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February 26, 17
スライド概要
現在、話題になっているUber,Airbnbをビジネスモデル論の視点でまとめた。特に注目したのは、元々、シェアリングエコノミーはリーマンショックという経済危機を背景に登場したので、意識変化なども包含可能な俯瞰モデル(MLP理論)の視点から取り組んだ点。結果的に第4次産業革命への先行指標になっているのではないかと感じた。
定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。
プラットフォームエコノミーの勃興(改) -Uber,Airbnbのビジネスモデル変革の先にあるもの- B-frontier研究所 高橋 浩 [イタリア ドロミーティ山地]
問題意識 • リーマンショックを契機とした“シェア”文化の広 がりがプレッシャーになってシェアリングエコノ ミーが台頭した。 • このようなマクロレベルの変化が関連イノベー ションを誘発し既存レジームに破壊的影響を与 え出している。 • このような傾向は第4次産業革命で示唆される 今後の変化を先取りしているのではないか? • このような仮説の下にUber,Airbnbの分析を通 してこれからの時代の変化の性質を探る。 2
目次 1. はじめに 2. 全体俯瞰モデルと遷移経路 3. Uber,Airbnbのビジネスモデル変革 3.1 3.2 3.3 3.4 シェアリングエコノミーの遷移経路 プラットフォーム理論からの知見 直接相互作用からの知見 Uber,Airbnbのビジネスモデル 4. 第4次産業革命時代の変化への示唆 3
1.はじめに 2008 2009 (初代iPhone 2007) 2007~2008 Google 1998 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 この間の質的変化をどう捉えるか? リーマンショック 5400億ドル マウンテンビュー facebook 2004 3700億ドル メンロパーク シェアリングエコノミー 100万部屋 (2015) Airbnb 2008 3兆円(300億ドル) サンフランシスコ 急激な台頭 Uber 2009 サンフランシスコ 3位 7兆円(700億ドル) (2015) 4
参考 Uberisation≒シェアリングエコノミー Wikipediaより • Uberから発生した分散型カーシェアリング サービスのこと • 個人運転手がタクシー会社類似のサービスを 提供できるビジネスモデル構築でタクシー業界 に破壊的影響をもたらしたUberに由来 • モバイル・アプリやウェブなどを利用して利用 者とサービス提供者間の情報交換を容易化 し、集中的に計画された企業の役割を迂回す るデータプラットフォームの活用形態のこと 5
このような変化が発生した背景 • 世界的不況をきっかけにそれまで の消費パターンに批判が発生 ・・Botsman and Rogers • 2013年の経営アカデミーの主要 テーは・・「問題のある資本主義」 • シェアリングエコノミーが学術研究 だけでなく主流経済としても地歩を 獲得 ・・ Botsman and Rogers 2011; Gansky 2010他 2011年出版 Rachel Botsman オックスフォード 大学客員研究員 6
総合的な質的変化から考える 新たな全体を概観する枠組みが必要 マクロ・レベル (ランドスケープ) シェアリングエコノミー リーマンショック 市場、顧客の 嗜好 組織・制度 産業 メソ・レベル (レジーム) 科学 企業 政策 文化 産業界 技術 ミクロ・レベル (イノベーション) マクロ・レベルからの影響を受けたイノベーションの誘発 レ ベ ル 間 の 相 互 イ ン タ ー ラ ク シ ョ ン 7
2.全体俯瞰モデルと遷移経路 MLP(Multi Level Perspective)理論*1 • “社会的&技術的変化”を提示する進化 経済学*2と技術遷移の橋渡し理論 社会技術 ランドスケープ 社会技術レジーム Frank W. Geels (マンチェスター 大学ビジネスス クール教授) ニッチ・イノ ベーション *1:Geels, F.W., 2002. Technological transitions as evolutionary reconfiguration processes: a multi-level perspective and a case-study. Research Policy 31 (8/9), 1257–1274. 8 *2: Nelson, R.R., Winter, S.G., 1982. An Evolutionary Theory of Economic Change. Belknap Press, Cambridge, MA.
