医療情報標準化のあゆみとHL7 FHIR

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June 28, 24

スライド概要

医療標準化とは、診断、治療などの業務手順の統一化・情報の形式と用語の統一化により、患者の安全確保や医療サービスの質の向上を目指し、医療情報の共有、利活用を促進することです。例えば、臨床検査情報の標準化においては、CSV形式などで区切りを示すことにより、機械処理がしやすくなるといった効果があります。また、HL7 FHIRは、現在急速に普及しつつあるシンプルで柔軟性のある標準規格であり、日本でも医療DXの中心と考えられています。その特徴と臨床検査データを扱う上での課題について述べています。

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医療分野でのオープンソースソフトウェア活動を行ってきました。 医療DXについてのセミナーなども開催してきており、研究者としての実績を積んできました。 医療分野のDXは難しいところもありますが、なるだけわかりやすくなるようにつとめています。 Slideshareから徐々に移行しつつあります。

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各ページのテキスト
1.

医療情報標準化のあゆみ とHL7 FHIR 小林慎治

2.

医療の標準化と医療情報の標準化 医療の標準化 • 目的 • 患者の安全確保、医療サービス の質の向上 • 方法 • 診断、治療などの業務手順を統 一化する •例 • クリニカルパス、診療ガイドラ イン、治療プロトコール • 検査精度管理、較正 医療情報の標準化 • 目的 • 診療情報の共有、利活用 • 方法 • 情報の形式と用語を統一化する •例 • 病名:ICD-10, ICD-11 • 検査項目:JLAC-10, JLAC-11, LOINC

3.

医療情報標準化のメリット 病院 診療(一次利用) 匿名データ(二次利用) 患者 学術研究 標準データ 製薬 薬局 職場健診 匿名化 学童検診 公衆衛生

4.

臨床検査情報標準化の対象 検査部門 オーダー(伝票) 検体 結果 検査方法 試薬 機器 測定方法 解釈

5.

例:臨床検査結果の標準化 • 血算データ 検査項目 値 単位 白血球数 4200 /μl 赤血球数 420 万/μl 血色素 13.4 g/dl ヘマトクリット 40.2 % 血小板数 42.3 万/μl

6.

血算データ形式の標準化(例) プレーンテキスト 白血球数4200/μl赤血球数420万/μl血色素13.4g/dlヘマトクリット40.2%血小板数42.3万/μl 区切りが分かりにくい->機械処理しにくい CSV形式 白血球数,4200,/μl 赤血球数,420,万/μl 血色素,13.4,g/dl ヘマトクリット,40.2,% 血小板数,42.3,万/μl 区切りを,と改行で示す->機械処理しやすい

7.

同じ意味・同じ形式でも… 白血球数,4200,/μl WBC,4200,/μl 赤血球数,420,万/μl RBC,420,万/μl 血色素,13.4,g/dl Hb,13.4,g/dl ヘマトクリット,40.2,% Ht,40.2,% 血小板数,42.3,万/μl Plt,42.3,万/μl 「白血球」と「WBC」を同じものと処理するための仕組み(標準化)が必要。

8.

「白血球」 • 白血球 • White Blood Cell • WBC • Leukocyte • ワイセ • ロイコ • Leukozyten •…

9.

検査用語の標準化 • 対象 • 検査分類、検体分類、検査項目、検査方法、測定方法、使用機器、試 薬、結果、解釈 • 方法 • データ構造分析(モデリング)、辞書作成、コード付与 • レビューと承認 • 標準化した用語や定義、データ構造などを明示的に文書化する。 • 分野を網羅する専門家で協議してらう • 学会などで公式に承認をうける。

10.

標準用語集(JLAC-11)

11.

コード化データ 白血球数,4200,/μl B10002,4200,/μl 赤血球数,420,万/μl B10001,420,万/μl 血色素,13.4,g/dl B10004,13.4,g/dl ヘマトクリット,40.2,% B10005,40.2,% 血小板数,42.3,万/μl B10003,42.3,万/μl

12.

