世界最強のソフトウェアアーキテクト

1.1K Views

March 03, 15

スライド概要

2015/01に行った社内勉強会の発表資料です。

profile-image

2023年10月からSpeaker Deckに移行しました。最新情報はこちらをご覧ください。 https://speakerdeck.com/lycorptech_jp

シェア

またはPlayer版

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

(ダウンロード不可)

関連スライド

各ページのテキスト
1.

世界最強の ソフトウェアアーキテクト 小川 雄大 1

2.

小川 雄大 (おがわ かつひろ) ソーシャルマーケティング開発部 著書 パーフェクトPHP 効率的なWebアプリケーションの作り方 アシアル (2008) - クロコス(2011) - ヤフー(2014) 2

3.

“ソフトウェアアーキテクチャ(Software Architecture)は、ソフトウェアコンポーネント、 それらの外部特性、またそれらの相互関係から構 成される。” – ソフトウェアアーキテクチャ - Wikipedia 3

4.

“アーキテクト(仕組士): システムのアーキテクチャを設計する責任がある、 人、チーム、あるいは組織” – IEEE 1471 - Wikipedia 4

5.

対象者 • コードの質を高めたいと思っている人 • 設計に興味を持っている人 • 設計がうまくいかず悩んでいる人 • 効率的にコードを書きたいと思っている人 • 開発現場に秩序をもたらしたい人 5

6.

ゴール • 自分やチームメンバーが書いたコードを よりよくしたい気持ちになる • 設計における考え方の指針を得る 6

7.

アジェンダ 1. 技術的負債 2. メンタルモデルとオブジェクト指向設計 3. 設計原則とパターン 4. アーキテクトのメンタル 7

8.

技術的負債 8

9.

“本質的な複雑さは単純に、 付随的な複雑さは取り除け” – ニール・フォード (ソフトウェアアーキテクトが知るべき97のこと) 9

10.

技術的負債の例 10

11.

重複だらけのコード • 修正したと思ったら修正漏れがあった… 11

12.

理解しづらいコード • 変更したい箇所で何やってるかわからなくて どう変えていいかわからない… • どこを変えればいいかすらわからない… • 機能追加したら思わぬバグがでた… 12

13.

拡張性のないコード • 修正したいけどあれもこれも直さなきゃ… • 1箇所変更したいだけなのにここをいじると 影響範囲が広すぎて直したくない… 13

14.

古くなったライブラリ • サポート期限きれた… • 使いたい機能が使えない… • 放置しすぎてもはやバージョンアップ できない… 14

15.

こんなことを繰り返していると もうヤダこのシステム... となってしまいます 15

16.

技術的負債を駆逐する • コードを書く以上は発生し続ける負債 • 負債を完全になくすのは不可能 • コードを破棄するほかない 16

17.

技術的負債を駆逐する • 新たにコードが発生する際に負債に なりにくいよう設計する • 時が経ち古くなったコードを継続的に 改修していく • 設計の知識、テクニック、経験が要求される 17

18.

組織として取り組んでいく • 企業・チームで開発をする以上、 個人だけの問題ではない • 規約やガイドラインを制定して ルール・知見を共有し秩序をもたらす • コードレビューを実施して品質向上と共に チーム全体の技術向上を図る 18

19.

技術的負債ではなく 技術的資産を 19

20.

技術的資産 • ライブラリ・フレームワーク化 • 統一・洗練された思想やインターフェイス • 整理されたドキュメント • それらをオープンソース化して 業界のイニシアチブをとる 20

21.

メンタルモデルと オブジェクト指向設計 21

22.

“メンタルモデル(英: mental model)とは、 人間が実世界で何かがどのように作用するかを 思考する際のプロセスを表現したものである。” – メンタルモデル - Wikipedia 22

23.

メンタルモデル • 思考のプロセスを表現したもの • 利用者がどのように考えてシステムを 利用するか • プロダクトオーナーがどのような仕様に したいと考えているか • 開発者の抱く実装イメージ 23

24.

メンタルモデルをコードで表現する • ショッピングカートの例 A. $_SESSION[‘cart’][$item->getId()]+=$num; B. $cart->addItem($item, $num); • 剥き出しの実装にインターフェイスを被せる • オブジェクト指向プログラミングの本質 • 具体的な実装はカプセル化 24

25.

ユースケースとインターフェイス • ユースケースを洗い出し、 それを扱うインターフェイスを定義する • ここでいうインターフェイスは言語機能の ことではなく、より広義の意味 25

26.

ショッピングカートのユースケース • • ユースケース • カートに商品を追加できる • カートに商品を追加する際に個数を指定できる インターフェイス • class Cart • public function addItem(Item $item, $num) 26

27.
[beta]
Facebook PHP SDK

•

$fb = new Facebook([
'app_id'
=> '{app-id}',
'app_secret' => '{app-secret}',
]);

•

$response = $fb->get('/me', '{token}');

•

$me = $response->getGraphUser();

•

echo $me->getName();

27

28.

“MVC is about people and their mental models —not the Observer pattern” – Trygve Reenskaug (The DCI Architecture: A New Vision of Object-Oriented Programming) 28

29.

チームにおける認識の共有 • 仕様についてチーム内で話し合うときに、 固有名詞やその意味を共通化する • • ユーザー?アカウント?利用者? ユビキタス言語 • “共有されたチームの言語” 29

30.

“チーム内のすべてのコミュニケーションとコード において、その言語を厳密に用いることを、チー ムに約束させること。図やドキュメント、そして 何より会話の中では同一の言語を使用すること。” – エリック・エヴァンスのドメイン駆動設計 第2章 コミュニケーションと言語の使い方 30

31.