参考 Nelson & Winterの 「経済成長の進化モデル」 Richard R. Nelson Sidney G. Winter • 経済成長をもたらす重要な要因である技術変化に着 目 • ミクロレベルの企業行動からマクロレベルの経済全 体までを統合的に説明する進化的アプローチを提示 • 各企業が生産コスト低減のイノベーションを行い、 (1)イノベーションにともなう不確実性 (2)イノベーションで得た知識の公共的側面 (3)企業の行動や運のばらつき これらは技術 変化において 特徴的とされ るもの などミクロレベルでの知見も含むモデル • 技術変化についてのミクロレベルの知見に整合的であ ると同時に、マクロレベルの経済全体の振る舞いも既経 済学モデルよりもより良く説明できていると評価 9
MLP理論による変化の遷移のアクティビティ概念図 Frank W. Geels , Johan Schot, “Typology of sociotechnical transition pathways”, Research Policy 36 (2007) 399–417 10
3レベルの特徴抽出 ニッチ・イノベーションと社会技術レジーム は規模と安定性は異なるが類似の構造 ニッチ・イノベーション 社会技術レジーム 規模 コミュニケーションが小さく不安定 コミュニケーションが大きく安定 安定性 ルールが不安定であり作成途上 ルールが安定しており表現済み 両方とも組織の性質を保有 社会技術ランドスケープは他2レベル とは異なる構造 より簡単な行動を取る「力の勾配」を提供 生物学的進化における土壌条件、河川、湖沼、山脈に匹敵11
遷移経路 Timing is Critical ニッチ・イノベーション状況と既存レジームに対するランドスケープ圧力のタイミングに着目 ニッチ・イノベーショ ンが競争的 社会技術 ランドスケープ プレッシャー 変質に気づ かないか意 図的に目を つぶる可能 性あり 社会技術 レジーム ニッチ・ イノベーション 後から 競争的 社会技術 ランドスケープ プレッシャー 先行 社会技術 レジーム 先行(成熟) ニッチ・ イノベーション 時間 競争的イノベーション ランドスケープ・ プレッシャー先行 プレッシャー 後から 導入の結果、 全体が変質 する可能性 あり 社会技術 レジーム ニッチ・ イノベーション 後から(未発達) 時間 ニッチ・イノベー ション先行 社会技術 ランドスケープ ニッチ・イノベーション がまだ十分に発達し ていない時にランド スケープ圧力が発 生するので遷移経 路が大きく予想から ズレる可能性あり 共生的 先行(成熟) 社会技術 ランドスケープ プレッシャー 先行 社会技術 レジーム ニッチ・ イノベーション 時間 共生的イノベーション 適応に時間 的余裕があ り主体的に 行動可能 後から(未発達) 時間 ニッチ・イノベーショ ンが共生的 12
4遷移経路の名称・特徴と代表的事例 置換 ③ニッチ・イノベー ションが競争的 帆船が蒸気船に置換(英国) 整列解除と再整列 馬車から自動車への米国での遷移 ⑤ ランドスケープ・プレッシャーが大きく破壊的だと、・・ ⇒既存レジームが破壊され置換される。 ランドスケープ・プレッシャーが大きく突然だと、・・ ⇒既存レジームへの信仰が失われ整列解除へ ⑥ ニッチ・イノベーションが未完成だと、・ ⇒代替案が無く複数イノベーションが出現。再整列へ ②ランドスケープ・プ レッシャーが先行する ①ニッチ・イノベー ションが先行する 当初は問題解決に寄与するがその後基 本アーキテクチャの調整を引き起こす。 レジーム事業者は開発軌道とイノベー ション活動方向の修正で対応できる。 伝統的な工場から量産工場への米国の遷移 再構成 汚水ダメから下水道システムへのオランダの衛生移行 ④ニッチ・イノベー ションが共生的 変換 13 Frank W. Geels , Johan Schot, “Typology of sociotechnical transition pathways”, Research Policy 36 (2007) 399–417
