「Excelの次」としてのノーコード

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August 22, 23

スライド概要

2023PCカンファレンス(2023.08.19 @つくば国際会議場)の分科会口頭発表のスライドです。Excelの基礎的な学習の次のステップとして、データベースの理解を深めるためにノーコード(主にAppSheet)を使う、という教育実践について紹介しています。

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教育系ウェブデザイナー

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各ページのテキスト
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2023 PC CONFERENCE(2023.08.19) 「Excelの次」としての ノーコード 角南 北斗(Sunami Hokuto) [email protected]

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発表者について

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発表者について 専門はウェブデザイン・ICT教材開発 ✴ 大学・大学院では日本語教育学を専攻 ✴ 教師からフリーの開発者へ軸足をシフトして教育現場を支援 大学で情報系の授業を担当 ✴ Office・デザイン・プレゼン・知財など ✴ 今回はこの立場における発表です

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発表の概要と目的

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「Excelの次」としての ノーコード

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発表の概要と目的 初級者向けの情報(Excelメイン)の授業で、 データベースへの理解をより深めてもらう目的で、 ノーコードによるアプリ開発を取り上げた。 ✴ 「Excelの次」=「Excelの次に学ぶものとして」の意 ノーコードを授業で扱う際の(主に)難しさについて、 実践前と実践後に感じたことを、みなさんと共有したい。

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ノーコード(NoCode)とは どのようなツールなのか?

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ノーコードとは コードを書くことなく(=NoCode) アプリやサイトなどを開発できるツールの総称 ✴ 2019年あたりから、さまざまなツールがリリースされている ✴ プログラミングができなくても...という意味に感じるが、 誰でも簡単に…というわけでもない(これはポイントなので後述)

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本実践で採用したノーコード 本実践ではGoogleの「AppSheet」を主に利用 ✴ 指定したデータベースから自動でスマホアプリを作ってくれる ✴ Googleスプレッドシートをデータベースに指定できる ✴ ブラウザ上だけで開発できる(特別なソフト等の導入が不要)

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授業内容と、ノーコードを扱った理由

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実践を行った3授業(2022年度後期) 主な受講生は、それぞれ1年生・2年生・4年生(学科は様々) Excelなどを使ったデータ処理を基本から学ぶ授業 ✴ 「Excel使ったこないです」な受講生も対象に含まれる ✴ 学科の専門分野に直接つながるものではなく、基礎的なリテラシー科目 授業終盤(基礎からデータベースまで終えた段階)で、 データベースへの理解を深めるためにノーコードを扱った。

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なぜデータベースの理解に焦点を当てたのか そもそもExcelの有用性を伝えるのは大変 ✴ 受講生は「計算結果を手入力」や「セル参照を使わない」などしがち ✴ WordやPowerPointと違って利用場面がイメージしにくい? データベースはもっと「ピンとこない受講生」が多い印象 ✴ 教科書などは「社員名簿」や「5教科の試験結果」などのデータを 例に解説されていて、それを使って説明してきたが…

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アプリを通してデータベースの役割を学ぶのは? 以前は「Wordの差し込み印刷による宛名作成」を例に ✴ Excelで住所録を作り、Wordで案内状のフォーマットを作る ✴ 年賀状など、そもそも郵送文書が受講生にとって身近でなくなった 2022年度はスマホアプリを作ってみようと考えた ✴ 受講生に身近なスマホ用のアプリを題材にすれば、 アプリにおけるデータベースの役割を少しは実感できるのではないか?

