デジタルサービス化への旅 総集編

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March 15, 23

スライド概要

従来の「製造業のサービス化」が一段と範囲を広げている。デジタルサービス化(Digital Servitization)という新たな用語が定義され、多様な論客による優れた研究が多数発表されている。このような活動は新たな先進企業の登場によっても触発されている。例えば、ABB Marine&Ports、Airbus Skywiseなどの企業である。そこで、これらの企業と研究者の連携によって公表された論文などの要点をまとめて報告する。現在のDX化推進にも役に立つ内容であると考える。

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定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。

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1.

デジタルサービス化 への旅 - 総集編 - 1

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自己紹介 - B-frontier研究所代表 高橋浩 • 略歴: • 元富士通 • 元宮城大学教授 • 元北陸先端科学技術大学院大学 非常勤講師 • 資格:博士(学術)(経営工学) • 趣味/関心: • 温泉巡り • 英語論文の翻訳 • それらに考察を加えて情報公開 • 主旨:“ビジネス(B)の未開拓地を研究する” 著書: 「デジタル融合市場」 ダイヤモンド社,(2000)、等 • SNS: hiroshi.takahashi.9693(facebook) @httakaha(Twitter)

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• • 目的 全体構成図 第1章 デジタルサービス化への挑戦 • 第2章 デジタルサービス化のインパクト – 1.1 デジタルサービス化(DS化)の定義 – 1.2 DS化を実現している先行企業 – 1.3 デジタルサービス化の分類 – 2.1 不確実性 • • 2.1.1 収益不確実性 2.1.2 構造不確実性 • • 2.2.1 移行時の障壁 2.2.2 移行時の緊張 – 2.2 移行障害 目次 • • 第3章 戦略能力の獲得と移行シナリオ ・・・ 4 ・・・ 6 ・・・ 8 ・・・ 10 ・・・ 14 ・・・ 24 ・・・ 25 ・・・25 ・・・27 ・・・ 32 ・・・ 32 ・・・ 37 ・・・ 44 – 3.1 組織化論理 – 3.2 戦略的能力の確保 ・・・45 ・・・50 – 3.3 言説的移行シナリオ ・・・56 第4章 デジタルサービスプラットフォーム – 4.1 複雑性 • • 4.1.1 デジタル技術の複雑性 4.1.2 実装の複雑性 – 4.2 プラットフォーム活用 • 第5章 デジタルサービスビジネスモデル • 第6章 デジタルサービスエコシステム • 第7章 まとめ – 5.1 双方向性 – 5.2 ソリューション – 6.1 B2Bコンテキスト – 6.2 エコシステムオーケストレーション ・・・ 65 ・・・66 ・・・67 ・・・68 ・・・71 ・・・ 79 ・・・80 ・・・84 ・・・ 91 ・・・92 ・・・95 ・・・ 104

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“デジタルサービス化への旅”の目的 製造企業がデジタルサービス化へ移行する 長旅の多様な側面を俯瞰的に検討する。 • デジタルサービス化への挑戦の側面 • デジタルサービス化のインパクトの側面 • 戦略能力の獲得と移行シナリオの側面 • デジタルサービスプラットフォームの側面 • デジタルサービスビジネスモデルの側面 • デジタルサービスエコシステムの側面 4

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“デジタルサービス化への旅”のサイクル 6 オーケストレーション デジタルサービス エコシステム 1 デジタルサービ ス化への挑戦 2 5 双方向性 デジタルサービス ビジネスモデル 4 複雑性 サービス分類 デジタルサービス プラットフォーム デジタルサービス化 のインパクト 不確実性 3 戦略能力と 意図的物語 組織化論理 5

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1 デジタルサービス化への挑戦 デジタル化とサービス化 • デジタル化は2つに分類 – Digitisation:アナログデータを デジタルデータに変換 • 例:音楽のLPをCDに変換 – Digitalization:デジタル技術を使用してビジネス モデルを変革し、それによって新たな価値創造と収 益創出の機会を提供 • 例:人々が音楽に接する方法を音楽 ダウンロード(ソフトウェア化)に変換 • サービス化はdigitalizationと結合 • デジタルサービス化は競争優位性獲得を創出 6

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消費者に選ばれるサービスを提供できれば・・ • 消費者が製品やサービスを消費する際にデータを生成 • そのデータを検知/収集し分析可能にする新たな手段がIoT,AI,アナ リティクスなどのデジタル技術 • このデータ活用から価値創造や収益創出が生まれる。 • 「消費者、サービス、データ」の関係は大きなサイクルを描く。 • 最終的にビジネスモデルと関係付けるには大きな視野が必要 データを収集分析 することで消費者 体験を改善 消費者 サービス データ 価値創造と収益創出 はデータ起因で生成 価値創造へ 消費者がサー ビスを消費 その結果デー タが生成

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1.1 デジタルサービス化(DS化)の定義 デジタル化とサービス化の統合を大きな視野で把握 ① • DS化とは「製品中心のBM(ビジネスモデル) からサービス中心のBMへの変革プロセスのた めにデジタル技術を利用する」こと + ② • サービス化を実現するためのソフトウェアを含む システム化としても把握 + ③ • 多様なパートナーと連携したサービスエコシス テムとしても把握 8

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DS化の概念図 • DS化は統合された製品サービスソフトウェアシス テムに決定的に依存 デジタルサービスビジネスモデルのイノベーション サービス 製品 ソフトウェア サービス化 デジタルサービス化(DS化) 製品サービスソフトウェアシステム 製品およびアドオンサービス から 統合された製品サービスソフトウェアシステム への移行

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1.2 DS化を実現している先進企業1 海事産業分野の中心企業 ABB Marine & Ports • • 多国籍船舶所有者および運航者に海上ソリューションを提供する大手プロバイダー ABB Marine & Portsのシステムはモラー・マークスはじめ世界の大手海運会社に提供 されている海上&陸上オフィス向け総合海上ソリューションシステム 製造企業ABBが各種海事従業者向けに統合サービスを提供している 10

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ABB Marine & Portsの概要 歴史 • DS化に向けた取り組み は 10 年以上 • 以前は製品サプライヤー だったが、2006~2009 年 頃にシステムインテグ レーターに転身 • 統計学者やビジネスアナ リストなど、新システムに 向けて新たな従業員を採 用 中身 船舶に搭載する新たな機器を特別開発 • 既存機器を改良し監視・リモート診断やトラブルシューティン グができるように変更 • その機器を3rdパーティのハードウェア向けにも拡張 • 船舶のエネルギー使用を最適化するためエネルギー消費を 監視し、航行条件 (天候など) 下での意思決定もサポート • 機器と連動したバックオフィスプロセスの変更も実施 建設中の船舶に機器を事前に搭載する戦略も実 施 初期には無料提供。最終的には保証期間終了後 も有償サービスを利用し続ける顧客が大幅増加 11

12.

DS化でプラットフォームを利用している先進企業2 航空機産業分野の中心企業 Airbus Skywise • • SkywiseはAirbus社が米Palantir社と共同開発したオープンデータプラットフォーム 自社機だけでなく航空機の部品企業、整備企業等を含めて世界30社以上が利用 (航空会社ではエミレーツ航空など。日本ではLCCのピーチが使用) 製造企業Airbusが各種航空機事業者向けに統合サービスを提供している 12

13.

