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August 31, 24
スライド概要
医療情報の標準化について概論をまとめて、その上でopenEHRというのはどういうものかについて触れています。
1970年生まれ。マイコン少年として育ち、1995年に医師免許取得。以後、血液内科で修練すると同時にインターネット、情報システムに興味を持ち医療情報学の研究を始める。 医療分野のオープンソースソフトウェア、医療情報標準規格について研究、医療DX教育にも携わってきた。
医療情報標準化と openEHR入門 小林慎治
医療情報 • カルテ記載 • POMR, SOAP • 検査オーダー • 検体検査オーダー • 生理検査オーダー • 病理検査オーダー • 画像検査オーダー • 検査報告書 • 検体検査報告書 • 生理検査報告書 • 病理検査報告書 • 画像検査報告書 • 臨床サマリー(要約) • 入院時要約 • 退院時要約 • 外来要約 • 紹介状(診療情報提供書) • 保険請求 • 処方箋 • 処方オーダー • 調剤・払い出し情報 • 介護 • 歯科
情報の標準化 目的: 1)医療従事者であればお互いに意味が通じるように表現すること. 2)機械処理しやすい形式であること. • インターフェース • 用語 • 入力画面 • 病名 • 出力形式 • 解剖学的位置 • データAPI • 検査 • 通信手順 • 手技 • TCP/IP • 処置 • SSL • 薬剤 • HTTP • 形式 • SOAP • 画像フォーマット • 文字コード • XML • JSON https://www.irasutoya.com/2014/11/blog-post_469.html
情報の抽象化と具象化 抽象化カルテデータ 個別のカルテデータ カルテ 氏名:山田太郎 カルテ 氏名:小川次郎 カルテ 【患者氏名】 S)頭痛 O)項部硬直なし WBC12,000/μl CRP 12mg/dl A)細菌性髄膜炎疑 い P)髄液採取、抗 生剤指示 S)腹痛 O)腹部平坦・軟、 背部叩打痛あり 検尿:潜血あり A)尿路結石 P)泌尿器科コン サルト SOAP記載 S) 【症状】【主 訴】 O)【身体所見】 【検査所見】 A)【診断】 P)【処方】【指 示】 記載医:小林慎治 記載医:小林慎治 【医師氏名】
例:胃がんに対する幽門側胃切除術 麻酔部門 看護部門 外科部門 申し送り 前処置 食止め 搬入・搬出時間 術式 準備 術後処置 麻酔法 開腹?鏡視下?
幽門側胃切除術の構成概念 抽象化
例:手術データベース 名称 対象病名 部位 術式 幽門側胃切除術 胃がん 胃幽門側 切除術 噴門側胃切除術 胃がん 胃噴門側 切除術 膵頭十二指腸切除 膵臓がん 膵頭部+十二指腸 切除術 腹腔内リンパ節生検 悪性リンパ腫 腹腔内リンパ節 生検 結腸切除術 結腸がん 結腸 切除術 人工肛門閉鎖術 クローン病 結腸 閉鎖術 用語、概念の抽象化・共通化
標準化のメリット • データ活用 • 「リアルワールドデータ」 • 臨床研究 • 医療情報システムの開発・実装コストの低減 • システム間連携・接続 • 地域医療ネットワーク • 安全性 • 誰が見てもわかりやすく簡単に意思の疎通ができる
実データの例 測定時刻項目名 値 2018-11-24 18:20:00腸蠕動音 低下 2018-11-24 18:20:00気管吸引【吸引回数】 4 2018-11-24 18:20:00気管吸引【色調】 オレンジ 2018-11-24 18:20:00気管吸引【量】 多量 • 文字データと数値データが混 在している. 2018-11-24 18:20:00口鼻腔吸引【吸引回数】 2 2018-11-24 18:20:00口鼻腔吸引【色調】 胃液様 2018-11-24 18:20:00口鼻腔吸引【量】 少量 2018-11-24 18:40:00GCS 3:T:6 2018-11-24 18:40:00JCS 10 2018-11-24 20:42:00心電図 VT 2018-11-24 20:50:00瞳孔径(R/L) 2.0/2.0 2018-11-24 20:50:00対光反射(R/L) +/+ 複数のデータが繋がって おり,処理のために分割 が必要
医療情報標準規格と医療データ https://twitter.com/BHaarbrandt/status/1350113325410111493
血圧データと「標準用語集」の対応 ICU A 集中治療医学会用語集 ICU B ABP S arterial blood pressure ART(M) mmHg ABP M mean arterial pressure <MAP> ART(S) mmHg ABP D NIBP S NIBP M NIBP D CVPs CVPm systolic blood pressure diastolic blood pressure mean blood pressure central venous pressure <CVP> CVPd pulmonary arterial pressure <PAP> PAPs systolic PAPm diastolic PAPd ART(D) mmHg PAP(S) mmHg PAP(D) mmHg PAP(M) mmHg NIBP(収縮期血圧) mmHg NIBP(拡張期血圧) mmHg NIBP(平均血圧) mmHg 実線:完全対応、破線:部分対応
体温データと「標準用語集」の対応 ICU A 集中治療学会用語集 ICU B Tcore 腋窩温 TEMP ℃ 直腸温 体温 T1 体温[測定時]大気圧 水蒸気飽和状態 T1Core 血液温 腋窩温 膀胱温 TEMP ℃ 深部温 食道温 口腔温 末梢温 直腸温 外殻温 皮膚温 実線:完全対応、破線:部分対応
「体温」に関連する用語整理 系統分類(Taxonomy) 構造化(Structuring, modeling)
