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May 21, 25
スライド概要
投資戦略を真似されると利益を奪われるのか?-人工市場を用いた分析-
水田孝信
スパークス・アセット・マネジメント株式会社
運用調査本部 ファンドマネージャー 兼 上席研究員
八木勲
工学院大学
本発表資料はスパークス・アセット・マネジメント株式会社の公式見解を表すものではありません.すべては個人的見解であります.
同じ投資戦略をとる投資家が増えると利益の奪い合いとなり1人あたりの利益が減ると言われることがある.一方で,テクニカル分析を用いる投資家は同じパラメータを使いたがることがあり,他人と同じ移動平均を使った方が良い言う投資家も多い.これらは,同じ投資戦略を取る投資家が増えた方が利益が増えるのか減るのかでお互いに矛盾する主張であるが,どちらが正しいのかは検証されたことがない.そこで本研究では先行研究の人工市場モデルに,全く同じパラメータをもつファンダメンタル戦略またはテクニカル戦略の各追加エージェントを追加していったとき,利益が増えるかどうかを調べた.その結果,追加エージェントがファンダメンタル戦略の場合,市場価格の変動が小さくなり市場が安定化する一方,利益は低下した.追加エージェントがテクニカル戦略の場合,市場価格の変動は非常に大きくなり市場が不安定化する一方,利益は増加することが分かった.
2025年5月27日-30日 第39回 人工知能学会全国大会 https://www.ai-gakkai.or.jp/jsai2025/ https://www.ai-gakkai.or.jp/jsai2025/ 投資戦略を真似されると利益を奪われるのか? -人工市場を用いた分析水田 孝信 スパークス・アセット・マネジメント株式会社 mizutata[at]gmail.com https://mizutatakanobu.com mizutata[at]gmail.com https://mizutatakanobu.com 八木 勲 工学院大学 本資料は,スパークス・アセット・マネジメント株式会社の公式見解を表すものではありません.すべては個人的見解であります. こちらのスライドは以下からダウンロードできます https://mizutatakanobu.com/2025JSAI.pdf https://mizutatakanobu.com/2025JSAI.pdf 1
(1) はじめに (2) モデル (3) シミュレーション結果 (4) まとめ こちらのスライドは以下からダウンロードできます https://mizutatakanobu.com/2025JSAI.pdf https://mizutatakanobu.com/2025JSAI.pdf 2
(1) はじめに (2) モデル (3) シミュレーション結果 (4) まとめ こちらのスライドは以下からダウンロードできます https://mizutatakanobu.com/2025JSAI.pdf https://mizutatakanobu.com/2025JSAI.pdf 3
同じ投資戦略が増えると利益が減る? ⇔ 他人と同じパラメータを使った方が良い? 同じ投資戦略をとる投資家が増えると1人あたりの利益が減ると良く言われるが、、 本当にそうだろうか? 一方で、 テクニカル分析を用いる投資家は同じパラメータを使いたがる 例) 移動平均:20日、50日、200日など むしろ、他人と同じ移動平均を使った方が良い言う投資家も多い お互いに矛盾するこれらの主張 どちらが正しいのか? https://info.monex.co.jp/technical-analysis/indicators/001.html https://info.monex.co.jp/technical-analysis/indicators/001.html 4
実証分析は難しい 実証研究:特定の投資家が増えた効果と、そのほかの効果の分離は非常に難しい 実証研究の難しさ 現実の金融市場では ・ さまざまな要因で市場は変化しており純粋な投資家増加の効果だけを取り出すのが困難 ・ 現在以上に同一戦略の投資家が増えたときの影響を知ることができない 人工市場 5
人工市場とは?・・・金融市場のマルチエージェントモデルです 計算機上に人工的に作られた架空の市場 エージェント(架空の投資家) + 価格決定メカニズム(架空の取引所) 注文 エージェント (投資家) 価格決定 メカニズム (取引所) 取引価格の 決定 実データが全く必要ない完全なコンピュータシミュレーション 同一戦略の投資家の純粋な増加の影響を議論できる まだ到達したことがないほどに増加した場合を議論できる 6
