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May 25, 17
スライド概要
最近、Uberを中心にシェアリングエコノミーに関するトラブルが増加している。 これは“シェア”のレトリックで始まったシェアリングエコノミーの陰の部分がいよいよ出てきたのかな、と。その結果、賛成派対反対派の対立も一層険しさを増していると考えられる。でも、これって解決の見通しはあるのだろうか?一方では、社会に良いことが推進されており、消費者も満足。賛成派も大勢いる。他方では、手作業で生きてきた多くの人々の生活手段の圧迫が発生しており、所得下位80%内の格差を拡大させる危険性があり、反対派も引くはずがない。
どちらもそれぞれの視点ではまったく真実のように思える。そして両者間の妥協点が容易には見いだせそうにないと思われる時、「パラドックス」という言葉を使うのは、正確には間違いかもしれないが、そのような側面もありそうなので、そのような視点でまとめてみた。
定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。
シェアリングエコノミー のパラドックス 営利目的プラットフォームの労働、不平等 B-frontier研究所 高橋 浩 [チェコ プラハ]
シェアリングエコノミーのパラドックス? • 「シェア」の有用性が認識されシェアリングエコノミーが活 況を呈している(Uber,Airbnbなど)。 • 資産(部屋、車、労働力など)のある人はこの路線に乗っ てサービスを提供しだした。無駄が活用され、利用者も 安くサービスを利用できて、ハッピー・・ • サービスを提供している人も社会に良いことをしているの で、掃除や運転などの手作業も苦にならない。 • でも、そうすると、従来、ホテル業界で清掃や手作業で働 いていた人やタクシー業界で運転で生活していた人の雇 用は圧迫される。だから・・ 社会に良いことが推進され、消費者も満足してGoodとの 評価と賛成派がいる一方で、・・ 手作業で生きている人々の生活手段の圧迫は、底辺部 80%内の格差を拡大させる危険な行動なのでBadとの 評価と反対派の存在もいる。 どちらもそれぞれの視点からは真実と思われる。そして 両者の妥協点は無いのではなかろうか?【パラドックス】
検討の視点と問題意識 • 最近、シェアリングエコノミーに関するトラブ ルが増加している。 • “シェア”のレトリックで始まったシェアリング エコノミーの影の部分が露出してきた印象で ある。 • その結果、賛成派対反対派の対立も一層険 しさを増していると考えられる。 このような傾向が発生する背景は何だろう か? これからどうなって行くのだろうか? 3
目次 1.はじめに 2.賛成派 vs 反対派 3.現在までの経緯 4.シェアリングエコノミーのパラ ドックス 5.これからについて 4
1.はじめに シェアリングエコノミーでは当初顧客とサービス提 供者間の信頼が心配されていたと思ったが・・ • シェアリングエコノミーのコアはピア ツーピア(P2P)交換 • シェアリングエコノミーにおいては見知 らぬ人との間でP2P交換が起きる 不完全な情報の問題が発生! 潜在的な取引者のリスクが発生! 5
シェアリング・エコノミーの領域 資産を共有 プラットフォーム P to Pファ P to P イル共有 商品取引 P to P 商品共有 有形財 交換の目的 物理的モノ 有形財 タイミング No 要件 ミーティング No 要件 必ずしも必 要無い No 必ずしも必 要無い 必ずしも必 要無い 事例 eBay AirBnb Napster 所有権 移転無し 労働力を共有 P to Pサ ービス共有 無形の出会 い Yes Yes Uber 例:Ridesharing (車の相乗り) リアルな人間同士の対話
従来の取引では、ブランドの評判また はライセンスがリスク削減に貢献して いた。 しかし、シェアリングエコノミーでは ユーザーからの評価(rating)や評 判(reputation)データの形での情 報が信頼の基盤になる。 これは本当に安心できるものなのだろう か? 7
ところが実は、最近のトラブルは違った側 面をクローズアップさせている 事件1 • Uberに在籍していた元エンジニアの女性が 2017年2月末、上司からセクシャルハラスメ ントを受け、人事部に報告したにも関わらず 無視されたと訴えた。退職しブログ公開 – 「管理職は、昇進を巡って同僚と争うか、直属の上 司の揚げ足を取ることしか考えていなかった」 事件2 • 2014年頃、Uberを批判する記事を書いた ジャーナリストに対して、同社のツールを使 えば「プライベートな生活や家族のことなど すぐに分かる」と同社重役が発言した。 「Uber」が嫌われている理由より 8
事件3 • トランプ大統領が難民に関する大統領令を発令 した2017年1月末、ケネディー空港でタクシー運 転手も参加したストライキが起きた(土曜日夕 方)。 • その際、Uberは「Twitter」で「ケネディー国際空港 付近では割増料金を停止する」と呼びかけ自社 をアピールした。 – Uberは通常、需要の多い時間帯は割増料金を設定 する。それを停止しUberを宣伝したことになる。 • 利己的儲け主義を露にしたことで、タクシー運転 手のストを止めさせようとしたと批判された。 • この結果、Twitterで「#DeleteUber」(Uberアプリ を消そう)という運動が起きた。 – 推定20万人がUberアプリをアンインストールした。 9
