン) 型アライアンスネットワーク ①:ブローカーに利益をもたらす ラジカルイノベーション エコシステムにおけるハ プラットフォーム成立の可能性が ブアンドスポーク型補 高い。 完性 ③:ブローカーに利益をもたらす インクリメンタルイノベーション エコシステムにおける統 合型補完性 クローズ 統合(クローズ)型アライアンス ネットワーク ②:全てのパートナーに利益をもた らすラジカルイノベーション 既存のエコシステムをベースとし たアライアンスを組みやすい。 (例:Apple製品向けサイバーセ キュリティソリューション) ④:全てのパートナーに利益をもた らすインクリメンタルイノベーション 特定のソリューション実現のアラ イアンスを実現しやすい。(例: Philipsの慢性疾患患者向けウェ アラブル電子機器の実現)

31.

4.プラットフォームの価値 デジタル市場の見方-1.における・・ プラットフォーム価値の枠組み • 消費者にとっては、プラットフォームを使用し て補完的商品やサービスを消費することで得 られる固有のメリットが重要になる。 – その価値は「消費者による消費価値の主観的評 価」と言える。 ⇒プラットフォーム識別子 • 一方、プラットフォームの競争を形作る重要な 要因として間接ネットワーク効果によるダイナ ミズムがある。 ⇒プラットフォーム・サイズ • 両者の視点を統合した概念図を次頁に示す。 31

32.

プラットフォーム価値の枠組み エンドユーザー ネットワーク –インストール・ベース –ネットワークのサイズと強度 –ロックインと切り替えのコスト プラットフォーム・ スコープ プラットフォーム・ アーキテクチャ –プラットフォームの機能 –プラットフォームのキャパシティ とパフォーマンス –アーキテクチャのモジュール化と 複雑性 プラット フォーム価値 補完者 ネットワーク –補完品/コンテンツの量 –ネットワークのサイズと強度 –ロックインと切り替えのコスト プラットフォーム・ サイズ –ニッチスペシャリスト vs マーケットジェネラリスト –単一目的市場 vs 多目的市場 –コンテンツ/補完品の特徴 プラットフォーム 識別子 識別性の論理 勝者総取りの論理 1)Carmelo Cennamo, “Competing in Digital Markets: A Platform-based Perspective”, Academy of Management Perspectives 35 (2), 265-291, 2021. による。

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縦軸:エンドユーザーと補完者のネットワーク • デジタルプラットフォームの主要な価値はネッ トワークのメリットにある。 – インストール済みユーザーベース(規模)はプラッ トフォーム価値の重要な源泉である。 – これは独立したプロバイダー(補完者)を刺激し、 補完者ネットワークを拡大させ、そのことでユー ザーに利益をもたらす。 • エンドユーザーと補完者のネットワークサイズ は厳密に連携しており、プラットフォーム価値 への影響を強化する。 • ロックイン効果や切り替えコストも発生させる。 33

34.

横軸:プラットフォーム・アーキテクチャ とプラットフォーム・スコープ • プラットフォーム・アーキテクチャは補完的イノ ベーション、およびシステム統合とその適正度に 影響を与える。 – ユーザーにパフォーマンスと機能の利点を提供する ことでプラットフォーム価値を決定する。 • プラットフォーム・スコープは消費者の好みと統 合プラットフォームとの相対的関係であり、プラッ トフォーム成功の重要な推進力になる。 – 一部のプラットフォームは特定ユーザーグループに 対象を絞り、逆に万人向けに最適コンテンツを専門と する場合もある。 • これらはユーザーに向けたプラットフォーム識別 子を定義する。 34

35.

デジタル市場におけるプラットフォームの競合 • プラットフォーム競争に関する従来の研究は 殆どネットワーク外部性に基づいており、 • プラットフォームユーザーに価値を生み出す ネットワーク効果に注目していた(需要面)。 • しかし、プラットフォーム識別子に基づく供給 面からの影響も無視できない。 • そこで、次節では両側面を踏まえた広範な枠 組みで検討する。 35

36.

