わかった“つ・も・り”になる! オープンソースのお話 2025/04/24 技術勉強会資料

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May 23, 25

スライド概要

説明文
スマートフォン、クラウド、AI――
今では当たり前の技術も、すべては誰かの理想や好奇心から始まりました。

この資料では「オープンソース」を手がかりに、技術が社会をどう形づくってきたかを、やさしく・楽しく・少し感動的にご紹介します。

ベガシステム技術勉強会の発表資料です。

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ベガシステムは、創業1990年、30年以上続くIT企業です。 お客様との対話を大切にし、新たな価値を創造し続けます。

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

わかった つ・も・り になる! オープンソースのお話

2.

わかった つ・も・り とは? • 概略だけ取り出してわかったつもりになって ドヤ顔してもらう事を目指して作っています。 • 正確性よりも面白さ、わかりやすさを重視し て作っています。 • この内容を聞いても、本当の実力はつきませ ん。このスライドを出発点として正確な事実 を勉強するキッカケになれば光栄です。

3.

本日のお品書き • プロローグ(prologue) • 前史 : Unix誕生 • 1980年代 : フリーソフトウェア運動始動 • 1990年代 : オープンソース誕生 • 2010年代 : クラウドの時代 • 情熱が消えるとき • まとめ • エピローグ(epilogue)

4.

ここ30年間くらいの変化 1980年代、音楽を聴いたり、写真 を撮影したり、通信したりするに は、これだけ多くの機械が必要で した。 2010年代はスマホ1台で出来るよ うになりました。 そして、スマホも安いものなら数 万円で買う事が出来ます。 [引用] http://cafeflamingo.blog87.fc2.com/blog-entry-466.html

5.

何が起きたのか? 要因は複数あります。 (都合よくわかりやすく)簡単に列挙すると以下です。 [トピック] • ムーアの法則 • オープンソースソフトの台頭 ← ★主題

6.

ムーアの法則 1000000000 100 00000 = コンピュータの性能は2年で2 倍になります。 わが社インテルはそれを実現 しています。 この進化ルールを実現できな い他社はコンピュータ業界で 生き残れないでしょう。 By インテル創業者 ゴードン ムーア 100 000 = 1000 = インテルは40年間くらいこの 法則を維持した。 結果、めちゃめっちゃ性能が 上がった…. [引用] https://www.intel.co.jp/content/www/jp/ja/innovation/processor.html

7.

ソフトが無け ればただの石 • コンピュータの性能は2年で 2倍になるので、2年後には2 倍、複雑な事が出来ます。 • しかし、コンピュータはソ フトが無いとただの石(焼き 固めたシリコン結晶)です。 • あなたは、2年ごとに2倍複 雑なプログラムを書けます か?

8.

共通する部品は 世界の皆で共有 しよう! • 現在のソフトウェア開発で は開発に必要な基礎的な部 品は「オープンソースソフ トウェア」として全世界の プログラマが共同で開発/ 管理しています。 • 今回は、そこに到る流れと 重要なポイントを整理して いきます。

9.

歴史年表 1960 Unix誕生 1970 1980 1990 2000 2010 2020 GNU誕生 ・Linux誕生 ・オープン ソース誕生 ・Wikipedia ・クラウドと ・AIの時代 誕生 オープンソー ・企業への普 ス 及を開始

10.

本日のお品書き • プロローグ(prologue) • 前史 : Unix誕生 • 1980年代 : フリーソフトウェア運動始動 • 1990年代 : オープンソース誕生 • 2010年代 : クラウドの時代 • 情熱が消えるとき • まとめ • エピローグ(epilogue)

11.

前史 : Unix誕生

12.

一大企業プロジェクト : Multics • 1964年に、MIT(フェルナン ド・J・コルバトら)を中心とし て、AT&Tベル研究所およびゼネ ラル・エレクトリック (GE) の独 創的な共同プロジェクトとして 始まった。 • 大規模システムの開発計画であ り、複数年にわたり開発が続行 されたが開発は困難を極めた。 • 1969年AT&Tベル研究所は Multicsからの離脱を表明。 http://gunkies.org/wiki/Multics

13.

暇になったので… • Multicsから外れたベル研ですが、研 究員であり開発に参加していたトンプ ソンとデニス・リッチーは暇になって しまいました。 Unixが誕生したPDP-7 • 当時、コンピュータ自体は非常に高価 で簡単に買える代物ではありませんで した。 • そこで、研究所に「端末」として購入 されたPDP-7でシンプルで実験的な OSである「Unix」を開発する事とし ました。 暇だったので、使われなくなった低性能な コンピュータ?で遊んでいた。 遊ぶにもプログラム言語もOSも使えるも のが必要だったから必用最小限で作ってみ た… https://ja.wikipedia.org/wiki/PDP7#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Pdp7-oslo-2005.jpeg

14.