Airbus Skywiseの概要 歴史 • 航空宇宙産業の中心的企業 の一つ • 航空宇宙産業では、航空機、 エンジン、コンポーネントの製 造企業で資産売却を含む価 格競争が発生 • このプレッシャーを克服する ため、Airbus社も航空機の保 守、修理、およびオーバー ホールを含む新サービスを新 収益源にする活動を開始 中身 米Palantir社と共同でAirbus関連のトータルデータプ ラットフォームを開発 それをオープン化して既存の保守運用会社および 航空機運用会社に提供 • 既存の保守会社(例:Lufthansa Technik の Aviatar など)と も競合はしているが、 • DS化の推進で有利にサービス提供している状況 DS化は航空宇宙産業に破壊的な影響を及ぼし企 業内および企業間のビジネスを大きく変化させてい る。 13

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1.3 デジタルサービスの分類 (1) デジタルサービスの分類(1):サービスレベル • デジタルサービス化で、製造企業のポジション(例: OEM企業)と顧客ニーズへの対応レベルで多様な サービスが登場 • 対象分野によってサービス内容は著しく変化 • 典型的な3つのサービスレベル ◆製品指向サービス ◆プロセス指向サービス ◆成果指向サービス 14

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3つのサービスレベル 製品指向サービス • PLS:製品ライフサイクルサービス • 製品の適切な機能確保のためのサービス • 配送、文書化、設置、設定、校正、保守修理、保証、スペアパーツ、改修、改造、など プロセス指向サービス • AES:資産効率化サービス • PSS:プロセスサポートサービス • 顧客を支援するためのサービス • プロセス指向トレーニング、コンサルティング、エンジニアリング (R&D、テスト、最適化、 シミュレーション)、リモート状態監視、予防保守、など 成果指向サービス • PDS:プロセス委任サービス • 顧客に代わって実行責任を負うためのサービス • 梱包作業管理、メンテナンス機能/スペアパーツ管理、フリート管理、プラント調達活動 など、契約に基づくサービス 15

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サービスレベル間の移行 サービスレベルに対応して必要なデジタル技術群が変化 製品指向サービス プロセス指向サービス 成果指向サービス サービスの種類 PLS:製品ライフサイ クルサービス • メンテナンスチケッ • ト 保証管理 • スペアパーツ管理 • サービス事例 • • サービス適応 対象 その企業の製品 関連する技術 AES:資産効率化 サービス PSS:プロセスサポー トサービス IoT スペアパーツの最 適化 工程・ラインの最 適化 予防保全 お客様の工程(ライン 内の製品) IoT, Cloud, (DA) PDS:プロセス委任 サービス • ラインの性能保 証 とボーナス/マ イナス論理 お客様の業務 IoT, Cloud, BD, DA 16

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サービス化とIndustry4.0融合の枠組みから (2) デジタルサービスの分類(2):サービス提供タイプ • 2つのビジネスモデルイノベーションを検討 1.デジタル化の側面 – Industry4.0技術の複雑性レベルを考慮 • 企業の内部プロセス(コスト削減、生産性、柔軟性など)の 革新軌道レベルに準拠 2.サービス化の側面 – 製造企業の様々なサービス提供レベルを考慮 • 顧客に焦点を当てたデマンドプルの価値提供レベルに準拠 17

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サービス化とデジタル化のための概念的フレームワーク 目的 • サービス化とデジタル技術の種類の違いを明示 • 追求可能な組合せを提示 • ビジネスモデルイノベーションの軌跡と課題・意味を可視化 サービス提供タイプ スムーズ化サービス 適応サービス 代替サービス 高い (Industry4.0関 連サービス) Industry4.0型 スムーズ化サービス Industry4.0型 適応サービス Industry4.0型 代替サービス 中程度 (デジタルサービス) デジタルスムーズ 化サービス デジタル適応 サービス デジタル代替 サービス プロセス& 顧客指向 顧客指向 低い (マニュアルサービス) 実装の複雑性 マニュアルスムー ズ化サービス 極低い マニュアル適応 サービス 低い 中程度 マニュアル代替 サービス 高い 極高い 18

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概念的フレームワークの構成 • 横軸、縦軸を3区分しビジネス実装の複雑性を 低い 高い 中程度 極高い 示す。 実装の複雑性 極低い • 横軸:サービス化タイプ ◆スムーズ化サービス ⇔ (製品指向サービス) ◆適応サービス ⇔ (プロセス指向サービス) ◆代替サービス ⇔ (成果指向サービス) • 縦軸:デジタル化レベル – マニュアルレベル: – 中程度レベル: – 高度レベル: 19

20.

デジタルサービス化に向けた3つのプロセス (3) デジタルサービスの分類(3):開発ステップ • デジタルサービス化への移行は次の3つのフェー ズを段階的に進めることが必要 フェーズ1 ◆「製品+」論理による製品拡張 フェーズ2 ◆「複数」論理によるポートフォリオ開発 フェーズ3 ◆「プラットフォーム」論理によるポートフォ リオ統合 20

21.

デジタルサービス化に向けた投資を収益に変換する枠組み フェーズ1 ◆ 「製品+」論理によって製 品を拡張 フェーズ2 フェーズ3 ◆ 「複数」論理によって顧客 価値を浮かび上がらせる ◆ 「プラットフォーム」論理に よって複数論理を統合 顧客の課題 顧客貢献 顧客貢献 ソフトウェアアプリケーション 組み込みソフトウェア 顧 組み込みソフトウェア ハードウェア (製品) 顧客貢献 顧客の課題 顧客の課題 古 典 的 サ ー ビ ス ハードウェア (製品) 古客 典ベ 的ー サス ーサ ビー スビ ス ビジネスエコシステム貢献 ソフトウェアアプリケーション 顧 組み込みソフトウェア ハードウェア (製品) 古 典 的 サ ー ビ ス 客 ベ ー ス サ ー ビ ス

22.

各フェーズの価値創造とサービス分類との対比 フェーズ1 ◆「製品+」論理による製品拡張 ⇔製品指向サービス、スムーズ化サービス • IoT、AI、ビッグデータ、各種データ解析、などで フェーズ2 ◆「複数」論理によるポートフォリオ開発 ⇔プロセス指向サービス、適応サービス、 一部成果指向サービス • ソフトウェアビジネスモデルの探索 • サービスを成果ベースのビジネスモデルに変換 – 機器の状態や使用状況に関するデータ収集から価値創造、 – 保守プロセスを成果プロセス(稼働時間保証など)へ見直し、などで フェーズ3 ◆「プラットフォーム」論理によるポートフォリオ統合 ⇔ 成果指向サービス、代替サービス • プラットフォームビジネスの探索 – 複数のビジネスモデルを組合わせて、個別企業の枠を超えた価 値創造活動の実施、などで 22

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デジタルサービス化への挑戦(まとめ) 1 2 サービス分類 サービスレベル 製品指向サービス サービス提供タイプ スムーズ化サービス 開発ステップ 「製品+」論理 不確実性 移行障害 3 組織化論理 戦略的能力 意図的物語 4 複雑性 プラットフォーム 5 双方向性 ソリューション 6 B2Bコンテキスト オーケストレーション プロセス指向サービス 適応サービス 「複数」論理 成果指向サービス 代替サービス 「プラットフォーム」論理

24.

2 デジタルサービス化のインパクト デジタルサービス化への旅には不確実性と 移行障害が存在 ◆不確実性 • 収益不確実性 • 構造不確実性 ◆移行障害 • 移行時の障壁 • 移行時の緊張 24

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2.1 不確実性 2.1.1 収益不確実性 • 収益不確実性はデジタル提供物と物理提供物の今 後の収入比率と期待収益向上率の相違から発生 収入比率と期待収益向上率(カッコ内)の例 成長機会マトリックス (Gebauer,2020) デジタル 提供物 デジタル 提供物 物理 提供物 物理 提供物 製品 サービス 6.5%(8%) 75.8%(1-2%) 製品 1.5%(15%) 22.7% (2-4%) サービス 25

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デジタルサービス化に向けた投資と収益の関係 既存製品の売上げを原資としてデジタル分野に投資する。 デジタル分野の期待収益向上率は高いものの、投資コス トを回収し屋台骨に到達するまでの見通しは不確実 結果、デジタル投資が先行し、収益に結び付くまでの期間 は長いので、収益不確実性が存在する。 26

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2.1.2 構造不確実性 製造企業の業態は多様である。 • 例:製造企業はOEM(委託者からの製品製造のみを請負う、あ るいはブランド企業の製品を製造する事業者)形態のことも多い。 このような業態の企業はサービスレベルを製品指向からプロセ ス指向、成果指向に移転させようとすると製品の管理権や所有 権の移転検討が避けられない。 そこで、デジタルサービス化は企業の販売モデル(「直接」「間 接」など)や顧客企業データへのアクセス動向に関係してくる。 27

28.

デジタルサービスレベルの移行パス ビジネスモデル(≒サービス指向のレベル)の軸 販 売 モ デ ル ( 顧 客 企 業 デ ー タ へ の ア ク セ ス ) の 軸 製品指向 プロセス指向 成果指向 OEM企業 「間接」 「直接」 ビジネスモデルの 修正スコープ 出発点 間接企業 出発点 直接企業 強化/修正 拡張 再定義

29.

