RCNP研究会「低エネルギー核物理と高エネルギー天文学で読み解く中性子星」Closing Remark

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August 05, 22

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RCNP研究会「低エネルギー核物理と高エネルギー天文学で読み解く中性子星」
2022/8/5 14:50-15:05

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

おわりに:宇宙観測からの視点から RCNP 研究会 「低エネルギー核物理と高エネルギー天文学で読み解く中性子星」 10分トーク+5分質問・議論とかでいいですか? 榎戸輝揚 (Teruaki Enoto) @teru_enoto (理化学研究所 / RIKEN) 2022年8月5日, 14:50-15:05@大阪大学+ハイブリッド https://indico.rcnp.osaka-u.ac.jp/event/1897/

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講演者・世話人の皆様、お疲れさまでした • コロナ下で大変な状況のなか、ハイブリット研究会お疲れさまでした。 • 常時100人ほどの参加者の皆さん、ありがとうございました。 • 講演者の皆さんのお話、中性子星のファンとして大変に面白かったです。 • 世話人のみなさま、お疲れさまでした。(敬称略) • 飯田圭 (高知大学)、榎戸輝揚 (理化学研究所)、大田晋輔 (大阪大学RCNP)、 関口仁子 (東京工業大学)、祖谷元 (理化学研究所)、内藤智也 (理化学研究所) 西村信哉 (理化学研究所)、萩野浩一 (京都大学) • 今日の午前の座長を失念しており、大変申し訳ございませんでした。。。 2

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宇宙観測と原子核(実験/理論)は乖離してる? • 2分野の合同の研究会をすると、質問はお互いの分野内が多い…のか? • 分野間の接点が、中性子星の M-R relation に集中する傾向はある。 • 学際研究(新学術、学術変革)で予算獲得では便利かもしれないが。 • (勉強不足な私にとって)宇宙観測の分野から見ると、 • 原子核物理の様々な実験や理論的考察があるが、宇宙観測とすぐに比較で きる物理量としては、質量と半径の M-R curve になってしまう? • (もしかして)原子核の理論と実験から見ると、 • 宇宙の観測はごちゃごちゃしていて不定性も大きく、かつ表面より外側の 放射しかわからない?重力波は新しいが、他に新しい観測はないのか? • まず、歴史を振り返ってみる。 3

4.

t started 50 years ago as a ‘smudge’ on paper has flourished into a fundamental field of astrophysics replete unexpected applications and exciting discoveries. To celebrate the discovery of pulsars, we look at the past, ent and future of pulsar astrophysics. パルサーの発見 (1967年) は 55年前 PERSPECTIVE 論文の出版は翌年、Hewish, Bell, et al., Nature (1968) Taylor and Russell Hulse in 1975 of a pulsar y years ago this month, Jocelyn Bell in a binary system with another neutron urnell (pictured) had already seen star. The orbit of the pulsar was observed e recurring blips on her hundredsto shrink in the exact way that Einstein’s tres-long chart paper that was being general theory of relativity predicted if the ed out by the newly minted 4-acresystem was emitting gravitational waves adio telescope at Cambridge, UK. (and brought in another Nobel Prize her with her PhD advisor, Antony for the pulsar field). Today, we are not h, they were hard at work trying to only detecting pulsars and neutron stars stand their nature and the source that have generated them. The study of what from space (see the Mission Control by Keith Gendreau and Zaven Arzoumanian), w know as pulsars has developed into but a network of pulsars is poised to ant field of research that touches upon become the largest gravitational-wave t all areas of astrophysics and beyond: detector at our disposal (see the Article tellar astronomy, to the physics of by Chiara Mingarelli and collaborators nsed matter, to gravitational waves and and the Comment by Andrea Lommen). ry fabric of our Universe. In this Gravitational-wave detection aside, pulsars ssue we bring together some of the パルサー発見の電波望遠鏡 are now being used to probe the most xciting pulsar science and reflect on Four-acre array Astronomy Observatory, Cambridge, fundamental properties of spacetime ure directions of the field.at the Mullard Radio UK, of Credit: Graham Burnell, 2017, Nature the Comment by Kuoastronomy) Liu and Ralph e discovery pulsars requiredWoan the (J. B.(see 4 of a self-professed imposterEatough) and of condensed matter. Some veness have very little information on the sities and consequently there is a the interior with relatively few ob know of one or two heavy pulsar solar masses, which implies some know that there must be superfluid rotation is likely to be quantized w Sudden unpinning of these vortice word that has now entered common is a sudden increase in rotation spe nential or several-exponential) retu Pulsars can be used as tools for along their lines of sight. Our know Jocelyn Bell Burnell さん electrons in the galaxy is now much Credit: Daily Herald Archive 1 this medium is still being revealed SSPL / Getty Images Pulsars make remarkably stable