文書整形システムを作るための副産物 開発用に調達したPDP-11 • 実験として色々と作ってみたら以外と いける事がわかりました。 • そこで、本格的にコンピュータを調達 してUnixを開発する研究プロジェクト を立ち上げる事にしました。 • しかし、Multicsが問題になった直後 だったので「OS作ります!」といって 申請を上げても通りません。 • 「文章整形システム(ワードの先祖み たいなやつ)」を作りますと申請をあ げて「副産物」として仕方なくOSと プログラム言語を作る事にしました。 「文章整形システムの開発」とした事は のちのUnixの発展に大きな影響を及ぼす こととなりました。 https://www.chessprogramming.org/PDP-11

15.

OSを作るためにC言語を開発 トンプソン(左)とデニス・リッチー(左) • OSを作るためには、それを記述する プログラム言語が必要です。 • Unix開発当時、「高級なプログラム言 語も珍しい」という時代でした。(大 企業が膨大な予算をかけて作る。) • そこで、出来るだけシンプルで、簡単 に実現できる言語である「C言語」が 開発され、C言語でUnixが実装されま した。 • ちなみに、彼らのその後の大きな活動 として、トンプソン氏はGoogleに招 かれ「Go言語」を設計しています。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B1%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83% B3%E3%83%97%E3%82%BD%E3%83%B3#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4% E3%83%AB:Ken_Thompson_and_Dennis_Ritchie--1973.jpg

16.

教育用で安価に • Unix自体は、他の目的の副産物として発生しました。 このため、Unixは売り物という認識が薄いままソース コードは実費(輸送費)程度で安価に公開されました。 • 大学などの研究機関に広まっていきます。 • 実用的でありながら、ソースコードが公開されていて 大学の授業で解説するのに丁度良いものでした。Unix のソースコードに解説用のコメントを追加して(勝手 に)本として出版されました。 →当然問題になった…。 • 多くの大学で導入された事で、学生時代にUnixを触り、 Unixに詳しい学生はやがて技術者となり業界に巣立っ ていくこととなるのです。(デファクトスタンダードに なっていった。)

17.

技術研究の基盤として • ソースコードが公開されたUnixは大学でコンピュータシステム研究の材料と使われるように なりました。 • 有名な拠点として「カリフォルニア大学バークレー校」があります。 • 成果として「インターネット技術の基礎研究」がとても有名です。 • 彼らは成果をまとめて「Berkeley Software Distribution」 ました。 • 今回の資料では登場しませんが、BSDの子孫は今なお開発が続けられています。 その歴史的 経緯からネットワークに強いOSとされています。(Netflixで大量の通信を処理している。) 略して 「BSD」の配布を始め

18.

• 超大規模プロジェクトである「Multics」から離 脱した人達が作り始めた「Unix」は「Multi」と いう考え方の反省で「Uni」という事を重視して いました。 UNIX哲学 • ここから生まれた有名な考え方がUnix哲学と呼 ばれています。 • 40年近くUnixが生き残っているのは、このよう な「考え方」に共感する人が多い事が一因です。 https://ja.wikipedia.org/wiki/UNIX%E5%93%B2%E5%AD%A6

19.

本日のお品書き • プロローグ(prologue) • 前史 : Unix誕生 • 1980年代 : フリーソフトウェア運動始動 • 1990年代 : オープンソース誕生 • 2010年代 : クラウドの時代 • 情熱が消えるとき • まとめ • エピローグ(epilogue)

20.

1980年代 : フリーソフト ウェア運動 始動 GNUのロゴはヌーの頭

21.

商用ソフトウェアとして 商用Unix全盛期の雄 Sun Microsystems • 1980年代になると、Unixは大学以外の分野でも広く 使われるようになりました。 • 大学でUnixを学んだ学生たちは、Unixに関連する企 業を立ち上げました。たとえば、BSDの開発者たち はSun Microsystemsを創業しました。 • また、Unixそのものも「緩やかな取り扱い」から、 商用製品として販売されるようになりました。(売 れることが明らかになってきたためです。) • 取り扱いが緩く、気軽に入手でき、改変も可能だっ た古くからのUnixを気に入っていたユーザーの間で は、危機感が生まれました。 • 「もう自由に勉強やプログラミングができなくなる のではないか」と……。 https://ascii.jp/elem/000/001/207/1207680/

22.

