医療DX入門講座4マネジメント

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May 08, 25

スライド概要

Dr.'s Prime Academiaで講義した医療DX入門講座の4回目はマネジメント編です。
Prince2フレームワークをベースに医療DXにおけるプロジェクトマネジメントについて解説しました。

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1970年生まれ。マイコン少年として育ち、1995年に医師免許取得。以後、血液内科で修練すると同時にインターネット、情報システムに興味を持ち医療情報学の研究を始める。 医療分野のオープンソースソフトウェア、医療情報標準規格について研究、医療DX教育にも携わってきた。

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

医療DX入門講座4 マネジメント 小林 慎治

2.

今回の講義で学ぶこと • これまでのおさらい • マネジメントとは何か? • PRINCE2 • 実践のためのステップ • 例題:外来業務のDX:マネジメント編

3.

ガバナンスとは • 主体 • 経営陣 • 手順 • DXの「目的」を定める。 • 目的とする理由や根拠を示す。 • 目的を達成することで得られる成 果について説明する。 • 経営者 成果 • 効果の実現(組織価値向上) • リスク最小化。 • 資源の最適化。

4.

アーキテクチャとは • 主体 • 情報部門、診療部門 • 手順 • DXの「目的」までの工程を定める。 • 業務設計(ECRS原則) • システム設計 • 技術構成 • 移行計画 • 成果 • 業務の最適化 • DX計画の可視化・合意形 成

5.

マネジメントとは • 主体 • 情報部門、診療部門 • 手順 • DXの「目的」を達成させる。 • 成果物を決める • 課題を分割して実施する • 成果 • DXを成功に導く

6.

DXにおけるマネ ジメント • 「実行」を担う • ガバナンスで示した目的に向かって、アーキテクチャ で設計したプロセスを実行し、計画を管理する。 役割 例:外来DX ガバナンス DXの目的を定める 待ち時間短縮・増収 アーキテクチャ 目的を達成する仕組みを設計 予約システム導入、業務手 順設計 マネジメント 計画通り進むよう実行・調整 スケジュール管理、現場の 調整

7.

DXプロジェクトマネジメント手法 • PMBOK • Project Management Body of Knowledge • プロジェクトマネジメントにおける知識 体系 • PRINCE2 • イギリス商務局が開発したプロジェク トマネジメント方式 • SRE • Site Reliability Engineering • Google社の「ベストプラクティス」 政府CIOポータル「デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン解説書(第3編第1章 ITマ ネジメントの全体像)」

8.

PRINCE2 • GAPS FrameworkでPeople and Program management 手法として推奨されている。 • PRojects IN Controlled Environments • プロジェクトを管理可能な段階に 分割し、明確な役割と責任を設 定 • 医療DXプロジェクトにも適用可能 https://itstrategy.jp/pm/aboutprince2

9.

PRINCE2 7つの原則 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. ビジネスの正当性を継続的に立証する • ガバナンスで定めた目的を外れていないか? 経験から学ぶ • 組織内外の経験から学び、マネジメントに反映させる 役割と責任の明確化 • 説明責任がある人は誰か、計画の実行責任者は誰か、知らせるべき相手は誰か 段階的なマネジメント • 長期プロジェクトを短期ステージに分割する。達成目標ごとに分割する。 例外によるマネジメント • どこまでの例外を想定して、それを許容するか。(例:スケジュール、予算) 成果物重視 • プロジェクト達成のために必要となる成果物を規定する。 プロジェクト環境に合わせた調整 • 規模やスタッフに応じてマネジメント手法を調整する。

10.

PRINCE2の勘所 • 成果物重視 • 役割の明確化 • 段階的なアプローチ • リスク管理・例外管理 • 透明性の確保

11.

成果物重視 • 成果物の定義 • 目的・評価指標の達成の証拠となるもの • 業務手順書、操作マニュアルなどの文書 • 関係する人への周知 • 患者さんへの案内、スタッフへの講習会とその記録 • プロジェクトに関する業務日報 • 計画書 • いつ、だれがどのように実施していくのかを決めたもの • 成果物のすべてはガバナンス層と共有し、了承を得ておくこと。

12.

役割の明確化 • どの成果物を誰が担当するのか • ガバナンスで定められたチームとリーダーが何を担当していくのか • RACIチャート • 実行責任(Responsible):タスクを実行する1人以上の人物 • 説明責任(Accountable):タスクを所有する1人の人物 • 協議先(Consulted):タスクに必要なインプットをする人 • 情報先(Informed):タスクの進捗または完了について通知を受ける人

13.

段階的なアプローチ • ステージに分割 • 1年先よりも3ヶ月後の方が予測しやすく管理もし やすい • 3ヶ月おき、診療科ごとなど期間や組織毎に分割 することがある。 スタートアップ 方向付け ステージ1 ステージ2 • ステージ管理 • ステージごとにチームの役割や成果物を定義する。 • ステージ終了の際には成果物を点検して、ガバナ ンスからの了承を得て終了宣言をだす。 • ステージで起きたこと、経験したことは次のステージ の運営に役立つように学ぶ。 クローズ

14.