3.Uber,Airbnbのビジネスモデル変革 ビジネスモデル検討の枠組み 成長理論 遷移理論 ネルソン&ウィ マクロ・レベル ンターの (ランドスケープ) 進化経済 学 プラットフォーム理論 MLP 3.1 遷移経路 シェアリングエコノミー メソ・レベル (レジーム) ミクロ・レベル (イノベーション) ビジネスモデル論 経 済 学 的 学術世界 進 遷化 移経 の済 橋学 渡と し技 術 ビジネスモデル (どうして既存企業に打ち勝つのか) 3.4 ビジネスモデル Uberisation イノベーションのエンジン 3.2 プラットフォーム 3.3 直接相互作用 ビジネス世界 14
3.Uber,Airbnbのビジネスモデル変革 3.1 遷移経路 Uber, Airbnbの遷移経路は何か? 社会技術ランドスケープ:“シェア”文化。 加えて、環境劣化、気候変動なども 社会技術レジーム:移動、旅行、自動車(生 産と消費)など ニッチ・イノベーション:Uberは車、Airbnbは住 居に技術的イノベーションを施していない。 ⇒それにも関わらず急激な変化が発生し、既存 社会技術レジームに破壊的影響を付与 • この状況は⑤⑥条件を満足。⇒「整列解除と 再整列」 15
どのような整列解除と再整列か? * 分散化 し 「社会技術的/経済的構 造(レジーム)を分散化 し破壊するニッチ・イノベー ションを共有している」 ??? * 分散化 クリス・マーチン マンチェスター大学 School of Environment and Development 16 * Chris J. Martin, “The sharing economy:A pathway to sustainability or a nightmarish form of neoliberal capitalism?”, Ecological Economics, 121 (2016) 149–159
3.Uber,Airbnbのビジネスモデル変革 3.2 プラットフォーム 分散化を実現するプラットフォームの機能と型の変化(1) プラットフォームの型 トランザクション型 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム の 機 能 マッチング 代 相互作用 Uber,Airbnb など 表 的 インテグレーション型 相 エコシステム 関 性 Google, Appleなど 時 代 の 潮 流 イノベーション型 補完性 Microsoft, Intelなど Peter C. Evans, Annabelle Gawer,” The Rise of the Platform Enterprise A Global Survey” http://thecge.net/wpcontent/uploads/2016/01/PDF-WEB-Platform-Survey_01_12.pdf を参考にして作成 Peter Evans 17 Center for Global Enterprise 副社長
分散化を実現するプラットフォームの機能と型の変化(2) 資産小でも広域エコシステム構築可能に! 企業構造 垂直統合(VI) +資産規模 プラットフォーム・ エコシステム GE Daimler 資産が大きい 企 業 タ イ プ 事例 企業名とプラットフォーム Predix Moovel 広域エコシステム 混在(中間) 資産が小さい Apple App store Amazon App store Google Map, Search Facebook SNS Google Google Play Uber Uber app Airbnb Airbnb app 広域エコシステム&トランザクション型 時 代 の 潮 流 18
分散化を促進するプラットフォームの流れ 広域エコシステム トランザクション型 資産が小さい マッチング Uber,Airbnb など Uber,Airbnb 相互作用 混在(中間) インテグレーション型 エコシステム Google, Appleなど 資産が大きい イノベーション型 補完性 Microsoft, Intelなど (Apple,Amazon, Google,Facebook) 専門域エコシステム (GE Predix)