5.プラットフォーム価値に基づく分析 プラットフォーム競合分析の枠組み • 次の枠組みを想定する。 – 市場の種類 • トランザクション(マルチサイド・トランザクション市場) • イノベーション(補完品イノベーション市場) • 情報(情報市場) – プラットフォーム価値の枠組み • プラットフォーム・サイズ(縦軸) • プラットフォーム識別子(横軸) – プラットフォーム識別子の典型要因 • エンドユーザーの共通性 • プラットフォームアーキテクチャの類似性 • デジタル市場の競争評価の概念図を次頁に 示す。 36

37.

プラットフォームベース競合の分析 市場の種類 ‣ トランザクション ‣ イノベーション ‣ 情報 プラットフォーム 価値の枠組み ‣プラットフォームサ イズ(縦軸) ‣プラットフォーム識 別子(横軸) プラットフォーム競争 ‣競争のタイプ: ✓ 勝者総取り(論理1) ✓ 識別性(論理2) ‣競争の激しさ 競争結果 ‣プラットフォームの パフォーマンス ‣ 市場構造 プラットフォーム 識別子の要因 ‣エンドユーザーの共通性 ‣プラットフォームアーキテ クチャの類似性 1)Carmelo Cennamo, “Competing in Digital Markets: A Platform-based Perspective”, Academy of Management Perspectives 35 (2), 265-291, 2021. による。 37

38.

プラットフォーム競争論理1 勝者総取りの論理 • 特定プラットフォームでクリティカルマス・ユー ザー数に達すると、ネットワーク効果によりユー ザーネットワークと補完者ネットワーク間に正の フィードバックが働く。 • そして、特定プラットフォームの価値が上昇して、 勝者が全てを取る。 • この場合の価値は主にプラットフォーム・サイズに 関係する。 • この実現のためユーザーの個別グループと補完 プロバイダー間で次の調整が重要になる。 – マルチサイドの設定/採用の仕方 – 個別ユーザーサイド間でのトランザクションの活性化38

39.

プラットフォーム競争論理2 プラットフォーム識別子の論理 • 市場で明確な識別子を獲得し、他プラットフォー ムとの差別化を図ることを通じて優位性を確保 する。 – 市場でのポジショニングや優れた製品属性で差別優 位を実現する古典的オプションに相当する。 • 具体的取組みとして下記などがある。 – 明確な補完品のポートフォリオによる顧客嗜好への 対応 – プラットフォームスコープ(例:プラットフォームの多目 的機能と特定目的機能のバンドル)の活用 – ローエンド市場をスキップし、ハイエンド(プレミアム) 市場に特化 • 両戦略の比較を次頁に示す。 39

40.

2つのプラットフォーム競争タイプの比較 プラットフォーム 競争タイプ 勝者総取り (競争論理1) 識別性 (競争論理2) 競争目標 関心のある競合 領域 プラット フォームサ イズを通じ て市場での 優位性を獲 得する コアドメイン内の 市場全体 + 隣接 する市場 独自の技術 力と市場範 囲を通じて 独自の市場 アイデンティ ティを獲得 する プラットフォーム 識別子と整合性 のあるコアドメイ ン(および隣接す る市場)内の市場 セグメント 競争力のある行動 • • • • • • • • メカニズム 包囲 ユーザー助成 プラットフォーム の開放性 排他的アクセス ライセンス • プラットフォーム 制限付きアクセ ス(スクリーニン グ) 選択的アクセス の価格 コンテンツ/補完 の独占権 プラットフォーム スコープの制限 • • • • • 強化された市場調 整 強化されたトラン ザクション/相互作 用の機会 プラットフォームの 提携/開発のコスト の削減 強化された市場参 加者の選択 強化された使用体 験(コンテンツ/補 完キュレーション) プラットフォームの 提携/開発にかか る無視できないコ スト(参加者の利 益の調整) 40

41.

プラットフォーム価値の枠組みによる 分析での2つの評価尺度 • エンドユーザーの共通性 – 同じタイプのエンドユーザーが共存する程度 • プラットフォームアーキテクチャの類似性 – 技術アーキテクチャが同じ機能や技術属性を共有する程 度 • 2つの尺度の組合せによる4つの可能な競合シナリオ を次頁に示す。 41

42.

