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December 07, 23
スライド概要
高校の情報Ⅰがどんなものなのか学習指導要領や教科書(1冊)を読んでみて思ったことをまとめました。
サーバーサイドエンジニアだった何か
怖くない高校の「情報 Ⅰ」 2023/12/06 hacksHub Talk#0
自己紹介 - いせきさん(@take2webservice) - フリーの育て屋さん(最近は新卒研修まわりやったり) - プログラムは最近まじめに書いてない
「情報Ⅰ」をやった高校生に対するイメージ
果たして本当にそうなのか!?
我々はその謎を解き明かすべく インターネッツの奥地へと向かった
注意事項 - 情報Ⅰの授業が始まったのは2022年4月からです - つまり、まだ情報Ⅰを学んだ学生は基本的には世に放たれてはいません - 私は高校での教職の立場にある人間ではありません - 独断と偏見に基づいた意見と調べた内容になります - みんなきちんと一次情報も見ようぜ!
今回参考にした教科書 - 日本文教出版の情報Ⅰ - Amazonで1910円で買いました - 他の教科書とは比較できてません
情報Ⅰ登場の流れ
情報Ⅰの登場以前 - 高等学校学習指導要領(2013年~2021年)でも「情報」という教科は存在する - その中で「社会と情報」及び「情報の科学」の2科目から1つ選択必修 - - 「理科」という教科の中に「物理」、「化学」、 「生物」があるみたいな - 選択状況は「社会と情報」が80%、「 情報の科学」が20% それらをまとめ改訂したのが「情報Ⅰ」でさらに発展させたのが「情報Ⅱ」 参考:高等学校「情報Ⅰ・Ⅱ」の実施に向けて
旧情報科目の内容 - 社情311 最新社会と情報 新訂版 - 情科307 最新情報の科学 新訂版 - 1章 情報社会と私たち - 1章 情報とコンピュータ - 2章 情報機器とディジタル表現 - 2章 ネットワークの仕組みと情報システム - 3章 表現と伝達 - 3章 問題解決のためのコンピュータ活用 - 4章 コミュニケーションとネットワーク - 4章 ネットワークとデータベースの活用 - 5章 - 5章 情報社会と問題解決 情報技術と社会
「情報」の改訂の背景 また,急激な少子高齢化が進む中で成熟社会を迎えた我が国にあっては,一人一人が持続可能な社会の担い 手として,その多様性を原動力とし,質的な豊かさを伴った個人と社会の成長につながる新たな価値を生み 出していくことが期待される。 (省略) このような時代にあって,学校教育には,子供たちが様々な変化に積極的に向き合い,他者と協働して課題 を解決していくことや,様々な情報を見極め,知識の概念的な理解を実現し,情報を再構成するなどして新 たな価値につなげていくこと,複雑な状況変化の中で目的を再構築することができるようにすることが求め られている。 引用: 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 平成30年7 月 情報編 p1 より
「情報」の具体的な改善・充実事項 教育内容の改善・充実 「情報Ⅰ」では,プログラミング,モデル化とシミュレーション,ネットワーク(関連して情 報セキュリティを扱う)とデータベースの基礎といった基本的な情報技術と情報を扱う方法と を扱うとともに,コンテンツの制作・発信の基礎となる情報デザインを扱い,更に,この科目 の導入として,情報モラルを身に付けさせ情報社会と人間との関わりについても考えさせる。 引用: 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 平成30年7 月 情報編 p8 より
科目「情報」の位置付け 教育内容の改善・充実 具体的には,コンピュータについての本質的な理解に資する学習活動としてのプログラミングや,よ り科学的な理解に基づく情報セキュリティに関する学習活動を充実した。また,統計的な手法の活用 も含め,情報技術を用いた問題発見・解決の手法や過程に関する学習を充実した。「情報Ⅰ」に関し ては,全ての生徒が学ぶという共通性と,情報技術を活用しながら問題の発見・解決に向けて探究す るという学習過程を重視することを踏まえ,取り扱う内容について,これからの社会を生きる上で真 に必要なものであり,生徒にとって加重とならないよう配慮した。 引用: 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 平成30年7 月 情報編 p20 より
意訳:「情報」の改訂と位置付け - 新たな価値を生み出せる人間になってくれよ! - 様々な情報を整理して、人と一緒に課題解決してくれよ! - - 基本的な仕組みは知っておいてね - 相手に伝わりやすくする方法も知っておいてね - 情報社会で生きているんだからモラルや法律も把握しといてね 現代の情報社会で社会人として必須の内容だぞ!
