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September 13, 26
スライド概要
北海道大学 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』第1回講義のスライドです。
まだ作成段階のものですが、北海道大学の大学院生で受講を検討している方の判断材料として、早めに公開しました。
詳しいことについてはシラバス、moodle、そして『「脳とAI」入門2026』補足資料 https://www.chain.hokudai.ac.jp/members/pooneil/lecture_brain_AI2026.html をごらんください。
受講生でなくても利用可能です。
ライセンス: CC-BY4.0 吉田正俊
吉田 正俊 (Masatoshi Yoshida) 北海道大学 人間知・脳・AI研究教育センター(CHAIN) A neuroscientist and a campfire guitarist. https://www.chain.hokudai.ac.jp/members/pooneil/ https://bsky.app/profile/pooneil.bsky.social
大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』 第1回 神経細胞とモデル ニューロンを数式や人工ニューロンで表すとき、何を残し、何を捨てるのか dV τm dt = − (V − Vrest) + R I(t) Jouhanneau & Poulet, 2019, Fig. 2F 実ニューロン 膜電位の計測データ 数式モデル 現象のどの側面を残すかを、図と数式で確かめる ~ 2026年10月6日(火) 18:15 19:45 北海道大学 CHAIN|教授 吉田正俊 01
COURSE GUIDANCE|INSTRUCTOR 講師紹介:吉田正俊 1996–2003 北海道大学 東京大学医学部・生理学研究所 長期記憶についての神経科学(ニホンザル) 人間知・脳・AI研究教育 センター (CHAIN) 教授 2003–2019 生理学研究所 意識・注意についての神経科学 (ニホンザル、マーモセット、ヒト) 吉田の本が出ました! 2010 『行為する意識 南カリフォルニア大学工学部 訪問研究者 ―エナクティヴィズム入門―』 青土社 2020– 講義の教科書ではありません 北海道大学 意識の解明に向けた学際的研究プロジェクト (マーモセット、ヒト) (講義を聞くと理解しやすくなります) http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=4026 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 02
COURSE GUIDANCE|CHAIN CHAINの研究・教育領域 人間知・脳・AI研究教育センター Center for Human Nature, Artificial Intelligence, and Neuroscience AI 脳科学 新しい 人間知 人文社会科学 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 03
COURSE GUIDANCE|CHAIN CHAINの研究・教育領域 人間知・脳・AI研究教育センター Center for Human Nature, Artificial Intelligence, and Neuroscience 「脳とAI」入門 ディープラーニング演習 AI 脳科学 意識の科学入門 新しい 人間知 科学と技術の人類学 心と認知の哲学入門 人文社会科学 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 04
COURSE GUIDANCE|PURPOSE 本講義の目的 『「脳とAI」入門』 火曜6限(18:15 19:45) 10月6日 12月1日・全8回 AIと神経科学 意識・自己への問い 人工神経ネットワークの進歩と 脳とAIについての深い理解は、 神経回路についての理解は、 人文科学が扱ってきた問題群へ 互いを補う形で貢献し合っている アプローチするための基礎になる 脳とAI、そして両者の関係について 系統だった理解を得る 05 ~ ~ 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回
COURSE GUIDANCE|LEARNING GOALS 本講義の到達目標 1 脳の神経回路を理解するために必要な、 神経科学の事項について概括的な知識を得る AI(人工神経ネットワーク)を理解するために必要な、 2 神経計算論・情報科学の事項について概括的な知識を得る 脳とAIの関係について理解し、 3 現在の議論を読み解けるようになる 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 06