• 2015年、Uberはカーネギーメロン大学のロ ボット研究所の研究者40人を引き抜いて同研 究所を骨抜き状態に陥れた。 事件4 – 40人というのは、全研究員のほぼ半分。しかも、 Uberと共同研究が始まったほんの数カ月後のこ と。頬を札束でたたくようにして研究者らを連れ 去った。 • 最近、米Alphabet傘下のWaymoから訴訟が 起こされた。 – Uberが買収したトラック自走技術開発スタート アップ企業Ottoの共同創業者の1人が、Google 在籍中に大量のドキュメントを持ち出し、Waymo の知的財産権を侵害したというのが理由。 10
事件5 • Uberの運転手と乗客になったUberのCEOカラ ニックが報酬をめぐって口論している車載カメラ の映像が公開された。(2月28日) – Youtubeだけで300万回近く視聴された。 • 運転手は「あなたのせいで私は破産だ」と批判し た。 – UberBLACKの報酬は引き下げられてきた。例:2012年 に1マイルあたり4.90ドル⇒現在は3.75ドル(23%↓) 「わたしは根本的に変わらなくてはならない」UberのCEOの映像流出と謝罪より 11
目立つのは、顧客との関係に関わるトラブルではなく、 プラットフォーマーとプロバイダー間のトラブル! 背景に、プラットフォーマーがドミナントになる まではパートナーであったプロバイダーを、ドミ ナントになりだした途端にいじめ出している状 況があるのかもしれない。 – 特に「労働力をシェア」する分野 また、プラットフォーマー間の競争が激しさを 増している状況が想定される。 – 特にカーシェアリング分野 • こうした、プラットフォーマーがアグレッシブになら ざるを得ない状況は何をもたらすのだろうか? 12
2.賛成派 vs 反対派 大論争の図式 • 反対派は労働搾取、あらゆるものの 商品化、非人間性などを主張 • 賛成派は可用性、利便性、低コスト による消費者の利益などを主張 • 意見が真っ二つに割れ大論争中 13
反対派の声の例 FT、WSJなどが「シェアリングエコノミー」に懐疑的な記事を載せ始めた(2015.5) • シェアリングエコノミーは余剰労働力のマッチン グを提供することで「ショバ代」徴収のモデル • 余剰労働力の市場である限り、労働の対価は 最もコストが安い方へ収斂するのが自然! シェアリングエコノミーは中間搾取の王様に他ならな い。 およそシェアリングエコノミーでシェアされるのは労働 だけであり、利益は業者が取る。 14 シェアリング・エコノミーに中間搾取の観点から疑問を挟む声がより
反対派 • 「余分なソファーや未使用の車を借り ることは合理的な資本主義にすぎな い」・・Ravenelle,2016 • 定義上のシェアは金銭の交換を含む ことができず、シェアは(連続的に相互 に贈り物を交換するような)商品交換 とは正反対である。・・Belk Russell W. Belk Schulich School of Business教授 15
賛成派 • 「充分に活用されていない」資産を効率的に 使用し、社会的つながりと信頼を構築し、環境 への負荷を減らし困難な時代に対処する術を 提供する。 • 仲介者を回避し、直接プロバイダー、消費者 間の交換を容易にすることで消費者により良 い価値を提供する。 ITの能力そのもの • 部屋賃貸、乗車、配達サービス、その他の仕 事を提供するプロバイダーは「マイクロ起業 家」であり、彼等自身がボスで、柔軟な時間 労働、プラットフォームによって自分流に制御 できる。 16
• デジタルネットワークと関連技術に より、参加の資本コストを削減する ことでオンライン共有がより効率的 になった。・・・ Benkler、2006 「 The Wealth of Networks -How Social Production Transforms Markets and Freedom-」 • 弱くつながった多数の人々の間で 社会的シェアが行われている。彼ら は集団的練習に参加しており、通 常、共通の良い成果を含む複数の 動機を持っている。・・ Benkler Yochai Benkler Harvard Law School教授 17
• プラットフォームは個人対個人間の 経済における取引コストを削減し、高 価なブランドではなく、格付けや評判 システムを通じて知らない者同士の Arun Sundararajan New York University’s 交換に伴うリスクを軽減するので、価 (NYU) Stern School of Business教授 格が安くなる。 ・・・Sundararajan、2016 「 The Sharing Economy: the end of employment and the rise of crowd-based capitalism」 18
3.現在までの経緯 シェアリングエコノミーの3事例の分析 PiperJaffray, 2015. Sharing Economy: An In-depth Look at its Evolution and Trajectory across Industries 19 <http://collaborativeeconomy.com/wp/wpcontent/uploads/2015/04/Sharing-Economy-An-In-Depth-Look-At-Its-Evolution-and-Trajectory-Across-Industries-.pdf>.