集大成的な英文書籍を書きました! 私と八木さん(工学院大学)の2人で、 人工市場を用いて金融の規制やルールの検証を 行った研究のまとめの英文書籍を書きました。 私共のこれまでの研究の集大成的な書籍です。 Springer Natureより、出版 立ち読みや日本語かつ無料の関連文献だけでもぜひ! (立ち読み) https://www.amazon.co.jp/dp/B0DWSRM4QV/?asin=B0DWSRM4QV&revisionId=f90ac54d&format=3&depth=1 (日本語で近いことを書いた文献リスト) https://mizutatakanobu.com/jbook1.htm https://www.amazon.co.jp/dp/B0DWSRM4QV/?asin=B0DWSRM4QVrevisionId=f90ac54dformat=3depth=1 https://mizutatakanobu.com/jbook1.htm Mizuta, Financial Springer https://doi.org/10.1007/978-981-96-1713-5 “ T. Nature Market and Yagi, Design I. (2025), by an Agent-Based Model”, Mizuta, T. and Yagi, I. (2025), “Financial Market Design by an Agent-Based Model”, Springer Nature https://doi.org/10.1007/978-981-96-1713-5 7
これまでの研究との違い [水田 2021], [Mizuta 2021] 流行している投資戦略を餌食にしようとする逆の戦略は 本当に餌食にできているのか? ⇒ 餌食どころか利益が増す [水田 2022], [Mizuta 2022] バックテストで得た最適なパラメータで実際に取引すると 価格時系列が変わり・最適でなくなる ⇒ 本質的に不安定 最適なパラメータが変わったことにすぐ気づく分けではないのでは? いずれも 同じ戦略が増えていくことは調べていない テクニカル戦略しか調べていない そこで本研究は、 [水田 2014], [Mizuta 2025]のモデルに、全く同じパラメータをもつファンダメンタル またはテクニカルの各追加エージェントを追加していったとき、利益が増えるかどうかを調べる 8
ちなみにこのような研究も [水田 2017], [Mizuta 2019] ファンダメンタル戦略の投資家の場合、 忍耐強い投資家が増え忍耐強くない投資家が減ると、 忍耐強い投資家の利益は増える -> 忍耐強い投資家は同じ戦略の投資家が増えた方が利益が増す 本研究では、 忍耐強さをモデルに入れてないのでこの研究との比較はできない(今後の課題) (一見矛盾するように見えるが、矛盾はしていない) 9
(1) はじめに (2) モデル (3) シミュレーション結果 (4) まとめ こちらのスライドは以下からダウンロードできます https://mizutatakanobu.com/2025JSAI.pdf https://mizutatakanobu.com/2025JSAI.pdf 10
取引所 continuous double auction(ザラバ) ザラバ 売り 注文数量 10 30 50 130 最良買い価格 ここに売り注文を入れると 即座に売買成立 注文 価格 103 102 101 100 99 98 97 96 買い 注文数量 最良売り価格 ここに買い注文を入れると 150 即座に売買成立 70 対当する注文があると即座に売買成立 11
ノーマルエージェント 1000体 [Chiarella2002]を発展 ↑ ザラバかつstylized factを再現する中で 可能な限りシンプルなエージェントモデル 統計的性質を再現するために 最小限必要な項 テクニカル(順張り) j: エージェント番号(順番に注文) t: 時刻 予想リターン エージェントの パラメータ 𝑤𝑖,𝑗 𝜏𝑗 𝑡−1 𝑃 1 𝑃 𝑓 𝑡 𝑟𝑒,𝑗 = 𝑤1,𝑗 log 𝑡−1 + 𝑤2,𝑗 log 𝑡−𝜏𝑗 + 𝑤3,𝑗 𝜀𝑗𝑡 σ𝑖 𝑤𝑖,𝑗 𝑃 𝑃 一様乱数で決定 途中で変わらない 𝑤𝑖,𝑗 i=1,3: 0~1 i=2: 0~10 𝜏𝑗 0~1000 予想価格 𝑃𝑡 𝑒,𝑗 = 𝑃𝑡 exp( 𝑟 𝑡 𝑒,𝑗 ) ファンダメンタル ノイズ 𝑃𝑓 ファンダメンタル価格 10000 =定数 𝑃𝑡 現在の取引価格 𝜀 𝑡𝑗 取引価格帯を定めるために 便宜上加えた項 正規乱数 平均0 σ=3% エージェントの多様性確保と シミュレーションの安定性のため t=10000経過した注文はキャンセルする 12
