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December 23, 24
スライド概要
2024年1月26日に開催されたアジャイル経営カンファレンス2024(スポンサーセッション)登壇資料です。
サイボウズ、北國銀行、永和システムマネジメントの経営スタイルを分析し、アジャイルな経営に見られる共通点を洗い出します。合わせて、永和システムマネジメントにおけるアジャイル経営の取り組みを紹介しています。
本業は永和システムマネジメント http://agile-studio.jp のアジャイル実践者。副業で福井県のCDO補佐官としてDX支援やってます。
アジャイルマインドセットを 全社員に ~ 永和システムマネジメント流アジャイル経営 2024年1月26日 アジャイル経営カンファレンス 永和システムマネジメント 岡島 幸男 1
福井県CDO補佐官 永和システムマネジメント 取締役CTO/ Agile Studio ディレクター 岡島 幸男 岡島 幸男 福井大学 非常勤講師(ソフトウェア工学) 2
福井本社 ● 金融、医療、組込み (自動車) ● Web/Cloud、アジャイル開発 ● 社員 220名エンジニア集団 WeWork 3
Agile Studioはアジャイル開発拠点/ブランド 4
本日お伝えしたいこと ● アジャイル開発とアジャイル経営の関係 ● 永和システムマネジメントのアジャイル経営への取り組み事例 ● アジャイル経営の本質 5
アジャイル「開発」の普及 6
アジャイル開発の受容状況 ● 日本でもアジャイル開発が多く認知されている ● 全世界で見られるアジャイル手法の普及 ● 書籍、コミュニティ、セミナー等を通じた学習の広がり ● 実践している企業も多数 7
実践を通じたアジャイルマインドセットの獲得 ● 開発経験がない人でもアジャイルなマインドセットは獲得できる Agile Studioマーケティング担当の例 8
効果的なアジャイルプラクティス ● モブやレトロスペクティブ徹底しチームベースで暗黙知を共有する ● バックログによる優先度管理やスプリントによるリズム ● 専門家による継続的なコーチングも有効 9
アジャイル「経営」への挑戦 10
アジャイル経営とは ● アジャイル経営とは「組織全体が一丸となり、迅速かつ機敏な経営を実現 する哲学」※アジャイル経営カンファレンスの定義 ● アジャイル開発が始まる前から機敏な経営をしている企業はある ● 他にも様々な定義があるが、おおむね「アジャイル開発からの派生であ る」としている 11
アジャイル経営はアジャイル開発の派生? ● だとすれば ○ 熟達したアジャイル開発者はアジャイル経営も上手に成し遂げられる か ○ ふりかえりや経営バックログがあればアジャイル経営はうまくいくか? Scrumを経営に適用すればアジャイル経営か ● 20年以上アジャイル開発に取り組む永和システムマネジメントなら、ア ジャイル経営も上手にできるのか 12
アジャイル経営の実践例を分析する ● 僭越ながら、当社の実践例をご紹介 ● 加えて、私が思うアジャイルな経営をされている会社(サイボウズ・北國銀 行)に関しても調べてみる ○ 業種・業態・規模・上場状況等が違う ● アジャイル経営実現に向けた本質的なヒントや課題を見つけたい 13
サイボウズ ● 理念は「チームワークあふれる社会を創る」 ● 社員のビジョン・モチベーションを会社のそれと重ね合わせられるような取り組み ● 100人100通りの働き方 ● 情報発信メディア。「サイボウズ式」他 ● 社会課題への取り組みも熱心「サイボウズソーシャルデザインラボ」「地域クラウド交流会」 ● 年功序列から成果主義を飛び越して「市場主義」 ● 重要なのは、雇用している人数でなく、一人一人がどのような人生を歩んでいるか ● 楽しいはメンバーにとっての報酬であると同時に、重要な経営戦略 ● 人をかき混ぜるフラスコ理論。フラスコの口が絞られているのはビジョンが明確なこと ● マネージャ廃止したが、いないと無理だったので、また作った ● 利益をあまり出さない方針で経営している(投資) 14