COURSE GUIDANCE|PREPARATION 本講義のための準備 講義資料 テキスト・教科書 ELMS Moodleページ 使用しない https://moodle.elms.hokudai.ac.jp/course/view.php?id=23334 補足資料ページ 講義スライドと参考文献を使います https://www.chain.hokudai.ac.jp/members/pooneil/lecture_brain_AI2026.html 予習 講義当日までにMoodleへ掲載する 講義スライドを読んでみてください 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 復習 さらに専門的に知りたい方は、 スライド記載の参考文献を読んでくだ さい 07
COURSE GUIDANCE|CLASS FORMAT 90分の講義時間内に、疑問を解消する 途中での質問も、チャットでの質問も歓迎します 約80分 講義 約10分 途中質問OK 確認テスト チャットでもOK リアクションペーパー(任 意) 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 08
COURSE GUIDANCE|ATTENDANCE 対面・Zoom・オンデマンドで参加できる リアルタイム講義 対面 オンデマンド 中央キャンパス総合研究棟2号館 3階 CHAINセミナー室 リアルタイムで参加できない場合 ELMS上の講義ビデオを視聴 Zoom (Moodle上に情報があります) 講義後1週間以内に 確認テストを受ける 対面・オンラインのどちらでも参加できます 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 09
COURSE GUIDANCE|ASSESSMENT 成績評価は、確認テストと最終レポート 以下の2つの内容を加味して成績評価を行います 1 各講義後の確認テスト 2 最終レポート 講義を理解していればわかる A4で最大3枚まで 基礎的事項を確認します 2枚以上は書く 期限:講義終了1週間後の18:15まで オンデマンド受講も同じ 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 テーマと採点ポイントは次のスライド 10
COURSE GUIDANCE|ASSESSMENT 最終レポート:講義の主張を批判的に検討する テーマ(暫定案) 採点ポイント 本講義では、脳とAIを比較する際に、工学的・計算論的に有効な機能記述 と、その機能を生物学的に実現する回路の形成・維持過程とを区別する、 1 講義の中心的主張を 正確に再構成する という視点を繰り返し提示した。 この考えについて、講義で扱った具体例を少なくとも二つ用いて批判的に 2 少なくとも二つの 具体例で検討する 検討し、あなた自身の立場を論じなさい。 3 反論や限界も考える 講義の主張に賛成する必要はない。 4 自分の立場を 理由とともに示す 最終回にあらためて詳しく説明します 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 11
INTRODUCTION 脳とAIの「似ている」は、何が似ているのか 共通する課題:画像から対象を見分ける 生物の視覚系 人工ニューラルネットワーク 猫! 画像 視覚系 認識 猫 画像 学習済みモデル 分類結果 課題・入出力の比較:同じ画像に似た答えを返す 内部の仕組みの比較:状態・結合・学習則を個別に調べる Photo: Alvesgaspar, CC BY-SA 3.0(cropped)/Richards et al., 2019 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 12
INTRODUCTION|HISTORY 脳を手がかりにしたモデルから、脳を比較するモデルへ 歴史的位置づけ 1943 1958 2012 2019 形式化された神経回路 パーセプトロン AlexNet 深層学習を脳研究へ 発火を二値化し、 入力例と正解に応じて 深いCNNが画像認識を ANNを脳を比較する 神経回路と論理を結ぶ 重みを更新する 大きく前進させる モデルとして用いる 脳由来の着想は、工学的な学習法と大規模計算によって組み替えられてきた McCulloch & Pitts, 1943; Rosenblatt, 1958; Krizhevsky et al. 2012; Richards et al., 2019 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 13
COURSE MAP 全8回で何を学ぶか 10/6 10/13 10/20 10/27 1 2 3 4 神経細胞とモデル 11/10 状態はどう変わる? 神経表現・可塑性・記憶 11/17 経験は結合にどう残る? 人工NNと学習 11/24 5 6 7 強化学習 報酬はどこから来る? 予測符号化 予測する回路はどう作られる? VAEと自由エネルギー原理 AIは結合をどう変える? 「最小化」は目的か記述か? 視覚野とCNN 力学系・RNN 何が「似ている」のか? 12/1 8 全体を時間発展として捉える 第1回の基礎:状態・入力・モデル化 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 14
TODAY'S QUESTION 一個のニューロンで、モデル化を体験する 模式図 実ニューロン LIFモデル 発火率モデル r=f(I) 形態・膜電位・発火 状態 V(t) と発火時刻 入力と平均応答 生物学的な対象 時間変化を残す 時刻情報を平均する 問いに必要な情報が、モデルの選択を決める 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 15