5.

天文月報 1969年7月 の鶴田幸子先生の記事 5

6.

中性子星の研究史は、ほぼ1世紀 •1932年 チャドウィックが中性子を発見 (1935年にノーベル物理学賞) •1934年 バーデとツビッキーが、超新星爆発の後に、中性子からなる天体が残る可能性を指摘 •1939年 オッペンハイマーとヴォルコフが、中性子星の質量と半径を理論的に計算 •1967年 ベルとヒューイッシュが、パルサー PSR B1919+21を発見 (1974年にノーベル物理学賞) •1968年 かに星雲の中心に、かにパルサーが発見される •1974年 ハルスとテイラーが連星パルサーで重力波の間接的な証明(1993年にノーベル物理学賞) •1979年 大マゼラン雲にあるマグネター SGR 0526­66 から軟ガンマ線での巨大フレアが検出 •1982年 バッカーらが、最初のミリ秒パルサー PSR B1937+21 を発見 •1992年 ミリ秒パルサー PSR B1257+12 に、複数の惑星が発見 •2007年 ロリマーらが、パークス電波望遠鏡のアーカイブデータに最初の高速電波バーストを発見 •2017年 LIGO と Virgo が連星中性子星の合体にともなう重力波イベント GW170817 を検出 •2020年 銀河系内のマグネター SGR 1935+2154 から FRB とX線バーストが同時に観測 6 発見より30年以上も前から、中性子星の内部構造や質量と半径の理論計算 → 宇宙観測と原子核研究のクロスオーバーの意義を何よりも表す歴史

7.

中性子星の質量と半径 (状態方程式) • 宇宙観測で数%まで絞り込 んだ観測が求められている • 中性子星の最大質量 • Light bending M/R • 重力波観測 • 地上の原子核実験 • X線バースト • 多様な理論計算 果たしてこれは、1本の曲 線に決まるものなのか? 7 榎戸、安武、日本物理学会誌、2021年10月号

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1. 天体の質量と半径 天体の質量と半径 宇宙には様々なサイズの天体が存在する.地球のような 岩石惑星や,木星などのガス惑星,太陽を含む主系列星, ベテルギウスといった赤色超巨星,さらにそれらの星の終 • 多様な天体 (自己重力系) の質量-半径は、 焉を迎えた後に出現するコンパクト天体としてブラック 星の内部構造や組成、圧力勾配の起源、 ホール,中性子星,白色矮星がある.これらの天体の質量 そして状態方程式から決まる や半径の典型的なスケールは,粒子間距離がどの程度であ れば重力と圧力がつりあうかを考えることで物理的に導出 • 惑星: 電気的な反発力, M~R3 1 * できる. 図 1 には,実際に観測された,あるいは理論的 • 恒星: ガス圧や輻射圧, M~R に導出された天体の質量と半径をまとめている.天体の種 -1/3 • 白色矮星: 電子の縮退圧, M~R 族ごとに,質量と半径の異なる系列に沿って分布すること が見て取れる. • 中性子星: 中性子の縮退圧・核力 M~R0 天体とは重力で束縛された安定な系で,自己重力を外向 • 観測データはM-R関係の周りに散らばり、 きの圧力で支えている.これは重力と圧力勾配のつりあい, dP GM(r) 現状は観測の誤差や不定性が大きい。 =− (1) dr r2 • (思考実験)もし観測誤差が十分に小さく で記述できる.ここで,圧力を P,半径 r,密度 ,内部質 なると、測定データ点はどのように分布? 量 M(r) ,重力定数 G である.天体のミクロ状態を,圧力 8 榎戸、安武、日本物理学会誌、2021年10月号 と密度,温度 T で規定する状態方程式を P=P( , T)を与

9.

