AIの新製品開発への適応

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May 15, 25

スライド概要

生成AIは、いよいよ低価格競争に突入した(OpenAIは本年2月末高額モデルChatGPT-4.5をリリースしたが、わずか1.5ケ月で廃止した。背景にGoogleの強力/廉価なGemini2.0 Pro/Frashの登場などがある)。いよいよ生成AIは本格普及期に入ると予想される。・・・このような中、先進企業は、一歩先に、新製品開発に従来型AI(機械学習やディープラーニング)と生成AIの両方を適応する試みを開始している。・・・このような、新旧AIを適切に使い分けた新製品開発へのAI導入は、加速すれば今後登場する第4次産業革命へのイネーブラーの一つになる可能性がある。このような認識から、関連情報を探索しマトメを作成してみたので紹介する。

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定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。

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各ページのテキスト
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AIの新製品開発への適応 - 生成AIを含む各種AI適応を如何に準備すべきか? - B-frontier 研究所 高橋 浩

2.

目的 • 従来から産業革命レベルの変革のコアは新製品開発であっ た。 • 現在、生成AIが話題だが、先行した既存AIと生成AIを適切 に組合わせた場合、第四次産業革命の有力なイネーブラー になる可能性がある。 • しかし、AI導入率は現在、約13%程度と非常に低い(McKinsey 2023)。 • 但し、現在の状態は、イノベーション普及曲線の「早期導 入」段階と想定され、これから急速に拡大することが予想 される。 • 本稿は、このような基本認識の元に、新製品開発プロセス とAIとの対比、プロセスを跨ぐ壁の克服、欧米先進企業と 日本企業のAI適応比較などを検討し、今後、どのような準 備が必要かを考察することを目的とする。 2

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目次 1. 2. 3. 4. 5. 6. はじめに 生成AIとイノベーション AIの新製品開発プロセスへの対比 最近のAI適応事例の紹介と評価 日本のAI適応事例の紹介と評価 これからの新製品開発の進め方 3

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プロローグ(McKinsey報告2023の要点) • AIへの取組みは初期段階にあるが、生成AIは既にかなり幅広く 普及している。 • AI導入を報告している組織の60%は生成AIを活用している。 • 主要な生成AI適応分野はマーケティング、営業、製品・サービス開発、 カスタマーケア、バックオフィスサポートなどである。 • この中で、先進企業は従来型AIと生成AIの両方を活用している。 • 先進企業は製品開発にAIを活用する傾向が他組織より遥かに強い。 • そして、コスト削減よりも全く新しい事業や収益源創出に比重 を置く傾向がある。 • 現在は、全体としてAIの導入と効果は安定的であり、AI活用の 範囲は限定されているが、今後大きな変化が起きると予想され る。 • 結論:製品開発分野へのAI活用が重要である。現在は低位水準 にあるが、この分野への適応拡大を強力に推進する必要がある。 4

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1.はじめに 検討の背景 • AIは新製品開発へも革命をもたらし、新製品開発の成功率向上 や期間短縮を実現させる可能性が高い。 • また、AIは多様であり、種々の側面で強力な応用能力がある。 • 例えば、新製品のアイディア出しやコンセプト創造には生成AI が有望である。 • そこで、新製品開発の全プロセスを網羅した“AIの新製品開発 への適応”を定式化することが重要である。 • 但し、導入期間はかなり長期間に渡ることを認識する必要があ る。 • 結論:上記のような前提で、新製品開発の全体構成を深く理解 し、AI適応の本格到来に備えた取組み開始が求められる。 5

6.

人工知能(AI)を構成する各種AI • AIと一口に言っても多様な側面 がある。 • 中には古くから存在しているも のや最近登場して話題になった 生成AIもある。 • AI一覧を右図に示す。 人工知能(AI) 機械学習(ML) • 機械学習(ML) • デープラーニング(DL) • 自然言語処理(NLP) • 生成AI(&大規模言語モデル (LLM)) • 各内容を次頁に示す。 6

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• 機械学習(ML): 各AIの機能 • 明示的なプログラミングをせずにデータから学習してパフォーマンスを時間の経過ととも に向上させられる。 • データ内のパターンを識別し、それらのパターンを用いて予測や意思決定を行える。 • ディープラーニング(DL): • 人工ニューラルネットワークを使用するMLのサブセットで、大量のデータから複雑なパ ターンや表現を自動的に学習することができる。 • 経験とデータから自動的に学習できるため知識の全てを人間が明示的に指定する必要がない。 • 自然言語処理(NLP): • AIと言語学を融合させて人間の言語を処理・理解できるようにする分野。言語学、ML、DL の技術を活用し、言語翻訳、感情分析、音声認識、テキスト要約などを実行する。 • 構文、意味、文脈を分析し、書き言葉と話し言葉の両方を処理できる。 • 生成AI(&大規模言語モデル(LLM)): • 人間の言語を理解、生成、操作するように設計された高度なAI。学習プロセスでは通常、 モデルのパラメータを微調整し、先行する文脈に基づいて文中の次の単語を予測する。 • この反復プロセスが繰り返され、言語の統計的特性と複雑さを理解できるようになる。 • 言語の微妙なニュアンスや複雑なパターンも捉えられ様々なタスクに適応できる。 7