は厳 理し 解い し状 た況 ほ力 しを い貸 し て な戦自 いわ由 なの けた れめ ばに な ら

23.

漢リチャード・ストー ルマン立ち上がる • ソフトウェアは企業が独占するものと は違うんじゃないの? • 人類の資産として、皆で開発して改良 していくべきじゃないの? • そうだ、重要なソフトウェアを自分た ちで作り直して、「全ての人達が自由 に使えるようにしよう!」 • このプロジェクトはGNU(グニュー)プ ロジェクトと命名する。 • 負けることが許されないゲリラ戦だ! https://www.wikiwand.com/ja/Emacs

25.

Q : GNUとはどういう意味ですか? A : GNUとは GNU's not Unix! という言 葉の頭文字です。 試行 : 1回目

26.

Q : GNUとはどういう意味ですか? A : GNUとは GNU's not Unix! という言 葉の頭文字です。 試行 : 2回目

27.

Q : GNUとはどういう意味ですか? A : GNUとは GNU's not Unix! という言 葉の頭文字です。 試行 : 3回目

28.

・・・・・

29.

Q : GNUとはどういう意味ですか? A : GNUとは GNU's not Unix! という言 葉の頭文字です。 試行 : ∞回目

30.

Unixじゃないけど、自由に使えるUnixと 同じものを作るプロジェクト • GNUプロジェクトは成果を上げていきました。(本当に必要なものを 作っていった…。) • メジャーなものをあげると… 名称 種別 用途 gcc(GNU Compiler Collection) コンパイラ プログラマをコンパイルする Gnu emacs エディタ プログラマを編集する Gdb デバッガ プログラマをデバッグする

31.

権利と契約 GNUは、ソフトウェアを保護するための著作権 (copyright)を活用する事を思いつきました。 ソフトウェアは、基本的には作成者が著作権を保有し ています。 利用者は、その著作権者と「使用」に関する契約を結 び、ソフトウェアを利用します。 契約 私たちがソフトウェアを購入する際には、この使用契 約を結んで、お金と引き換えに使用する権利を得てい ることになります。 GNUは、著作権(copyright)を逆転させる形で 「コピーレフト(copyleft)」と言い出したのです。 作った人(権利者) 使用者 対価

32.

青い薬を選べば… 物語はそこで終わりだ。自分のベッドの上で目覚めて、これま で通り著作権(copyright)のもとで与えられたものだけを信じて生きていける。 赤い薬を選べば… 自由の世界(copyleft)にとどまることができる。 自由な創造の深淵がどこまで広がっているのか、君自身の目で確かめるといい。

33.

Copyleft:自由を約束するなら自由に使っ てもいいよ! Copyleftでは、使用契約に「お金」を求めませんでし た。 自由を約束する その代わりに、使用者に対して「ソフトウェアの取り 扱いに関する自由」を尊重することを求めました。 契約 彼らは、ソフトウェアに関する3つの自由を重視して おり、 この考え方を整理したライセンス(契約文章) として、 「GNU General Public License(GNU GPL)」を 提唱しました。 作った人(権利者) 使用者

34.

3つの自由とは? 「自由」は「無料」と誤解されがちですが、実際には3つの異な る概念を含んでいます。 簡単にいうと 使用する自由 誰もが、GNUプロジェクトで開発されたソフトウェアを自由に使用する ことができます。 改変する自由 誰もが、GNUプロジェクトで開発されたソフトウェアを自分の用途に合 わせて改変する自由があります。 この自由を実現するために、誰もがGNUプロジェクトのソースコードを 入手することができます。 再配布する自由 誰もが、GNUプロジェクトのプログラムを再配布することができます。 もちろん、自分で改変したプログラムも再配布することができます。

35.

GNU GeneralPublicLicense(GPL)の考え方 ・使用、改変、再配布、 自由。 ただし、再配布する時も 使用、改変、再配布、自 由とすること • GPLでは、使用条件に 「自由の尊重」と定め、 再配布の際にも同様に 3つの「自由」を引き 継ぐことを条件としま した。 契約条件 契約条件 • 一度このルールに従え ば、そのソフトウェア は永続的に自由な状態 を保ち続けます。 • つまり、GNUプロジェ クトの理想が末永く受 け継がれていくのです。 作った人(権利者) 使用者1 ちょっと、改造しよう。けど、契約 ルールに従って再配布だ 使用者2 もっと良いものにしよう!