ノーマルエージェントのファンダメンタル戦略とテクニカル戦略 ファンダメンタル戦略 ファンダメンタル価格 > 市場価格 ⇒ 上がると予想 ファンダメンタル価格 < 市場価格 ⇒ 下がると予想 テクニカル戦略 過去リターン > 0 ⇒ 上がると予想 過去リターン < 0 ⇒ 下がると予想 テクニカル ファンダメンタル 価格 市場 価格 ファンダメンタル 13
追加エージェント 1体 追加エージェント1 割り込み場所は初めにランダムで決めて固定 NA(1000体) 繰り返し 1株 2体 1 NA(1000体) 2 他は固定で1体追加 繰り返し 1株 3体 1 3 2 ファンダメンタル追加エージェント Pt<Pf 1株保有 Pt>Pf 1株空売 テクニカル追加エージェント Pt>Pt-100,000 1株保有 Pt<Pt-100,000 1株空売 100体まで追加 Ptは正確には取引可能な価格 (最良気配) 14
“固定された”ノーマルエージェント 1000体 価格時系列が変化するため これらの部分は変化する j: エージェント番号(順番に注文) t: 時刻(ティック時刻) 予想リターン 𝑡−1 𝑃 1 𝑃 𝑓 𝑡 𝑟𝑒,𝑗 = 𝑤1,𝑗 log 𝑡−1 + 𝑤2,𝑗 log 𝑡−𝜏𝑗 + 𝑤3,𝑗 𝜀𝑗𝑡 σ𝑖 𝑤𝑖,𝑗 𝑃 𝑃 固定 ノーマルエージェントのパラメータは(𝜀𝑗𝑡)も含めて固定 しかし価格時系列が変われば売買行動は変わる 15
(1) はじめに (2) モデル (3) シミュレーション結果 (4) まとめ こちらのスライドは以下からダウンロードできます https://mizutatakanobu.com/2025JSAI.pdf https://mizutatakanobu.com/2025JSAI.pdf 16
価格時系列 追加エージェントがファンダメンタルの場合、市場が安定化する -> 安定した金融市場 テクニカルの場合、価格変動が大きくなる -> 不安定な金融市場 17
ボラティリティと尖度 100期で測定したリターンを使用 ボラティリティ:リターンの標準偏差 尖度:リターンの尖度 高いほど正規分布で予想 できない急落が多く存在する ファンダメンタル:ボラティリティはやや上昇するも尖度は低下 -> 安定した金融市場 テクニカル:ボラティリティは大きく上昇し尖度も上昇 -> 不安定な金融市場 18
追加エージェントの利益 最終損益額:追加エージェントの 最終損益額の平均 保有している株式はファンダメンタル 価格で評価 取引回数:追加エージェントの取 引回数の平均 テクニカルはエージェントが追加されるほど利益が増える -> 自ら価格変動を大きくして利益の機会と利益の幅を増やしている 取引回数(チャンス)はある程度以上の数になると横ばい 19
取引1回あたり利益 縦軸が違うことに注意!! 利益の絶対額が大きく違う:ボラティリティが小さいという設定のせいかも(今後の課題) ファンダメンタルは数が多くなるにつれて利益低下 -> 利益機会の取り合いと市場安定化による利益の幅の縮小 20
メカニズム:ファンダメンタル 市場価格が下落 ファンダメンタル価格 から乖離 市場の安定化 乖離が 小さくなる 買い (価格上昇) 乖離幅だけ 利益を得る プロセスの弱体化 (ネガティブフィードバック) 21
メカニズム:テクニカル 市場価格が 上昇 市場の不安定化 乖離が 大きくなる 買い (価格上昇) 乖離幅だけ 利益を得る プロセスの自己強化 (ポジティブフィードバック) 22
(1) はじめに (2) モデル (3) シミュレーション結果 (4) まとめ こちらのスライドは以下からダウンロードできます https://mizutatakanobu.com/2025JSAI.pdf https://mizutatakanobu.com/2025JSAI.pdf 23