リスク管理 リスクとはプロジェクトの進行を妨げる要因。 • リスクとなり得る脅威に優先順位をつける • 重要度、発生頻度 • 例外対応 • スケジュール遅延、変更要求 • どの程度までをマネジメントチームの裁量にまとめるかを例外計画書にまとめておく プロジェクト・ステージの中止について • 例外計画書に記載されていないイベントの発生 • 設定を超える例外が発生した場合 • ガバナンス層と協議の上

15.

例外計画書 • 変更要求について • システム変更を要する要望 • 運用手順に関する要望 • スケジュール管理 • 遅延、短縮 • 外的要因 • 保険改定、法令変更、災害 • 起こりうるもの、予想しうるものであれば対応方針を計画しておく

16.

透明性の確保 文書管理 • 計画書を関係者に共有する • 透明性の高いプロジェクトは共感や協力が得られやすくなる。 進捗報告 • プロジェクトの進行具合について定期的、重要なイベントが発生し たときに関係者に周知しておくことで、プロジェクトの進行につい てのリスクを軽減することもできる。

17.

PRINCE2まとめ • マネジメントとは • DXの目的を達成するまで、工程にしたがって計画を進めていくこと • 「ツアーガイド」 • PRINCE2 • 成果物重視 • 役割の明確化 • 段階的なアプローチ • リスク管理・例外管理 • 透明性の確保

18.

例題:外来業務のDXについて • 例題シナリオ • A市(人口30万人)の中核病院であるA市立病院では、外来待ち時間が長いというク レームが多く寄せられていた。 • そこで、医療DX加算の取得と外来待ち時間の短縮のため予約・受付管理システムを導 入することにした。 • 病院データ • 病床数:300 • 診療科:内科、外科、整形外科、眼科、耳鼻科 • 一日平均外来患者数:300人(新患30人) • 平均待ち時間:33分 • 平均診療時間:8分 • 外来総診療報酬: 7億円/年 • 電子カルテ導入済み、外来予約システムなし *架空設定です

19.

例題:課題整理 • 新患外来 • 外来は患者が受診を希望する診療科の診察日を案内する。 • 患者は希望の診療日に来院するが、混雑している日であるかどうかは病院に着く までわからない。 • 新患受付 • 電話予約だけでは新規患者IDを発行できないので、電子カルテで診療予約が 取れない。 • 問診票を渡して回答している間に患者IDを発行する。 • 問診票は外来看護師長が確認し、診療科・医師を振り分ける。 • 専門によっては混雑していることもあり、医師からの反発もありトラブルとなっている。 • 1週間に一度程度、新患が50人程度来る日には、外来が予定より3時間程度 超過する。

20.

例:外来DXの指示(Direction) • 目的 • 外来業務を効率化し、超過勤務を削減すると同時に外来収益増を目指す。 • 体制 • 外来DX協議会(院長、各科外来医長、看護師長、事務長、情報部門) • DX推進チーム(情報部門、外来医師、看護主任、事務員、5名) • 予算 • 4000万円(収益見込み) • 期間 • 1年間

21.

例題:業務フロー 新患 外来事務 問い合わせ 診療日案内 受診する 外来受付 問診票記入 問診票を渡す 外来師長 医師 患者登録 問診票渡す 問診票確認 外来振り分け 呼び出し 受診 当日外来集計・報告

22.

DX後の業務フロー 新患 外来予約システム 外来事務 問い合わせ 診療枠表示 予約 予約登録 外来師長 医師 患者登録 Web問診票 問診記入 問診票登録 当日受付 受診 患者振り分け 事前確認 マイナ確認 患者呼び出し

23.

移行に向けた工程表 2025年1-3月 4-6月 7-9月 10-12月 2026年1-3月 耳鼻科導入 要望調査 各診療科外 来対象 眼科導入 病院HP掲示 医事会計シス テム接続 小児科導入 整形外科導入 電子カルテシ ステム接続 外科導入 導入研修 内科導入

24.

成果物 • 外来予約システム一式 • マニュアル一式 • 運用マニュアル • 保守マニュアル • 操作マニュアル • 職員訓練 • 講習会、研修 • 患者用掲示 • 事前告知、操作案内 • 例外計画書 • 導入計画書 • 作業日報

25.

ステージ分割 • 期間別 • 3ヶ月ごとに分割 • ステージごとに成果物を確認した上で報告会 • 診療科別 • 少ない診療科から先行

26.

役割分担 • プロジェクトにおける説明責任者 • チームリーダー:B医師 • 実行責任者 • システム導入:ベンダー側担当者 • マニュアル類確認:C事務員 • 外来告知:C事務員 • 職員訓練:D看護師長

27.

例外計画書 • 変更要求について • システム変更を要する要望 • 予算超過は原則として認めない • 予算の範囲内で関係部署が増えなければ許容する。 • 運用手順に関する要望 • マネジメントチームに委託 • スケジュール遅延 • 遅延は1ヶ月まで • 外的要因 • 保険改定、法令変更、災害など

28.

まとめ • マネジメントは「ツアーガイド」役としてプロジェクトを成功に導く • 成果物を決める • 役割と責任を明確にする • プロジェクトは分割して攻略 • リスク管理・例外管理を行う

29.

医療DX入門:マネジメントについてのNote記 事 https://note.com/skoba/n/n0a19dbe3ab85