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August 19, 26
スライド概要
2026年8月18日に東洋大学(赤羽キャンパス)で行われた、PCカンファレンス2026の分科会口頭発表の角南北斗のスライドです。以下概要です。
言語学習における語彙教材(辞書・カード・リスト・クイズなど)の制作では、語彙データのデータベース化が不可欠であるが、この作業は情報処理技術に不慣れな教師にとって技術的・心理的負担が大きいという課題があった。近年、生成AIの活用により、語彙データの整形や教材形式への変換が容易になり、教師だけでなく学習者自身が高度な教材を作ることもより容易になってきている。本発表では、これまで発表者が行ってきた語彙データ整備および教材化支援の事例をもとに、生成AIが語彙教材の制作にもたらす変化を示す。そのうえで、完成された教材の提供だけでなく、再利用可能なデータを基盤とし、学習者がそれを活用・再構成することを支援するという新たな教材観と教師の役割について考察する。
教育系ウェブデザイナー
2026 PC CONFERENCE(2026.08.18) 生成AIが変える 語彙教材と教師の役割 角南 北斗(Sunami Hokuto) [email protected]
Sunami Hokuto Blog: withcomputer.jp Site: sunamihokuto.com X/Twitter: @shokuto
発表者(角南北斗)について 専門はウェブデザイン・ICT教材開発(フリーランス) ✴ 大学・大学院では日本語教育学を専攻、IT系の学習は独学 ✴ 教師から開発者へ軸足をシフトして教育現場を支援 大学では情報系などの授業を非常勤講師として担当 ✴ Office・プレゼン・デザイン・知的財産など 今回は「日本語学習教材の開発者」としての発表です
語彙教材ってどういうもの?
本発表における「語彙教材」とは 言語学習における「語彙を学ぶ」ためのツール全般 ✴ 辞書・単語帳・語彙リスト・フラッシュカードなど ✴ クイズ系(多肢選択問題・穴埋め問題など) ✴ 訳語だけでなく、音声や例文などをセットにすることも多い 古くは紙媒体、近年はアプリ系も多い ✴ 単語カードをリングに束ねたり、赤いシートで単語を隠したり… ✴ スマホ用アプリなら mikan、Duolingo などの多くのサービスがある
語彙教材の公開はウェブベースが多い 発表者はウェブ版の語彙教材を20年ほど手がけてきた ✴ 前提:発表者のスキルセットの関係上、ウェブ系の依頼が来やすい 公開教材には、紙よりデジタルが選ばれるように ✴ 依頼側にとって、商業出版しづらいニッチな内容でも世に出しやすい ✴ スマホの普及で(PCよりも)学習者が利用しやすい環境になった ✴ アプリ版に比べると、ウェブ版は開発や維持のコストが低い
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語彙教材の公開はウェブベースが多い 発表者はウェブ版の語彙教材を20年ほど手がけてきた ✴ 前提:発表者のスキルセットの関係上、ウェブ系の依頼が来やすい 公開教材には、紙よりデジタルが選ばれるように ✴ 依頼側にとって、商業出版しづらいニッチな内容でも世に出しやすい ✴ スマホの普及で(PCよりも)学習者が利用しやすい環境になった ✴ アプリ版に比べると、ウェブ版は開発や維持のコストが低い
一方、授業用の教材は紙も多い ExcelやWordで作って印刷(またはPDF) ✴ たいしてスキルがない教師でも作りやすい ✴ 出来上がりのイメージがしやすい(原稿そのものなので) 紙はウェブやアプリに比べて機能面が貧弱 ✴ 収録語彙数が増えるとページ数も増えて探しにくい ✴ 音声やクイズなどの機能をつけられない
一方、授業用の教材は紙も多い ExcelやWordで作って印刷(またはPDF) ✴ たいしてスキルがない教師でも作りやすい ✴ 出来上がりのイメージがしやすい(原稿そのものなので) 紙はウェブやアプリに比べて機能面が貧弱 ✴ 収録語彙数が増えるとページ数も増えて探しにくい ✴ 音声やクイズなどの機能をつけられない 生成AIが変えつつある
ウェブ系の語彙教材の制作は 教師にとってなぜ難しいのか?