まとめ ✓ [水田 2014], [Mizuta 2025]のモデルに、全く同じパラメータをもつファンダメンタルまたはテ クニカルの各追加エージェントを追加していったとき、利益が増えるかどうかを調べた. ✓ その結果,追加エージェントがファンダメンタルの場合、市場が安定化する一方、テクニカルの 場合、価格変動が大きくなり不安定になることが分かった. ✓ ファンダメンタルは多くなるにつれて,利益機会の取り合いと市場安定化による利益の幅の縮 小により,利益は低下した. ✓ テクニカルは多くなるにつれて,自ら価格変動を大きくして利益の機会と利益の幅を増やしこと により,利益が増加した. ✓ 同じ投資戦略をとる投資家が増えると1人あたりの利益が減ると良く言われるが、投資戦略の 種類次第であることが分かった. ✓ テクニカル分析を用いる投資家の場合,増加により1人あたり利益は増加することが分かった. 他人と同じパラメータを使いたがるのは理にかなっている.しかし,自ら市場を不安定化させる ことによる利益であり,市場の安定化という社会全体の利益には反している. こちらのスライドは以下からダウンロードできます https://mizutatakanobu.com/2025JSAI.pdf https://mizutatakanobu.com/2025JSAI.pdf 24
今後の課題 ✓ ファンダメンタルとテクニカルの利益の絶対額が大きく異なったが,価格変動がファンダメンタル価 格に付近に限定されているというパラメータ設定が原因の可能性がある. ✓ ファンダメンタルとテクニカルは完全に別々に追加したが,同時に入ってくる場合などは調べてい ない. ✓ 先行研究では忍耐強いファンダメンタル投資家(損切りをしない投資家)が増えると,彼らの利 益は上昇するという結果もある.本研究では損切りを入れておらず今後の課題. こちらのスライドは以下からダウンロードできます https://mizutatakanobu.com/2025JSAI.pdf https://mizutatakanobu.com/2025JSAI.pdf 25
参考文献(1/2) [ “士 2014], ,博 http://hdl.handle.net/2261/59875 水 人 田論 工 孝文 市 信, 場 シ 東 ミ ュ 京 レ大 ーシ 学 ョ ンを用いた金融市場の規制・ 制度の分析” ⚫ [水田 2014], 水田孝信, “人工市場シミュレーションを用いた金融市場の規制・制度の分析”, 博士論文,東京大学 http://hdl.handle.net/2261/59875 [Mizuta 2025] Mizuta, T. and Yagi, I., “Financial Market Design by an Agent-Based Model”, Evolutionary Economics and Social Complexity Science, Springer Nature https://doi.org/10.1007/978-981-96-1713-5 ⚫ [Mizuta 2025] Mizuta, T. and Yagi, I., “Financial Market Design by an Agent-Based Model”, Evolutionary Economics and Social Complexity Science, Springer Nature https://doi.org/10.1007/978-981-96-1713-5 [ “-工 ,2021] ?新 -”, https://doi.org/10.11517/pjsai.JSAI2021.0_3I2GS5e04 水 人 田 しい 孝 市 知 株 信 場 能 式 に 学 投 よ 会 る 資 全 シ 戦 国 ミ 略 ュ 大 レ は 会 ー 既 シ 存 ョ ン の 分 戦析 略からリ ターンを奪う のか ⚫ [水田 2021] 水田孝信, “新しい株式投資戦略は既存の戦略からリターンを奪うのか? -人工市場によるシミュレーション分析-”, 人工知能学会全国大会 https://doi.org/10.11517/pjsai.JSAI2021.0_3I2GS5e04 [Mizuta 2021] Mizuta, T., “Do new investment strategies take existing strategies' returns -An investigation into agent-based models-”, IEEE The 8th International Conference on Behavioral, Economic, and Socio-Cultural Computing (BESC) https://doi.org/10.1109/BESC53957.2021.9635097 ⚫ [Mizuta 2021] Mizuta, T., “Do new investment strategies take existing strategies' returns -An investigation into agent-based models-”, IEEE The 8th