36.

単純に自由なだけだと… 使用、改変、 再配布、自由 • 使用条件を単に「自 由」とするだけでは、 ソフトウェアの進化が 一度きりで止まってし まう可能性があります。 • それでは、「自由なソ フトウェアを作る」と いう理想も、簡単に途 絶えてしまうのです。 ちょっと、改造し て「改変、再配布 不可能」にして売 ろう 使用者 改良されたら自由 じゃなくなった…

37.

共に自由を信じる 大切な あなた に 自由なソフトウェアの 未来を託したい GUNという言葉遊びには、自由な ソフトウェアが永遠に自由であり 続いて欲しいというハッカー達の 願いが込められている。

38.

Copyleftの継承者たち • コピーレフトをソフトウェアに対して適応して 発展させたのがGNUプロジェクトです。 • コピーレフトの考え方を「百科事典」適応する と「Wikipedia」が出来上がります。 • 地図に適応すると「オープンストリートマッ プ」が出来上がります。 • フリーソフトウェア運動の初期、先駆者である ハッカーたちは「HACK THE PLANET!」という スローガンのもと、地球上のあらゆる独占、隠 蔽、強制に対して立ち向かおうとしていました。 • コピーレフトの思想は、さまざまな分野で共感 を呼び、新たな「解放」と「共有」の動きを生 み出したのです。

39.

本日のお品書き • プロローグ(prologue) • 前史 : Unix誕生 • 1980年代 : フリーソフトウェア運動始動 • 1990年代 : オープンソース誕生 • 2010年代 : クラウドの時代 • 情熱が消えるとき • まとめ • エピローグ(epilogue)

40.

1990年代~2000年代 • Linux誕生 • オープンソースの誕生 • オープンソースの商用化

41.

なぜかカーネルの決定打が無かった コンピュータシステム ユーザーランド ミドルウエア ? カーネル • コンピュータのシステムは複 数の部品で成り立っています。 • GNUのハッカー達は自分た ちで書き直した自由なソフト ウェアでコンピュータシステ ムを組み立てようとしました。 • しかし、なぜかカーネルと呼 ばれる基礎機能は定番となる ソフトが決まりませんでした …。

42.

Just for FUN! https://www.ubuntu-user.com/Online/News/Linus-TorvaldsWindows-7-Rocks

43.

リーナス・トーバルズ氏 ワタシハ リナックス チョット デキル • 来日公演時の様子です。 • リーナスさんのTシャツには「チョットデキル」と書 いてありました。 • 冗談で書いてあるように見えますが、コレが オープンソースが成し遂げた真の凄さです。 • 今や伝説の人である彼には伝記があり、タイト ルは「Just for Fun: The Story of an Accidental Revolutionary、「ただ楽しみのた め: 意図せず生まれた革命(家)の物語」」と なっています。 • 彼は何か凄い事をしようと思ってLinuxを作っ たのではなく、本人の楽しみのためにLinuxを 開発しました。 • そして、長い時間がたった今でも沢山の人の力 を結集させてLinuxの一部をチョットだけ開発して いるという状態なのです。

44.

自分の課題を解決するための小さな仕事 • Linuxはリーナスさんの趣味で 始まりました。 • 大学で習った知識を自宅で試 してみたのです。 • 「Just for Fun(ただ楽しみのた め)」というわけです。 • 良くできたのでインターネッ トに公開していろんな人の意 見を聞くことにしました。

45.

1991年8月25日のメッセージ https://news.mynavi.jp/article/20160828-a056/

46.

いろんな人が修 正を送ってくれ た 友達に紹介しました。 マニュアル書きました。 • Linuxが公開されると、いろ んな人が意見をくれました。 • そして、いろんな人が「自 分の所で使えるように修正 した結果」を送ってくれる ようになりました。 • リーナスさんは送られてき た修正がLinuxにふさわしい かどうかを判断して、良い ものはLinuxに取り込むとこ とをするようになりました。 私の古いパソコンで動 くように修正しました ネットワーク通信を 安定化させました。 提案ありがう! 改良点を送ってくれた ら取り込みます!

47.

オープンソース運動を、 音楽のセッションに例えて 考えてみよう

48.

最初は個人的な試みから始ま ります。 まさに「Just for Fun(楽しみ のために)」というわけです。

49.

次第に興味を持ってくる人が増えてきました。

50.

いつの間にか、 多くの人が自分 なりの表現方法 でセッションに 参加するように なりました。

51.