プラットフォーム価値の枠組みによる競合分析 高い プラットフォームアーキテクチャの類似性 ① 識別子領域の重複 高い • • • • エンドユーザー の共通性 競争力のある競争:激しい。 プラットフォームサイズが競争行動 の主要な推進要因になる。 包囲の脅威:高い。大きな影響があ る。 プラットフォーム競争は勝者総取り の戦いにエスカレートする。 ② • • • • ④ • • • • 低い • • • • 非対称領域 競争力のある競争:中程度~高い。 プラットフォーム識別子が競争行動の 主要な推進要因になる。 包囲の脅威:中程度。影響は限定的 プラットフォーム競争は間接的。プラッ トフォームは、非対称の競争論理を通 じて影響範囲を獲得できる。 ③ 競合する領域 競争力のある競争:激しい。 領域全体のプラットフォームサイズ が競争行動の主な推進要因になる。 プラットフォーム識別子が希薄化する リスクがある。 包囲の脅威:高い。中程度~大規模 な影響がある。 プラットフォーム競争は、領域間で 勝者総取りの戦いにエスカレートし、 市場収束につながる可能性がある。 低い 個別識別子領域 競争力のある競争:低い。 領域間のプラットフォーム識別子、お よびコア領域内のプラットフォームサイ ズが競争行動の主要な推進要因にな る。 包囲の脅威:中程度。影響は限定的 プラットフォーム競争は間接的で制限 される。

43.

①:高ユーザー共通性-高アーキテクチャ類似性 プラットフォーム識別子領域の重複 • 競合相手同志は相互に競合相手を認識し、その 存在に脅威を感じる。 • 結果、勝者総取りの争いにエスカレートする可能 性が増す。 • 積極的行動と反対行動の双方がありうる。 – ユーザーがライバルプラットフォームに移行するのを 回避するため、お互いの動きを模倣する傾向がある。 – 一方、ライバルを犠牲にしたより積極的行動を取るイ ンセンティブも増す。 • 特に、ネットワーク・サイズが重要なトランザク ション市場では勝者総取りの戦いに進む可能性 が高まる。 43

44.

②:高ユーザー共通性-低アーキテクチャ類似性 非対称領域 • アーキテクチャの異質性を活用して独自のポ ジショニングを通じて影響範囲(支配的領域) を構築できる可能性がある。 • 特に、補完品イノベーション市場、情報市場 では当てはまる可能性が高い。 • このような市場では、個別の市場セグメントに 選択的に焦点を合わせ独自の構築をする。 • これは、異なるアーキテクチャを備えたプラッ トフォームは識別子領域外の市場でライバル を直接攻撃したり、それに対応する能力を制 限することになる。 44

45.

非対称領域の例 vs vs • 例1:モバイルOSプ ラットフォーム市場に おけるAppleとGoogle – プラットフォームアーキ テクチャが異なる。 • iOS:ハード/ソフト/サー ビス一体型 • Android:オープン性と 価格戦略 – 差別化戦略 • Appleはユーザーの消 費体験を支配したい。 • Googleは情報探索を支 配したい。 • 例2:出会い系における eHarmonyとMatch.com – プラットフォームアーキテク チャが異なる。 • eHarmony:一部ユーザーの アクセスを意図的に制限(好 み、価値観、性格特性など のスクリーニングに注力) • Match.com:同様な処置を取 らない。 – 差別化戦略 • eHarmony:料金は高いがよ り相性が良い可能性 • Match.com:より廉価だが条 件充足は低レベルの可能性 45

46.

③:低ユーザー共通性-高アーキテクチャ類似性 競合する領域 • 最初は、限られた競争にしか直面しないとし ても、類似した技術的能力と機能を提供して いるので、ユーザー層を拡大することで、ライ バルのユーザー市場を狙うことができる。 • そこで、潜在的ライバルの動きを予測し、競 合他社を攻撃する動機を持つ。 • あるプラットフォームが隣接市場包囲の機会 を認識した場合、競合他社も同様かもしれな い。 • 結果、競合はかなり激しいものになることが 予想される。 46

47.