標準化データベースの例 系統分類による表(例) 測定日時 大分類 中分類 小分類 18:12:33 体温 外殻温 腋窩温 18:15:22 体温 外殻温 18:24:57 体温 構造をもとにした表(例,非正規化) 値 単位 測定日時 項目名 値 37.2 C 18:12:33 体温 口腔温 37.5 C 深部温 直腸温 18:32:12 体温 深部温 18:33:40 体温 単位 部位 深度 37.2 C 腋窩 外殻 18:15:22 体温 37.5 C 口腔 外殻 37.8 C 18:24:57 体温 37.8 C 直腸 深部 膀胱温 37.9 C 18:32:12 体温 37.9 C 膀胱 深部 深部温 血液温 38.0 C 18:33:40 体温 38.0 C 血液 深部 18:35:08 体温 外殻温 腋窩温 38.5 C 18:35:08 体温 38.5 C 腋窩 外殻 18:41:21 体温 外殻温 口腔温 39.2 C 18:41:21 体温 39.2 C 口腔 外殻 18:47:01 体温 深部温 直腸温 38.0 C 18:47:01 体温 38.0 C 直腸 深部 18:55:38 体温 深部温 膀胱温 37.6 C 18:55:38 体温 37.6 C 膀胱 深部
用語だけでは不明瞭 SNOMED-CTの例 右上肢と左下肢の感覚麻痺 左上肢と右下肢の感覚麻痺 • 感覚麻痺(44077006) • 右(24028007) • 上肢(40983000) • 左(7771000) • 下肢(30021000) • 感覚麻痺(44077006) • 左(7771000) • 上肢(40983000) • 右(24028007) • 下肢(30021000) Stan Huff, Practical Modeling Issues: Representing Coded and Structured Patient Data in EHR Systems, AMIA 2014, Washington D.C., USA
病名と重症度
表現のブレ • 1つの項目名(コード)と値 • Dry weight = 70kg • 2つの項目名(コード)と値 • Weight = 70kg • Weight type = “Dry” Stan Huff, Practical Modeling Issues: Representing Coded and Structured Patient Data in EHR Systems, AMIA 2014, Washington D.C., USA
情報モデルのズレ(XML) • 未調整のデータ表現(項目名1の場合) <observation> <cd>Dry weight(LOINC 8340-2) </cd> <value>70kg</value> </observation> • 調整されたデータ表現(項目名2の場合) <observation> <cd >Weight(LOINC 3141-9) </cd> <qualifier> <cd>Weight type(LOINC 8337-8)</cd> <value>Dry(SNOMED-CT 13880007)</value> </qualifier> <value>70kg</value> </observation>
例:肺がんの疑い 診療所A 病院B外来 病院C入院 診断名 診断: がん 診断名 診断名 診断: がん疑 部位: 肺 診断: 肺がん疑 部位: 肺 状態: ◎疑い ○確定 ○未検 OK キャンセル OK キャンセル OK キャンセル Linda Bird によるISO-Semantic modelの例、日本語訳
モデルのズレ モデル階層 診断 診断病名 診療所A 病院B外来 病院C入院 がん がんの疑い 肺がんの疑い 肺 肺 詳細部位 身体部位 左右の別 診断過程 現時点での状態 対象との関係 疑い
データモデルとは何か • データの単位・構造 • データ定義 • 項目名 • 型 • 項目間の関連 • 必須、選択制、必須などの制約 • 機械的に処理することができる • データベース • 帳票
情報モデルの標準化 • 合意のとれた概念を反映させる • 臨床家、医学研究をとりいれる • 用語の関連を示す • タキソノミー、オントロジー、シノニム • 情報学的知見 • グラフ
HL7とopenEHR HL7 openEHR • 目的 • 目的 • 医療機器間のデータ交換 • 方法 • ユースケースごとにメッセージ 規格を策定 • シングルモデル • 用途 • ユースケースを絞ったデータ連 係 • ヨーロッパ全国民の健康情報を 記録するため • 方法 • 臨床概念をモデル化し、ユース ケースに展開する • 多段階モデル • 用途 • 大規模データリポジトリ
HL7 FHIR ResourceとopenEHR archetype HL7 FHIR openEHR • Resource • Reference model • 情報単位 • Patient, Observation, Condition, Coverage, Practitioner, Practitioner Role • 80% rule • 要件の80%をカバーし、必要に応じて extensionを追加する • Profile • ユースケースに相当 • Resourceに制約やextensionを付加する • 永続層に直結 • Entry • Observation, Evaluation, Instruction, Action • Archetype • Referenceをベースに定義が付与される。 • 臨床概念に相当 • 血圧、脈拍、体温 • 最大限項目を網羅する(maximum model) • Template • ユースケースに相当
openEHR Clinical Knowledge Manager
Archetype designer
EHR Studio (Better)
まとめ • 医療情報の標準化 • 用語 • モデル • openEHRの標準モデル開発 • Reference model, archetype model, template • FHIR Resourceとの違い • openEHR関連ツール • Clinical Knowledge Manager • Archetype Designer • EHR Studio