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本稿の構成 • 本課題検討にはAI機能の全体像を理解することが重要である。 • 新登場の生成AIが新製品開発においてどのように位置付けられ るかも明確にする必要がある。 • このような要件を考慮して本稿を次の構成で考える。 • 多様なAI機能の全体把握 • 生成AIとイノベーションの関係性の明確化 • 新製品開発でのAIと開発プロセスとの対比 • 最近のAI適応事例の紹介と評価 • 日本のAI適応事例の紹介と評価 …本節 …2節 …3節 …4節 …5節 8

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2.生成AIとイノベーション AI活用は何を目指すか? • AI活用の最大のメリットはイノベーションの向上である。 • 他には、効率性、俊敏性、生産性向上などがある。 • 現在はまだ新製品開発にAIを導入している企業の比率は少ない が、数年内に急増することが予想される。 • この状況で、AIが「予測コストを削減する予測技術」と定 義されていることが重要である。。 • 即ち、新製品開発は予測に関する不確実性の中で如何に膨大な 意思決定を適切に行えるかが中核になる。 • 新たなイノベーションの側面では、AIは、定義からして重大な 貢献ができることが期待される。 • 本節は、このような認識から、まずは生成AIが新製品開発でど のようにイノベーションと係わるかを捉えるを検討する。 9

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生成AIと特定イノベーションタスクとの対応関係 縦軸: • 汎用 vs 専門家 • 適用目的に よって異なる 象限2 専門家 モデル 概念を洗練するための エンジニアリングと技術 領域固有の専門家モデ 的な問題解決に特化した ル 専門家モデル 象限1 横軸: • 信頼性の程度 • 不正確さが悪 い訳ではない 状況もある。 生成モデル 象限3 象限4 アイディア創出と発見 評価と計画のための独自 のための公開データを データ(RAGなど)を 使用した一般モデル 活用した一般モデル 低い精度でも十分 高度な精度が必要 10

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生成AIの特定イノベーションタスクへのマッチング • 象限1:アイディア創出と発見のための公開データを用いた一般モデル • 斬新なアイディアの創出とブレインストーミング、初期の顧客ニーズと市場要件の 発見、様々な分野の基礎理解を得るための新しいトピックの探索などを行う。 • 結果、水平思考能力を高め、より革新的で創造的なソリューションにつなげられる。 • 象限2:概念の洗練のためのドメイン固有データを備えた専門家モデル • 探索と創造性に関連するが、ドメインに関するより具体的な知識が求められる。 • ここでは、一般モデルで十分にはカバーできない高度に専門化された分野でのアイ ディア生成などを行う。 • 象限3:技術的問題解決のための明確な能力を持つ専門家モデル • 技術的または科学的な問題解決、エンジニアリングと設計、規制およびコンプラ イアンス手順の管理などに対応したタスクが中心になる。 • ここでは、従来のツール活用に伴う全体的複雑さを回避し、最適なソリューショ ンをより迅速に見つけられる。 • 象限4:評価と計画のための独自データを備えた一般モデル • 多様なコンテンツの要約と分類のようなタスクが考えられる。 • この領域は、AIの結果を完全に信頼できるように実行する必要があるが、最近大 きな進歩を遂げている。 11

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イノベーションプロセスへの生成AIの活用 • 生成AI活用は不正確さへの懸念とアイディア創出における創造 性のメリット間のバランソを取ることが重要になる。 • そのため、広く使用されている汎用性の高い一般モデル (ChatGPT等)とドメイン固有の複雑さに対応できるカスタマイ ズされた専門家モデルを識別し使い分ける必要がある。 • また、AIは以前から存在しているので、生成AIと既存AIとの適 切な役割分担が重要になる。 • 上記のような課題に本格的に対応するには、イノベーション チームの人的能力評価や人材育成など、組織絡みの課題への対 応も重要になる。 12

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3.AIの新製品開発プロセスへの対比 新製品開発におけるAIのポジショニング • 前節までの知見を踏まえ、AIを新製品開発に導入するためのAI の役割、タイミング、場所、性質を理解する地図を作製する。 • 評価軸としては、縦軸(テクノロジーとしてのAI)を2つの視 点に分ける。 • 「創始者」(オリジネーター)としてのAI • 「促進者」(ファシリテーター)としてのAI • 横軸は新製品開発プロセスの各段階に関係づける。 • この視点で整理したAI機能の新製品開発ポジショニングを次頁 に示す。 • これを元にAIの新製品開発プロセスへの対比を以降に示す。 13