競合する領域の例 vs • 例:AirbnbとBooking.com – 当初はそれぞれ違う領域に対応していた。 • Booking.com:ホテルの検索/予約に専念 • Airbnb:小さな掘り出し物(共有部屋)の検索/予約に専念 – 途中から領域が重複しだした。 • Booking.com:Airbnbを意識し、ハウスレンタルサービスなど にも対応を開始した。 • Airbnb:Airbnb Plusと定義したアパート(ホテルに類似)へ拡 大。更にHotel Tonightを買収し、現在ではプレミアムレベル の収益が1/3程度にまで拡大した。 – 現在、両社は直接的に勝者総取りの競争にエスカ レートしている可能性がある。 47

48.

④:低ユーザー共通性-低アーキテクチャ類似性 個別識別子領域 • 技術的機能で異なり、ユーザー層も異なるの で、それら間の相互依存または補完の可能 性は限られる。 • このような場合、それぞれは明確に競争力の ある個別識別子領域で競争し、両社が直接 的競争に参加する可能性は低い。 48

49.

個別識別子領域の例 vs • 例:eBayとAmazonマーケットプレース – 両社は共にトランザクション市場で運営されており、 主要な価値はプラットフォーム・サイズに焦点を当て ている。 – 但し、両社は勝者総取りの競争を戦っていると考えら れるものの、競争は限定されている。 • eBay:オークションベースの取引システムを通じて取引を完 了させるため、より長時間と労力を費やすことをいとわない 消費者に対応している。 • Amazonマーケットプレース:膨大なアイテムを迅速かつ簡 単に購入し受け取りたいニーズに対応している。 – 両社のユーザーは異なるタイプのユーザーを構成し ており、両プラットフォームは共存する可能性が高い。

50.

プラットフォーム価値の枠組みでの競合分析 (中間まとめ) • 一般に、マルチサイド・トランザクション市場で は、価値の大部分がネットワーク・サイズに関 連しており、勝者総取り論に支配される激し い競争が予想される。 – ユーザーの重複が多く、プラットフォームアーキテ クチャが類似しているほど競争は激しくなる。 • 他方、補完品イノベーション市場や情報市場 では、プラットフォームは独自識別子を強調し、 差別化を図ってプラットフォーム競争の激化 を回避できる可能性が高い。 50

51.

6.デジタル市場の管理と競争の今後 プラットフォーム競争は変化する • プラットフォーム競争は以前は別々であった 隣接市場が収斂し、その結果、他の市場領 域との新たな競合を発生させる。 vs + facebook – 例:音楽市場 • AppleはiTuneからApple Musicで音楽市場に本格参入 • Facebookはこの事態に対してSpotifyと連携して対抗 • また、特定時点でのプラットフォームの戦略 的位置づけだけでなく、時間の経過に伴う進 化的競争の軌跡も考慮する必要がある。 • 見方-1と見方-2の特徴を次頁に示す。 51

52.

見方-1と見方-2の特徴 • 評価尺度は異なるものの、競争の激化あるい は限定を意味する分類になっており、 • デジタル市場の管理と競争に示唆を与える。 • 見方-1: エンドユーザーの共通性 × (4節5節) • 見方-2: (3節) プラットフォームアーキテクチャの類似性 エコシステムのタイプ(補完性) × ネットワークのタイプ(アライアンス) • これらはプラットフォーマーなど各種アクター が連携・協力の形態を整理する場合の分析 の枠組みと見做せる。 52

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デジタル市場の変化への対応 • 既存のプラットフォーム理論は確立したプラッ トフォームの事後確認には有用だが、 • しかし、プラットフォームの存在領域はそれだ けではなく、実際には各種アクター間の組織 的ネットワーク、エコシステム連携で成立して いる部分があり、その影響が増大している。 • また、それらの関係性は時間とともに変化す る。 • そこで、本稿で紹介した事例の見方-1、見方2へのマッピングを次頁次々頁に示す。 53

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見方 –1への事例マッピング 高い ① 識別子領域の重複 高い ③ 競合する領域 vs 低い ② Netscape, IE, Chrome等 Facebook, Google+,他SNS Google Search, Bing,他検索 勝者総取りが発生する可能性が高 い(あるいは勝者が確定した)。 エンドユーザー の共通性 低い プラットフォームアーキテクチャの類似性 非対称領域 vs vs 両タイプのプラットフォームが共存 サービス内容が差別化されており 共存を実現している。 ④ 個別識別子領域 vs AirbnbがBooking.com吸収? 両タイプのプラットフォームが共存 勝者総取りが発生する可能性が ある。 トランザクション市場ではあるが勝 者総取りにならない可能性がある。 54