1. 語彙データの作成が難しい(紙も同じ) 目的に応じた語彙を収集・選定するのが大変 ✴ 教材コンセプトに応じて、レベル・場面・分野を適切に限定する ✴ 既存資料(テキストや試験)を対象にする場合、抽出・分析作業 語彙に学習用のメタデータを付与するのが大変 ✴ 読み・訳語・品詞・例文・文法事項や利用場面の説明など ✴ 対応したい言語が増えれば必要な翻訳コストも増える 特に専門分野の語彙の場合、適切な翻訳者を探すのが本当に大変
2. 教材設計とデータベース化が難しい どんな見せ方・機能を持った教材にするのかを決める ✴ キーワード検索、カテゴリーやタグによる分類、クイズ機能など 見せ方や機能に応じて必要データを用意する ✴ 検索範囲は何をどこまで?クイズの誤答選択肢はどう作る? 教材設計に応じたデータベース設計にする ✴ Excelファイルでも、列の分け方、フォーマットの統一など大変
介護のことばサーチ https://kaigo-kotoba.com
語彙クイズ生成ツール) 開発中のため非公開
日本語でケアナビ https://nihongodecarenavi.jp
2. 教材設計とデータベース化が難しい どんな見せ方・機能を持った教材にするのかを決める ✴ キーワード検索、カテゴリーやタグによる分類、クイズ機能など 見せ方や機能に応じて必要データを用意する ✴ 検索範囲は何をどこまで?クイズの誤答選択肢はどう作る? 教材設計に応じたデータベース設計にする ✴ Excelファイルでも、列の分け方、フォーマットの統一など大変
3. 教材設計が最難関 教師は意外と「世の中にある教材の例」を知らない ✴ 自身が学習者として既存教材を利用した経験があまりない ✴ 特にデジタル教材(アプリとか)は使ったことすらないことも 教師は画面表示や機能のイメージができない ✴ 技術をある程度知らないと、ありそうな設計パターンが浮かばない ✴ 手持ちのデータを教材の機能や情報配置に結びつけられない
3. 教材設計が最難関 学習者が教材をどんな場面でどう使うか?が想像できない ✴ そんな場面は現実的にないのでは…みたいなモデルを描きがち 技術者も教育素人だと適切な教材設計に落とし込みにくい ✴ 想定する現場や学習者像は依頼側(教師)の情報頼みなので、 その内容や見立てが誤っていると、設計の根本が揺らいでしまう。 ✴ 発表者は教師としても判断なり意見なりができる(可能性がある)が、 普通の制作会社だと高難易度ミッションにならざるを得ない。
生成AIが教材制作のハードルを下げつつある
生成AIが語彙データの作成を支援 生成AIに渡せる資料さえあれば、データ作成が容易に ✴ テキストなどから条件に合った語彙を抽出してもらう ✴ 抽出した語彙の傾向を分析してもらいカテゴライズしてもらう ✴ 語彙にメタデータ(翻訳や例文)を付与してもらう 教師は品質チェックと修正により注力できる ✴ AIの出力結果は完璧ではないが、工程の多くを自動化できる恩恵は大
データベース作成も生成AIに相談できる 教材イメージの具体化から必要なデータの種類と形式まで、 生成AIとチャットで対話を重ねながら決めていける。 自然言語処理どころかExcel関数の知識があまりなくても、 生成AIに方針の相談から実作業まで依頼可能。 教材設計で専門家(=発表者)が苦労してきた仕事は、 かなりの部分が「教師 x 生成AI」でやってもらえそう。
ウェブ教材の開発と公開まで生成AIで 生成AIに言葉で指示してコードを全部書いてもらい、 完成した教材の一般公開まで「素人でも」進められる。 ✴ いわゆる「バイブコーディング」と呼ばれる開発スタイル 教材の具体的なイメージやアイディアが出せて、 開発の試行錯誤を楽しめる教師には、生成AIは最強の相棒。
生成AIは学習者の学習環境も大きく変える
生成AI以前の「学習者」の教材制作 総合的な学習教材は教師が提供したものでも、 学習者自身が補助的なマイ教材を作ることは、昔からある。 ✴ リング型の単語カード、マーカーと下敷きで隠しながら暗記、など ✴ Quizletのようなオンラインのフラッシュカード作成サービスの利用 語彙の入力作業は単純だが、手間がかかるのがネック ✴ 学習方法にこだわりがある人でないと、わざわざやらない