例1:Airbnb • 個人(ゲスト)が個人(貸主:ホスト)の部屋を 借りる宿泊施設 • ホストの収益を上げる機会を幅広く提供 • 共同創業者は2015年に億万長者に 20
例2:Relay Rides • 使用されていない車をオーナーからスマホ・ アプリで借りられるサービス • 米国内の2100以上の都市、および300以上 の空港で利用可能 Relay Ridesの創業者 Shelby Thomas Clark 21
例3:TaskRabbit • 消費者が家の掃除、配達サービス、手作業 の仕事、ペットのしつけ、家具の移動や組み 立てなどのタスクを実行するために、 "Rabbits"を雇う労働交換 TaskRabbitの創始者Leah Brusque November 15, 1979 生まれ(age 37) You can be a TaskRabbit like Chris M. 22
3つを通した分析 支配的な動機は金銭 • 3プラットフォームは全て支配的動機は 金銭であった。 Juliet B. Schor Collegeの • 3つとも、2008年から2009年の経済危機 Boston 社会学の教授 後に現れ、雇用や収入を失った人々、 就職することができなかった大学卒業者の選 択肢になった。 • 学生ローン借金がAirbnbホスティングに拍車 をかけた例もあった。 • また、プラットフォームの魅力は、フルタイム の収入に加えてお金を稼ぐことであった。 • その一方、プロバイダーの経済状態は大きく異 なっていた。 Juliet B. Schor , The Sharing Economy: Reports from Stage Oneより 23
3つを通した分析 Airbnbは最良の機会を提供 • 1つの不動産を貸して年間30,000ドル以上を 稼ぐ人もいた。 • Airbnbでアパート全体を貸すと通常の賃貸収 入の3倍から4倍の収入を得た。 • 豪華マンションに1泊約350ドルの料金を請求 し、年に34,000ドル稼いだ人もいた。 • 一方、Relay Ridesでは、収益ははるかに低 かった。わずか2人のオーナーだけが総収入 で1000ドル以上を報告した。 Juliet B. Schor , The Sharing Economy: Reports from Stage Oneより 24
3つを通した分析 TaskRabbitsでの収入は少ない • 2013年、Rabbitsの10%がフルタイムにプラット フォームを使用していた。 • プラットフォームによって提供される柔軟性は期 待できる最大のものであった。 • 一般的スキル(掃除、運転、イケアの家具組立 て、製品テストなど)しかなかった人でも、少なく とも最低賃金の2倍の支払いを受けていた。 – 多くは1時間当たり20-25ドルかそれ以上 • しかし、有意義なお金を作るのに十分な時間を費 やしていた人はほとんどいなかった。 • わずかに2人の収益が1万ドルあるいはそれ以 上で、ほとんどは5000ドル未満であった。 25
3つを通した分析 デジタル技術とプラットフォームが仕事 の構造と経験を変化させていた • シェアリングエコノミー参加者は、物理リスク、法 的リスク、プラットフォームリスクの3つの面で脆 弱である。 • プラットフォームの労働者は、安全に関する基本 的懸念を持ちながらも、オープン性に対する要 望とのバランスも取らされていた。 • 標準的な雇用保護と労働組合が存在しないため、 プラットフォーム力が強い例が目立つ。 – 2014年TaskRabbitは、プラットフォームの運用方法を 変更した。多くのプロバイダを非常に不幸にする仕事 の割り当てが行われた。 26
プラットフォームの労働条件は悪化しているか? 2013年のTaskRabbitインタビューの再インタビュー(2015年)状況 • 1つの傾向は、プロバイダがプラットフォーム を離れたこと(5人の再インタビュー者のうち活 発に活動を続けていたのは1人だけ) • 経験の評価は急激に低下(一ケースでは 8⇒3、他ケースでは10/9⇒6.5)【10が満点】 • インタビューを受けた人は、時間の経過ととも に満足度が低下したと報告 – プラットフォーマーはもはや「我々の背中を支えて いない」との見解 – プラットフォーマーは個々のRabbitsを気にしてい たが、もはやそれはない。 27