情報Ⅰの単位 - 情報Ⅰは必修科目で2単位分の授業時間が求められている - 単位については、1単位時間を50分とし、35単位時間の授業を1単位として 計算することが標準 - 35[単位時間] * 2[単位] * 50[分/単位時間] / 60 [分/時間]= 58時間 参考 - 高等学校標準授業時数 平成30年改訂 高等学校学習指導要領 各学科に共通する教科・科目等及び標準単位数
え!!58時間(7営業日強)で情報の教育を!? - 「できらぁ!新たな価値を生み出せる、様々な情報を整理して、人と一緒に 課題解決できる人間の下地を作ってやらぁ!」と言わされる学校の教員の皆 様心中お察しいたします
情報Ⅰの内容
情報Ⅰの内容(教科書の章立て) 1. 情報社会の問題解決 2. コミュニケーションと情報デザイン 3. コンピュータとプログラミング 4. 情報通信ネットワークとデータの活用 引用: 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 平成30年7 月 情報編 p23以降 より
意訳: 情報Ⅰの内容 1. 情報社会における問題解決の手法、リスクや求められるモラル 2. 効果的なコミュニケーションを行うための情報デザイン - 内容や相手の状況に応じた情報の伝え方 3. 問題解決の手法としてプログラミングやシミュレーションの活用 - コンピューターの基本的な仕組みとアルゴリズム 4. 情報通信ネットワークの基本的な仕組みと活用 - ネットワークの基本的なプロトコルとデータの活用
情報Ⅰで学ぶこと(1) 第1章:情報社会の問題解決 - 情報の特性、メディアの特性 - 問題解決の考え方 - 法の重要性と意義(著作権、個人情報) - 情報社会と情報セキュリティ - 情報技術の発展による変化 など - +技法:問題と目標の明確化、問題の整理と分析、実行・評価・共有 引用: 教科書|情報Ⅰ|高等学校 情報|日本文教出版
情報Ⅰで学ぶこと(2) 第2章:コミュニケーションと情報デザイン - インターネットの発展 - 情報機器のパーソナル化とソーシャルメディア - コンピュータとデジタルデータ - 文字、音、画像、動画のデジタル化 - 情報デザインのプロセスと問題の発見 - デザインの要件と設計・試作 - +章末実習:ポスターやWebサイトの制作 - +技法:Webサイトの構造とレイアウト、メニューとコンテンツの作成、 HTMLとCSS、JavaScriptの活用 など など 引用: 教科書|情報Ⅰ|高等学校 情報|日本文教出版
情報Ⅰで学ぶこと(3) 第3章:コンピュータとプログラミング - コンピュータのしくみ - 2進法による計算 - アルゴリズムの基本と表現方法 - アプリケーションの開発 - モデル化とシミュレーション - コンピュータを利用したシミュレーション - +章末実習:感染モデルのシミュレーション - +技法:プログラミング言語 Pythonの基本 など 引用: 教科書|情報Ⅰ|高等学校 情報|日本文教出版
情報Ⅰで学ぶこと(4) 第4章:情報通信ネットワークとデータの活用 - コンピュータネットワーク - プロトコル - 暗号化のしくみ - データベース管理システムとデータモデル - 数値データ、テキストデータの分析 など - +章末実習:地域の問題を解決する - +技法:アンケート調査によるデータの収集、量的データの分析手法、統計的検定 など 引用: 教科書|情報Ⅰ|高等学校 情報|日本文教出版
目次だけを見ると基本情報的なワードが多い