OEM企業、非OEM企業の移行の選択肢 販売モデルが「直接」ならプロ セス指向までの展開は容易で 有り得る。 • ビジネスモデル(BM)は拡張で可かもしれない。 • 更に、成果指向を目指すならBMは再定義が必要 販売モデルが「間接」なら、一 般には製品指向に留まる可能 性が高い。 • この範囲ではBMは強化/修正で可かもしれない。 一方、販売モデルが「間接」で • この場合、更に段階的にプロセス指向さらには成果指向への 展開もありうる。 あっても、販売モデル自体を 「直接」に変える挑戦はありうる。 • BMも状況に応じて抜本的に再定義が必要である。 29

30.

「間接」から「直接」へ移行の課題 サプライチェーンは非常に複雑で強力な関係者が多数存在 することが多いので、一般に「間接」から「直接」への移行は 容易ではない。 特に国際市場では、様々な中間アクター(ディストリビュー ター、システムインテグレーター、請負業者、販売者など) を含む長い流通チャネルに立ち向かわねばならない。 このような場合、顧客企業データへのアクセスはかなり面 倒であり、これがデジタルサービス化への移行戦略を大 きく阻害する。 30

31.

プロセス指向,成果指向への移行の課題 顧客企業データに「直接」アクセスできる場合、サービスレベル移行は「顧客と の取引ベース・アプローチ」から「顧客との関係ベース・アプローチ」へ移行でき ることを意味する。 この場合、次のような項目の融合あるいはバランス確保が必要になる。 技術的および運用上 のニーズへの対応 顧客ベース視点 からの要件への 対応 サプライヤーと顧客のバリュー チェーンをプロセス指向サービスあ るいは成果指向サービスと統合させ るための対応 結果、選択肢の多様性とバランス確保の不透明性から構造不確 実性が存在する。 31

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2.2 移行障害 2.2.1 移行時の障壁 • デジタルサービス化に向けた移行時、フェー ズ1⇒フェーズ3と進展させて行くには次の3 つの障壁が存在する。 1. 「信頼」の障壁 2. 「混合」の障壁 3. 「コラボレーション」の障壁 32

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デジタルサービス化に向けた移行時の障壁 フェーズ2 フェーズ1 フェーズ3 ◆ 「製品+」論理によって製 ◆ 「複数」論理によって顧客 価値を浮かび上がらせる 品を拡張する 顧客の課題 顧客貢献 顧客貢献 ソフトウェアアプリケーション 組み込みソフトウェア 顧 組み込みソフトウェア ハードウェア (製品) 顧客の課題 顧客の課題 顧客貢献 古 典 的 サ ー ビ ス 「信頼」の障壁 ハードウェア (製品) ◆ 「プラットフォーム」論理に よって複数論理を統合する 古客 典ベ 的ー サス ーサ ビー スビ ス 「混合」の障壁 ビジネスエコシステム貢献 ソフトウェアアプリケーション 顧 組み込みソフトウェア ハードウェア (製品) 古 典 的 サ ー ビ ス 客 ベ ー ス サ ー ビ ス 「コラボレーション」の障壁

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フェーズ1⇒フェーズ2への移行を制限する「信頼」の障壁 企業は「製品+」論理を長期に渡って進化さ せ続ける傾向がある。 同時に顧客価値実現のための「複数」論理 によるポートフォリオ開発を遅らせる傾向が ある。 「製品+」論理への注力は短期的には賢明 なアプローチでありうるが、短期的成功が長 期的機会を損ないかねない。 ここに古い製品に依存する論理が未来にも 有効との「信頼」の障壁が存在し、顧客価 値を生み出す方法が妨げられる。 34

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フェーズ2における「混合」の障壁 フェーズ2段階では新旧「複数」のビジネス論理間の関係を混在さ せないで両者間での破壊的競争や干渉を防止する必要がある。 しかし、「分離」だけではソフトウェアベース、成果ベースなどへ の移行の展望は拓けない。 「分離」と「混合」間のバランスを取る必要があるが、難しい可能 性がある。(「混合」の障壁) 一定部分を「分離」したまま新たなビジネス論理を育成する難し い選択を行う必要がある。 35

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フェーズ3における「コラボレーション」の障壁 内部、外部の「コラボレーション」の障壁がある。 ソフトウェアベース、成果ベースなどの新ビジネスモデルの勢い をつけるため、「分離」を強調し過ぎると、「内部コラボレーション」 を弱体化させる危険性がある。 「プラットフォーム」論理を成功させるため、様々な外部企業の 参加と貢献を取込むと準独占につながる危険性がある。(「外 部コラボレーション」の障壁) 36

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2.2.2 移行時の緊張 • 移行の過程で様々な原因による曖昧さが発生する。 – 製品部門とサービス部門間調整の不備/欠如、 – 顧客の混乱と内部管理の不確実性の増大、 – 従業員の緊張の誘発、など。 • これらが組織内、組織間に緊張を引き起こす。 • 4種のパラドックスに整理 1. 2. 3. 4. 組織化のパラドックス 学習のパラドックス 帰属のパラドックス 実行のパラドックス 37

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緊張とデジタルサービス化との関係 4つのパラドックスで整理 b デジタル化対 応(中央と 地域など) 組 織 内 の 緊 張 1 2 d システム保守などデ ジタル化の維持 f 専門家の アイデンティティ h 財務と実行 の優先順位 学習の パラドックス 3 帰属の パラドックス 4 a データ共有/ プラットフォー ムベース c 膨大な情報 e 組織のアイデン ティティ(機関と の役割分担) g データ利活用 の範囲 組 織 間 の 緊 張

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a 1.組織化のパラドックス データ共有を巡り、緊張が生じる。 • 従来のアドオンサービスプロバイダーは知財等でデータ保有と活用がサポートされてい た。 • しかし、デジタルサービス化ではデータ共有がネットワーク全体にとって有益になる。 • 結果、プラットフォームベースの協力関係に移行すると、データ所有権を巡り顧客他と 緊張が発生する。 b 中央と地域間の権限を巡り、緊張が生じる。 • 既存の地域部門向けプロバイダーは地域の顧客、パートナーと深い関係を保有している。 • デジタルサービス化は中央部門が直接全データにアクセスするので、地域部門の独立性 が低下する。 • 従って、地域部門は抵抗する可能性が高く、これを克服するには全体的な組織変更が必 要になる。 39

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2.学習のパラドックス c 膨大な情報を巡り、緊張が生じる。 • 高度なデータ収集と分析機能により、機器の障害情報を含め顧客に情報を提供すること が可能になる。 • 全てをオープンにした運用は透明性を示すため有用ではあるが、顧客の認識を損なう面 もある。 • このような緊張を管理するため、障害情報は顧客向けから削除する仕方も有り得る(サ イバーセキュリティ関係なども同様)。 d ITシステムの保守を巡り、緊張が生じる。 • 顧客は企業側がITシステムの継続的な更新やアップデートをすることを当然のことと考 えがちである。 • 企業側は、システム更新に伴う多大な作業を認識しているので、一旦安定したシステム を使い続けたい。 • この間の認識の違いがコスト負担の認識の違いにも関わってくる。 40

41.

3.帰属のパラドックス e 規制/標準機関の役割を巡り、緊張が生じる。 • 航空や海事などの安全は非常に重要であり、従来は外部機関によって保障されて来た。 • しかし、従来要求される費用や活動はデジタルサービス化で安全を担保しつつコスト削 減が可能になる。 • この変更は当局の役割の大幅縮小に繋がるので、一般に外部機関は変革に非協力的にな る。 f 専門家のアイデンティティを巡り、緊張が生じる。 • 航空機や船舶の場合、機長や船長は一定の意思決定の責任を果たして来た。 • ところが、デジタルサービス化はこれらの意思決定をますます置換えできるようになる。 • これは機長、船長から否定的に受け止められるが、安全性の向上や排気ガスへのプラス 効果などで、徐々に受入れてもらうプロセスを踏む必要がある。 41

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4.実行のパラドックス g データ利活用の範囲を巡り、緊張が生じる。 • 一部のプロバイダーは様々なシステムからのデータを組合わせ産業界の全体像を作成し 出す。 • 顧客もまた、そのようなデータを競合他社と共有することを要求し出す。 • この脅威に晒された企業はデータ共有に消極的になるが、共同データ利用の契約締結も あり得る。 h 財務と実行パフォーマンスを巡り、緊張が生じる。 • 航空や海事の分野では、デジタルサービス化に多額の投資が必要だが、収益は依然とし て不確実である。 • その中で、製造企業と最大サービスプロバイダーが規模の経済で顧客を引き付ける可能 性がある。 • これはデータ所有権やデータ共有とも関係しており、種々のバランスを取る必要がある。 42

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デジタルサービス化のインパクト挑戦(まとめ) 1 サービス分類 サービスレベル サービス提供タイプ 開発ステップ 2 不確実性 収益不確実性 構造不確実性 移行障害 移行時の障壁 移行時の緊張 3 組織化論理 戦略的能力 意図的物語 4 複雑性 プラットフォーム 5 双方向性 ソリューション 6 B2Bコンテキスト オーケストレーション 製品指向サービス スムーズ化サービス 「製品+」論理 プロセス指向サービス 適応サービス 「複数」論理 成果指向サービス 代替サービス 「プラットフォーム」論理 デジタル投資は一括的。コスト回収は長期間を要す。 業態によって著しくハンディキャップが大きい場合がある(例:OEM) 「信頼」の障壁 「混合」の障壁 組織化のパラドックス 学習のパラドックス 「コラボレーション」の障壁 帰属のパラドックス 実行のパラドックス

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3 戦略能力の獲得と移行シナリオ • デジタルサービス化への移行に際し組織面 での変革遂行には下記3点が必要になる。 ◆組織化論理 ◆適切な戦略的能力の確保 ◆組織を鼓舞し一貫性を保持する言説的 移行シナリオ 44

45.