本質的な複雑さは単純に • メンタルモデルに沿って設計を進めることで インターフェイスが洗練される • コードが理解しやすくなり、修正や拡張も 行いやすくなる • シンプルに、文章のようなコーディングを 31

32.

難しいところ • 実現するためにはオブジェクト指向設計の ノウハウや経験が求められる • メンタルモデルを的確に捉え、コード上に 表現しつつ、複雑な実装の裏側はカプセル化 する、ということは簡単なことではない • シンプルがゆえに「これが普通」だと捉えら れるかも 32

33.

設計原則とパターン 33

34.

設計の原則/パターン • 原則やパターンは開発における基礎知識 • 原則は負債を生み出しにくくするために • パターンは負債を取り除くために 34

35.

パターンの乱用による弊害 • ただし乱用すると却って複雑に • “本質的な複雑さは単純に、 付随的な複雑さは取り除け” • 常に本質的な問題の解決を意識し優先する 35

36.

パターン 36

37.

パターンとは • 設計ノウハウに名称をつけて共有されたもの • 「こういった問題に対してはこのパターンを 適応することで解決できる」 • たくさんあるので詳細は省略 37

38.

GoF • デザインパターン集 • State/Strategyパターンはオブジェクト指向 における基本的なテクニック 38

39.

DDD • ドメイン駆動設計 (Domain Driven Design) • 本質的な問題解決をするためのパターン集 39

40.

エリック・エヴァンスのドメイン駆動設計 • DDD 40

41.

PofEAA • エンタープライズアプリケーション アーキテクチャパターン (Patterns of Enterprise Application Architecture) • アーキテクチャパターン集 41

42.

エンタープライズアプリケーション アーキテクチャパターン • PofEAA 42

43.

リファクタリング • リファクタリングを 行う手順に関する パターン集 43

44.

リーダブルコード • 読みやすいコードを 書くためパターン集 44

45.

DCI • Data Context Interaction • • データ、コンテキスト、相互作用 MVCのようにメンタルモデルを表現する手法 • MVCの考案者らによる提案 45

46.

さまざまな役割 • Controller • Entity • Repository • Service • Usecase • Api 46

47.

原則 47

48.

原則 • こういうことしたら問題になりやすいから やっちゃだめだよという知見 48

49.

DRY • Don’t Repeat Yourself • 重複してはならない 49

50.

SOLID • オブジェクト指向設計の5つ原則の頭文字 • 単一責任の原則 (SRP : Single Responsibility Principle) • オープン・クローズドの原則 (OCP : Open Closed Principle) • リスコフの置換原則 (LSP : Liscov Substitution Principle) • インターフェイス分離の原則 (ISP : Interface Segregation Principle) • 依存性逆転の原則 (DIP : Dependency Inversion Principle) 50

51.

単一責任の原則 (SRP) • "クラスを変更する理由は1つでなければ ならない" • クラスの責任は1つにして複雑化などを防ぐ 51

52.

オープン・クローズドの原則 (OCP) • "拡張に対して開いていて、修正に対して 閉じていなければならない" • 既存のコードに手を入れることなく 修正・拡張できるようにする 52

53.

リスコフの置換原則 (LIP) • "派生型は基本型と置き換え可能でなければ ならない" • 継承によって親クラスの実装を全く別のもの に変えてしまうのは間違った継承である 53

54.

インターフェイス分離の原則 (ISP) • "クライアントに、クライアントが利用しない メソッドへの依存を強制してはならない" • 利用するクライアントの視点から インターフェイスを定義しよう 54

55.

依存関係逆転の原則 (DIP) • "上位モジュールは下位モジュールに依存してはな らない。どちらも「抽象」に依存するべきである" • "「抽象」は実装の詳細に依存してはならない。 実装の詳細が「抽象」に依存すべきである。" • 実装からインターフェイスを抜き出すのではな く、要求に応じてインターフェイスを定義し、イ ンターフェイスにあわせて実装する 55

56.

アジャイルソフトウェア開発の奥義 • SOLID原則 56

57.

効率的なWebアプリケーションの作り方 • オブジェクト指向や 設計ノウハウなどを 体系的に学べる 57

58.

YAGNI • You Ain't Gonna Need It! • 実際に必要になるまで機能追加しない • “本質的な複雑さは単純に、 付随的な複雑さは取り除け” 58

59.

アーキテクトのメンタル 59

60.

経験は必要不可欠 • 失敗を恐れずに、「やってはいけないこと」 を身をもって覚える • 書いたコードを振り返り、よりよくなるには どうしたらようかを考える • そうして経験値として積み重ねたものが アーキテクトの支えになる 60

61.

コードの資産価値を高める • 再利用可能なコードを探しては抜き出し、 ライブラリ化して共有する • コードをオープンにして利用者を増やし、 コードの成長を促す 61

62.

先人の知恵から学ぶ • 本やドキュメントを読み、原則・パターン化 された知恵を身につけていく • 先人と同じ過ちを繰り返さない • 知識の継承 62

63.

責任を持つ • 修正や拡張を行う際にリスクを恐れて メンタルモデルにそぐわないコードを書くと 技術負債として重くのしかかる • リスクをとるか、負債をとるかは アーキテクトとして責任をもって判断する • 誰かが責任を持たないと全員が不幸になる 63

64.

“本質的な複雑さは単純に、 付随的な複雑さは取り除け” 64

65.

ご清聴ありがとうございました 65