International Conference on Behavioral, Economic, and Socio-Cultural Computing (BESC) https://doi.org/10.1109/BESC53957.2021.9635097 s://doi.org/10.11517/pjsai.JSAI2022.0_2P6GS1002 “ 会資戦略の最適化の 田2] 木 工 孝能 勲 市 知 信 場 ,高 学 を 島 用 会幸 い 全 た 成 国 分 ,投 大 析 不安定性による金融市場の本質的不安定性 ⚫ [水田 2022] 水田孝信, 八木勲,高島幸成,“投資戦略の最適化の不安定性による金融市場の本質的不安定性 -人工 市場を用いた分析-”, 人工知能学会全国大会 https://doi.org/10.11517/pjsai.JSAI2022.0_2P6GS1002 ta 2022] Mizuta, T., Yagi, I., Takashima, K., “Instability of financial markets by optimizing investment strategies investigated by an agent-based model”, IEEE Computational Intelligence for Financial Engineering and Economics (CIFEr) https://doi.org/10.1109/CIFEr52523.2022.9776207 ⚫ [Mizuta 2022] Mizuta, T., Yagi, I., Takashima, K., “Instability of financial markets by optimizing investment strategies investigated by an agent-based model”, IEEE Computational Intelligence for Financial Engineering and Economics (CIFEr) https://doi.org/10.1109/CIFEr52523.2022.9776207 こちらのスライドは以下からダウンロードできます https://mizutatakanobu.com/2025JSAI.pdf https://mizutatakanobu.com/2025JSAI.pdf 26
参考文献(2/2) [ “ク ,2017], -(Patient) -”, https://doi.org/10.11517/jsaisigtwo.2017.FIN-019_01 水 忍 ア 人 田 耐 工 テ 孝 強 市 知 ィ ブ 信 場 能 い 投 学 , に 資 堀 よ 会金 る は 江 シ 市 貞 ミ 融 場 ュ 之 情 レ を ー 報 効 シ 学 率 ョ ン 研 的分 究 にす 析 会るのか? ⚫ [水田 2017], 水田孝信,堀江貞之, “忍耐強い(Patient)アクティブ投資は市場を効率的にするのか?-人工市場によるシミュ レーション分析-”, 人工知能学会 金融情報学研究会 https://doi.org/10.11517/jsaisigtwo.2017.FIN-019_01 [Mizuta 2019] Mizuta, T. and Horie, S., “Mechanism by which active funds make market efficient investigated with agent-based model”, Evolutionary and Institutional Economics Review, Volume 16, Issue 1, pp.43-63 https://doi.org/10.1007/s40844-018-0102-0 ⚫ [Mizuta 2019] Mizuta, T. and Horie, S., “Mechanism by which active funds make market efficient investigated with agent-based model”, Evolutionary and Institutional Economics Review, Volume 16, Issue 1, pp.43-63 https://doi.org/10.1007/s40844-018-0102-0 こちらのスライドは以下からダウンロードできます https://mizutatakanobu.com/2025JSAI.pdf https://mizutatakanobu.com/2025JSAI.pdf 27