3.1 組織化論理 • ビジネスモデルが根本的に変化し、業界の境界線や 組織のアイデンティティが揺らぐ。 • 技術統合とそれに続く新たなサービス提供に向けた ビジネスモデル再設計が必要になる。 • 実現には組織のアイデンティティ変革や企業文化刷 新にまで立ち入る必要がある。 • 典型的な変革の切り口を3つ示す。 ◆アイデンティティの育成 ◆データ化の促進 ◆コラボレーションの促進 45

46.

デジタルサービス化への変革の図式 伝統的でサイロ化 されている企業 デジタルサービス化 変革へのシフト された企業 計画 から アイデンティティ は 発見 へ 希少性 から データ化 豊富性 へ ハイアラキー から コラボレーション パートナーシップ 46

47.

アイデンティティの育成 計画から発見へ 自社を「デジタルテクノロジー企業」等と位置付け、 従業員は新しいデジタルサービスの開発/提供に完全に依存と認識 し、 利害関係者とアイデンティティ共有の活動を行う必要がある。 関連する組織文化をデジタルサービス化の俊敏性に合致させるよう に修正する。 47

48.

データ化の促進 希少性から豊富性へ 従来は希少で代替不可能な資源の所有や保護に焦点を当てていたが、 デジタル化でデータと機械間に分離が生じ、あらゆるデジタル表現物が転送お よび計算できるようになる。 そこで、データはもはや希少とは見做せなくなり、生データを信頼できる利害関 係者と共有する必要がある。 そして、新たなデータ関連の機会を探索し、そこから価値を生み出す必要があ る。 48

49.

コラボレーションの促進 ヒエラルキーからパートナーシップへ 企業はヒエラルキーと権限に基づきサイロ化されていたが、 パートナーシップへの移行のため、サイロ破壊の必要が生じる。 サービス変革は企業境界を越えた活動に依存するので、変革を組 織外部にまで拡大させる必要がある。 そして、顧客のビジネスに関する深い知識を開発することに重点を 置き、顧客毎に異なる価値提案を作成する。 49

50.

戦略的能力の確保 3.2 • コモディティ化の罠から逃れるため、製品販売からス マートソリューション販売への移行が目指される。 • これには抜本的戦略的能力の更新が求められる。 戦略的能力の更新の枠組み 伝統的製造企業 の戦略的能力と プロセス 戦略的能力 の更新 • 厳格な管理 によって達成 される効率化 論理 • 戦略的能力と プロセスの再 構築を達成す る能力の獲得 スマートソリューショ ンプロバイダーの戦 略的能力とプロセス • 幅広いコラボレー ションを通して達 成される顧客向 け価値生産論理 50

51.

戦略的能力を更新するための製造企業の再構築能力(詳細版) 伝統的製造企業の戦略的能力 とプロセス 商品販売力 • • 機器やプロジェクトを販売するためのプロ セスとルーチン 人間関係の「一夜限りアプローチ」 自動化開発力 • • 閉鎖的な環境でシステムを開発するため のプロセスとルーチン モノのイントラネット型開発アプローチ (システム未接続) フリート管理機能 • • フリートを効果的に整備するためのプロセ スとルーチン サービスに対する「直します」アプローチ 新商品開発力 • • • 新製品を開発するためのプロセスとルーチン 革新への効果的な自社開発アプローチ 開発における「良い計画は半ば実行済」ア プローチ 取得能力 • • (生産およびサービス)企業を買収および 管理するためのプロセスとルーチン 統合への「連邦主義的」アプローチ サプライヤーネットワーク管理能力 • • サプライヤーネットワークを効果的に管理す るためのプロセスとルーチン 調達は腕の長さ(Arm’s length)アプ ローチ(一発利益) 研究開発と製造能力 • • 製品を効果的に設計および製造するための プロセスとルーチン 設計と製造の一体化 戦略的能力を更新するダイナ ミックケーパビリティ ①新しい(デジタル)機能の構築: • 新たなデジタル環境を構築するための 体制(例:分離したデジタル組織) の確立 新しい幹部(CDO/CIOなど)や専 門家(ソフトウェア開発者/データアナ リスト/営業担当者など)を採用し訓 練するためのプロセスとルーチン 新しい知識を創造し、吸収するための 組織のプロセスとルーチン • • (スマート) 製 ②既存機能を新しい 品に活用: 新製品開発体制の確立(クロスファン クショナル開発チームなど) 新しい機会を感知し捕捉するためのプ ロセスとルーチン 知識を新しい用途に活用するための組 織のプロセスとルーチン • • • (ソフトウェア) 機能 ③ 外部企業の へのアクセス: • • • ④• 外部リソースの管理体制の確立 (例:スタートアップ企業との連携を 担当する役員会メンバーの任命) 外部パートナーと関わるためのプロセ スとルーチン(ハッカソンなど) ソリューションの共同開発に向けた組 織のプロセスとルーチン 既存の (衰退) 機能の解放: • 能力を解放する管理体制 機会費用を評価し、リソースの再配 分を決定し、学びを捨てるためのプロ セスとルーチン スマートソリューションプロバイダーの 戦略的能力とプロセス バリュー販売力 • • 顧客に価値と生産性を売り込むためのプロセスと ルーチン 人間関係の「結婚アプローチ」 つながるシステム開発力 • • オープンな環境でシステムを開発するためのプロ セスとルーチン モノのインターネット型開発アプローチ(システム がつながる) スマートフリート管理機能 • • フリートデータを分析して理解するためのプロセス とルーチン 「データで語る」サービスへのアプローチ 新しいスマート ソリューション開発力 • • • 新しいスマートソリューションを開発するためのプ ロセスとルーチン 革新への相互発展アプローチ(オープンイノベー ション) 開発への「スケールファスト」または「失敗ファスト」 アプローチ KIBS(知識集約型ビジネスサービス)取得能 力 • • KIBS企業を買収するプロセスとルーチン 統合への「非連邦主義的」アプローチ オーケストレーション能力 • • エコシステム内のさまざまなプレーヤーを調整す るためのプロセスとルーチン 調達のための価値ベースのアプローチ(例: TCO、継続的なメリット)

52.

戦略的能力を再構築する能力(1) ① 新しい(デジタル)機能の構築 障害: • アイデンティティ問題(「我が社は何者か?」) • デジタル能力の欠如 • 余裕のあるリソースの欠如 • 開発のペースに関する懸念 • 会社の境界の決定に関する懸念(社内/外部委託/提携、など) 対応策: • 全てを自社で所有する必要なし • 新しい人材の採用 • 個別のデジタル組織の設立 • CDO/CIOの指名 • ICT関連の戦略的開発プログラムの確立 52

53.

戦略的能力を再構築する能力(2) ② 既存機能を新しい(スマート)製品に活用 障害: • 戦略的適合性あるいは拡張性の欠如 • 戦略的伸縮性の欠如 • 結果、規模(適合性を伴う)あるいは範囲(拡張性を伴う)の際、ジレン マに遭遇の懸念 動機: • 顧客財布シェア拡大の期待(トータルソリューション提供で) • 顧客向け収益性拡大の期待 • 学習/開発サイクルの高速化 対応策: • 両利きの経営(深化と探索のバランス) • 新しい機能や技術追加による改造の試み • パイロットケースの価値を素早く確保しフィードバックと顧客体験ベース による調整 53

54.