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見方 –2への事例マッピング オープン オ ー プ ン クローズ ハブアンドスポーク(オープン)型 統合(クローズ)型アライア アライアンスネットワーク ンスネットワーク ①:ブローカーに利益をもたらすラ ②:全てのパートナーに利益を ジカルイノベーション もたらすラジカルイノベーション エコシステムにおけるハブ アンドスポーク型補完性 Appleエコシステム の一部 ( エ コ シ ス テ ム 非 一 般 的 補 完 性 の タ イ プ 組織的ネットワークのタイプ ) ク ロ ー ズ DropboxとWordの関係性 * Appleエコシステムの一部 ③:ブローカーに利益をもたらすイ ④:全てのパートナーに利益を ンクリメンタルイノベーション もたらすインクリメンタルイノ ベーション エコシステムにおける統 合型補完性 Philipsのヘルスケア用ウェアラブル端末 システムの一部 *:iOSがMS WordとDropbox間のファイル転送を可能にしたことで、統合型へ移行の可能性がある。 55

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事例マッピングからの観察事項 1. マルチサイド・トランザクション市場が必ずしも 全て見方-1①(識別子領域の重複)に合致する わけではない。・・例:Uber,Lyftなど 2. トランザクション市場で戦っていても複数ベン ダーが共存する場合がある。・・iOS vs android, ebay vs Amazonなど 3. iOS/iPhoneのような例は見方-2の複数領域(①, ②)に跨っている。 4. 時間の経過とともに見方-1、見方-2の領域間 で移動する場合がある。・・Booking.com、 DropboxとWordの関係性、など 5. 移動には方向性があり、また、見方-2での移動 で統合度が増すと柔軟性が失われる傾向もあ る。

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デジタル市場の管理と競争に向けたQuestion • Question1:プラットフォーム企業はどうすれば ユーザーに最大の価値を提供し、且つ、同時に 価値の一部を獲得できるだろうか? • Question2:プラットフォーム企業が規模と範囲を 拡大することに関係する動機と結果はなんだろ うか? • Question3:このような関係が正式な契約に拘束 されないことが多くなってきている場合、企業は どのようにして補完者のポートフォリオを効果的 に管理できるだろうか? • Question4:基盤となる技術が時間の経過ととも に進化する場合、プラットフォーム企業はどうす れば競争力を維持できるだろうか? 57

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見方-1、見方-2から推測されるAnswer例 • Answer1:基本は「プラットフォームベース競合の分 析」(P.37)により自プラットフォームの特性に沿ったライ フサイクル洗練を着実に実行。加えて、エコシステム 的対応の調整のため見方-2のような検討を補足する。 • Answer2:ユーザー向け価値生成と価値獲得が基本 的動機。このための手法(プラットフォーム、エコシステム、組織 的ネットワーク、など)の適切な組合せは結果の成否を大 きく左右。 • Answer3:特に重要なのは正式な契約に拘束されない エコシステム形成(補完者の糾合、最適動機づけ、タ イミング、など)への対応。まずは3節などの手法によ る分析から着手。 • Answer4:ダイナミックケイパビリティ力の獲得が基本。 それを維持あるいは発展させる際に参考とすべき尺 度やツールとして見方-1、見方-2他からの情報を参考 にすべき。 58

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デジタル市場の管理と競争(暫定まとめ) 1. デジタル市場のダイナミズムは主としてオーケス トレーター(あるいはプラットフォーマー)、補 完者、ユーザー、その他のアクターによる複雑 なエコシステム出現と変遷に起因している。 2. 本稿で取り上げた見方-1、見方-2は、ダイナ ミズムを評価する切り口の例と言える。 3. デジタル市場はプラットフォームの進化や包囲 によって絶えず再定義され続けており、分析手 法も追随して発展する。 4. 新たな取組みの企画や現状分析に見方-1、 見方-2を参考にしつつ、新たな実践と更なる 研究に取組むべきである。 59