差し迫った課題を議論しなければならない実務家に浸透 規制当局(金融庁)、中央銀行(日本銀行)、証券取引所(東証,JPX) JPXワーキングペーパー (JPX) 44 12 (2024 )呼 VaR https://www.jpx.co.jp/corporate/research-study/working-paper/index.html 東影 が 本 年 自 の 発 が 京響 中 末 値 己 行 人 証高 現 、 資 実 工 な 券ど 在 本 に 速 市 取 規 取 場 引引 制 を 所 や 用 の の 影 い 親 た 響 会 研 、 社 取 究 、 引 日所 本 の 取 高 引 速 所 化 グ 、 ル バ ー ッ プ チオークショ ン、 東京証券取引所の親会社、日本取引所グループ(JPX)が発行 44本中、実に12本が人工市場を用いた研究(2024年末現在) 呼値、高速取引の影響、取引所の高速化、バッチオークション、 自己資本規制やVaRの影響など https://www.jpx.co.jp/corporate/research-study/working-paper/index.html ,そ )(次 の 々 他 ペ に ー も ジ 、 参 空 照 売り規制、値幅制限、 ダークプール、 信用分散規制、水平株式保有、 などが調べられている その他にも、空売り規制、値幅制限、ダークプール、信用分散規制、水平株式保有、などが調べられている (次,次々ページ参照) 予測や細かい再現を目的としていない これまでにない制度によってどういうことが”起こりえるか”を調べる “あり得る”メカニズムを見つけておく、”あり得る”副作用を見つけておく 28
その他に調べられたこと(1/2) 空売り規制と値幅制限 空売りが完全に禁止された場合だけでなく、日本では2013年に廃止に なった空売りの際の価格規制も、市場を非効率なものとし、価格を引き上 げ、場合によってはバブルを誘発することが分かりました。 ダークプール ダークプールは市場を安定化させ、マーケットインパクトを低減させる効果を もつことが示唆示されました。しかし、ダークプールでの取引が多くなりすぎる と、つまり普及しすぎると市場の効率性が著しく低下することを示しました。 暴落後の反発やボラティリティクラスタリングのメカニズムの解明 ファンダメンタルが急激に悪化してその企業の株価が暴落した直後に、反 発がよくあることが知られています。これはオーバリアクションのためだと考えら れていることもありますが、人工市場で分析すると、投資家の予想株価にば らつきがあり、需給に偏りがあれば、この反発は起こることが分かりました。 高速取引の影響 高速取引の多くはマーケットメイク戦略と言われていますが、このマーケット メイク戦略が存在する取引所と存在しない取引所を人工市場内に用意し て取引量の変化を調べました。その結果、この戦略が存在する取引所の取 引が増えました。 取引所の高速化 どれくらいレイテンシーが短ければ良いのかを人工市場を用いて調べました。 その結果、平均的な注文の到着間隔よりもレイテンシーが短ければ、市場 効率性やボラティリティなどに影響を与えないことが分かりました。 バッチオークション ザラバとバッチオークションのどちらが売買量が多くなるか調べたところ、ザラバ の方が売買量が多くなりました。 忍耐強いアクティブ運用の市場効率化への貢献 忍耐強いアクティブ運用はまれに起こる、市場価格が企業価値に即した 適正な価格から大きく乖離して市場が不安定になり、市場がさらに非効率 になりそうなときのみに多く売買を行い、市場を効率化することに寄与してい ることが示されました。 水田孝信 「金融市場の制度設計に使われ始めた人工市場」, 2021, スパークス・アセット・マネジメント https://www.sparx.co.jp/report/detail/305.html 水平株式保有 パッシブ運用の増加が企業間競争と市場価格へ与える影響を分析しまし た。その結果、パッシブ運用の割合がさほど大きくなくても、競争を阻害する 可能性を示しました。 見せ玉 板上に平均的に存在する最良気配付近の指値注文数より多くの株数の 見せ玉を見せれば、不公正な利益が得られるだけでなく、価格形成に悪影 響を与え、株価変動が大きくなり、市場が非効率となることが分かりました。 新しい投資戦略が既存の投資戦略の利益を奪い取るか? CTA・短期順張りともに、お互いがいたほうが戦略を実行するチャンスが多 くなり、むしろ利益を獲得していることが分かりました。 