分散化を促進するプラットフォームの変化(まとめ) プ ラ ッ ト フ ォ ー ム の 変 化 ステップ2 ステップ1 プラットフォー ム提供機能が シフト デジタルプラッ トフォーム構築 が容易化 ステップ3 プラットフォー マーと専門サー ビス提供者が分 離し多様化 プラットフォーム所有者 クラウド (AWS) エ コ シ ス テ ム の 変 化 マッチング 相互作用 資産小でスピーディー な取組み 多数の専門サービス提供者 資産or労働提供と サービスレベル高度化 20
Uber, Airbnbプラットフォームの概要 Uberプラットフォーム Airbnbプラットフォーム Henten, A., Windekilde, I., “Transaction costs and the sharing economy”, 26th European Regional Conference of the International Telecommunications Society(ITS), Spain, 24-2721 June 2015
Uber,Airbnbは消費財を投資財に変換 新たな傾向のプラットフォームは他にも登場 サービス産業を 消費財を投資財へ変換す Airbnb、Uber 変革するプラット るプラットフォーム フォーム 仕事仲介プラッ トフォーム グローバル入札 Upwork、 Innocentives 時々の非公式ワーク Task Rabbit, Homejoy ファイナンス仲介 資金調達プラットフォーム Kickstarter、 Indiegogo 金融機関置換プラット AngelsList、 フォーム Zopa M. Kenney, J. Zysman,” Choosing a Future in the Platform Economy :The Implications and Consequences of Digital Platforms”, Kauffman Foundation New Entrepreneurial Growth Conference, Discussion Paper, Amelia Island Florida – June 18/19, 2015 22
3.Uber,Airbnbのビジネスモデル変革 3.3 直接相互作用 プラットフォーム理論への直接相互作用の導入 サービス提供者と消費者の補完性を両 者の直接相互作用の可否から検討でき るようにした。 サービス提供者のイノベーションの動機 を専門サービス提供者の側面から検討で きるようにした。 プラットフォームの存在を既存組織(垂 直統合モデルなど)と比較検討できるよう にした。 Andrei Hagiu ハーバード・ビジネ ススクール準教授 A. Hagiu, J. Wright, “Multi-sided platforms”, International Journal of Industrial Organization 43 (2015) 162–174 23
改良MSPモデルの定義と 代替ビジネスモデルとの関係 定義1:2つ以上の異なるサイド間の直接的相互作 用を可能にする。 定義2:各サイドはプラットフォームに加入(affiliate) する。 専門サービス提供者 消費者 直接的相互作用 改良MSP 加入 加入 代替ビジネスモデル 垂直統合 24 A. Hagiu, J. Wright, “Multi-sided platforms”, International Journal of Industrial Organization 43 (2015) 162–174
相互作用を成立させる信頼性の醸成 Airbnbのアルゴリズムビッグデータモデル クレジットカード パスポート Facebook,LinkedIn 顔写真 過去のクチコミ情報 ゲスト、ホスト相互評 価 ホストサービス評価 ”SuperHost” 総合的背景チェック など 25
専門サービス提供者のモード選択心理 条件 組 織 の 意 思 表 示 個 人 経 営 者 向 け 動 機 付 け 従業員の努力を奨励 するため売上高に基 づいて垂直統合企業 がボーナスを支給 販売促進を誘導する ため売上高に基づい て専門サービス提供 者に可変手数料(≒ 価格決定権)を許容 個人経営者として 組織内の一員として MSP >垂直統合 MSP <垂直統合 ボーナス支給制 ボーナス支給 度が柔軟で無 制度が柔軟で い場合 シフトが顕著な 場合 選択 MSPによる料金 可変手数料制 可変制度の導 度が柔軟で無 入が顕著な場 い場合 合 選択 26