質量-半径の観測の先へ: 星の組成が大切? • 質量-半径の理論曲線の周りの分 散を考える • 同質量の天体の半径を考える。内 部構造と組成、誕生時の多様性? • 中性子星の質量・半径も、十分に 高い精度で測定すると、多様性 (広がり)をもつのではないか? • つまり、1本の質量-半径曲線の 周りに、中性子星の多様性を反映 した複数の曲線がありえて、ばら つきがある? 9

10.

中性子星の組成測定は? • X線分光による表面組成の研究 • EXO 1745-248 のスーパーバースト後 に、MAXI が観測した輝線構造は、赤方 偏移したTi, Cr, Fe, Co の電荷交換反応 (Iwakiri et al. 2021) • 中性子星の大気組成で表面からの熱放射 (黒体放射)の形が違うことを利用する • 質量と半径の測定ではない研究 • 準周期振動 (QPO) • マグネターのX線バーストのような熱的 な応答(熱容量を測る) 10 岩切さんの発表スライドから

11.

マグネターの巨大フレアで組成測定? RHESSI 20-100 keV 電波残光の天球上の位置 吹き飛んだ表面物質 X線 火の玉 (Giant flare の放射源) マグネター SGR 1806-20 の位置 (Hurley et al. 2005) 11 (Taylor et al. 2005) マグネター SGR 1806-20 • 2004年12月27日に観測された、SGR 1806-20 の巨大フレア(Giant flare) • マグネターから遠ざかる電波残光が3月まで観測、表面物質が吹き飛んだ? • マグネターからのX線で電離した、表面物質の輝線や吸収線から成分診断? • 2004年は太陽角制限でX線観測を数ヶ月できず→ XRISM の精密X線分光

12.

宇宙科学に関係するノーベル物理学賞 12 •1936年 •1967年 •1974年 •1974年 •1978年 •1983年 •1983年 •1993年 •2002年 •2002年 •2006年 •2011年 •2015年 •2017年 •2019年 •2019年 •2020年 ヘス, 宇宙線の発見 ベーテ, 原子核反応理論への貢献、特に星の内部におけるエネルギー生成に関する発見 ライル, 電波天文学における先駆的研究(観測および発明、特に開口合成技術に関して) ヒューイッシュ, 電波天文学における先駆的研究(パルサーの発見に果たした決定的な役割) ペンジアスとウィルソン, 宇宙マイクロ波背景放射の発見 チャンドラセカール, 星の構造および進化にとって重要な物理的過程に関する理論的研究 ファウラー, 宇宙の化学元素の生成で重要な原子核反応に関する理論的および実験的研究 ハルスとテイラー, 重力研究の新しい可能性を開いた新型連星パルサーの発見 ジャコーニ, 宇宙X線源の発見を導いた天体物理学への先駆的貢献 デイビスと小柴, 天体物理学への先駆的貢献、特に宇宙ニュートリノの検出 マザーとスムート, 宇宙マイクロ波背景放射が黒体放射およびその非等方性の発見 パールマッター, シュミット, リース, 遠方の超新星の観測を通した宇宙の加速膨張の発見 梶田とマクドナルド, ニュートリノが質量を持つことを示すニュートリノ振動の発見 ワイス, バリッシュ, ソーン, LIGO検出器および重力波の観測への決定的な貢献 マイヨールとケロー, 太陽型恒星を周回する太陽系外惑星の発見 ピーブルス, 物理宇宙論における理論的発見 何らかの形で特に ゲンツェルとゲズ, 銀河系の中心にある超大質量コンパクト天体の発見 中性子星に関係する研究

13.

物理学のトリックスター「中性子星」 新しい物理の発見の鍵が隠れている? ぜひ、いろいろ議論させてください 13 (C) Ryuunosuke Takeshige and Teruaki Enoto (Kyoto University)