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受講生・環境・担当のスキルについて 受講生は、プログラムやアプリ開発に関する 特段の知識・関心は持っていない(という前提)。 開発向けのアプリは何も入っていない情報端末 担当教師(発表者)もプログラムは得意ではない ✴ プログラムのスキルがなくても、ウェブサービスなどの活用で、 高度なことが実現できる・自分の可能性が広がる体験をしてもらいたい。

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ノーコードの中でもAppSheetを採用した理由 開発に必要な環境がブラウザのみ・無料 スプレッドシートをデータベースに使える データベースからアプリ化を自動でやってくれる ✴ 自動で組み上がったアプリが、設定調整なしでも実用的なレベル ✴ 画面設計の自由度が低いことを長所として捉える 日本語の資料が他のツールに比べて多い

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実践内容と結果 学期終盤の4週(360分)程度をノーコードに割り当て ベーシックなメモ帳・タスク管理アプリの作成と改善 受講生(多いクラスは30名超)のほぼ全員が 自分のスマホでアプリを動作させるところまで到達。 ✴ 自作の配布資料に沿って受講生各自で進める形式 ✴ 個別のトラブルシューティングはさほど多くはなかった

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本発表で共有したい、2つの「難しさ」 事前に想定していた「難しさ」 ✴ 受講生がノーコードを使ってアプリを作るのは、 ハードルが高すぎるのではないか? 実践してみて感じた「難しさ」 ✴ アプリを完成させることが優先、ではない授業においては、 ノーコード自体の設計思想や巷の学習リソースと相性が悪い。

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事前に想定していた「難しさ」

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ノーコード=開発知識は不要、ではない エディタでプログラムを書いていく工程ではないが、 GUIでそれを行うための知識は、ある程度必要。 ✴ 例1:データベースのカラムのデータ型の指定 ✴ 例2:英語のエラーメッセージが出た時の対処法 データの抽出では関数を書く必要がある ✴ 集計関数、IFによる分岐など(Excelの知識が使える、とも言える) ✴ 配列などの理解が要求されるケースになると、授業で扱うのは厳しい

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画面設計を自分ですることの大変さ 画面遷移やUIパターンが整理できていないと厳しい ✴ AppSheetに限った話ではなく、開発全般に言えることだが… ✴ データの一覧表示・個別データの表示・データ編集画面、など AppSheetはベーシックな画面遷移とUIを自動で用意してはくれる。 ✴ メモ帳アプリは使ったことがあっても、いざそれを自分で作るとなると、 目指すべき(あるべき)画面と遷移の形がイメージできない。

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授業ではどう準備・対応したか? 作成するデータベースをAppSheetの挙動に合わせる ✴ どんな状態のデータベースを指定するとどんなアプリを自動生成するか、 事前に挙動を検証して、初期データやカラム追加時のラベル名など、 トラブルを回避しやすいスプレッドシートを受講生に例示する。 開発の知識が必要な設定は「指示」する ✴ 設定の意味を説明することも大切だが、アプリ開発が目的ではないので、 概念の大雑把な説明にとどめてスムーズに次に進ませる。

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実践してみて感じた「難しさ」

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理解より完成が優先されがち トラブル回避を意識したスムーズな工程設計の提示が、 逆に「手順通り作業してアプリを完成させること」を 受講生が目標にしすぎてしまうことにもつながる。 ✴ 適切なデータベース(スプレッドシート)を受講生に渡せば、 AppSheetはまともなアプリに仕立ててくれる。 ✴ データベースと手順書を整備すればトラブルはかなり回避できるが、 手本通りに作ることに(教師も受講生も)意識が向きすぎてしまう。

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理解より完成が優先されがち データ表示のトラブルからデータベースを見直す、 という作業を通して理解を深めてもらいたいが… ✴ 見本と異なるデータ、あるいはデータ自体が未入力という事実に、 受講生の意識がなかなか向かないケースが見られた。 ✴ 見本通りではなく、自分で考えたデータを入れるチャレンジが少ない スムーズにアプリを完成させられるような人は、 スタイル設定などの見栄えの調整に時間を割きがち。