労働者を搾取しているか? • シェアリングエコノミーは労働の交渉力を弱め させ、希少なマイクロワークを巡って労働者を 互いに競争させる労働慣行を蔓延させている。 でも・・・ P2Pネットワーク構造や運用はアルゴリズム 的に決定されブラックボックス化されている。 そのため、労働者、消費者、監督当局はプ ラットフォームがどのように動作するのかを理 解し、結果に責任を持たせることが困難になっ ている。 28
プロバイダーの分類も論争に • ほぼ全てのプラットフォームが、恩恵を 欠き、従業員に保証された権利と保護 も欠くプロバイダーを独立請負業者とし ている。 “シェア”のレトリック • 背景:2005年~2015年頃までの経済 における大きな傾向(景気後退期)が、 高価な雇用を避け、悪条件でも高品質 の労働者を引き付けた。 Lawrence Katz Harvard • 同時期には非標準であって、オンライン University 仲介業者が全労働者の半分を「雇用」 Elisabeth Allison 経済学教授 していることがあった。 ・・・Katz&Krueger,2016:7 29
4.シェアリングエコノミーのパラドックス 時間に対する均等化効果 • 誰でも空いた時間を活用して収益を追加でき る可能性が登場したらどうするだろうか? • (誰でもお金が欲しいとすると)プロバイダー が既にフルタイムの仕事をしているなら、プ ラットフォーム活動に参加。その結果・・ – 働く時間を増加させるのでは。 • 一方、失業している人は・・ – 低く支払われる仕事にも甘んじるかも。 • ・・・2極分化が進むか・・ 30
高学歴者が低レベル作業を実施 • プロバイダーの多くは高等教育を受けている 模様。 • そして、仕事の中味は低レベルのもの(掃除、 運転など)あるいは手作業が多い。 • しかし、それにも関わらず、プロバイダーは低 レベルの作業を自分でやるらしい・・ – 例示:ホテルやモーテルでは従業員やメイドがや る掃除もAirbnbではホスト自身がやることが多い。 • 何故か? 31
高学歴の人が、何故低級と見なされるよう な仕事をするようになるのだろうか? • プラットフォームは、人々が行う仕事の種類を 非難できない/させない側面がある。 • 何故、非難できないか? – プラットフォームは技術的に進歩した、新しい、 クールなものとして提示されている。 – 高級感を醸成 – 単にお金を稼ぐのではなく社会に有益な何かを行 うことを強調する“シェア”のレトリックの訴求に成 功している。 – 例:環境に優しい、社会的つながり、他者への援助、 文化交流、・・ 32
シェアリングエコノミーのディスコース • 「シェア」のレトリックはお金を重視するプロ バイダーでさえ、プラットフォーム共通の良い 面として評価している。 • お金を稼ぐことへの関心を否定する人も存在 する(大部分は信用できないとしても、少なか らぬ人が本音でもそうと考えている模様)。 • 多くの人々がお金のためだけでなく、理想の サービスのためのより幅広い仕事を喜んで行 うという非難できない役割が認知された結果 ⇒高学歴者が手作業実施の心理的壁を突破し ていると考えられる。 33
これは不平等の拡大を促進させる • 従来は非プラットフォームビジネスが特権的 に手作業を担当する構造が存在していた。 • しかし、Airbnbがメイド、フードサービス、その 他の低賃金労働者を雇用するホテルへの需 要を減らすとして・・・ • 教育程度が高く比較的豊かな人々に不利益 な機会(金融危機など)が発生した際、彼等 の手作業への移動が可能になるとしたら・・ • その結果、収入は手作業担当の低賃金労働 者から高所得プラットフォーム・プロバイダーに シフトする。 34
また、お金を稼ぐにはお金がいる • RelayRidesでは低所得者の自動車所有者 は少なく、彼らの車は古く賃貸料は低い。 – 場所も重要である。低所得地域や貧しい地域に 設置されている自動車は、利用者が注意してい て要求が少なくなる可能性がある。 • Airbnbでは収益を望むなら価値ある資産を 持って市場へ参入する必要がある。 – 素敵な家やアパートを所有するか、高価なリース を手に入れるのに十分な収入を持っている必要 がある。 35