HL7 (Health Level 7) • 標準化推進団体 • 1987年に医療情報システム間のデータ交換の標準化を目指して設立さ れた非営利団体。 • 標準規格 • HL7 Version 2 • 広く使われている標準規格。患者情報、検査結果、医薬品情報などを交換するこ とができる。 • HL7 Version 3 • 医療用の文書を表現するために設計されたXMLベースのデータ交換規格 • HL7 FHIR • シンプルで柔軟性のある標準規格として現在急速に普及が進んでいる。

13.

HL7 Ver 2 Message(抜粋) OBX|1|NM|B10002^白血球数^JL11||4200|/μl|||||F|||202304111230||||Lab|||| OBX|2|NM|B10001^赤血球数^JL11||420|万/μl|||||F|||202304111230||||Lab|||| OBX|3|NM|B10004^血色素^JL11||13.4|g/dl|||||F|||202304111230||||Lab|||| OBX|4|NM|B10005^ヘマトクリット^JL11||40.2|%|||||F|||202304111230||||Lab|||| OBX|5|NM|B10003^血小板数^JL11||42.3|万/μl|||||F|||202304111230||||Lab||||

14.

HL7 V3 CDA <entry> <observation> <templateId root="2.16.840.1.113883.3.88.11.83.15"/> <id root="1.2.3.4.5.6.9" extension="123456789"/> <code code=“B10002”displayName=“白血球数” codeSystem=“1.2.840.10004.2.12.1” codeSystemName=“JL11”/> <statusCode code=“completed”/> <effectiveTime value=“2023041112 30”/> <value xsi:type=“PQ” value=“4200” unit=“/μl”/> </observation> </entry> <entry> <observation> <templateId root=“2.16.840.1.113883.3.88.11.83.15”/> <id root=“1.2.3.4.5.6.10” extension=“123456790”/> <code code=“B10001” displayName=“赤血球数” codeSystem=“1.2.840.10004.2.12.1” codeSystemName=“JL11”/> <statusCode code=“completed”/> <effectiveTime value=“202304111230”/> <value xsi:type=“PQ” value=“420” unit=“万/μl”/> </observation> </entry> <entry> <observation> <templateId root=“2.16.840.1.113883.3.88.11.83.15”/> <id root=“1.2.3.4.5.6.11” extension=“123456791”/> <code code=“B10004" displayName="血色素" codeSystem="1.2.840.10004.2.12.1" codeSystemName="JL11"/> <statusCode code="completed"/> <effectiveTime value="202304111230"/> <value xsi:type="PQ" value="13.4" unit="g/dl"/> </observation> </entry> <entry> <observation> <templateId root="2.16.840.1.113883.3.88.11.83.15"/> <id root="1.2.3.4.5.6.12" extension="123456792"/> <code code=“B10005" displayName="ヘマトクリット" codeSystem="1.2.840.10004.2.12.1" codeSystemName="JL11"/> <statusCode code="completed"/> <effectiveTime value="202304111230"/> <value xsi:type="PQ" value="40.2" unit="%"/> </observation> </entry> <entry> <observation> <templateId root="2.16.840.1.113883.3.88.11.83.15"/> <id root="1.2.3.4.5.6.13" extension="123456793"/> <code code=“B10003" displayName="血小板数" codeSystem="1.2.840.10004.2.12.1" codeSystemName="JL11"/> <statusCode code="completed"/> <effectiveTime value="202304111230"/> <value xsi:type="PQ" value="42.3" unit="万/μl"/> </observation> </entry>

15.