分散投資規制 何らかの理由でファンダメンタル価格が急上昇した銘柄を投資信託が上限 近くまで持っていた場合に、時価の上昇で上限を越さないように売る必要が 生じ、ファンダメンタル価格への収束を妨げる場合があることを示しました。 レバレッジドETF リバランス取引の市場価格へ与える影響を調べました。その結果、レバレッ ジドETFの規模が大きいほど影響は大きく、通常時のボラティリティよりも大 きいマーケットインパクトを与えるまでになると、市場価格への影響が特に顕 著になることが分かりました。 流動性への影響 取引量と板の厚さは関係のない指標であり、流動性の量を示す取引量、 質を示す板の厚さといった、流動性にもいくつか種類があることが示されまし た。 取引手数料のメイカー・テイカー制(リベート制) メイカーとなるマーケットメイク戦略が注文する指値の売り買い価格差が、 平均的な最良売り・買い気配の差より小さくできるくらいリベートを提供すれ ば、テイカーの執行コストは低下する一方、それ以下のリベートの場合はか えって執行コストは上昇してしまうことが分かりました。 29
その他に調べられたこと(2/2) 調査対象 サーキットブレイカー 注文付け合わせの 即時執行 ネイキッドショートセル 呼値 空売り規制 値幅制限 高速取引 取引所の高速化 ダークプール バッチオークション 取引時間延長 レバレッジドETF アクティブ運用 水平株式保有 分散投資規制 流動性の種類 取引手数料の リベート制 値幅制限と サーキットブレイカー 文献 水田孝信 「人工市場:金融市場のコンピュータ・シミュレーション」, 2024, SBI金融経済研究所 https://sbiferi.co.jp/review/review_vol05_202403.html 人工市場研究が示唆したこと サーキットブレイカーを終了させるのは、投資家の予想価格の下落速度が 清水・村永(1999) 十分に小さくなってからでなければならない 副島(2001) 価格変動を大きくする恐れ 大井(2012) 水田他(2013) オーバーシュートを防ぐことができる一方、平時は割高に 短期のボラティリティより小さい呼値でなければボラティリティを引き上げる 空売りが完全に禁止された場合だけでなく、価格規制だけでも、 水田(2014) 市場を非効率なものとし、価格を引き上げ、場合によってはバブルを誘発する 水田(2014) 下落の時間スケールはさまざまなので、複数の時間スケールのものを用意すべき 草田他(2015) 高速取引の多くはマーケットメイク戦略であり、この戦略が存在する取引所のほうが取引が多い 水田他(2015) 取引所は平均的な注文の到着間隔よりも低遅延(高速)であるべき 市場を安定化させ、マーケットインパクトを低減させる効果をもつ 水田他(2016) しかし、普及しすぎると市場の価格発見機能が著しく低下 水田・和泉(2016) ザラバよりも取引は少なくなる 三輪・植田(2016) 延長された時間帯の取引参加者が少ないと市場効率性が低下 八木・水田(2017) リバランス取引がボラティリティよりも大きいマーケットインパクトを与えると市場を荒らす 水田・堀江(2017) 忍耐強いアクティブ運用は市場がさらに非効率になりそうなときのみ多く売買し市場を効率化 水田(2018) 競合企業をいずれも持つファンドが増えると企業間競争を阻害する 丸山他(2019) 時価の上昇で上限を越えないように売る必要が生じファンダメンタル価格への収束を妨げる場合がある 取引量と板の厚さは関係のない指標であり、流動性の量を示す取引量、質を示す板の厚さなど、 益田他(2019) 流動性にもいくつか種類がある 星野他(2021) 水田・八木(2023) 中途半端なリベートはかえって執行コストを上昇させる 値幅制限は制限価格付近に指値注文がたまり、反発を防ぐことがある ただし、サーキットブレイカーには取引を焦らせる副作用が報告されているがこれはまだ未調査 30
著作物や資料:もしご興味あればご覧下さい 本業の調査:AIや高速取引や資産運用業界についてのレポート 学術研究:人工市場による市場制度の設計 https://mizutatakanobu.com/jindex.htm#spe https://mizutatakanobu.com/jindex.htm#spe 一般向け記事など SBI https://sbiferi.co.jp/review/review_vol05_202403.html 金工 人 融市 経場 済: 研 金 究 融 所 市 へ 場 のの 寄コ 稿 ンピュ ータ ・ シミ ュ レーショ ン SBI金融経済研究所への寄稿 人工市場:金融市場のコンピュータ・シミュレーション (主なレポート) 2025/1/21 世界的な株式の決済期間短縮化:T+1への世界統一と即時決済の導入 2024/12/3 インデックス運用の難しさ -インデックスへの過度な追従による弊害2024/7/11 コメ市場と電力市場の問題点-価格安定化で失ったこと 2023/10/23 株式投資で気候変動を考慮することに賛否があるのはなぜか?