所得格差は拡大 • 所得分配の下位80%の所得格差は拡 大している。・・Schor、2017 理由1:多くのプロバイダーはフルタイム職が あり、プラットフォーム登場以前には利用でき なかった収入増加の方法を利用しているから 理由2:ほとんどのプロバイダーは高等教育 を受けており、彼らは、清掃、運転、手作業の 仕事など伝統的に低学歴労働者によって行 われてきた作業に取り組んでいるから 36
シェアリングエコノミーのパラドックス? • “シェア”のレトリックを出発点にして、・・ • シェアリグエコノミーは利用者、プラットフォー マー、資産やフルタイム職のあるプロバイダーに とっては良い結果をもたらすが・・ • しかし、下位80%内の下位プロバイダーにとっ ては非正規雇用が得られ易くなったとはしても 一層厳しい生活環境に追いやられる危険性が ある。 • これが最終決着ではないものの、2つの暫定解 が登場しており、社会にとって良かれと始まった にも関わらず、両者間に妥協点は無いように見 える。 37
5.これからについて 営利目的のプラットフォームの特徴 1. プラットフォームまたはアプリを介してトランザク ションを構成するITが中心的役割を担っている。 2. リスクを減らしてユーザーの信頼を高めるため、 ユーザーの評価と評判データに依存している。 3. 企業が「シェア」される資産を支持しているにも かかわらず、(企業対個人ではなく)ピアツーピ “シェア”の アまたは個人対個人の構造と見せている。 レトリック 4. プロバイダーを独立請負業者としている。 5. プラットフォーマーが決定したスケジュール、作 業を行うためのツールと材料を提供するプロバ パラドックス発生 イダー責任が含まれる。 の起源の一つは この辺りか? 38
反動は起きている • 進歩的勢力が企業所有者よりも むしろユーザーに利益をもたらす 民主主義的に所有され支配され たプラットフォームを創出しようと 反動を起こしている。 ・・・Scholz、2016 TREBOR SCHOLZ 准教授 for Culture & Media at The New School in New York City. Uberworked and Underpaid 39
• 運転手は組織化を試みてはいる。 • 他のプロバイダはSNSや他チャンネルを介し てコミュニケーションや組織化を行っている。 • 第3の雇用分野への挑戦が求められている との見解もある。 ・・Harris&Krueger、2015; Warren、2016 – 労働者がプラットフォームを所有し運営するプ ラットフォーム協同主義と呼ばれるもの – ①ポータブルなメリットがあり、②移動が容易で、 ③パートタイム、④よりカジュアル化された労働 力に適し、⑤労働における安全保障も増大が可 能な形態など 40
暫定まとめとこれから • シェアリングエコノミー参加者は高度に教育され、 多くの場合専門家であり、自分の収益を増やす ためにプラットフォームを利用している。 • 彼らは従来低学歴者が行ってきた手作業を少な くとも一定程度押し出している。 • 雇用や所得が乏しい時代では、より教育を受け た人々が、良い時代には受け入れなかった雇用 や機会を獲得する結果とも見える。 • シェアのレトリックが低級作業への下降を妨げる 文化的障壁を減少させている。 • 現状は未活用資源の活用の側面はあるものの、 都会での清掃や運転作業が中心である。 • これが長く社会が耐え得る真に社会的に有益なも のなのかどうかの評価に晒されるかもしれない。 41
• これから、より搾取を目的とするグループ? の登場で条件が変化してくる可能性がある。 • また、Uberの場合などは、従来の雇用をなく すであろうと考える観察者に対する対抗上、 より巨額の経済的負担を伴う高度に規制され た産業に突入した可能性もある(自動運転へ の大規模投資など)・・・Sundarajan 2016 • 一方、純粋の労働力シェア・プラットフォーム は、多くの場合成功しておらず、(TaskRabbit のように)ビジネスモデルを何度も変えている 例もある。 • まだ暫くは変動が続き流動的と思われる。 42