REAL NEURON|BEHAVIOR TO SPIKES 眼を動かすとき、1個のニューロンの発火が変化する 視覚誘導性サッカード課題 マカクザルLIP|単一ニューロン記録 各行が1試行 短い線が発火時刻 1|中央を注視 2|周辺に 視標が出現 3|視標へ サッカード 試行を平均した 発火率 白丸=視標 赤い十字=視線位置 周辺に現れた視標へ、すばやく眼を動かす 眼球位置 赤:垂直 黒:水平 行動をしている最中の脳を記録する 0 ms=サッカード開始 では、この「発火」――短い線一本一本の正体は何だろう? Bremmer et al., 2016, Fig. 2(16 条件をトリミング, CC BY) 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 16
REAL NEURON 神経細胞には、複雑に枝分かれした形がある 大脳皮質の神経細胞(共焦点顕微鏡像) 形は、信号の流れと結びついている 樹状突起 入力を受け取る 細胞体 入力をまとめる 軸索 出力を伝える 細胞種・回路によって形は大きく異なる 「神経細胞の活動」とは、このような形をもつ細胞で、 膜を介して生じる電気活動だ。次はこの電気活動について、 膜電位、活動電位、シナプス電位を順に見てゆく。 Lee et al., 2006, Fig. 6D, CC BY 2.5(トリミング) 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 17
REAL NEURON 膜電位:膜を隔てた電位差 Vm(t) = Vin(t) − Vout(t) 細胞外 0 mV(基準) Na⁺ 145 mM K⁺ 4–5 mM 実測された Vm(t) Cl⁻ 110–120 mM ←活動電位 K⁺ 細胞膜 Na⁺ 細胞内 約 −65 mV Na⁺ 10–15 mM Na⁺/K⁺ポンプ K⁺ 130–140 mM Cl⁻ 5–15 mM 濃度勾配 × 選択的透過性が膜電位を規定する 膜近傍に電荷を蓄え、膜はコンデンサーとしてふるまう Na⁺/K⁺ポンプは、エネルギーを消費してNa⁺・K⁺の濃度勾配を維持する Vm(t) は時間変動する チャネル(後述)は、蓄えられた勾配を使う Jouhanneau & Poulet, 2019, Fig. 2F, CC BY(トリミング) 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 18
REAL NEURON 活動電位:Na⁺流入で立ち上がり、K⁺流出で立ち下がる HHモデルによる計算波形 膜電位から発火時刻へ 記録した膜電位から、 脱分極 再分極 活動電位が生じた時刻を検出する 発火時刻 脱分極 細胞外 細胞内 再分極 t 細胞外 Na⁺ 多くの解析では、波形そのものではなく イオン チャネル Na⁺が流入 細胞内 K⁺ イオン チャネル 発火時刻の列として扱う 例:スパイク列、ラスタープロット、PSTH K⁺が流出 Hodgkin & Huxley, 1952(数値計算) 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 19
REAL NEURON 信号伝達:活動電位がシナプス電位へ変換される 模式図 シナプス結合 送り手のニューロン 受け手のニューロン 軸索 活動電位が軸索を進む 樹状突起 伝達物質 (例: グルタミン酸) 細胞体 送り手の出力|活動電位(スパイク) 細胞外 Na⁺ 受容体 チャネル 細胞体 受け手の入力|シナプス後電位(PSP) この例では興奮性(EPSP) 細胞内 パルス状の事象 主にNa⁺が流入 大きさが連続的に変わり、時間とともに減衰 同じ波形が渡るのではなく、受け手側で新しい膜電位変化が生じる Gerstner et al., 2014, §§1.1–1.2, 3.1 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 20
REAL NEURON シナプス電位:一つの結合が生む小さな膜電位変化 ペア記録 実験: 皮質スライス内の1対1記録 記録 刺激・記録 40 mV 10 ms 送り手|活動電位 1 mV 送り手 受け手 10 ms 単一の シナプス結合 受け手|PSP ひとつのシナプス結合によるPSPは活動電位と比べるとずっと小さい この例では興奮性応答(EPSP)。シナプスによっては抑制性応答(IPSP)もある。 活動電位の直後に伝達物質が放出され、受け手の受容体チャネルが開く イオンの流出入 = 電流(PSC) → 膜電位が変化(PSP) Luo et al., 2017, Fig. 6B, CC BY(トリミング) 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 21