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新製品開発プロセスで使用されるAIをAI活用創始者とAI活用促進者の軸で表記 アイディア 出し 概念生成 ビジネス ケース 開発 テストと 検証 商品化 販売後 創始者 相互関係発見 概念開発 製品設計 成功予測 概念創造 仮想プロトタイプ デジタルプロトタイプ アイディア創造 バックエンド プロトタイフ開発゚ 顧客満足 ビジネスケース構築 デジタルツイン マーケティング デザイン最適化 AIの役割 技術プッシュアイディア ビジネス評価 デジタルツイン 売上予測 販売計画 価格計画 インターネットでニーズスキャン シミュレーションモデル 市場データ分析&消費者の声 ローンチ計画策定 リスク管理 非構造消費者の声 性能最適化 競争情報 問題識別 フィード バック分析 管理最適化 フロントエンド 技術検証 ポートフォリオ最適化 探索 市場分析 サプライチェーン最適化 市場検証 ワークフロー自動化 プロジェクト管理 促進者 新製品開発プロセスでの位置

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AIベースで新製品開発を推進するメカニズム • 予測は不確実性の中で意思決定を支援する中核の機能である。 • 新製品開発における重要な概念はプロセスの概念である。 • 新製品開発は一連の段階を経るプロセスとして表現できる。 • 各段階と段階の間には意思決定に関わる関門(意識的決断の実 行)が存在する。 • AI時代では、アイディア抽出から製品発売(更には販売後のケ ア)までの新製品開発のプロセスを情報プロセスとして把握で きる。 • 即ち「新製品開発プロセスとは不確実性を低減し、リスク管理 のための情報を収集し設計する一連のタスク」と捉えられる。 • これに基づく新製品開発プロセスを次頁に示す。 15

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アイディア出しから発売までの新製品開発プロセスにおけるAIの位置付け Gate1 Gate2 Gate3 ステージ1: 概念生成 ステージ2: ビジネスケー ス構築 アイディア出し&概念生成 ビジネス ケース構築 発見:アイ ディア創出 AIはニーズと機会を特定し、 技術データをマイニングし、 アイディアとコンセプトを生 成し、コンセプトをテストす ることなどを行う。 AI は市場と技術の情報を見つ け、財務分析を行い、ビジネ ス ケースの作成を行うことで ゲート 3 の決定を下すことを 支援できる。 Gate4 ステージ3: 開発 Gate5 ステージ4: テストと検証 開発&テスト 発売後のフォロー ステージ5: 商品化と販売 バックエンド AI は開発を高速化し、設計と高速反復を実 行し、テストとフィールド試験用のデジタ ルプロトタイプとデジタルツインを構築し、 製品 (化学分子と医薬品) を作成する...その 他にもさまざまなことが可能になる。

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新製品開発プロセスの主要な区分けと3回の決断 5つのGate(関門)が識別されるが、特に重要な関門を3つ特定し、Gate2, Gate3, Gate5で求めらる決断内容および決断に至るA~D各ステージの活動を示す。 Gate1 Gate2 Gate3 ステージ1: 概念生成 ステージ2: ビ ジネスケース構築 アイディア出し&概念生成 ビジネス ケース構築 発見:アイ ディア創出 フィージビリティ 候補絞り込み A Gate4 ステージ3: 開発 ステージ4: テストと検証 開発&テスト ステージ5: 商品化と販売 バックエンド 商品化決断 製品化決断 B 発売後のフォロー Gate5 C D 情報収集活動またはタスク 統合と分析 結果または成果物 Go/中断, Go時は次のステップへ プロジェクトチームによ る情報収集活動:市場調 査、ラボテスト、フィー ルドトライアル 仮定を検証し不確実 性を減らし、リスク を管理するために収 集された情報を分析 ビジネスケース、エ ンジニアリング図面、 プロジェクト計画な どの評価と予測 Go/中断の決定ポイントまたは Gateの結果がレビューされ、投 資を継続するかどうかが決定さ れ、次のステップへ AIが推進する情報プロセスはA, B, C, D毎に上記サイクルを繰り返すプロセスとして把握できる

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A~D各ステージの処理 • A:アイディア出し&概念生成 • 製品概念の定義、プロトタイプ設計の作成、最速パスの市場分析、ビ ジネス分析などを行う。 • B:ビジネスケース構築 • 「開発開始」の決定は新製品開発プロセスにおけるもっとも重要な意 思決定であり、AIは新製品開発の選択に関わる決定を支援する。 • C:開発&テスト • 製品設計ならびに試作品の様々なテストを経て商品化決定を支援す る。 • D:バックエンド • 企業が新製品をより効率的に販売することを支援する。 18

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A: アイディア出し & 概念生成 Gate1 発見:アイ ディア創出 Gate2 ステージ1: 概念生成 アイディア出し&概念生成 Gate3 ステージ2: ビジネスケー ス構築 Gate4 ステージ3: 開発 Gate5 ステージ4: テストと検証 発売後のフォロー ステージ5: 商品化と販売 アイディア出しと概念生成段階のためのAIツールとアプリケーション: • 生成AI(例:ChatGPT)を用いて斬新なアイディアを生成する。 • インターネット(非構造化テキスト)をスキャンし、市場のギャップや新たな顧 客ニーズを特定する。 • ブログ、オンライン上の苦情、ユーザーコメントをスキャンして機会を定義する。 • アンケートやインタビューからのテキスト回答を分析する。 • 顧客インタビューガイドの初稿を作成する。 • AIがスキャンから得た洞察を概念提案に変換する。 • 製品概念を評価する。 • 社内技術データ(調査レポート)をマイニングし、知的財産の活用機会を見つける。 • 口頭指示から製品概念を設計・描画し、顧客の反応を予測する。 • 概念図面の反復作業を行い、その影響(コスト、重量など)を推定する。