戦略的能力を再構築する能力(3) ③ 外部企業の (ソフトウェア) 機能へのアクセス 障害: • 統合時(特に買収)、文化的不適合の懸念 • 共通言語の欠如 • 補完的能力に関する経営陣の認識不足の懸念 補完的内部能力の必要性: • 既存情報の集積や一定のインストールベースの存在 • 顧客との確立された関係に基づくアクセス • 幅広い顧客向けソリューションの提供 対応策: • 外部リソースの買収あるいは提携 • 外部パートナーと展開および管理する能力の向上 • 新興企業とのコラボレーション(例:ハッカソンなども) • 大学など研究機関との連携 54

55.

戦略的能力を再構築する能力(4) ④ 既存の (衰退) 機能の解放 障害: • コントロールを失うことへの恐怖 • ビジネスの共食い • アイデンティティ喪失の恐怖 • 機会費用評価の困難さ 動機: • 新しい機能開発のためのリソースの取得 • 運用コスト、取引コストの削減 対応策: • 事業の売却、閉鎖、レイオフ • 製造活動のアウトソーシング/オフショアリング • 既存組織の学習の中止 • 行動ルーティンの変更 55

56.

3.3 言説的移行シナリオ • デジタルサービス化への旅には経営者やマネジャー の言説や行動および従業員を導く意図的物語が有 効である。 • 言説的シナリオには次のようなものが考えられる。 組織の変化として管理するための変化の物語 組織を未来に投影するために構築される言説的物語 提案された行動に意味を与え認識することを継続する変化の物語 56

57.

意図的物語の効用 組織の物語は人々が従う一貫した変化への取組み に結実し易い。 物語は「提案された行動に意味を与えられる」。 物語は実践における言説的視点と見做せる。 デジタルサービス化への長期に渡る組織変革は 意図的物語によって促進される。 • 意図的物語は切迫感を生み出したり、緊張への対処を容易 化する。 • 結果、デジタルサービス化への長旅を導くのに有用である。 57

58.

意図的物語の構図 意図的な物語の構造の図解 意図的物語例 デジタルサービ ス化に向けた 意図的物語 主なストーリー システム供給から統合 ライフサイクルソリュー ションへと進化する 意図的物語 • より広い範囲の提供の重要性 • ソリューション統合戦略 • 持続可能なソリューションへの移 行 リモート診断から真 のデジタルソリュー ションへと進化する 意図的物語 • リモート診断と予防保守 • スマート アナリティクスの最適 化 データサービス化への旅 の4つの層 ① 戦略と提供絡みの変革 ② サービスサービス技 術絡みの変革 ③ 個別の製品とサービス 機能をエンドツーエン ドの運用に展開する 意図的物語 • 新しい能力の開発 テクノロジー重視から 顧客価値重視へと進 化し、さらにエコシステ ムを形作る 意図的物語 • 顧客価値重視の強化 • エコシステムを形成するプロセス の重視 新たな能力の変革 ④ エコシステムの変革 58

59.

デジタルサービス化への旅:シナリオ(1) ① 戦略と提供絡みの変革 サプライヤーの立場から・・ システムインテグ レータとしての製 品の範囲を拡大し、 より広い製品をバ ンドルし統合する。 既存の予備パーツ 販売などの保守契 約も活用してより 広いサービスの確 立を目指す。 更に、より広い統 合ライフサイクルソ リューション提供の 展開に繋げる。 「システム供給から統合された持続可能なライフサイクルソリューション」まで 59

60.

デジタルサービス化への旅:シナリオ(2) ② サービスサービス技術絡みの変革 企業の技術開発を導いてきた立場から・・ リモート診断、 先行して衛星接 それらを活用して 予防保守などの 続等も使用して 倉庫保管、分析、 先駆的取組みを データの中央 予防保守などのコ 行い、 サーバーへの収 束を実現する。 ントロールセン ターを立ち上げる。 ビッグデータも 含むより高度な 分析による最適 化で先行する。 更に、より高度 な自律システム やAI活用システ ム構築に向けた 探求を行う。 「スマート分析を使用したリモート診断からリモート制御、最適化、デジタルソ リューションの提供」まで 60

61.

デジタルサービス化への旅:シナリオ(3) ③ 新たな能力の変革 顧客指向の立場から・・ リモート診断や予 製品サービスに 結果、顧客イン その一例として 防保守等を含むラ デジタル機能を ストールベース 顧客ニーズに基 イフサイクルソ 組込んだサービ から入手できた づいた製品カス ス提供で先行す 情報活用に注力 タマイズを実施 る。 する。 する。 リューション販売/ 提供のスキルセッ トを開発し、 更に、利用可能な 顧客知識に基づい て次世代製品を開 発し先行して市場 に提供する。 「個別の製品およびサービス活動からエンドツーエンドの運用」まで 61

62.

デジタルサービス化への旅:シナリオ(4) ④ エコシステムの変革 技術の重点を顧客観にまで拡大する立場から・・ 合併、買収などを 活用してサプライ チェーンの範囲を 拡大し、 サービス提供プロ セスと作業慣行を も改善してより広 くより良い管理を 実現する。 そのようにして形成 されたエコシステム 内で他メーカーの製 品システムとも対話 できるソリューション を開発する。 更に、エコシステム を活用して他メー カー製品と効果的 に統合できる製品 やサービスを開発 し市場に提供する。 「エコシステムを更に拡大するための貴重な技術の活用から顧客価値提供」まで 62

63.

意図的物語のまとめ 変革軌道 意図的物語 デジタルサービス化への移行 ① 戦略と提供 システム供給から統合ライフサ スマートソリューションの提供に向け イクル ソリューションへと進化す た企業戦略の変革を起動 る意図的物語 ② サービス技術 リモート診断から真のデジタル 新しいデジタル技術を適応させてデ ソリューションへと進化する意図 ジタルサービス化を実現 的物語 ③ 個別の実践とプ ロセス 個別の製品とサービスの機能を 組織をマトリックス形式から分散型 エンドツーエンドの運用に展開 の起業家的形式、さらにはエンド する意図的物語 ツーエンドの運用に移行するための 実践 テクノロジー重視から顧客価値 エコシステムの形 ④ 重視へと進化し、更にエコシス 成 テムを形作る意図的物語 エコシステム形成に向けたより広範 な変化を促進する必要性を伝達 63

64.

戦略能力の獲得と移行シナリオ(まとめ) 1 サービスレベル サービス提供タイプ サービス分類 開発ステップ 2 不確実性 移行障害 3 収益不確実性 構造不確実性 移行時の障壁 移行時の緊張 組織化論理 戦略的能力 意図的物語 4 複雑性 プラットフォーム 5 双方向性 ソリューション 6 B2Bコンテキスト オーケストレーション 製品指向サービス スムーズ化サービス 「製品+」論理 プロセス指向サービス 適応サービス 「複数」論理 成果指向サービス 代替サービス 「プラットフォーム」論理 デジタル投資は一括的。コスト回収は長期間を要す。 業態によって著しくハンディキャップが大きい場合がある(例:OEM) 「信頼」の障壁 「コラボレーション」の障壁 「混合」の障壁 帰属のパラドックス 実行のパラドックス 組織化のパラドックス 学習のパラドックス 計画から発見へ 希少性から豊富性へ 新しい(デジタル) 既存機能を新しい (スマート)製品に活用 機能の構築 戦略と提供絡みの変革 ハイアラキーからパートナーシップへ 外部企業の (ソフトウェア) 既存の (衰退) 機能へのアクセス 機能の解放 サービスサービス技術絡みの変革 新たな能力の変革 エコシステムの変革

65.

4 デジタルサービスプラットフォーム • デジタルサービス化への移行では複雑性を 如何に克服するかが問題になる。 • 複雑性の一部を緩和する効果があるプラット フォームを如何に活用するかも重要になる。 ◆複雑性 ◆プラットフォーム活用 65

66.

4.1 複雑性 Industry4.0技術はデジタル技術の最も高度なもの Industry4.0技術 フロントエンド技術 スマートサプライチェーン 基盤技術 IoT スマート労働 スマートマニュファクチャリング クラウド ビッグデータ スマート製品 市場 解析 スマートサプライチェーン:サプライチェーンの統合 スマート労働:生産システムにおける人間の役割の社会技術的進化を実現 スマートマニュファクチャリング:柔軟な生産ラインが複数タイプの製品や変化条件を自動的に調整する適応システム スマート製品:新製品開発のためのデータフィードバックを提供でき、顧客に新たなサービスソリューションを提供 66

67.