MODEL|OVERVIEW モデリング:問いに必要な情報だけを残す 問いが変われば、残す情報と省く情報も変わる モデル 残す状態・構造 主に扱える問い この講義 Compartmental model 形態・区画ごとのV_i(t) 入力位置・樹状突起統合 Appendix HH model V_m とチャネル変数 m, h, n イオン電流・活動電位の機構 概観のみ 2D model V_m, n など2変数 状態空間・興奮性 Appendix LIF model V(t)・閾値・リセット 時間積分・発火時刻 このあと 発火率 model 発火率 r 平均応答・集団活動 後半 ※ Compartmental model は、各区画にHH型の膜モデルを組み込むことがある この回の問い:入力の時間構造と組合せは、膜電位と発火時刻をどう変えるか Gerstner et al., 2014/Dayan & Abbott, 2001 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 22
HOW TO READ EQUATIONS この講義での数式の扱い 数式は、モデルが何を残したかを読むために使う 記号 何を状態として残したか 項と符号 何が、その状態をどちら向きに変えるか 図と単位 変化の形と大きさが妥当か 導出や証明より、式と現象の対応を読む 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 23
MODEL|LIF 膜電位だけを状態として残す 模式図 実ニューロン LIFモデル (Leaky integrate-and-fire model) 多数のイオンチャネル V(t) シナプスごとの作用 膜電位の時間変化 樹状突起と細胞体の形 抽象化 活動電位の波形 残す 入力 I(t) が V(t) を動かす 膜電位の時間変化と、入力の効果 複数のシナプス電位PSPを 省く 形態、個々のチャネル、活動電位の波形 入力I(t)の形にまとめる Gerstner et al., 2014, §1.3 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 24
MODEL|LIF 入力がなければ、膜電位は静止膜電位へ戻る 数値シミュレーション どちらの初期値からも 静止膜電位 Vrestへ近づく dV τm = − (V − Vrest) dt 電位の時間変動 静止値へ戻す効果 τm は静止値へ戻る V > Vrest なら負 時間スケール。 小さいほど速く戻る 右項は漏れ電流が膜電位を静止値へ戻す効果を表す。 静止膜電位付近でも開いている 背景チャネル(例: K2Pチャネル)をひとまとめにしたもの 数値例:Vrest = −65 mV、τm = 20 ms、Δt = 0.05 ms 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 Gerstner et al., 2014, Eq. 1.5-1.6 25
MODEL|LIF 一定の入力があると、膜電位は新しい定常値へ近づく 数値シミュレーション dV τm = − (V − Vrest) + R I(t) dt 入力中の定常値 電位の時間変動 静止値へ戻す効果 入力による効果 V > Vrest なら負 I(t) > 0 なら正 変化の向きは、右辺の二つの項の和で決まる 入力直後 定常状態 入力停止後 入力によって 入力による効果と、 静止値へ戻す効果 がつり合う Vrestへ戻る Vが上がる 数値例:Vrest = −65 mV、τm = 20 ms、R = 100 MΩ、I = 0.15 nA、Δt = 0.05 ms 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 各項の単位は電位 [mV] Gerstner et al., 2014, Eqs. 1.5, 1.7 26
MODEL|LIF 閾値とリセットを、別の規則として加える 数値シミュレーション 微分方程式 閾値までの V(t)を進める 発火規則 V=θ なら時刻を記録 直後にV ← Vreset 縦の下降線は活動電位の波形ではない 数値例:θ = −50 mV、Vreset = −65 mV。絶対不応期は置かない 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 Gerstner et al., 2014, Eqs. 1.12–1.13 27
MODEL|LIF 入力の履歴が、今の電位に残る 数値シミュレーション 間隔が広い 間隔が狭い 入力間隔が短いほど、前の電位変化が残ったまま次の入力が加わる (時間的加算) 数値例:τm = 20 ms、R = 100 MΩ、各パルス 0.30 nA × 5 ms、Δt = 0.05 ms 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 Gerstner et al., 2014, §§1.3.2, 1.3.4 28
MODEL|LIF 複数の入力を、合計入力 I(t) として扱う I(t) = IE1(t) + IE2(t) + IInh(t) 数値シミュレーション 入力の組合せで、膜電位が閾値へ届くかが変わる 数値例:E1 = E2 = +0.30 nA、Inh = −0.35 nA、各入力は20–30 ms。位置情報はモデルに含めない 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 Gerstner et al., 2014, §§1.3.2–1.3.4 29
MODEL|LIF 入力が続くと、発火が繰り返される 数値シミュレーション 入力の積分と静止値への復帰に、閾値・リセットを加えるとスパイク列が生じる 数値例:I = 0.22 nA、θ = −50 mV、Vreset = −65 mV。絶対不応期は置かない 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 Gerstner et al., 2014, Fig. 1.9 30