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B: ビジネスケース構築 Gate1 発見:アイ ディア創出 Gate2 ステージ1: 概念生成 Gate3 ステージ2: ビジネスケー ス構築 ビジネス ケース構築 ステージ3: 開発 Gate4 Gate5 ステージ4: テストと検証 発売後のフォロー ステージ5: 商品化と販売 ビジネスケース構築のためのAIツールとアプリケーション: • オンライン市場データを分析し、洞察を得る。 • 市場規模、売上、価格設定、コストなどを予測する。 • 競合他社の動向(発売、価格設定など)を監視する。 • 技術トレンドと技術革新を把握する。 • 特定の技術分野に関する事実情報や技術的な質問への回答を入手する。 • 財務データを分析し、収益と利益の予測を行う。 • 様々なシナリオをシミュレーションし、価格や競合などの要因が利益に 与える影響を測定する。 • 特定の製品の売れ行きを予測する。 • 潜在的なリスクを特定し、リスク軽減策を提案する。

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C: 開発 & テスト Gate1 発見:アイ ディア創出 Gate2 ステージ1: 概念生成 Gate3 ステージ2: ビジネスケー ス構築 開発とテストのための AI ツールとアプリケーション: • 3Dモデルを作成し、技術図面を生成する。 • モックアップと仮想プロトタイプを作成する。 • 適切な機能と寸法を持つ製品を設計する。 • より使いやすく、見た目にも美しい製品を設計する。 • 迅速な製品テストのために、デジタルプロトタイプと仮想 プロトタイプを開発する。 • 複数の設計の反復と解析を迅速に実行する。 • 構造最適化を実施し、重量とコストを削減する。 • 現場で製品を模倣し、監視し、動作に関するデータを収集 できるデジタルツインを使用して設計を最適化する。 • 製品(化学物質、医薬品)の開発または発見を行う。 • プロジェクト管理を自動化する。 Gate4 ステージ3: 開発 Gate5 ステージ4: テストと検証 開発&テスト 発売後のフォロー ステージ5: 商品化と販売

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D: バックエンド Gate1 発見:アイ ディア創出 Gate2 ステージ1: 概念生成 Gate3 ステージ2: ビジネスケー ス構築 Gate4 ステージ3: 開発 Gate5 ステージ4: テストと検証 バックエンド向けAIツールとアプリケーション: 市場投入: • 市場投入計画(戦略と戦術)を策定する。 • 広告文、画像、動画を作成する。 • 営業担当者向けのスコアリング、ルーティング、営業チームに最適なアクションを提案する。 • 製品流通を管理し、適切な製品ラインナップを確保する。 • 価格戦略を最適化する。 生産: • 生産プロセスと倉庫プロセスを最適化する。 • デジタルツインを使用して、機械と工場のシミュレーションを行う。 • デジタルツインシミュレーションを使用して、新しい生産技術とシステムを検証する。 • サプライチェーンを管理する。 • 従業員トレーニングを提供する。 • 品質管理を管理する。 • ブロックチェーンを使用して、商品をリアルタイムで追跡する。 発売後: • 顧客からのフィードバックと市場データを分析して使用パターン、ユーザーの苦情を把握する。 • デジタルツインを使用して、使用中の製品のパフォーマンスを監視し、問題を特定する。 発売後のフォロー ステージ5: 商品化と販売 バックエンド

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4.最近のAI適応事例の紹介と評価 新製品開発におけるAIの3つの領域 • AI革命は技術からではなく問題そのものから着手すべきである。 • このような視点で、特に3つのターゲット領域を特定し、事例 分析を行う。 • 取組み事例は、欧米の例と日本の例を取り上げ、最後に両者の 相違点や比較評価を行う。 A:アイディア出し&概念生成 B:ビジネスケース構築 C:開発&テスト 23

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A: 例1:新しい医療機器の例 • ボストンのApplied Marketing Science(AMS)は、AIを用い て糖尿病患者と血糖値モニターのユーザーを対象に、体系的な 顧客の声調査を実施した。 • オンラインの患者フォーラム、eコマース、ソーシャルメディ アサイトから120件の詳細な顧客ニーズを抽出した。 • 重要度を評価した結果、優先順位付けされた顧客ニーズと、そ れに基づく新製品開発の機会が生まれた。 • 特定されたニーズには、1) データ管理とセキュリティの強化、2) 試 験紙の廃棄量の最小化、3) より過酷な外部環境へのデバイスの耐性な どがあった。 • これらの知見はプロジェクトチームにとって重要な患者ニーズ に対するイノベーションの取り組みを集中させるのに有効で あった。 イノベーション取組みのための気付きの抽出 24

25.