デジタル技術の複雑性 4.1.1 複雑性(低) スマートマニュ ファクチャリング 垂直統合 エネルギー管理 複雑性(高) 複雑性(中) トレーサビリティ 自動化 仮想化 自動 不適合識別 メインテナンス 向けAI 柔軟化 ERP MES フ ロ ン ト エ ン ド 技 術 SCADA エネルギー節約 最終製品のト レーサビリティ 産業ロボット 仮想試運転 フレキシブルライン センサー+アクチュ エーター+PLC エネルギー監視 原材料のトレー サビリティ M2M通信 生産のための AI 追加的製造 スマート製品 受動的スマート製品 (接続、監視と制御機能) 能動的スマート製品 (最適化機能) 自律的スマート製品 (自律化機能) スマート労働 遠隔監視と協働ロボット 遠隔操作 拡張現実と仮想現実 サプライヤーとの デジタルプラットフォーム 顧客との デジタルプラットフォーム スマートサプ ライチェーン 基盤技術 他社ユニットとの デジタルプラットフォーム クラウド IoT ビッグデータ 解析 67

68.

4.1.2 実装の複雑性 • 横軸をサービス提供タイプ、縦軸をデジタル化レベルで分類 すると、実装の複雑性を5段階に分類できる。 サービス提供タイプ スムーズ化サービス 適応サービス 代替サービス 高い (Industry4.0関 連サービス) Industry4.0型 スムーズ化サービス Industry4.0型 適応サービス Industry4.0型 代替サービス 中程度 (デジタルサービス) デジタルスムーズ 化サービス デジタル適応 サービス デジタル代替 サービス プロセス& 顧客指向 顧客指向 低い (マニュアルサービス) 実装の複雑性 マニュアルスムー ズ化サービス 極めて低い マニュアル適応 サービス 低い 中程度 マニュアル代替 サービス 高い 極めて高い 68

69.

複雑性を考察 サービス化でビジネスの複雑性は増大する。 次のような仕組みで複雑性は増大する。 • DS化による多様性、相互依存性、変動性の増大 • デジタル技術の採用増加による増大 • スマート・コネクテッド製品の利用、クラウドコンピューティングの利用、 ビッグデータの分析によるフィードバック、IoTの利用、デジタルプラット フォームの利用、拡張現実他の先進技術の利用、など • サービス提供と提供プロセスの不確実性による増大 • 収益増加の不確実性による増大 69

70.

複雑性への対応 緩和する一般的方法は存在する。 サービスの標準化 とモジュール化 エコシステムアクターのオー ケストレーションと統合化 デジタルプラットフォーム活用に よるサービスビジネスの組織化 など しかし、本質的には完全な解決は不可能である。 そこで、複雑性の軽減だけでなく、複雑性の管理にも焦点を当てること が重要になる。 70

71.

4.2 プラットフォーム活用 複雑性を制御するプラットフォームの能力に焦点を当てる。 プラットフォームは以下のような手段で複雑性を軽減できる。 • APIやデバイス相互運用の共通ルール、プロトコルで • マーケットプレースとして組織化することで • ユーザーがソリューションを自己開発できるツール提供で • プラットフォームをオープンにし、参加者間の相互依存性増加でネットワー キングを促進することで、など プラットフォームは複雑性を制御しながらシステム機能の 多様性を最大化できる可能性がある。 71

72.

プラットフォームエコシステムへの展開 ステップ1:製造企業は主要な設置ベースを中心に製品プラットフォームを開発する。 • 製品プラットフォームには、プログラム可能などのデジタル機能を持つデジタルモ ジュールが組み込まれる。 • これにより、データ収集が可能になり、監視サービス、視覚化サービス等を提供できる。 ステップ2:プラットフォームコアに外部モジュールを追加する。そして、次のような サービスを提供する。 • 最適化サービスや自律型サービス、など • 外部モジュールは、高度センサー、高度データ分析、各種アプリ、外部ベースデータ 蓄積、など 72

73.

デジタルサービスプラットフォームの進化 プラットフォームアーキテクチャ プラットフォームガバナンス デジタルプラッ トフォーム 監視サービスの開発 最適化サービスの開発 自律的サービスの開発 ステップ1: プラットフォームサービス 製品プラットフォーム サプライチェーンプラットフォーム プラットフォームエコシステム

74.

デジタルサービスプラットフォーム(1) プラットフォームアーキテクチャ 初期では製品データ収集能力の強化に投資する。 次に高度なセンサー導入などでデータ品質とデータの多様性向上を 計る。 これらによりデータの集約、データセットの関連付け、パターン検出 などの分析に焦点を合わせる。 この延長で、外部データソースも活用してAI活用による 隠された洞察を明らかにする。 74

75.

デジタルサービスプラットフォーム(2) プラットフォームサービス 最初は監視サービスの開発から開始する。 • リモート監視、自動レポート生成など 次に、今後発生する可能性のある故障やオペレータ誤用について の警告サービスや診断サービスの開発に繋げる。 この対象を個々の機械からフリート(車両、機械群など)全体に 拡張することで最適化サービス開発に進む。 これらのノウハウの蓄積により最終的には自律型サービス開発に進 む。 75

76.

デジタルサービスプラットフォーム(3) プラットフォームガバナンス 当初は、徐々に供給サイドにパートナーを誘導し、続いて顧客 側にもプラットフォーム採用を勧める。 これは最初はバリューチェーンの拡張になる。 次に、様々なパートナーや顧客間でのプラットフォーム使用を 進めることによりバリューシステムの拡張に進む。 最後に、プラットフォームインタフェースをオープンにし、異なるプ ラットフォームサービス間の相互運用を促進させる。そして、新たな 付加価値サービスを展開するエコシステム拡大に繋げる。 76

77.

デジタルサービスプラットフォームの進化 デジタル化による影響は抜本的ではあるが、製造業コンテキストで は変化は徐々に進む。 その変化の過程で、プラットフォームアーキテクチャ、プラットフォー ムサービス、プラットフォームガバナンスの共進化が進む。 変化の過程では多方面で幅広い緊張が伴うので、適切な管理が重 要になる。 変化をプロセスの視点で観察し、スムーズに変化を達成することが 必要になる。 77

78.

デジタルサービスプラットフォーム(まとめ) 1 サービスレベル サービス提供タイプ サービス分類 開発ステップ 2 不確実性 移行障害 3 4 収益不確実性 構造不確実性 移行時の障壁 移行時の緊張 「信頼」の障壁 新しい(デジタル) 機能の構築 希少性から豊富性へ 戦略と提供絡みの変革 複雑性 技術の複雑性 複雑性(低) 実装の複雑性 極めて低い B2Bコンテキスト オーケストレーション 帰属のパラドックス 実行のパラドックス ハイアラキーからパートナーシップへ 既存機能を新しい 外部企業の (ソフトウェア) 既存の (衰退) (スマート)製品に活用 機能へのアクセス 機能の解放 意図的物語 双方向性 成果指向サービス 代替サービス 「プラットフォーム」論理 「コラボレーション」の障壁 「混合」の障壁 組織化のパラドックス 学習のパラドックス 戦略的能力 デジタルプラット フォームの進化 プロセス指向サービス 適応サービス 「複数」論理 デジタル投資は一括的。コスト回収は長期間を要す。 業態によって著しくハンディキャップが大きい場合がある(例:OEM) 計画から発見へ ソリューション 6 「製品+」論理 組織化論理 プラットフォーム 5 製品指向サービス スムーズ化サービス サービスサービス技術絡みの変革 プラットフォーム アーキテクチャ 複雑性(中) 中程度 低い プラットフォーム サービス 新たな能力の変革 エコシステムの変革 複雑性(高) 高い 極めて高い プラットフォーム ガバナンス

79.

5 デジタルサービスビジネスモデル • 2つの方向のビジネスモデルイノベーション (BMI)がある。 – デマンドプル ⇔ サービス化の側面 – テクノロジープッシュ ⇔ デジタル化の側面 • サービス化の観点からは製造企業が配慮しな ければならない労働の複雑さがある。 • デジタル化の観点からは実装される技術の専 門性・難易度の複雑さがある。 ◆双方向性 ◆ソリューション 79

80.