北國銀行 ● 理念は「豊かな明日へ信頼の架け橋を~ふれあいの輪を拡げ地域と共に豊かな未来を築きます~」 ● 目指す姿は、「次世代版 地域総合会社」。データ連携プラットフォームを中心に異業種・個人・法人を巻き込ん だ地域エコシステム構築を目指す ○ 「やればやるほど決済手数料は落ちていくのですが、プラットフォームに参加する地域の産業・お客さま に利便性を提供し、みんなでデータを利活用していけば、生産性の高い地域社会になるのではないか」 By 杖村頭取 ● 出島やCoEがない(100%兼業でDXプロジェクトに取り組む) ● 一度アウトソースしたがその後「これは違うね」と内製に戻していった ● 子会社デジタルバリューによる高度IT人材の取り込みと内製化促進 ● アジャイル開発手法への取り組み ● 書籍にて自分たちの取り組みを発信(地域金融機関のデジタルトランスフォーメーション) ● 非減点主義 15
永和システムマネジメントの場合 16
私たちのビジョン ● 20年以上アジャイルに取り組んできた自負と永遠にアジャイルであることへのコミット ● 変化に対応していくために、全社員にアジャイルなマインドセットを根付かせたい 17
Permanent Agility 実現に向けた 3つの施策 外とつながる 力を育てる 変革を志向す る力を育てる 外部発信 プラット フォーム 18
● 社会課題解決のための専 門部署 ● 専門知識と実証フィールドを 社会に求め、そこにICT技術 を提供する ● メンバーのやりたいアイディ アを外(社会)につなげる ● さきのことメンバーのアイディアの一部 売上計画は立てない 19
さきのことの意義と効果 ● 今まで接点のない社会(自治体 やNPO等)や人とつながり ● 今まで経験のないタスク(企画・ 営業・システム開発の発注)に よる成長 ● アプリによる社会課題解決アイディアの一例 社内外に「変化の風」を送ること で注目を浴び、全社の変革ムー ドも醸成 20
● アジャイルマインドセットを 根付かせるための組織変 革活動 ● クラスタと呼ばれるチームと 特命係と呼ばれる役割を中 心とした組織運営 ● 最も人数の多い事業部から 開始し全社展開狙う 21
ワクワクソシキの変革アプローチ 1. ビジョンの持つ力を信じ強める ○ 経営ビジョンをベースに現場の危機感を加え本音で議論 ○ このような場から生まれたビジョンは引力が強まる 2. 安定と変化をバランスさせる ○ 事業を安定させる役割のクラスタと、変化させる役割のクラスタの拮抗共存 ○ 変化に向けた課題はメンバー公募でプロジェクト的に解決 3. 経営と現場を「人と仕組み」でつなぐ ○ 経営の想いを現場の言葉で現場に伝える「特命係」という役割 ○ 8つの特命係:組織開発・人材育成・エンゲージメント・技術獲得・DEI・組織学習・カ スタマーサクセス・タレントマネジメント 22
支援先 全社(各事業部・管理部) ● Agile Studioのノウハウを 全社にサービスとして提供 提供 サービス マーケ 支援 広報 支援 人材育成 支援 採用 支援 するプラットフォーム的部 署 ノウハウ ● Agile Studioの運営を行いな がら他部門を支援 ● 運営 支援先部門のメンバーに伴 走する活動 ● マーケティング・広報・人材 育成・採用 23
Agile Studio の持つ力を全社で使ってもらう 開発拠点( 2018年) at ブランド( 2020年) representing プラットフォーム( 2023年) supporting 24
経営朝会で方向性を見守り軌道修正する ● 毎週火曜日朝1時間 ● 役員が経営バックログを ベースにそれぞれの取り組 みについて話し合う ● 形式にとらわれないライト ウェイトな進め方 25
3社の共通点から見いだされる原動力 キネティクス(原動力) ● ● ● ● 強い顧客・社会志向 カルチャー変革に対するトップのこだ わり・執着 失敗から学ぶ力がある 長期的視野 キネマティクス(ふるまい・数値結果) 引き起こす 原因 ● ● ● ● ● 積極的な情報発信 長期間のトップの関与・コミット アジャイル開発への取り組み 人材への積極投資 新たな評価制度 ふるまいには似ている点もそうでない点も多々ある。根本にある原動力に注目 26