A: 例2:AI主導のコンセプトカーデザイン • 自動車メーカーは、1台の自動車デザインに30億ド ルを費やすことがある。 • 人々はスタイルに基づいて車を買う傾向がある為 • 従来、このプロセスは「テーマ(Car Theme)ク リニック」に依存しており、自動車メーカーは数 百人のターゲット消費者を集めてデザイン審査す ることをしていた。 • テーマクリニックは1回あたり10万ドルかかり、毎年数 百回開催する必要があった。 • このプロセスに機械学習を適応することでプロセスを効率化し 市場に投入する不良品を減らすことが出来る。 • デザイナーからの視点、色、ボディタイプ、イメージに関する指定に 基づいて新しい自動車デザインを生成する生成AIも活用できる。 適切なテーマクリニック実施でデザイン数減少による開発期間短縮 やコスト削減と同時に優れたデザイン創造を両立 25

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B: 例3:強力なビジネスケースの例 • 市場分析 • • • 技術分析 • • • 競合情報 • AIツール活用で企業はオンラインレビュー、ユーザーフォーラム、オン ライン出版物、雑誌、ジャーナル等から市場データを分析できる。 Monday、Funnel、SAS Customerなどの著名なツールが使用できる。 AIツールは、技術トレンド、投資活動、破壊的イノベーションに関す るリアルタイムの洞察を提供できる。 ChatGPT等も適切なプロンプト提示で有力情報を応答してくれる。 Crayonのようなツールは、AIを活用したアルゴリズムを用いて、競 合他社の製品発売、価格変更、マーケティングキャンペーンなどの 活動を監視できる。 • 財務分析 • AIツールは、市場、売上、財務データを分析し、プロジェクトチームが 堅牢なビジネスケースを構築できるように支援してくれる。 • 価格設定や競争要因の影響を予測するシミュレーションも含まれる。 Business Case • ビジネスケース作成 • Upmetrics、15MinutePlan、My Hub (MBC)などのビジネスケースを生成または作成す るAIツールが存在する。 • ChatGPT等も効果的ビジネスケース作成に利用できる。 26

27.

(A), C: 例4:ファイザーの創薬 • 製薬大手ファイザーは、AIを活用 して創薬を加速させている。 • 同社利用のAI対応プラットフォー ムAtomwiseはディープラーニング を用いて数百万もの潜在的な薬物 化合物を分析し、更なる試験のた めの有望な候補を特定している。 • これにより、ファイザーはより迅 速かつ低コストで新薬を開発でき るようになった。 AI創薬の力を戦略的パートナーに提供 高度なAIプラットフォームを活用した新薬の開発 27

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(A), C: 例5:新たな化学物質の発見 • Unileverは、Arzeaと共同で、物理ベースの設計とAI を組み合わせたAIツールであるインテリジェントプ ロテインデザインテクノロジーを活用して、洗剤・ 洗濯用品向けの革新的なシミ抜き酵素を開発した。 • この画期的な進歩により、成分を50%削減しながら、 安定性、性能、持続可能性を向上させた処方が実現 した。 • わずか18ヶ月で完了したこの迅速な開発は、従来の方法の5倍 の速さであった。 一段と進化した効率化の向上 28

29.

(A), C: 例6:新しい食品成分の発見 • Tilray Brandsの子会社で、健康的なヘンプベースの食 品を製造しているManitoba Harvest(MH)は、AIに よって「発見」された画期的な製品、Bioactive Fiber を発売した。 • MHは、バイオアクティブ企業であるBrightseedと提 携した。 • BrightseedのAIプラットフォームであるForagerは、 植物や微生物に含まれる天然分子(バイオアクティ ブ)を特定し、それらを特定の人間の健康効果と関連 付けることで、食品の発見と検証を加速し、開発期間 を数年から数か月に短縮した。 • AIプラットフォームは、これまで記録されていた量の40倍もの 生理活性植物化合物を特定した。 新たなAIプラットフォームを活用した新成分の発見 29

30.

C: 例7:GEのタービン設計の加速 • GEはタービン開発における設計テストにAIを 活用することで、設計時間を半分にした。 • 従来、エンジニアは単一のタービンブレード 設計で流体力学計算解析に最大2日を費やし ていた。 • 代わりに、機械学習によって、代理モデリングが学習され、わ ずか15分で100万通りの設計バリエーションを評価できるよう になった。 • 代理モデリングとは数値シミュレーションの代わりにニューラルネッ トワークなどの機械学習を活用して現象を計算・予測する手法 代理モデリングによって設計サイクルタイムを半分以下に短縮すると同時に、 同一期間内により多くの設計作業を実施し、効率と設計品質を両立 30

31.

C: 例8:Bye Aerospace社のEV航空機 • 本企業のEV航空機プロジェクトでは複合材軽量機体の設 計にSiemens社のAI設計ソフトウェアを活用している。 • 複雑なエンジニアリングプロセスでは、強度と重量の最 適バランスを実現するために数多くの反復作業が必要に なる。 • AIモデルは設計から解析へのスムーズな移行を促進し、設 計者は反復的改良に多くの時間を費やすことができる。 • 従来の航空機設計プログラムでは通常2~3回の反復しかできなかった。 • このAIツールは週1回の反復サイクルを可能にし、結果としてはるかに多 くの反復と改良が行われた。 • 最終的には要件の99~100%を満たすほぼ「完璧な設計」が完成した。 AI設計ソフトウェアの適切な活用で反復作業回数を大幅に増加 させることが出来、要件を高度に満足する設計を完成 31

32.

