健康機器とオープンソースソフトウェア、オープンデータ

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February 24, 25

スライド概要

OSC Tokyo 2025 Springで発表した内容です。2020年に行う予定であったGNU HealthのLuis Falcon氏とのセッションを5年越しに実現させました。
健康危機に備えて、オープンソースソフトウェア、オープンデータができることそしてその限界についてお話ししました。行政との連携や理解が課題として残ります。

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1970年生まれ。マイコン少年として育ち、1995年に医師免許取得。以後、血液内科で修練すると同時にインターネット、情報システムに興味を持ち医療情報学の研究を始める。 医療分野のオープンソースソフトウェア、医療情報標準規格について研究、医療DX教育にも携わってきた。

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

健康危機とオープンソースソ フトウェア、オープンデータ 医療オープンソースソフトウェア協議会 小林慎治

2.

自己紹介 • • • • • • • • • • • • 1970年 (第1回大阪万博の年)佐賀県にて出生 1980年頃よりマイコンブームに乗っかる 1989年九州大学医学部入学 1995年九州大学医学部卒業・医師免許取得、第一内 科入局 1998年Smalltalk事件 2001年九州大学大学院・医療情報学やってみる 2003年未踏ソフトウェア創造事業採択 2004年第1回医療オープンソースソフトウェア協議会 セミナー開催(MOSS1) 2005年博士(医学)取得 2006年千早病院医療情報企画科長 2009年より研究職 2014年より国際医療情報学会 Open Source Working group副議長、議長 主要業績: 査読付き論文51報 資格: 医師免許 総合内科専門医 第2種情報処理技術者 第1種情報処理技術者 情報セキュリティアドミニストレータ 博士(医学) 臨床現場から管理運営、国内外の公衆衛 生行政までフルスタックで対応できるエ ンジニア

3.

Agenda • このセッションをはじめるきっかけ • GNU HealthとCOVID-19, Luis Falcon • 健康危機とオープンソースソフトウェア・オープンデータ

4.

OSC 2020 Tokyo/Spring開催中止

5.

2020年に予定していたセッション

6.

Luis Falcon氏、京都大学での講演

7.

そして5年の月日が流れ

9.

健康危機とオープンソースソ フトウェア、オープンデータ

10.

健康危機の定義 • 医薬品,食中毒,感染症,飲料水その他何らかの原因により生 じる国民の生命,健康の安全を脅かす事態に対して行われる健 康被害の発生予防,拡大防止,治療等に関する業務であって, 厚生労働省の所管に属するものをいう. • 「厚生労働省健康危機管理基本指針」(平成13年)

11.

近年の健康危機 • 感染症の流行 • SARS(2002-2003), 新型インフルエンザ(H1N1, 2009), MERS(2012-), エ ボラ出血熱(2014-2016), ジカ熱(2015-2016), COVID-19(2019-) • 環境汚染・公害による健康被害 • 大気汚染、水質汚染、異常気象 • 医薬品・ワクチンの供給不足 • 突発的な需要拡大(パンデミック)、価格低下要求 • 予期しない健康危機(自然災害、原発事故・バイオテロ) • 東日本大震災、能登半島地震、毒物・薬物混入

12.

健康危機対策としてのデジタルヘルス • 初期・急性期 • 情報共有・ロジスティクスの確保 • リモート診療・トリアージ • 移行期 • 情報共有範囲の拡大と分析 • 遠隔モニタリング • 回復期 • 長期的な健康管理・個人の健康記録管理 • メンタルヘルス、遠隔リハビリテーション

13.

オープンソースソフトウェア・オープン データとデジタルヘルス • 情報共有 • 流行状況ダッシュボード • ゲノム情報とそれを元にしたワクチン開発 • 医療機器開発 • 人工呼吸器 • PPEなどの衛生備品

14.

COVID-19年表(概略) • 2019年 • 12月中国武漢で最初の症例報告 • 2020年 • 1月SARS-CoV-2全ゲノム解明、WHO公衆衛生上 の緊急事態宣言 • 2月ダイヤモンドプリンセス号 • 3月WHOパンデミック宣言 • 4月緊急事態宣言、布マスク配布 • 5月緊急事態宣言解除、10万円給付 • 6月COCOA公開 • 6月 COCOA 1.1.4バージョンアップ • 10月GOTOトラベル • 2021年 • • • • • 1月緊急事態宣言 1月COCOA不具合発覚 2月医療従事者へのワクチン接種開始 3月緊急事態宣言解除 4月緊急事態宣言 • • • • • 5月高齢者を対象にワクチン接種開始 6月緊急事態宣言解除 7月オリンピック、緊急事態宣言 8月パラリンピック 9月緊急事態宣言解除 • 2022年 • 2月ウクライナ戦争勃発 • 11月 COCOA停止 • 2023年 • 9月WHO緊急事態宣言解除 • 累計患者数 • 世界 • 日本 7億7千万人 3000万人 • 世界 • 日本 700万人 6万人 • 累計死者数

15.

SARS CoV2 Genome

16.

Johns Hopkins University, Coronavirus Resource Center https://coronavirus.jhu.edu/map.html

17.

WHO Coronavirus dashboard https://data.who.int/dashboards/covid19/cases?n=c

18.

COVID-19 Dashboard

19.

https://dhis2.org/

20.

https://www.gnuhealth.org

21.

Intelehealth https://github.com/Intelehealth

22.

OpenOX • オープンソースとして設計が 公開された酸素濃縮器 • 90%濃度の酸素を15-25l/分で 供給可能。 https://github.com/hacklabkyiv/openox

23.

COVID-19 Open Ventilator project

24.

COVID-Net • COVID-19に関連する胸部X線 写真を3万枚集めたデータ セット • このデータを元にAI診断モデ ルが作成された。 • 90%以上の正確性

25.

COCOA • 新型コロナウイルス感染症対 策として開発された接触確認 アプリが2020年9月のバー ジョンアップから4ヶ月間機 能しておらず、GitHub上での バグ報告も放置されていた問 題。

26.

COCOAは失敗であったのか? • そもそも評価されるべきKPIが 普及数だけなので成功とも失 敗とも言いがたい。 • 感染者数は減らせたのか? • 同様の試みは世界各国で行わ れており、成功したとも失敗 したとも報告されている。

27.

健康危機とオープンソースソフトウェア、 オープンデータ • COVID-19とオープンソースソフトウェア、オープンデータ • ウイルスゲノム配列公開からワクチン開発まで異例のスピードで進展 することに貢献した。 • 一部でインフォデミックも引き起こしたが、全体としては正しい情報 を正しく伝達することができた。 • 制約が多い中で情報発信を続けることがかろうじてできた • 公衆衛生行政とオープンソースソフトウェア、オープンデータ • 行政からはオープンソースソフトウェア活動やコミュニティは見えづ らい。 • オープンソースソフトウェア活動や発言が公的立場からはしづらい? • 有識者?

28.

次の健康危機に向けて • オープンデータ活用 • 今回は比較的スムーズに行った。 • 個人情報保護法での公衆衛生例外の適応範囲が最後までよくわからな かった。 • オープンソースソフトウェア活用 • 多重下請け構造に「デジ庁」が加わった感じ。 • オープンソース、オープンデータについてどこまで行政に理解を求め るか。 • Open source communityとCivic techの境目