Quizlet https://quizlet.com/jp
生成AI以前の「学習者」の教材制作 総合的な学習教材は教師が提供したものでも、 学習者自身が補助的な教材を作ることは、昔からある。 ✴ リング型の単語カード、マーカーと下敷きで隠しながら暗記、など ✴ Quizletのようなオンラインのフラッシュカード作成サービスの利用 語彙の入力作業は単純だが、手間がかかるのがネック ✴ 学習方法にこだわりがある人でないと、わざわざやらない
生成AI時代の「学習者」の教材制作 学習対象となるテキストを生成AIに渡すだけで、 重要語彙の抽出・翻訳・例文・確認問題まで生成してくれる。 ✴ あとは生成されたデータをExcelにまとめて、印刷して使ったり、 Quizletなどのサービスにインポートして使うだけ。 ✴ サービス側でAI連携しているものだと、ベースとなる資料を渡せば、 翻訳や分類を自動付与し、クイズの自動生成まで行ってくれるものも。 教師が自前で開発するのが困難なレベルの教材を、 学習者は非常に低コストで気軽に試せる。
生成AIそのものが教材に 教材を作らなくても、生成AIとの対話そのものが教材 ✴ 知らない語彙の意味や使い方を説明してもらう ✴ 指定した語彙で例文や練習問題を作ってもらう ✴ 対話を重ねるとAIが学習して、意図を汲んだ対応をしてくれる 生成AIそのものが最大の教材であり、学習環境である ✴ 授業や教師の都合は関係ない、遠慮もいらない、母語でOKの気軽さ ✴ 教材を作るのは億劫でも、チャットならスマホで日常的に使う
変化する「教材観」と「教師の役割」
変わる教材観 これまでの教材は「教師が完成品として提供するもの」 ✴ 既製品を選ぶか、データ収集から始めて作り込むかは別にして ✴ 学習者が自身の希望に応じてアレンジ教材は作ることはあるけれど 生成AIのある現代は、教材は学習者が作ることも容易に これからの教材は「元となるデータとその活用」が重要
教師の役割:完成品ではなくデータを提供 教師は、学習対象となるテキストや語彙のデータを、 AIや各種サービスで利用しやすい形式で学習者に提供する。 ✴ 完成品の「固まった」パッケージだと、データとして再利用しにくい ✴ 学習者は自分の希望に応じてデータを教材化する(できるようにする) AIが苦手な種類・分野のデータは教師が作って提供する ✴ 学習者がAIで生成したデータに誤りが多いと、学習にマイナスになる ✴ 教師が確認・修正したデータを提示して、学習の質を担保する
教師の役割:データの活用を支援する 学習者がデータをうまく扱えないとボトルネックになる データの提供+活用方法を助言するのが教師の仕事 ✴ その学習者にはどんな教材や学習スタイルが適していそうか ✴ どんな学習設計をすればよいのか ✴ 適したツールやサービスは何か、具体的にどう使うのか 学習者のリテラシーやオートノミーを高める役割
教師は「作る」から「先に学ぶ」へ 教師自身が「いま生成AIやサービスでできること」を 情報収集し、自ら試しながら、学び続ける必要がある。 ✴ 学習者が陥りそうな問題を先回りして把握する ✴ 必要なデータやツールがないと知れば、もちろん作ることも視野に 教材制作の効率化は「作る前に学ぶ」時間の創出へつながる ✴ 特に生成AIのような「新しくて変化も速い」ものに対する学びは、 教師も学習者も同じ場所からスタートする(だからとても大変)
まとめ
本発表のまとめ これまで技術や知識が不可欠だったウェブ教材の制作は、 生成AIのおかげで劇的にハードルが下がった。 それは教師だけでなく学習者にとっても大きな変化で、 いまや生成AI自体も重要な学習環境になっている。 教師は「完成された教材」にこだわりすぎずに、 学習用データの提供とその活用に目を向ける必要がある。
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おまけ
おまけ 発表者は、PCカンファレンス2014(@札幌学院大)で 教材のスマホ対応は学習設計において重要だ と述べたが、 結論は似たようなことを言っていたことに気づいた。
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