5.1 双方向性 BMIの複雑さ(1) -デマンドプルBMIプロセスが複雑になればなるほど、ビジネスモデルは複雑になる。 サービス化はビジネスモデルの価値提案に直結する。 • スムーズ化サービス:ビジネスモデルが製品の販売中心のままなので最 も単純である。 • 適応サービス:リソースと能力への要望が高まり、高い柔軟性を必要と する可能性がある。 • 代替サービス:包括的な成果指向モデルに転換が必要なので、対顧客、 対企業の双方で相互作用の変更が求められる。 80

81.

BMIの複雑さ(2) -テクノロジープッシュ実装の複雑さのダイナミクスはよりシンプルで直感的である。 • デジタル化レベルが低い:サービス提供にデジタル化の側面 が殆どないか低レベルである。 • デジタル化レベルが中程度:アプリ、IoTなどの使用でサービス に適度なデジタル化が追加される。製造企業は必ずしもデジ タルソリューション開発が必須ではないが複雑さは増す。 • デジタル化レベルが高い:サービス化とIndustry 4.0の最高レベ ルの収束が行われる。収集データを統合して内部活動の改 善と製造プロセスの適応を目指すので極めて複雑になる。 81

82.

デジタル化とサービス化の融合(1) フロントエンドとバックエンドの融合 サービス化に関連が深いフ ロントエンドのデジタル化は、 バックエンドと関連が深い デジタル化へのサポートと して機能し、製造企業の価 値創造の構造を強化する。 結果、フロントエンド、バック エンド、2つのBMIループが 連結され全体を強化する効 果が発生する可能性が有る。 82

83.

デジタル化とサービス化の融合(2) デマンドプルとテクノロジープッシュの融合 その一方、デマンドプル、 テクノロジープッシュの 2つの異なる価値観の 混在はBMI実装の複雑 さを高める。 製造企業は技術的課題 を越えて顧客と企業間 の信頼を構築し、双方 にとって有用なデータ交 換を迫られる。 83

84.

5.2 ソリューション デジタルサービスビジネスモデルの構成 複数のビジネスモデルで構成される多次元構造になる。 • ビジネスモデルの類型は、 • 製品指向ビジネスモデル • サービス契約ビジネスモデル • プロセス指向ビジネスモデル • パフォーマンス指向ビジネスモデル、など ソリューション提供を考える3つの軸を設定する。 • ソリューションのカスタマイズ • ソリューションの価値設定 • ソリューションのデジタル化 84

85.

ソリューションの提供 成果 プロバイダー カスタマイズされた 統合ソリューション プロバイダー ① ソリューションのカスタマイズ カスタマイズ モジュール化 標準化 製造企業 プラットフォーム プロバイダー 製品指向 のサービス プロバイダー 製品指向 合意指向 可用性指向 結果指向 ② ソリューションの価値設定

86.

ソリューションの解説 ①ソリューションのカスタマイズ軸は製品サービスソフトウェアシ ステムによるソリューションを顧客ニーズに合わせて調整するレ ベルを提供する。 高← カストマイズ、モジュール化、標準化 →低 ②ソリューションの価格設定軸は価値獲得の中核であり目的に 応じて設定を選択するレベルを提供する。 高← 結果指向,可用性指向,合意指向,製品指向 →低 ③ソリューションのデジタル化軸はIoT、スマート製品などによるデ ジタルサービス化のレベルを提供する。 高← 自律化、最適化、制御、監視 →低 86

87.

“統合ソリューションプロバイダー”ほかの解説 統合されたサービスソリューションを提供する統合ソリューションプ ロバイダーは可用性の提供が重要になる。 • 大規模な統合ソリューションでは比較的高レベルな“ソリューションのカスタマイ ズ”が伴う。 このようなビジネスモデルの顧客は純粋な成果よりはパフォーマン ス保証と可用性を備えた統合ソリューションが好みかもしれない。 • 結果、サービスとして監視、制御、最適化、自律化が提供されている場合、統合 レベルに応じて徐々に自律化の方向に移行する可能性がある。 87

88.

“統合ソリューションプロバイダー”ほかの解説(続) 統合ソリューションの開発には、顧客だけでなく、他パートナー企業の機器やプ ロセスに関する深い知識とテクノロジーの統合が必要になる。 • 例:企業の境界を越えたソフトウェアの統合など 統合ソリューションプロバイダーのアイディアはエンジニアリングと顧客指向の極 めて多様な組合せに根差す。 • これは、トランザクションコストを増加させる可能性を内包しており、高 度なプロジェクト管理の重要性が増す。 88

89.

デジタルサービスビジネスモデルの変化 デジタル化は企業間および企業内のリソース構成の再構成を容易 にする。 そして、ある企業の変更はエコシステム内他企業へと影響を波及さ せる。 ビジネスモデルの概念は動的なものに変わり、継続的に再構築さ れる。 企業活動の変更は個々にはミクロレベルで行われるが、それらは 一緒になってマクロレベルのエコシステム変容を発生させる。 89

90.

デジタルサービスビジネスモデル(まとめ) 1 サービスレベル サービス提供タイプ サービス分類 開発ステップ 2 不確実性 移行障害 3 4 5 収益不確実性 構造不確実性 移行時の障壁 移行時の緊張 「製品+」論理 プロセス指向サービス 適応サービス 「複数」論理 成果指向サービス 代替サービス 「プラットフォーム」論理 デジタル投資は一括的。コスト回収は長期間を要す。 業態によって著しくハンディキャップが大きい場合がある(例:OEM) 「信頼」の障壁 「コラボレーション」の障壁 「混合」の障壁 帰属のパラドックス 実行のパラドックス 組織化のパラドックス 学習のパラドックス 組織化論理 計画から発見へ 戦略的能力 新しい(デジタル) 機能の構築 希少性から豊富性へ ハイアラキーからパートナーシップへ 既存機能を新しい 外部企業の (ソフトウェア) 既存の (衰退) (スマート)製品に活用 機能へのアクセス 機能の解放 意図的物語 戦略と提供絡みの変革 複雑性 技術の複雑性 複雑性(低) 実装の複雑性 極めて低い プラットフォーム デジタルプラット フォームの進化 プラットフォーム アーキテクチャ 双方向性 BMIの複雑さ ソリューション 6 製品指向サービス スムーズ化サービス 新たな能力の変革 サービスサービス技術絡みの変革 複雑性(中) 複雑性(高) 中程度 低い プラットフォーム サービス デマンドプル(サービス化の側面) VS エコシステムの変革 高い 極めて高い プラットフォーム ガバナンス テクノロジープッシュ(デジタル化の側面) ビジネスモデル 製品指向ビジネスモデル,サービス契約ビジネスモデル,プロセス指向ビジネスモデル,パフォーマンス指向ビジネスモデル とソリューション ソリューションのカスタマイズ、ソリューションの価値設定、ソリューションのデジタル化 B2Bコンテキスト オーケストレーション

91.

6 デジタルサービスエコシステム • エコシステムに共存する各アクター間の関係は極 めて複雑であり、調整には次のような方針が必要 になる。 – どのような変革が伴うかをよく理解する必要がある。 – 利害関係者間の緊張がどのような場面で発生するかもよく理解し、これら をコントロールする必要がある。 – 変革が新たな価値獲得にどのように結び付くかも充分に理解し、思い切っ た投資や人材配置を行う必要がある。 • B2Bコンテキストとオーケストレーションに着目する。 ◆B2Bコンテキスト ◆オーケストレーション 91

92.

6.1 B2Bコンテキスト プラットフォーマーを目指す製造企業は、通常、補完者と顧客の排他的 セットを利用して独自プラットフォームを開設し徐々に他の補完者に門戸 を開く。 そして、アクター固有のデータ機能がプラットフォーム成長を積極的に形作 る。 そのため、プラットフォームガバナンス出現が不可欠になる。 そして、プラットフォームアーキテクチャとプラットフォームガバナンスの共 進化も必要になる。 92

93.

製造企業の取組み(1) 製造企業はサービス化の最前線を前進させるため新たな姿勢が求められる。 背景には次のようなことがある。 ビジネスモデルの段階的更新だけでは済まない。 デジタル技術を活用する方法は1つではない。 目的地に到る経路は不明確であることが多い。 サービス化は製造企業の製品やサービスを革新する方法に影響を与えるだけで なく、顧客価値の創造、提供、および価値獲得の方法までも変化させる。 • サービス化は企業のビジネスモデル全体と収益モデルを混乱させる要因になる。 • • • • 93

94.