最後には、セッションは町全体 に広がりました。 今では、それぞれの人が自分ら しい表現をしています。 個々が自由に表現しているよう に見えても、最初に始めた彼を リスペクトし、彼の音に調和し ているのです。

52.

誰がLinuxを作っているのか? • Linuxプロジェクトに対して改善修正 (パッチ)を送った組織のリストです。 • 大企業が名を連ねており、もはや、 リーナスさんの名前は有りません。 • Linuxを始めたのはリーナスさんです が、彼はLinuxのチョットだけ作った状態 となっているのです。 小さな成果を上手に集めると凄く大き なことができる! https://www.linuxfoundation.jp/wpcontent/uploads/2020/08/2020_kernel_history_report_082720.pdf

53.

OSを開発するとは?! ちなみに、同時期にWindowsも新規開発が行われていました。 こちらは、超大規模プロジェクトでマイクロソフトの社運をかけて開発が行われました。 Windows Linux Just for fun

54.

ものすごく複雑なものが世界分散で作れ ることが発見された • Linuxの開発は「革命」と呼ばれました。 • それまで実用的なOSの開発とは大企業が社運をかけて、何年も の厳しい開発の末に完成させるものでした。 • Linuxの成功は、世界中の人が「自分の目の前の課題解決」し た成果を結集するとOSのような複雑なものが作れることを証 明してしまったのです。 このような動きが、いよいよ、ソフト開発者達だけではなく、 現実のビジネス環境にも大きな影響を与えていくこととなります。

56.

一式揃う • Linuxが安定てくると、ついにGNUプロジェクトが理想として いた「UnixじゃないけどUnixっぽい自由なソフトウェア環境」 というものが実現してきました。 • つまり、GNUが考えていた「自由なソフトウェアで必要な事を 賄える(仕事)ができる」という世界になってきたのです。 これ、商売に使えない???

57.

フリーソフトで金を稼ぐ?! フリーソフトの自由 使用する自由 改変する自由 再配布する自由 • 事情に詳しくない人から見た時に「フ リー」なソフトで金を稼ぐというのは凄 く意味が理解しにくいです。 • 「フリー」とは自由という意味であり複 数の自由があるのですが、多くの人に とっては「使用する自由」しか見えてい ません。 • 「フリー=無料」と聞こえるわけで、なん でそれで稼げるの??と説明が難しいので す。

58.

「フリーソフト」って 名前がわかりにくいん じゃん。 新しい名前を付けよう!

59.

オープンソースソフトウェア • そこで、「ソースコードが公開されているプログラム」を 「オープンソースプログラム」と呼ぶことにしました。 • 「フリー」ではないため、ビジネスで説明する際にも分かりや すくなります。 • ここまではGPLについて述べてきましたが、実は「オープン ソース」と呼ばれるライセンスには、複数の種類が存在します。

60.

オープンソースのライセンス種類 • オープンソースライセンスの中では、GPL(GNU General Public License)が最も制約が厳しいと されています。 • 近年のソフトウェア開発においては、オープン ソースソフトウェアを活用せずに開発を行うこと はほとんどありません。 • GPLライセンスのソフトウェアを商用ソフトウェ アに組み込むと、その商用ソフトウェア全体も GPLの対象となってしまうため、注意が必要です。 • また、制約の緩やかなライセンスであっても、そ のソフトウェアを利用していることを明示する義 務がある場合があります。 • こうしたライセンスに関する知識は、現代のソフ トウェア開発における基本となるため、各ライセ ンスの種類とその特徴を正しく理解することが重 要です。 • 業務でオープンソースソフトウェアを活用する際 には、機能面だけでなく、そのライセンスが業務 上の要件に適合しているかを必ず確認する必要が あります。 企業技術者のためのOSSライセンス入門 https://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/0902/05 /news135.html

61.

オープンソースとビジネス • オープンソースソフトは無償で入手でき、改造、再配布も自由 です。 • しかし、使用に対して開発者は「無責任」です。 • 何かあったら使う人が対処する必要があります。 • 企業で使う場合、これは非常に厄介です。 • そこで、オープンソースソフトの使用をサポートするビジネス が生まれました。 • 「オープンソースソフト」という言葉はこういうビジネスにお いて事情を知らない人に説明するときに有用でした。 • 一番有名なのがRedHatです。

62.