HL7 V3 CDA(Hbのみ) <observation> <templateId root="2.16.840.1.113883.3.88.11.83.15"/> <id root="1.2.3.4.5.6.11" extension="123456791"/> <code code=“B10004" displayName="血色素" codeSystem="1.2.840.10004.2.12.1" codeSystemName="JL11"/> <statusCode code="completed"/> <effectiveTime value="202304111230"/> <value xsi:type="PQ" value="13.4" unit="g/dl"/> </observation>

16.
[beta]
HL7 FHIR
"resource": {
"resourceType": "Observation",
"status": "final",
"code": {
"coding": [
{
"system": "urn:oid:1.2.840.10004.2.12.1",
"code": “B10002",
"display": "白血球数"
}
]
},
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}
},
"resource": {
"resourceType": "Observation",
"status": "final",
"code": {
"coding": [
{
"system": "urn:oid:1.2.840.10004.2.12.1",
"code": “B10001”,
“display”: “赤血球数” }
]
},
"effectiveDateTime": "2023-04-11T12:30:00Z",
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"value": 420,
"unit": "万/μl",
}
},

"resource": {
"resourceType": "Observation",
"status": "final",
"code": {
"coding": [
{
"system": "urn:oid:1.2.840.10004.2.12.1",
"code": “B10004",
"display": "血色素"
}
]
},
"effectiveDateTime": "2023-04-11T12:30:00Z",
"valueQuantity": {
"value": 13.4,
"unit": "g/dl",
}
},
"resource": {
"resourceType": "Observation",
"status": "final",
"code": {
"coding": [
{
"system":
"urn:oid:1.2.840.10004.2.12.1",
"code": “B10005",
"display": "ヘマトクリット"
}
]
},
"effectiveDateTime": "2023-04-11T12:30:00Z",
"valueQuantity": {
"value": 40.2,
"unit": "%",
}

17.
[beta]
HL7 FHIR(Hbのみ)
"resource": {
"resourceType": "Observation",
"status": "final",
"code": {
"coding": [
{
"system": "urn:oid:1.2.840.10004.2.12.1",
"code": “B10004",
"display": "血色素"
}
]
},
"effectiveDateTime": "2023-04-11T12:30:00Z",
"valueQuantity": {
"value": 13.4,
"unit": "g/dl",
}
},

18.

HL7 FHIR Observation resource • 「守備範囲の広い万能プレイヤー」 • 身体所見、バイタルサイン、検体検査一般、生理学検査一般、病理学 検査、微生物学的検査、医療画像 • システム間の簡易なやり取りであればすべて対応できる。 • Profileで特定の検査に対応 • 検査特有の情報やルールをProfileとして定義して、データの質を高め る。 • 例:検査項目でJLAC10を使用する。腹部超音波検査で使用機器を明示 する。

19.

臨床検査標準としてのHL7の特徴 • 長所 • 臨床検査結果をシンプルに扱うことができる • OBX(V2), Observation(V3, FHIR)ですべての検査を網羅することができる。 • 比較的広く普及しているため、院内システム連携に利用しやすい • 短所 • 抽象度が高すぎるため、OBX/Observationの中身を検討しないと何が 入っているかわからない。 • 身体所見、検体検査、超音波検査、微生物学的検査、医療画像など対象範囲が広 い。 • FHIRでは特定の検査に対応したProfileを設計しておくことが推奨されている。

20.

Observation関連Profile (NEXEHRS) https://jpfhir.jp/fhir/core/1.1.2/index.html

21.

検査データ標準化の問題点 • 臨床検査業務の範囲が広い。 • さまざまな検査があり、すべてを網羅した知識のある人が少ない。 • 新しい検査方法が次々と導入されるために標準化プロセスが追い付か ない。 • HL7 FHIR ObservationのProfile設計 • 検体検査、生理検査、微生物学検査など検査ごとに具体的なProfileを 設計するためには臨床検査についての知識が不可欠。 • 現在の開発チームには検査技師がほぼ不在。

22.

まとめ • 医療情報の標準化について • 主に形式と用語を対象として情報システム連携や二次利用のための データ標準化が進められている。 • HL7 FHIRについて • シンプルで実装しやすい標準として普及が進みつつある。 • Observationですべての臨床検査を網羅することができるが、Profileを 適切に設定することが推奨されている。