MODEL|LIF 入力が強いほど、発火率は高くなる 数値シミュレーション 入力が強いほど閾値へ早く達し、同じ時間内の発火数が増える 比較条件:入力強度以外は同一。入力区間 10–110 ms、絶対不応期なし 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 Gerstner et al., 2014, §§1.3.3–1.3.4 31
MODEL|LIF LIFで再現するもの、省略するもの 活動電位の連続波形(HH計算例) LIFの発火イベント 抽象化 数 msにわたる連続した膜電位変化 t (f) 波形を生成せず、発火時刻だけを記録 残す 静止値への復帰と入力の加算 / 閾値、リセット、発火時刻 / 入力強度による反復発火の変化 省略 活動電位の波形、イオンチャネル、細胞の形態、順応 次は、発火時刻の列を一つの発火率へまとめる (発火率モデルへ) Hodgkin & Huxley, 1952(数値計算); Gerstner et al., 2014 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 32
MODEL|FIRING RATE スパイク列を、一つの発火率にする 数値シミュレーション N 4 r= = = 40 Hz ΔT 0.10 s Hzは「1秒あたりの回数」 計数例:I = 0.22 nA、窓 10–110 ms。数値シミュレーションの発火を窓内で数える 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 Gerstner et al., 2014, §7.2 33
MODEL|FIRING RATE 入力電流と発火率を結ぶ LIFの定常応答 I ≤ 0.15 nAでは0、I > 0.15 nAで発火率が増える この形はReLUに似るが、同じ関数ではない 条件:Vrest = Vreset = −65 mV、θ = −50 mV、τm = 20 ms、R = 100 MΩ、不応期なし 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 Gerstner et al., 2014, §§1.3.3, 12.4 34
MODEL|FIRING RATE 発火率モデルは、入出力関係を簡潔に表す 模式図 一定入力 発火率 非線形変換 f( ⋅ ) I r=f(I) r-I曲線(前スライド)を、関数 f として表す 見やすくなる 入力条件ごとの平均応答を、一つの曲線で比較できる 見えにくくなる 同じ平均発火率でも、個々の発火時刻や時間配置は区別できない 時間依存の発火率モデルもある。発火率モデル全般を静的とはみなさない。 Gerstner et al., 2014, §§12.4, 15.3 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 35
MODEL|ARTIFICIAL NEURON 人工ニューロンへ:重み付き和と非線形変換 模式図 x₁ w₁ x₂ w₂ x₃ 重み付き和 非線形変換 Σ f +b fの例: ReLU w₃ y f(z) z y=f ∑ j wj xj + b 数式の形は似ているが、実ニューロンと生理学的に同一という意味ではない Goodfellow et al., 2016, Ch. 6 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 36
MODEL|COMPARISON どのモデルを使うかは、問いによって決まる 模式図 モデル LIF 静的な発火率 人工ニューロン 残すもの 主に省くもの 答えやすい問い 活動電位の波形 入力の時間間隔が 細胞の形態 発火をどう変えるか 一定入力と平均発火率 個々の発火時刻 定常応答を条件間で r=f(I) 窓内の配置 どう比較するか 重み付き和と 生理学的な時間発展 非線形出力 シナプス機構 V(t)と発火時刻 入力をどう分類・変換するか 精密さの順位ではなく、問いに必要な情報で選ぶ Gerstner et al., 2014, Chs. 1, 7, 12 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 37
SUMMARY 今日のまとめ:状態は変化する。次回は結合も変わる 模式図 今日 膜電位 V(t) が時間とともに変化する 同じ入力への応答は同じ 次回 経験によってシナプス結合の強さが変わると、同じ入力への応答も変わる 状態の変化から、シナプス可塑性と記憶へ 第2回「神経表現・シナプス可塑性・記憶」へ 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 38