専門サービス提供者の ”新たな働き方” インセンティブ例 項目 労働の分割、専門化による効率向上 多様な低コスト・サービスの提供 過剰な高取引コスト構造の改善 個別顧客向け価格決定権で価値提供 限定合理性の視点の変更 Airbnbでの例など ホスト固有の意思による選択 (写真制作や清掃などを自分で実施 or外注利用。貸し部屋所有者が運営 を外国語堪能な人に委託。自前価格 設定サービス内容ポリシー、・・) 日和見主義の異なる視点での克服 顧客との直接相互作用による克服 (自前の直接相互作用蓄積による独 自の判断が可能) 従来にはない資産特異性の実現 多種多様なホスト資産の活用 個別顧客向け個人情報の最大活用 ホスト固有の努力のフィードバック 自分の本質的動機に基づいた労働 多種の裁量権活用による動機改善 不確実性の異なる視点での回避 27
3.Uber,Airbnbのビジネスモデル変革 3.4 ビジネスモデル 専門サービス提供者、消費者の双方がバーチャル空間で相互作用できること、 およびマッチングできた成果の対価としてプラットフォーマーに手数料を支払う 専門サービス提供者 かなり生々しい 内容についての 消費者 直接的相互作用 バ ー チ ャ ル 空 間 支援 プラットフォーム リ ア ル 空 間 専門サービス提供者 の資産(空き部屋、車) かなり実態が分かっており、 他者の資産や社会ニーズへ の敏感な感覚・起業家精 神・デザイン力などが必要 空き部屋に宿泊 運転手付き車に相乗り 28
実は、・・ 専門サービス提供者の保有する資産(モノ)を管理する・・ Uber、AirbnbはIoT活用モデルでもある Uber • 2012年から、金曜と土曜の夜間に需要供給 の不均衡を解決する動的価格決定方式を導 入した。 – 週末に高い価格を設定しドライバにより多くのお 金を提供する。⇒ドライバーの供給量を増やす。 – 価格上昇により意図的に需要減退を起こす。 Airbnb • 部屋スタイル、不動産タイプ、レビュー数、収 容量、場所、季節、ホテルや航空会社の需要、 目的地の情報などを考慮した推奨価格をホ ストに提供する推奨価格アルゴリズムを開始 29
以上をまとめた、・・ Uber,Airbnbのビジネスモデルの要点 ① ランドスケープの変化との共振 ② プラットフォーム使用料課金モデルの構築 ③ 信頼性醸成のためのIT活用とそれを推進 するリーダーシップ(デザイン指向) ④ IoTを活用した専門サービス提供者資産の 把握とコントロール(マネジメント指向) ⑤ 専門サービス提供者と利益相反にならない 分担の明確化とインセンティブ提供 30
ビジネスモデルは、財務モデルというよりは、 ビジネス概念モデル • 「ビジネスモデルは、ビジネスの組織的、財務 的アーキテクチャに他ならない」 ・・・H. Chesbrough and R. S. Rosenbloom,2002 • ビジネスモデルの変化駆動要因は次々に発生 勃興してきた知識経済 インターネットや電子商取引の普及 事業活動のアウトソーシングやオフショアリング 世界的な金融サービスの再編 IoTの普及、・・・ シェアリングエコノミー David J. Teece,“Business Models, BusinessStrategy and Innovation”, Long Range Planning 43 (2010) 172-194 31
どのような新たなビジネス概念モデルか? マクロ・レベル (ランドスケープ) ① ランドスケープの変化と共振 資源小企業でも柔軟に新ニーズに適応 メソ・レベル (レジーム) ② プラットフォーム使用料課金モデルの構築 既存企業と類似課金体系。しかも無駄削減で低価格 ミクロ・レベル ③ 信頼性醸成のためのIT活用とリーダーシップ (イノベーション) ④ IoTを活用した専門サービス提供者資産の把 握とコントロール 新技術(ビッグデータ、IoT)活用 ⑤ 専門サービス提供者と利益相反にならない分担 の明確化とインセンティブ提供 32 エコシステム・パートナーとの共存条件の充足