サポートビジネス : RedHat Linux • 「自己責任」の部 分がカバーされて、 安心して業務で使 えるうよにななっ た。 オープンソースソフト 僕と契約してくれたら インストールしやすくします。 足りないマニュアル作ります。 不具合が出たら修正します。 使用者

63.

本日のお品書き • プロローグ(prologue) • 前史 : Unix誕生 • 1980年代 : フリーソフトウェア運動始動 • 1990年代 : オープンソース誕生 • 2010年代 : クラウドの時代 • 情熱が消えるとき • まとめ • エピローグ(epilogue)

64.

2010年代 クラウドの時代へ

65.

密林から雲 をもつかむ 時代へ https://forbesjapan.com/articles/detail/28587/5/1/1

66.

オープンソースソフトがクラウドを生み 出した • 2000年ごろ、インターネット で商用サイトを開設する際に は、商用Unixを利用するのが 一般的でした。 • 当時、Linuxもそれなりに安定 してきており、徐々に商用環 境でも利用されるようになっ てきていました。 • Linuxの最大の強みは、その価 格の安さにあります。 [商用Unix] 専用ハード 専用OS(Unix) 価格 : 数百万円~ [オープンソース構成] 高性能パソコン オープンソースソフト(Linux) 価格 : 数十万円~

68.

AWSの誕生秘話 1. Amazonはショッピングサイトを運営しています。 2. (お金ないので)商用Unixを必用な量だけ買うことが出来ません。 3. (死にそうになりながら)Linuxをチューニングして業務に耐えられるよう にしました。安価なパソコンにインストールしてサーバーを作りました。 4. パソコンは安く沢山買えるので経費は下がった(80%減)のに、なぜかコン ピュータ性能が余るようになりました… 5. 余ったコンピュータを時間貸しよう! https://www.publickey 1.jp/blog/21/awsamaz onsunhplinux.html

69.

欲しいときに欲しいぶんだけ • AWSを始めとするクラウドコンピューティングが勃興した事で新しい サービスを始める敷居が凄く下がりました。 • また、数々のオープンソースソフトが実用段階に至った事により、ソフト にお金をかけずに新しいサービスを作って試して、駄目ならば他を考える という試行錯誤が非常に短い周期で実現できるようになりました。 • 「ソフトが主役」から「サービスが主役」への変化が起き始めました。 [商用Unix] 専用ハード 専用OS(Unix) 価格 : 数百万円~ [オープンソース構成] 高性能パソコン オープンソースソフト(Linux) 価格 : 数十万円~ [クラウド構成] 高性能パソコン オープンソースソフト(Linux) 価格 : 数円/時間~

70.

ちょっと脱線… 挑戦への敷居が下がる • クラウドの起こした最大の影響は挑戦への敷居を下げた事にあります。 • 通販サイトを始める事を考えてみましょう! 必要 な事 [商用Unix] 専用ハード 専用OS(Unix) 価格 : 数百万円~ [オープンソース構成] 高性能パソコン オープンソースソフト(Linux) 価格 : 数十万円~ [クラウド構成] 高性能パソコン オープンソースソフト(Linux) 価格 : 数円/時間~ 銀行から金を借りないと。 ボーナス一括払いだ! うまい棒を買うの我慢しよう!

71.

自由なソフトが不自由に • フリーソフト運動が始まって数十年。オープンソースソフトは 確実に世界を変えましたが、新たに問題が出てきました。 • GPLが始めたフリーソフト運動は、「コピーレフト」という考 え方を採用する事でソフトウェアの改良が永続的に続く仕組み でした。 • しかし、クラウドの勃興で「ソフトはクラウドの向こう側」で 動き続け、ユーザーはインターネットを使ってサービスだけを 受け取るようになりました。 • 実質的にコピーレフトが及ぶ範囲が狭まってきたのです。

72.

フリーライド(ただ乗り) • オープンソースソフトは皆がルー ルを守って、改善結果を共有する 事で発展します。 • 成果だけを使って成果が公開され なくなると進化が止まってしまい ます。 いくら改造しても、 外部に提供するのは サービス。 ソフトは配布しない ので公開する必要な い。 オープンソースソフト 利用者

73.

GNU Affero General Public License • この問題に対応するために、 GPLは拡張されました。 • AGPLと呼ばれるこのライ センスは、「サービスの提 供先に対してもソフトウェ アの公開義務」を課す内容 となっています。 • 要件が厳しいため適用事例 は限られていますが、注意 が必要です。 素晴らしいサービスの ソースコードください! オープンソースソフト 利用者

74.