REFERENCES 参考文献|神経細胞・膜電位・シナプス 基礎・モデル Gerstner, W., Kistler, W. M., Naud, R., & Paninski, L. (2014). Neuronal Dynamics. Ch. 1; §3.1. Cambridge University Press. https://neuronaldynamics.epfl.ch/online/ 実測図・膜電位・エネルギー Bremmer, F., Kaminiarz, A., Klingenhoefer, S., & Churan, J. (2016). Decoding Target Distance and Saccade Amplitude from Population Activity in the Macaque Lateral Intraparietal Area (LIP). Frontiers in Integrative Neuroscience, 10, 30, Fig. 2.(CC BY;16°条件をトリミング) Lee et al. (2006), Fig. 6D; Luo et al. (2017), Fig. 6B. CC BY・トリミング。 Kandel, E. R., Koester, J. D., Mack, S. H., & Siegelbaum, S. A. (Eds.). (2021). Principles of Neural Science (6th ed.). McGraw Hill. Jouhanneau, J.-S., & Poulet, J. F. A. (2019). Frontiers in Synaptic Neuroscience, 11, 15, Fig. 2F. CC BY. https://doi.org/10.3389/fnsyn.2019.00015 吉田正俊 (2016). 静止膜電位はどうやってできるの? https://pooneil.sakura.ne.jp/archives/permalink-001583/ Hodgkin, A. L., & Huxley, A. F. (1952). Journal of Physiology, 117(4), 500–544. https://doi.org/10.1113/jphysiol.1952.sp004764 Milo, R., & Phillips, R. Cell Biology by the Numbers: concentrations of ions in cells. https://book.bionumbers.org/what-are-the-concentrations-of-different-ions-incells/ Howarth, C., Gleeson, P., & Attwell, D. (2012). JCBFM, 32(7), 1222–1232. https://doi.org/10.1038/jcbfm.2012.35 膜電位の代表値は細胞種・部位・発達段階・測定条件で変わる。 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 39
REFERENCES 参考文献|モデル・発火率・人工ニューロン 数理・計算モデル 歴史・脳とAI Gerstner, W., Kistler, W. M., Naud, R., & Paninski, L. (2014). Neuronal Dynamics. Chs. 1, 7, 12, 15. Cambridge University Press. https://neuronaldynamics.epfl.ch/online/ Dayan, P., & Abbott, L. F. (2001). Theoretical Neuroscience. MIT Press. Goodfellow, I., Bengio, Y., & Courville, A. (2016). Deep Learning. Ch. 6. MIT Press. https://www.deeplearningbook.org/contents/mlp.html McCulloch, W. S., & Pitts, W. (1943). Bulletin of Mathematical Biophysics, 5, 115–133. https://doi.org/10.1007/BF02478259 Rosenblatt, F. (1958). Psychological Review, 65(6), 386–408. https://doi.org/10.1037/h0042519 Hinton, G. E., Osindero, S., & Teh, Y.-W. (2006). Neural Computation, 18, 1527–1554. Krizhevsky, A., Sutskever, I., & Hinton, G. E. (2012). NeurIPS 25, 1097–1105. Richards, B. A., et al. (2019). A deep learning framework for neuroscience. Nature Neuroscience, 22, 1761–1770. https://doi.org/10.1038/s41593-019-0520-2 各スライドの講師ノートには、使用箇所に対応する節・URLを記載しています。 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 40