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トラブルが程良く起きるような工程を入れる 教師が提示するスプレッドシートの設計を、 あえてAppSheetが適切に設定してくれないものにする ✴ トラブルを故意に起こして、受講生に意図的に回り道させる シートを作り込んでからAppSheetに渡す形が向いているが、 少しずつカラムを追加してはアプリで設定する手順を選ぶ。 ✴ メモ帳なら、後から日付やIDなどを場当たり的に追加していき、 データの修正やアプリ側の表示の手動調整を繰り返させる。

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教師側の下準備が大変 データのアプリ化を自動で行うAppSheetの良さに あえて逆らうような工程設計が必要。 問題が起きそうなデータ、ツールの穴を探すような作業は、 不毛な下準備であり、そのコストも大きい。 ✴ 適当なデータを指定しても、いい感じに仕上げてくれる賢いツールだけに…

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ノーコードの特徴と噛み合わない授業 ノーコードがその強みを発揮するのは、 現場の抱えている問題をアプリで解決したい人や、 活用したい事業データがすでにある、というような人。 ✴ 世の中の資料も「具体的なアプリを完成させる手順の解説」に主眼 データを扱う経験の少ない(いま扱っていない)受講生には 解決したい問題・活用したいデータ自体がない ✴ アプリ開発の目標や動機を設定することが難しい

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データベースを学ぶ、に使えるリソースや手法は? データベース自体をライトに学べるような資料は少ない ✴ ノーコードの資料は「具体的なアプリの完成手順の解説」に主眼 ✴ エンジニア向けの入門書はあるが大袈裟すぎる アプリを多く作っていけば理解も深まるだろうが… ✴ 毎週違ったアプリを作るような授業にするには時間が足りない ✴ 受講者数が多いと教師一人ではサポートが追いつかなくなりそう

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次年度(2023年後期)はどうするか?

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次年度の授業の方針 2023年度後期も「Excelの次」にノーコードを扱う AppSheetを採用する見通し ✴ トラブルや回り道を、もう少し盛り込むような流れにする ✴ AppSheetの機能や画面構成の突然のアップデートを注視 新しい他のサービスも横目で検討 ✴ 4年生の授業では、AppSheetの後にGlide(glideapps.com)も使った

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AppSheetと比較したGlideの特徴 AppSheetよりも手作業の設定が求められるが、 画面遷移やUIパーツの配置の自由度が高い。 ✴ 入力データをリアルタイムに処理し表示するので、計算機なども作れる 作れるアプリの幅が広いが、最初のツールとしては不向き ✴ 「難しいが慣れるとAppSheetより楽しい」という声 ✴ 癖のあるGUIや情報の少なさに耐えて試行錯誤できるマインドが必須

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AppSheetと比較したGlideの特徴 AppSheetよりも手作業の設定が求められるが、 画面遷移やUIパーツの配置の自由度が高い。 ✴ 入力データをリアルタイムに処理し表示するので、計算機なども作れる 作れるアプリの幅が広いが、最初のツールとしては不向き ✴ 「難しいが慣れるとAppSheetより楽しい」という声 ✴ 癖のあるGUIや情報の少なさに耐えて試行錯誤できるマインドが必須

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発表のまとめ 初級者向けの情報(Excelメイン)の授業で、 データベースの学習にノーコードを使う実践を行った。 事前の懸念である「ノーコードを扱うことの難しさ」は 実際はそこまで大きな問題にはならなかった。 一方で「アプリの完成が目的になりすぎる」ことの回避を、 どう授業設計に盛り込むかは課題として残った。

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実践を通して、いま考えていること 汎用性の高いExcelをまず学ぶのは前提として、 ノーコードのような今風のツールの活用例を通して データ処理への理解を深めるのも1つの方法ではないか。 ✴ エンジニア志望などでない学生、あるいは教員や職員などにとっても、 いま体験しておく価値のあるツールではないか、と考える。 教育現場でツールを扱うためのリソースが足りないので、 今後は情報収集だけでなく、発信・共有をしていきたい。

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Sunami Hokuto Blog: withcomputer.jp Site: sunamihokuto.com X = 旧Twitter: @shokuto