C: 例9:ルノーの自動マニュアルトランスミッション • 従来のAMTよりもスポーティなAMT開発を効率化 するため、ルノーは新型トランスミッションのモ デリングにAIシミュレーションを採用した。 • シーメンスのSimcenter Amesimを活用したAIシ ミュレーション技術には、人間の脳に着想を得た ニューラルネットワークが組み込まれている。 • これにより、ルノーの設計エンジニアは新型トランスミッションの 挙動と性能を即座に予測し、開発プロセスの初期段階で迅速かつ的 確な設計改良を行うことができた。 • これにより、開発後期における問題や遅延が軽減され、AMT開発期 間は約50%短縮された。 高度なAIベースのシミュレーション技術活用で開発期間短縮 32

33.

欧米における最近のAI適応事例の評価 • AI活用の多様な取組みが開始されている。 • イノベーション創出への適応・・例1 • ビジネスケース構築向けAIツールの登場 • 既存AI導入で先行した企業の生成AI活用付加 • 新旧両AIの活用で新たな取組みが登場している。 • AI主導のコンセプトカーデザイン・・例2 • より高度なAI活用で効率化と高品質化を両立 • 狙いを効率化よりは要件の完全達成に置く・・例8 • 一段と優れた効率化やイノベーション高度化が進んでいる。 • より進んだシミュレーション技術を活用した時間短縮・例9 • 高度のAIプラットフォームを活用した取組み・・例4, 例5, 例6 • 総括:開発プロセス全体を見て、新旧どちらのAIあるいはAI ツール適応が有効かを特定し、使い分けて成果を出す取組みが 登場している。 33

34.

5.日本のAI適応事例の紹介と評価 A: 例1:ヤンマー株式会社の次世代施設園芸システム 対象 • 次世代施設園芸システム確立のためのテストベッドを運用 しており、将来の食料生産効率化や地産地消モデル創出を 目指す。 AI活用 • 消費者ニーズに合わせた栽培コント ロールと温度・湿度のセンシング、 信頼性検証、遠隔制御で収集した データのAIによる分析により農作物 の収穫時期・収穫量の予測を行う。 成果 • 将来的には、ハウス毎の生育だけで なく、周辺の農作物の生育状況もク ラウドで一元管理し農業プラット フォームを構築する準備ができつつ ある。 次世代施設園芸システム確立に向けたテストベットをAI活用で実施している 34

35.

C: 例2:カワサキモータースの最適人員配置 対象 • 組み立てラインの作業内容を分析し、最適人員配置 を目指す。 AI活用 • 工場内に設置のネットワークカメラ で、組み立て中のオートバイや工具 を撮影し、AI分析で作業者同士の関 係性を読み取る。これから作業のポ イントを把握する。 成果 • 作業遅延カ所を特定し支援すること で、需要や目的に合わせて最適人員 配置ができるようになった。 工場に設置のネットワークカメラのデータをAI分析して作業遅延箇所 を特定し、これを元に需要と目的に合わせた最適人員配置を実現 35

36.

C: 例3:ブリジストンのタイヤ成型 対象 • 作業員のスキルに依存してきたタイヤ製造工程のタ イヤ成型システムにAIを実装する。 AI活用 • タイヤ1本あたり480項目の品質データを計 測するためのセンサーを特別設計。これを 用いてAIでリアルタイムに自動制御した。 成果 • これにより、タイヤの真円性を15%以上向 上させると共に、効率的生産も実現した。 タイヤ成型システムに(新規開発のセンサー装置とともに)AIを導入し、 作業員に依存してきたバラツキを極小化した高品質タイヤ製造を実現 36

37.

C: 例4:デンソーの自動車解体 対象 • 循環型社会の実現に向けて自動車の解体作業の自動化 を目指す。 AI活用 • 手術支援ロボットで培ったロボティ クス技術を活用して、自動車の解体 プロセスをAIに学習させ、精緻な解 体を効率的に行うことを目指す。 成果 • 自動車解体をAI学習ロボッで実行す ることで、効率化と社会的要求の双 方に答えられつつある。 自動車の解体プロセスをAI学習ロボットに学習させて自動化 37

38.

C: 例5:JFEスチールの作業者の安全行動確保 対象 • 製鉄所における作業者の安全行動のサポートを目指す。 AI活用 • 工場内は場所によって照明条件が 異なり、多種多様な装置が配置さ れている。加えて、作業者も様々 な姿勢で作業するので、人物検知 が難しい。この環境をディープ ラーニングで学習することで人物 検知を行う。 成果 • 立ち入り禁止エリアに作業者が進 入した場合には、AIが警報を発す ることで安全が計れるようになっ た。 製鉄所の作業環境では人物検知が困難なので、AIで学習し問題発生時は アラームを鳴らすなどで作業者の安全を守る 38

39.