COURSE GUIDANCE|TODAY'S CLOSE 講義の最後に 確認テスト(必須) リアクションペーパー(任意) 今回の講義の理解を確認します 疑問に思ったことやコメントを 書いてください ELMS Moodleページの 該当回を確認してください 本講義に期待すること、 改善の要望も歓迎します https://moodle.elms.hokudai.ac.jp/ course/view.php?id=23334 どちらも講義終了1週間後の18:15まで(オンライン・オンデマンド受講も同じ) 終了した方から解散です。引き続き質問がある方はどうぞ。 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 41
END
Appendix|2D model 状態空間:V_m と n で状態を表す 計算例 LIF 状態は1変数 Vm(t) INa,p + IK 2変数モデル 状態は2変数 dVm = f(Vm, n, I) dt dn = g(Vm, n) dt n:K⁺チャネルの活性化 V_m-nullcline n n-nullcline 軌跡 0.6 0.4 0.2 0 -80 -40 0 20 膜電位 V_m [mV] 各時刻の状態 = (V_m,n) の1点 時間が進むと、状態を表す点がベクトル場に沿って動く Izhikevich, 2007, Ch. 4/吉田, 2025 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 A1
Appendix|2D model アトラクター:固定点とリミットサイクル 計算例 INa,p + IK|I = 0 INa,p + IK|I = 40 n 0.7 n 0.7 0.4 0.4 0 0 -80 -40 0 膜電位 Vm [mV] 一点へ近づく安定固定点 -80 -40 0 膜電位 Vm [mV] 閉じた軌道へ近づくリミットサイクル 第8回では、多数のニューロンの活動を高次元状態空間の軌跡として見る Izhikevich, 2007, Ch. 4/吉田, 2025 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 A2
Appendix|Compartmental model Compartmental neuron model:場所ごとの V_i(t) 形態を小区画に分ける 実ニューロンの形態 V_3 V_2 V_5 V_1 V_4 soma V_8 V_9 V_{10} V_6 V_7 隣接区画の電流で結合 dVi Ci = Ii − Iion,i + gij(Vj − Vi) ∑ dt j 入力位置と樹状突起の形の情報を残すと、細胞体へ届く応答を場所ごとに計算できる Carnevale & Hines, 2006/Lee et al., 2006, Fig. 6F 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 A3
Appendix|Compartmental model Blue Brain Project:詳細モデルを大規模シミュレーションへ 概念図 Blue Brain Project(EPFL, 2005–2024) 生物学的データを統合し、脳のデジタル再構成とシミュレーションを進めた 形態と細胞型 詳細ニューロン 回路と脳領域 樹状突起・軸索 電気生理・遺伝子発現 compartment イオンチャネル・シナプス 細胞配置・結合 ネットワーク活動 現在の「脳のデジタルツイン」の先駆的基盤 EPFL Blue Brain Project/Open Brain Institute/Markram et al., 2015 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 A4
Appendix|REFERENCES 参考文献|Appendix 状態空間・compartmental model・simulation neuroscience Izhikevich, E. M. (2007). Dynamical Systems in Neuroscience. Ch. 4. MIT Press. https://doi.org/10.7551/mitpress/2526.001.0001 吉田正俊 (2025). 神経活動の力学系的モデルの初歩. CC BY 4.0. https://pooneil.sakura.ne.jp/archives/permalink-001823/ Code: https://github.com/pooneil68/spiking_neuron Carnevale, N. T., & Hines, M. L. (2006). The NEURON Book. Cambridge University Press. https://doi.org/10.1017/CBO9780511541612 Markram, H., et al. (2015). Reconstruction and simulation of neocortical microcircuitry. Cell, 163(2), 456–492. https://doi.org/10.1016/j.cell.2015.09.029 EPFL Blue Brain / Open Brain Institute: https://www.epfl.ch/research/domains/bluebrain/ | https://www.openbraininstitute.org/about 大学院共通授業科目『「脳とAI」入門』|第1回 A5