ビジョンを目指し回転しながら飛ぶ竹とんぼ 突き抜けた ビジョン ● 当社含め様々な企業を分析し見出したアジャイル経営 の原動力を表現したモデル 外(社会) ○ 突き抜けたビジョンの引力(を信じる) ○ 外(社会・顧客・マーケット)からの引力(に敏感に なる) ○ 内(会社) 内(会社・組織・社員)に流れる変革を志向する力 (を育てる) ● これらの力を同調させ、組織全体のパフォーマンスの スパイラルアップを目指す経営 27
竹とんぼ型スパイラルアップモデル 突き抜けた ビジョン ● 経営の役割は、竹とんぼの柄の部分を回 転させる手のように、強いきっかけを提供 外(社会) 内(会社) すること ● 後は方向性を見守り、必要に応じて軌道 修正を行うのみ ○ (トップダウンな)軌道修正をやりすぎ ると副作用もあるので注意 28
アジャイル経営の本質 29
アジャイル経営は誰のためのものか アジャイル経営の主役は経営者だけでなく全ての社員。いかに 社員それぞれにとってのアジャイル経営(自分事)にしていくか ⇒ 「価値創造の民主化」との類似・シンパシー 岩尾 俊兵「日本企業はなぜ強みを捨てるのか?」より引用・一部加工 30
アジャイル経営の成功に向けて 突き抜けた ビジョン 外(社会) 内(会社) ①引力の強い ビジョンを作る ②今までとは違う形での外 (社会・顧客)とのつながり をデザインする ③マインドセットが変わる まで内(会社・組織)の変 革に現場を巻き込む ④力強くきっかけを与え、 後は見守りと軌道修正に 徹す 外向き内向きの力を 発生・同調させる 莫大なエネルギーが 必要 31
アジャイルマインドというエネルギー ● 竹とんぼをスムーズにバランスよく回転させる力の源 ● アジャイルマインドが変革活動を引き起こし、その結果、アジャイルマイン ドセットを持つ仲間が増える ○ アジャイルマインドを持つ人が増えることで、「竹とんぼ」はさらに勢い よくきれいに飛ぶ ● エネルギーは外からも補給できる ○ 変革活動は内向きだが、外部との接点が必須 ○ 外部(コミュニティなど)でスキルやマインドセットを学ぶ 32
アジャイル開発プラクティスは経営に役立つか ● 役立つ、というより、「効いてくる」。 アジャイル開発経験者は自然とその プラクティスを経営にも流用・応用する ● どのような立場・役割であれ、アジャイルの手法を学び取り組むことは、エ ネルギーであるマインドセット習得に確実に役立つ 33
どうやって突き抜けたビジョンを作るのか ● 突き抜けているか、引きつけられるか、は感覚で判断できる ○ ただし、経営陣だけでなく社員の感覚が必須。率直な対話重要 ● どのような方法(経営陣の合宿 or 社員からの公募…)で作り上げるか は、どうでもよい ○ 引力の強さが判断できれば、落ち着くところに落ち着くので、色々試 せばよい 34
システム力学の複雑性に対処する ● 組織というシステムに働く力学は 複雑 ○ 「今のままを維持したい」という暗 黙のビジョンの力は強い ○ 部門間の利害関係 ○ 個人の想い。認められたい力を 受け止める ● システム思考のアプローチやテクニッ クは有効 Agile Studioを取り巻くシステムを分析した 因果ループ図の例 35
どのような業種・業態でもアジャイルできる ● アジャイルな経営のキネティクス(原動力)を理解し、エネルギーであるア ジャイルマインドセットを信じ行動する ● 会社の特性(規制・慣習やビジネスモデルなど)の影響も受けながら、(一 見アジャイルっぽくなくても)その会社なりのアジャイルな動きに収斂して 成果に繋がる ● どんな会社でも外(社会・顧客)とのつながりはあり、内には変革志向を 持つ社員はいる。あきらめない 当社事例を参考にしていただく場合、やっていることだけでなく、 その原動力についても考察いただけると嬉しいです 36
アジャイル経営に取り組もう ● キネマティクス(ふるまい・観測数値)だけでなくキネティクス(原動力)に注 目。人や組織の持つ何がその変動を引き起こすのか ○ 他社事例を参考にするのは有意義だが鵜呑みにしない ○ 数値的・客観的に判断できる指標(KPG・KPI)は重要だが、それだけ で判断しない ● アジャイルさは経営陣だけでなく全社員に求められる。時間はかかるが、 突き抜けたビジョンを作り、社会とつながる力と、内を変革する力を促進す る 37