C: 例6:ロッテのお菓子製造の効率化 対象 • お菓子は室温、湿度の影響を受けやすく、仕上がりに個体 差が出やすい。そのため、従来は経験豊富な検査員による 目視検査を行っていた。その環境を改善する。 AI活用 • この工程の外観検査の合否判定をAIによる高精度な画像 判定に置き換える。 成果 • こうすることで、人的ミスの削減や安全面への配慮、コ スト削減、作業効率の向上などを達成した。 • 更にデータの蓄積と分析を進めることで、製造工程の改 善と共に食品ロスの削減を目指す。 仕上がりに個体差が出やすいお菓子の外観検査を高精度画像AI処理 で行うことで、安全面と効率化を達成 39

40.

C: 例7:TOTOの世界最高水準の陶器工場 対象 • 熟練作業員の技術で継承されて来た便器の成形や施釉の工程 を作業員の経験年数に関係なく均質に作れるようにする。 AI活用 • これらの技術を学習したロ ボットを導入する。成形用の 型の交換作業もAIを使って自 動化する。 成果 • 交換作業が従来は約2時間かかっていたものが、18分にま で短縮され、AI実装の最新設備の導入で、世界トップクラ スの生産性を実現できた。 AIを活用した技能伝承により効率化と自動化を達成した世界最先端の工場の実現 40

41.

日本における最近のAI適応事例の評価 • 生産現場で熟練労働者の引退が危惧されていることから、彼等のノ ウハウをAIで引き継ぐための日本らしい取組みが活発である。 • 例3:ブリジストン、例7:TOTOなど • AI導入による達成目標に作業者の安全性確保など、違った日本らし い取組みもある。 • 例5:JFEなど • 一般的な作業効率化あるいは最適人員配置など効率化に重点を置く 取組みも多い。 • 例2:カワサキモータース、例4:デンソー、例6:ロッテなど • 少ないが将来に向けてイノベーションに取組むケースもある。 • 例1:ヤンマーなど • 総括:日本の実情に合った取組みをしているが、既存の効率化・自 動化・安全化などに焦点を当てすぎており、AIを活用したイノベー ションや開発プロセス全体を見た最適AI選択などは手薄である。 41

42.

欧米/日本の新製品開発へのAI適応事例の一覧図 手段 ブリジストン 従来AI 高度活用 デンソー ヤンマー AMS JFE ファイザー +Atomwise ユニリーバ MH AIプラット 従来AI + フォーム等ツール + 高度活用 高度活用 ロッテ TOTO GE AIプラット 従来AI フォーム等ツール + 高度活用 高度活用 新旧両AI 棲み分け 高度活用 カワサキモータース ルノー +Simcenter Amesim +Arzea Bye Aerospace +Forager コンセプトカー設計 イノベーション志向 新成分の発見 A: 安全性, 社会的 要求(無駄削減) 効率化, 自動化 志向 C: 42

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従来型AIと生成AIの両方を活用した場合の効果 従来型AIと生成 AIの両方をA~D ステージで活用 した場合 A B • 生成AIの導入は次のような効果が期 待できる。 • イノベーションの幅の拡大 • A~Dステージの移行リスク抑制 従来型AIをC, D ステージのみで 活用した場合 C D イノベーションの幅 C D イノベーションの幅 43

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新製品開発へのAI適応の欧米と日本の比較 • 世界のトップランナーは次のような取組みを開始している。 1. 新旧両AIの使い分けによる両AI活用を始めている。 • 日本:既存AI活用(CおよびDのみの視点)に留まっている。 2. 新製品開発の全プロセスを踏まえたAI活用を開始している。 • 日本:AI視点の開発プロセスが視野に入っていない。 3. プロセスのステージを跨ぐ際の壁を乗り越える対応を意識してい る。 • 日本:ステージを跨ぐ際の組織変革などが視野に入っていない。 4. 効率化よりはイノベーションに重点を置いている。 • 日本:依然として効率化視点(CおよびDのみ)に留まっている。 5. 生成AIの幅広い応用分野の中でも新製品開発への対応を重視して いる。 • 日本:新製品開発への生成AI導入には到っていない。 6. 先進的なAIプラットフォーム/シミュレーションツール提供企業 との連携を意識している。 • 日本:強力な外部AIツールベンダーとの連携が進んでいない。 44

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6.これからの新製品開発の進め方 AIの新製品開発への導入に向けて • 新製品開発にAIを早期に導入した企業は、大きな成果を上げ、 開発期間の大幅な短縮やイノベーションの加速を実現している。 • しかし、一般的企業はAIを完全導入していないだけでなく、 75%の企業は単一アプリケーションにおいてすらAI導入に至っ ていない。 • そこで、今後の導入に関係して下記3点をまとめる。 • AIベース製品開発のメリット • AIベース製品開発の課題 • AIベース製品開発の将来のトレンド 45

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AIのメリット一覧 • 5点にまとめる。 • 市場投入までの時間 短縮 • 製品体験の向上 • パーソナライゼー ションの強化 • コスト削減 • イノベーション促進 46