製造企業の取組み(2) そこで、実際の事業運営を考えると、 バックエンド、フロントエンドそれぞれのアクターと接続するためにプラットフォーム適用が必要なこ とが多い。 プラットフォームはデジタル化の程度に応じて種々存在しうる。 • 非デジタルプラットフォーム • 低レベルの純粋な技術的プラットフォーム • 高レベルのIoTベースのプラットフォーム プラットフォーム自身がデジタル化するに連れ、企業はデータや外部からの革新的アイディアを適 切に取得できる。 94

95.

6.2 エコシステムオーケストレーション 成功するエコシステムは新しいイノベーションを中心に機能し共進化でき るパートナー関与が重要になる。 このような構造実現には、エコシステム内企業は(パートナーを簡単 に置換えられる従来型バリューチェーンよりは)お互いの貢献により 大きく依存する形態になることが求められる。 この相互依存性のため、焦点となる製造企業は殆ど全てのビジネスモ デル要素にエコシステムアクターを関与させる必要がある。 95

96.

価値創造、価値提供、価値獲得の設計 3つのビジネスモデル要素の変革が必要になる • 価値創造: • デジタル技術を持つエコシステムアクター(デジタルスタートアップ、クラウド分 析プロバイダー、など)の関与によって高い価値創造の可能性を高める。 • 価値提供: • 新しいエコシステムアクター(予知保全、ルート最適化、など)を関与させること で、価値提供プロセスを刷新できる可能性を高める。 • 価値獲得: • 新しいデジタルアクターとデジタルインフラストラクチャの関与によって、既存コ スト構造と収益モデルを抜本的に(サブスクリプション、従量制などに)変化さ せ、パートナーとのより包括的な収益とリスクの共有の可能性を高める。 96

97.

既存ビジネスモデルの障壁 但し、3つの障壁にぶつかる。 障壁A:デジタル価値に対する近視眼 • 既存製品を支配する従来型イノベーション論理の遺産が横たわる。 障壁B:従来のバリューチェーンの慣性 • 営業、サービス提供者等は特定の方法で作業することに慣れており、作業方 法の変更を望まない。 障壁C:企業中心の価値獲得論理 • 製品の使用を最適化しメンテナンスの必要性を減らしたデジタル製品は、ほ ぼ確実に既存業者の利益と矛盾する。 97

98.

BMI(ビジネスモデルイノベーション)のため のエコシステムオーケストレーション これらの障壁を打破するには次の2つのフェーズでエ コシステムオーケストレーションを推進する必要がある。 フェーズ1:エコシステムの活性化 フェーズ2:エコシステムの実現 98

99.

エコシステムオーケストレーションの仕組み 障壁A:デジタル価 値に対する近視眼 障壁B:従来のバ リューチェーンの慣性 障壁C:企業中心 の価値獲得論理 凡例:(障壁/活動) 価値創造 価値提供 2.B デジタル配信 を調整する デジタルビジネスモ デルの変革に従事 する現職製造企業 2段階のエコシステムオーケストレーション 1.B エコシステムのデ ジタル化を促進する 既存のビジネスモデルの障壁 価値獲得 99

100.

エコシステムオーケストレーションの解説(1) フェーズ1:エコシステムの活性化 障壁A対応: • 新たな顧客価値を生み出しうる新たなエコシステムパートナーを見 出し取込む。 障壁B対応: • 顧客と直接接触するパートナー(デストリビューター、保守者、な ど)のデジタル化を促進し、価値提供を調整する。 障壁C対応: • エコシステムパートナーと場合によっては不釣り合いなレベルの収 益、コスト、リスクを共有して彼等の参加を動機づける。 100

101.

エコシステムオーケストレーションの解説(2) フェーズ2:エコシステムの実現 障壁A対応: • 既存エコシステムパートナーと新たなパートナーが共創して新しいソ リューションを開発する。 障壁B対応: • 価値提供実現のため、様々なユニット間およびエコシステムパートナー 間での生産的なコラボレーションを確保する。 障壁C対応: • 新たな相互依存性を管理するために様々な収益モデルとリスク共有の 見直しを行う。 101

102.

デジタルサービスエコシステムの進化 製造企業が生き残りを賭けてDX化に成功するためには、先行企業で 開始され出した抜本的構造変革に追随する必要がある。 デバイス/技術と情報が分離されたことで、開発モデルも根本的に変 わる。デジタルサービス向け組織では中央集権化、統合/一体化、組 織/資源再構成のバランス確保が重要になる。 移行過程は徐々に且つ連続的に進む。適切なプラットフォームアーキ テクチャ、プラットフォームサービス、プラットフォームガバナンスの共 進化が求められる。 課題は多く障壁は高い。これに対処するため、2段階のエコシステム オーケストレーションの実施が重要になる。 102

103.

デジタルサービスエコシステム(まとめ) 1 サービスレベル サービス提供タイプ サービス分類 開発ステップ 2 不確実性 移行障害 3 4 5 収益不確実性 構造不確実性 移行時の障壁 移行時の緊張 プロセス指向サービス 適応サービス 「複数」論理 「製品+」論理 成果指向サービス 代替サービス 「プラットフォーム」論理 デジタル投資は一括的。コスト回収は長期間を要す。 業態によって著しくハンディキャップが大きい場合がある(例:OEM) 「信頼」の障壁 「コラボレーション」の障壁 「混合」の障壁 帰属のパラドックス 実行のパラドックス 組織化のパラドックス 学習のパラドックス 組織化論理 計画から発見へ 戦略的能力 新しい(デジタル) 機能の構築 希少性から豊富性へ ハイアラキーからパートナーシップへ 既存機能を新しい 外部企業の (ソフトウェア) 既存の (衰退) (スマート)製品に活用 機能へのアクセス 機能の解放 意図的物語 戦略と提供絡みの変革 複雑性 技術の複雑性 複雑性(低) 実装の複雑性 極めて低い プラットフォーム デジタルプラット フォームの進化 プラットフォーム アーキテクチャ 双方向性 BMIの複雑さ ソリューション 6 製品指向サービス スムーズ化サービス 新たな能力の変革 サービスサービス技術絡みの変革 複雑性(中) 複雑性(高) 中程度 低い プラットフォーム サービス デマンドプル(サービス化の側面) VS エコシステムの変革 高い 極めて高い プラットフォーム ガバナンス テクノロジープッシュ(デジタル化の側面) ビジネスモデル 製品指向ビジネスモデル,サービス契約ビジネスモデル,プロセス指向ビジネスモデル,パフォーマンス指向ビジネスモデル とソリューション ソリューションのカスタマイズ、ソリューションの価値設定、ソリューションのデジタル化 B2Bコンテキスト オーケストレーション 独自プラットフォーム開設 ⇒ 適切なガバナンス ⇒ 関係部門の共進化 (エコシステムの活性化 エコシステムの実現)の繰り返し

104.

7 まとめ 要するに・・・ デジタル化の影響は製造企業存立の根幹に及ぶ。 ビジネスモデルも組織構造も変革を余儀なくされる。 しかし、現行ビジネスモデルとのギャップは大きく、一気の変革は現実的ではない。 段階的に移行するが、スピーディーな実行も求められる。 そこで、変革のプロセスを如何に最適に実施するかが問われる。 104

105.

しかし・・ 現実のビジネス環境はデジタル成熟化レベルが低く、デジタルサービス化 前のエコシステム確立に躊躇している。 企業内、企業間の硬直性はデジタルサービス化推進に必要な変化を妨げ ている。 経営陣は、主要な顧客/企業とパートナーとなるための魅力的ビジョン開発 が出発点となる。 但し、一般に、これを実現する投資額と組織変革は半端なものではない。 そこで、出来るだけ妥当なプロセスとスケジュールで進められるように、各 所に存在する緊張への配慮や臨機応変な適応力が重要になる。 105

106.

デジタルサービス化への旅(まとめ) 経営陣は自企業とエコシステム全体の両方について明確で共有できるビジョンを作 成し推進する必要がある。 デジタル化はオープン性と透明性を向上させるので、リーダーは企業固有の能力を 活用しつつ、新たな考え方に移行しなければならない。 デジタルサービス化はソフト活用との連動などでライフサイクル変動が大きく、アジャ イルな取組みが必須である。 また、デジタルサービス化には根本的に異なる知識と能力が必要とされる。 既存企業は関連知識や能力獲得に前例のない努力が求められる。 そして、最小のコストで複製/配布されるデータセットが新しいサービス創出を可能に する最終競争優位性と直に関係していることを肝に銘じるべきである。 106