本日のお品書き • プロローグ(prologue) • 前史 : Unix誕生 • 1980年代 : フリーソフトウェア運動始動 • 1990年代 : オープンソース誕生 • 2010年代 : クラウドの時代 • 情熱が消えるとき • まとめ • エピローグ(epilogue)

75.

情熱が消えるとき

76.

Log4jってなに? • Javaで作られたシステムが、 「いつ・なにをしたか」「ど こでエラーが起きたか」 を記 録するためのツールです! • オープンソースで開発されて いるこのライブラリは、 Minecraftから銀行の基幹シス テム、Apple、クラウドサービ スまで 世界中のシステムで使 われています。

77.

CVE-2021-44228 : Log4Shell • 2021年12月、「Log4j」に、インター ネット史上最悪級の脆弱性(CVE2021-44228)が発見されました。 • この脆弱性は、攻撃者がリモートで任 意のコードを実行できるというもので した。つまり、Log4jを使っているシ ステムを「遠隔操作」できる状態に なってしまったのです。 • 数百万台のサーバーが影響を受ける可 能性がありました。この問題は 「Log4Shell」とも呼ばれ、世界中の ITインフラに深刻な影響を及ぼしまし た。

78.

3人で世界を 守っていた… • 開発者たちによる必死の対応 により、事態は収拾しました。 • 問題に対応している最中、驚 くべき事実が判明しました。 • 全世界で使用されていたLog4j は、わずか3名の開発者によっ て維持・管理されていたので す……。

79.

オープンソースと 燃え尽き症候群 • CopyleftやGPLによって、仕組みとして自由なソフト ウェアは永続的に発展できる可能性が確保されました。 • しかし、その発展を支えているのは開発者の情熱に他な りません。 • Log4Shell事件で明らかになったように、一部の開発者 に過度な負担が集中し、それが社会的に十分認識されて いないことがあります。 • その結果、開発者が燃え尽きてしまい、オープンソース プロジェクトが突然終了する可能性もあるのです。 • 業務でオープンソースソフトウェアを使用する場合は、 そのソフトウェアを支えるコミュニティについて調査す ることが重要です。業務で構築するシステムの寿命と同 程度の期間、オープンソースソフトウェアが維持・継続 されるか、あるいは自社でその開発を引き継ぐことが可 能かどうかを検討する必要があります。

80.

あなたにも出来る事 • 言葉で感謝を伝えましょう。 • 寄付を通じて、感謝と応援の気持ちを届けましょう。 • 無理のない範囲で、彼らの活動に参加してみましょ う。 • もし彼らが活動を終えることになっても、感謝の気 持ちで受け入れましょう。 • 場合によっては、あなた自身がその活動を引き継ぐ ことも考えてみましょう。 • 自由なソフトウェアの開発者もまた自由であり、誰 も彼らに開発を強制することはできません。彼らの 意思は、敬意を持って尊重する必要があります。

81.

本日のお品書き • プロローグ(prologue) • 前史 : Unix誕生 • 1980年代 : フリーソフトウェア運動始動 • 1990年代 : オープンソース誕生 • 2010年代 : クラウドの時代 • 情熱が消えるとき • まとめ • エピローグ(epilogue)

82.

全体のまとめ

83.

Amazonを支 えるAWS アマゾンの事業別業績構成(2019年) • Amazonは何で稼いでいるので しょうか? • 「通信販売で儲かっている」の ではありません。 • AWSの利益が全利益の6割を占 めているのです。 • AmazonはAWSで稼いだお金を 使って通販やプライムビデオを 維持しているのです。 • そして、AWSはオープンソース ソフトの力で生まれてきたので す。 https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2006/23/news018_2.html

84.

マイクロソフトも https://twitter.com/chomado/status/717567433645498370

85.

• スマホはオープンソースソフトが無ければ多分生まれてないです。 スマホを支え るソフト • コンパイラはgcc、OS部分はlinux(アンドロイド)、基礎ライブラリは gnu-libcなどありとあらゆるところにオープンソースソフトが入り込 んでいます。(多分、スマホ用に0から作っていたら、こんな安価に販 売できない。) • Gnuプロジェクトの始めた理想は長い時間をかけて、最終的には私た ちの生活に大きな影響をているのです。 https://xiaolongchakan.com/archives/iphone%E7%A7%98%E5%8F%B2%E3%81%A7%E8%AA%9E%E3%82%89%E3%82%8C% E3%81%9F%E3%82%A8%E3%83%94%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%83%89%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B C%E3%83%96%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%96.html

86.