実際教科書に書かれていること(1) - 第1章:情報社会の問題解決 - 問題の明確化 -> 問題の整理・分析 -> 解決策の立案 -> 実施 -> 評価 ->共有 といった問題解決の課題が用 意されている - - 知的財産権や身近なサイバー犯罪の話 第2章:コミュニケーションと情報デザイン - メディア(文字、画像、音声、動画など)やコミュニケーション形態(同期-非同期、1:1, 1:多)の特性 - メディアのデジタルでの表現方法(ビットでどう表現するか) - 情報デザインのプロセス(問題の明確化 -> 問題の整理・分析 -> 解決策の立案 -> 制作・評価 -> 改善)
感想(1) - 「情報」についての知識の説明はもちろんあるが、「問題解決への取り組み」に重 点をおいている印象を受ける - HTMLやCSS、JavaScriptを用いたWebページの作成課題もあるが、穴埋め的な写経と いった印象が強い - - レイアウトやサイトの構造(どのページとどのページがリンクしている)といった内容はある - ただし文章の構造化のような話は見受けられない 手法や専門的な技術よりも問題に取り組み、改善までする方向に重きを置いてい る?
問題整理から解決までの課題のサンプル 引用: 教科書|情報Ⅰ|高等学校 情報|日本文教出版
実際に書かれていること(2) - 第3章:コンピュータとプログラミング - コンピューターの構成やOSの役割 - CPUの仕組みとして論理回路の説明や2進数での計算方法(浮動小数点と誤差) - アルゴリズムの基本として順次、分岐、反復の説明 - 変数、データ、演算、代入、関数、ライブラリの紹介 - クラスを3つのグループに分けるアルゴリズムを3パターン作成・写経で実装 - 事象のモデル化とモデルを使ったシミュレーションを写経で実装 - 人口推移(2次元のグラフ), 売上予測(連立方程式), 待ち行列(乱数を使ったシミュレーション)
感想(2) - 複数の考えられる手順からより効率が良いアルゴリズムを選ぶことが大事なのを 説明しているのが良い - プログラミングもシミュレーションも、それ自体をさせたいんじゃなくて、そう いったツールを使って仮説検証をする際にどんな情報を使い、どういう風にすれ ば検証結果を求められるかを考え、実践することに重きを置いている印象を受け る - おそらく高校生だとシミュレーションの内容的に「だから何?」となりそう - 他の授業もそうだけど先生方って大変だなぁ…
実際に書かれていること(3) - 第4章:情報通信ネットワークとデータの活用 - ネットワークの構成(ハブやルーター、通信企画)やプロトコル(TCP、UDP、IP、HTTP、DNS)など の概要 - 暗号化の基本的な技術 - 多くのシステムではDBに情報が保存されてるって話(使い方は書いていない) - データを収集してグラフ化して分析してみよう - 標本調査と仮説検定
感想(3) - ネットワークの話とデータの格納と分析を無理に1章にまとめた印象 - とはいえ章の分け方的に、入れるとしたら流れ的にここかなぁ… - 筆者は大学で標本調査と仮説検定をやったので、高校生には早い気がした - こちらもアンケートや既存のデータを用いて分析しようという問題解決の意 識が根底にあると感じた
感想のまとめ - 情報社会で行きていくうえで基本的な知識に触れてはいる - 本質としては問題の発見から解決までの過程にどのように取り組むかだと思えた - ただし今までのプログラマとしての経験や知識があるから 教科書内でのIT知識よりも問題解決に目に行ったのかもしれない - - 高校生にとってはIT関係の知識に目がいってそれどころではないかもしれない 今の所情報技術の知識がすごいやつがどんどん量産されるという雰囲気は感じなかった - 今後、社会人として話をするうえでの基礎を固めてる印象