財務モデルの特徴としては 全イベント で毎回徴 収 専門サービス提供者 プラットフォーマー Uber 支払いの70~80%受 取り 20~30%のサービ ス料徴収 支払い Airbnb 支払いの約90%受 取り(一泊時) 6~7%/予約毎 徴収from消費者 3%/泊毎徴収 fromホスト 支払い 有料ソフト iPhone の初回ダウ Appstore ンロード時 のみ 【アプリ開発者】 30%のサービス料 支払いの70%受取り 徴収 消費者 支払い Uber,Airbnbのサービス・マッチングに伴う手数料課金モデル は必ず徴収できる極めて強力なモデル。しかも自らの責任範囲 はバーチャル世界に閉じており、IT投資以外の投資負担が無く極 めて美味しいビジネス Appstoreはサービス有料化では好敵手のGoogle Playの価格戦略を気にしなければならず、 Appleの利益に占める比率はさほど高くない。 33
4.第4次産業革命時代の変化への示唆 Uber,Airbnbからの示唆 スピード゙ アップ 社会技術ランドスケープ変化からプレッ シャーが発生し、関連ニッチ・イノベーション が発生して、社会技術レジームへ破壊的影 響が波及するまでの時間は短縮化している。 チューン アップ サービス享受を決断するまでの結構面倒な 調整が達成されている。 34
スピード゙ アップ 破壊的影響が波及するまでの時間 が短縮化された理由 • 資源小企業でも容易に広域エコシステム形 成のプラットフォームを構築し易くなったから • 一般人のITリテラシー向上、PC/スマホの普及 によって、多くの人がプラットフォームに登録 して容易にサービス提供者に成れるように なったから • ニッチ・イノベーションの中味が技術的イノ ベーション、組織的イノベーション、どちらでも 良く、ちょっとした思いつきからでも取り組める ようになったから 35
チューン アップ 相乗りサービスでのサービス条件調整の例 相乗りサービ 乗車地点から目的地へと走行する際、 スとは? 運転手と一緒になって車を共有し、一 人以上の乗客の参加を伴うサービス 充足条件 サービス前またはサービス中に、乗車・ 降車位置、待機時間、音楽再生、禁 煙政策、補償など様々な要素について の合意が必要 サービス特性 活動は短命で、各個別サービスのパ フォーマンス期間中、運転手と乗客の 同乗が必要 純粋サービスの要件にかなり近い高度な調整を実施している。 36 M. Andersson, A. Hjalmarsson and M. Avital, “Peer-to-Peer Service Sharing Platforms: Driving Share and Share Alike on a Mass-Scale”, Thirty Fourth International Conference on Information Systems, Milan 2013.
このような変化と能力は新たな可能性を醸成 • リアルな人間同士が地理的制約を超えて直接相互 作用できることが切り拓く新領域の可能性は大きい。 (嘗ての小売業とe-businessの関係を想起して) そこから そこから • • • • 企業境界の見直しが発生 分散化が推進 新たな働き方が可能に 新たな企業形態が可能に • 新たな働き方を選択できる • 新たな組織が登場する。 37
分散モデルと垂直統合モデルの比較 38
モデル比較1:コスト • Uberの場合は運転サービスそのものにしか 対価は支払われない。一方、タクシー会社は 駅前で客待ちしている運転手の時間にも対 価を支払っている。 ⇒Uberの方が安くなるのは自明 • Airbnbの場合も、空き部屋を貸すので安くな るのは当然だが、主要都市での調査では、同 等ホテルと比較して約半額 コスト・メリットは自明 39
モデル比較2:サービス品質 • a) サービス多様化や適正サービス提供の可 能性、b) ニーズ適応スピードの速さ、 • クチコミ/SNS活用などを含め、最新ITの活用と の親和性が高い上に、特に特別の顧客に対 してのおもてなしで無く、ボリュームゾーンでの 多数個別顧客に対するおもてなし実現の能力 が大きい。 • 企業組織の一員としてのサービスでは解決し 難いモラルハザードに成るプレッシャーの克 服も期待でき、個人経営者としての自己の能 力を最大限発揮できるインセンティブがある。 サービス品質向上を期待可能 40