オープンソースソフトは無くてはならない人類みんなの財産 になりました。 これは突然生まれたものではなく、数多くの人の努力の成果 かけがえ のない 公共資産 により成り立っています。 これからプログラマになる皆さんはオープンソースソフトと 上手にかかわる必要があります。 彼らの理念と歴史を理解して、彼らの考え方を尊重して使っ て下さい。 そして、時間が取れたら彼らの活動に少しだけ協力してくだ さい。 あなたの書くコードには世界を少しだけど確実に変える力が 有ります。

87.

本日のお品書き • プロローグ(prologue) • 前史 : Unix誕生 • 1980年代 : フリーソフトウェア運動始動 • 1990年代 : オープンソース誕生 • 2010年代 : クラウドの時代 • 情熱が消えるとき • まとめ • エピローグ(epilogue)

88.

全人類のために...

89.

There was an extremely anxious man in America... His name was Elon Reeve Musk. アメリカに非常に心配性な男がいました... 男の名はイーロンマスク

90.

人口は増え続け、ガソ リン車は街を埋め尽く す…。このままじゃ、 地球は…地球はもう、 限界なんだ。温暖化が 進めば、人類の未来な んて—— 消えてしまう...

91.

世界一カッコイイ電気自動車を作ろう。 真っ赤なスポーツカーだ。 これを金持ちに割高プレミアム価格で 売って、開発資金を得よう。 そして、そのお金でみんなが買える安価 な電気自動車を開発、量産して地球を救 うんだ! なんだ、解決可能な課題ではないか!!!

93.

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3% 82%B9%E3%83%A9_(%E4%BC%9A%E7%A4%BE )

94.

人口爆発、環境汚染、資 源枯渇、突然の隕石衝突 このまま地球は人類を養 い続けることができるの だろうか.... 何かのきっけかで人類が 滅亡してしまうのでは...

95.

ムカつくほど巨大な史上最大のロケット を作ろう。 しかも、再利用可能なやつだ。 このロケットを打ち上げ続けて、火星に 移住しよう。 複数の惑星に人類文明を築くことで人類 を滅亡の危機から救うんだ! なんだ、解決可能な課題ではないか!!!

98.

AIの技術進歩がすさま じい。 AIの性能が人間の能力 を超えてしまうのも時 間の問題だ。 どこか1企業がAIを独 占してしまったら人類 が支配されてしまう...

99.

世界最先端のAIを開発する研究所を共同 で開設しよう。 研究成果は公開(Open)して、みんなが 共同で利用できるようにしよう。 最先端の成果が公開されている事で、ど こかの企業が独占する事は防げるはずだ! なんだ、解決可能な課題ではないか!!!

101.

OpenAIが開発した世界的なサービス、 ChatGPT。 愛着を込めて 「チャッピ(Chappie)」と呼ばれ ることもあります。 大規模言語モデル(LLM)である彼 女は、インターネット上の膨大な情 報を学習して誕生しました。 いわば、彼女はインターネットに集 まった人類の知の結晶なのです。

102.

学習した情報には、当然ながら オープンソースのコードも含ま れています。 彼女はいつしか、世界で最も多 くオープンソースのコードを読 んだ存在となったのです。

103.

Chappieは今、かつてないスピードで進化を続けています。 そのプログラミング能力は、すでに人類の想像を超え始めて いるのです。 フリーソフトウェア運動の初期、ハッカーたちは 「HACK THE PLANET!」というスローガンを掲げ、 権力や独占、隠蔽に対して技術で立ち向かっていました。 「HACK」は本来「叩き切る」という意味を持ち、急進的な 姿勢の象徴でした。 やがて、その理想を受け継いだ新世代の開発者たちは、 Chappie(AI)とともに「Patch the planet!」を掲げました。 壊すのではなく、見つめ、直し、次へとつなぐ。 そんな持続可能なアプローチが、今まさに求められているの です。 オープンソースが世界に広がった今、私たちが進むべきは、 対立ではなく協力。急進ではなく継続。 そして、孤独ではなく──共に未来をつくること。 この物語のつづきを、 あなたも一緒に書いてみませんか?

104.

小さな成果の共有が 人類の進歩を加速させる

105.

オープンソース運動に関わるすべての人たちへ!

106.

参考資料 参考になった書籍は以下です。 • OOSライセンスの教科書 • Unix考古学 • それがぼくには楽しかったから 全世界を巻き込んだリナックス 革命の真実 • Lions’ Commentary on UNIX • Life with UNIX―UNIXを愛するすべての人に