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AI主導の新製品開発の課題 • 但し、課題も残されている。 1. データ品質:AIアルゴリズムを効果的に機能させるには、大量の 高品質データが必要である。企業は、使用するデータが正確で、 クリーンで、関連性が高いことを保証する必要がある。 2. スキルセット:AI製品開発には専門スキルが必要である。企業は、 AIベースの製品開発に適した人材の育成と採用に投資する必要が ある。 3. 統合:既存のプロセスにAIを統合することが困難な場合がある。 企業は、AIシステムが既存環境と互換性があり、他システムと シームレスに統合できることを保証する必要がある。 4. セキュリティとプライバシー:AIアルゴリズムは、顧客情報や企 業秘密などの機密データを扱うことがある。企業は、AIシステム が安全であり、各種規制に準拠していることを確認する必要があ る。 5. コスト:AIベースの新製品開発は、特に中小企業にとってコスト がかかる可能性がある。企業はそのコストとメリットを慎重に評 価する必要がある。 47

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AI主導の新製品開発のトレンド • パーソナライゼーション:AIは、顧客一人ひとりの固有のニーズを満 たすパーソナライズされた製品を開発するのに役立つ。 • 予測分析:AIは、企業が特定の製品に対する消費者の需要を予測し、 在庫管理を改善するのに役立つ。 • 拡張現実(AR):AIは、企業がAR技術を用いて没入型の製品体験を 生み出すのに役立つ。 ARは、顧客が購入前に製品を自分の環境で視 覚化することができ、製品への信頼を高め、返品の可能性を減らすこ とができる。 • 共同設計:AIは、デザイナー、エンジニア、その他関係者間のリアル タイムコミュニケーションとフィードバックで、共同による製品設 計・開発に役立つ。これにより、企業はより優れた製品をより迅速か つ効率的に開発できる。 • 自律的な製品開発:AIは、企業が人間の介入なしに自律的に製品を開 発するのに役立つ。これには、AIを用いた新製品のアイディア創出、 プロトタイプの設計、さらには製品の製造も含まれる。 48

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新製品開発へのAI導入に向けて • 経営陣への重要なメッセージは、企業はAI導入に迅速に取り組 む必要があり、さもなければ、機会を逃すリスクがあるという ことである。 • 実務家に対する教訓: • 導入をためらう主な理由は、経営陣のコミットメント不足、実証され た価値の低さ、信頼の欠如などがある。 • 新製品開発プロセスの特に開発・テスト段階では特定AIアプリケー ションと新製品開発パフォーマンスとの間に強いプラスの相関が見ら れる。 • 企業は、AI導入を加速させるため、協調的な取り組みを行うべきであ る。 • この取り組みは、経営幹部の強いコミットメントと価値創造への注力 によって主導される必要があり、よくある落とし穴を回避するために、 実績のある技術導入プロセスを活用する必要がある。 49

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最終まとめ 1. A~Dの各ステージでステージ固有の生成AI、既存AIの融合あるいは両 立の試みが登場していた。 2. このような取組みはイノベーションの窓口を広げ、最終的にはイノベー ションの創出を高める効果がある。 3. このような視点から欧米先進企業の取組みと日本企業の取組みを比較す ると、両者間には大きな相違あるいは取組みの時間差があるように思わ れる。 4. 日本企業はこの相違を良く理解し、生成AIの新製品開発への適応をより 高める努力を行う必要がある。 5. 新製品開発へのAI適応は、取組み体制の構築、各ステージ対応の事前準 備、プロセスを跨ぐ決断の定式化など、時間がかかり、長期的対応が必 要なものが多い。 6. しかし、最終的効果は大きいことが期待される。 7. これらを良く理解し、適切な行動を開始することが必要である。 50

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編集後記 • イノベーションの根幹を担う新製品開発へのAIの適応は、AIを核とする第四次 産業革命の趨勢を占うのに特に重要である。 • この分野は前段階のIT革命や第一次産業革命以来の膨大な研究がある。 • この歴史に新たなAI革命の影響を考える研究は多いが、AIの新製品開発への適 応ではRG Cooper名誉教授等のグループが先行しているようである。 • よく知られた論文がある上に、産業界にも詳しく、Forbesなど非アカデミーの 記事にも通暁している。 • そこで、今回はCooper教授の論文の内容と共に、論文中に引用されていた雑誌 RG Cooper マクマスター 記事情報も加味し、それに対応する日本の事例も加えてまとめてみた。 大学名誉教授 • 新製品開発のパラダイム変革は容易ではない。そこで、世界全体での現状は適 (カナダ) 用率が低いが、強力なビジネスモデルが登場したりすると、事態は急変する可 能性がある。 • 現在は各国のトップ企業が自国製造業で新たなビジネスモデル構築を競争する 非常に大事な時期に差し掛かっている。 • 例えば、日本の例で言うと、IoT普及が目前であった時期に、コマツのKomtrax が登場したことが日本の状況を大きく変えた。 • 新製品開発へのAI適応もこれに類似の時期に差し掛かっていると考えられる。 • 良いビジネスモデルの登場を期待したい。 51

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文献