第4次産業革命と強い相関で語られる・・・ 限界費用ゼロ社会とはどんな世界か? 少数の人から多数の人へと経済力が移り、経 済生活が大衆化へ 新たな分散型・協働型ビジネスモデルが採用 される。 垂直統合型で製品やサービスを販売するより も水平展開型へ 実質的には1960年代に始まったデジタ ル革命が長期に渡って展開してゆくこと ジェレミー・リフキン 出典:ジェレミー・リフキン、「限界費用ゼロ社会」より アメリカの経済社会学者、 作家、パブリックスピー 41 カー、政治顧問、活動家
第4次産業革命時代の MLP基盤アクティビティ(想定) 社会技術ランド スケープ 社会技術レジー ム ニッチ・イノベー ション •少子高齢化、人口動態変化、 •環境劣化、資源枯渇、気候変動、 •製品ライフサイクル短縮化、不確実性拡大、 •低成長、格差拡大、“シェア”文化 •資源共有、旅行、移動、雇用市場、・・ •工場、小売、エネルギー、インフラ、交通、都市、 家庭、医療 組織的イノベーション: •事前対応型、遠隔対応型、データ活用型、未 来予測型・・ •分散化、オープン化、スマート化・・ 技術的イノベーション: •IoT,AI,ロボット、ビッグデータ、クラウド・・ •モジュール化、Plug&Play、シミュレーション・
“プラットフォームエコノミーの勃興”とほぼ等価の・・・ 第4次産業革命への示唆(まとめ) 経済的、社会的、文化的変化がある。 分散化あるいは権限移譲が発生する。 当事者間での相互交流が必要になる。 新技術は潜在的にデフレ効果を持つ。 分配手法によっては賃金を圧迫する危険性が ある。 多くの人はより安価なサービス享受が可能に なる。 クラウス・シュワブ、「第四次産業革命」、ページ47~53を参考に作成 43 世界経済フォーラムの創設者で会長
新製品やサービスの多くはデジタル化&プ ラットフォームを基盤としたものになる。 これは非競合性(独占性)&低価格を特徴と する。 クラウス・シュワブ、「第四次産業革命」、ページ47~53を参考に作成 Uber,Airbnbはこれからの時代の先行指標を 提供している。 これからの時代に対応するには新たな経済構造 や組織構造、人材育成が必要になる。 44
プラットフォームエコノミーの将来(一視点) • 技術では我々の将来は決定されない。 • 導入/使用ルールがポイントになる。 労働者を費用として見るか、開発され 育成される資産として見るか 【企業戦略例】労働者を育成可能な資産 と見て開発・育成費用を負担する。 組織は小規模化し、新たな政策や政 治課題が出現する。 【公共政策例】社会的権利としてより広範 なセキュリティネットを労働者に提供し 持続的成長が期待できる社会を追求 BRIE Martin Kenney Professor: Community and Regional Development University of California, Davis John Zysman Professor: Political Science University of California, Berkeley M. Kenney,” Value and Work in the Platform Economy”, BRIE presentation, May 5, 2015 Berkeley Roundtable on the International Economy 45
プラットフォームエコノミーの将来(一視点) 新しい労働市場 フレキシブルに働ける仕事を求 めている人は多いが、雇用主を 見つけることが難しい。 現代の金融市場(トレーディング など)で使われている技術を雇用 主発掘に活用できるのでは? Wingham Rowan Policy entrepreneur 低レベルの取引のための市場を開設 各業務の手数料の割合が低い運営団体が運営権を 獲得など “細分化された資本主義の世界”のイメージ 46
プラットフォームエコノミーの将来(暫定まとめ) • 現在、最も廉価で効率的に実現可能なサー ビスはマッチングサービス(但し、充分価値が 引き出されていない) • 多様なニーズに対応するプラットフォームが 良心的サービス提供者と消費者間の相互作 用を誘導できる可能性は存在 【例】プラットフォーム源所有者を自治体とし、運 用権を入札、あるいは運用を民間に委託など • 資本主義のある程度の変質に及ぶのか? • プラットフォームエコノミーの台頭に向けた多 方面での対応や準備が必要そう 47