[概要編] 2023/8/3 投資の世界における生成AI 2023/6/6 関東大震災から100年~今同じことが起きたら株式取引は継続されるか? 2022/12/15 新技術の悪い影響とそれを乗り越えてきた金融市場 2022/10/7 学術研究力に直結する大学の資産運用 2022/6/28 ROEと資本コスト:その企業の価値はいくらか 2022/4/7 世界的な株式の決済期間短縮化:T+1への統一が進むか? 2021/11/15 金融市場の制度設計に使われ始めた人工市場 2021/9/8 金融市場で使われている人工知能 2021/8/16 続・市場は効率的なのか?実験市場や人工市場での検討 2021/4/12 "フラッシュ・クラッシュ・トレーダー"と呼ばれた男はフラッシュ・クラッシュとは あまり関係なかった:高頻度取引との知られざる戦い 2020/12/22 市場は効率的なのか?検証できない仮説の検証に費やした50年 2020/9/15 なぜそれらは不公正取引として禁止されたのか? 2020/8/4 人工知能が不公正取引を行ったら誰の責任か? 2020/7/3 お金とは何か?-古代の石貨から暗号資産まで2020/1/24 国際資本の舵を取ってしまったグローバルインデックス算出会社 2019/9/18 アセット・オーナーが行っている投資:"悪環境期に耐える"と"ユニバーサル・オーナー" 2019/7/8 社会の役にたっている"空売り“ 2019/4/3 高頻度取引(3回シリーズ第1回):高頻度取引とは何か? 2018/5/21 なぜ株式市場は存在するのか? 2018/3/2 パッシブファンドの新たなる論点「水平株式保有」 2018/2/16 アクティブファンドが超えてはいけない規模 2016/12/2 良いアクティブ運用とは? -対ベンチマーク運用の衰退とハイリーアクティブ運用の再起- https://sbiferi.co.jp/review/review_vol05_202403.html https://sbiferi.co.jp/assets/pdf/review/review_vol05_05_202403.pdf .pdf .pdf https://sbiferi.co.jp/assets/pdf/review/review_vol05_05_202403.pdf https://www.sparx.co.jp/report/detail/305.html スペシャ ルレポート金融市場の制度設計に使われ始めた人工市場 スペシャルレポート 金融市場の制度設計に使われ始めた人工市場 https://www.sparx.co.jp/report/detail/305.html 私がよくお話を依頼されるテーマの包括的な資料 金融業界における人工知能、高速取引、人工市場による市場制度の設計 説明資料 https://mizutatakanobu.com/2024.pdf Youtube https://youtu.be/iw35lKAMicQ https://mizutatakanobu.com/2024.pdf 説明資料 Youtube https://youtu.be/iw35lKAMicQ 31
人工市場による市場制度の設計:学術的に詳細なもの mizutatakanobu.com/jphd.htm 構 孝 文 場 学 ( 築 信 工 大 シ の ミ 学 学 詳 ュ ) 院 レ 細 ( ー 工 な 博 シ 学 ど 工第 ョ が ン 系 書 を 研 用 か 究 れ い 科 てい た 金ま シ ス 融 す テ 市 ム場 創の 成 規 学 制 専 ・ 攻 制度の分析 博士論文(モデル構築の詳細などが書かれています) 水田孝信 (2014) 人工市場シミュレーションを用いた金融市場の規制・制度の分析, 東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻 2014年9月26日 博士(工学) (博工 第8404号) https://mizutatakanobu.com/jphd.htm 教科書的な本 高安美佐子ほか,マルチエージェントによる金融市場のシミュレーション, コロナ社, 2020, 和泉潔,水田孝信,第5章「エージェントモデルによる金融市場の制度設計」 https://www.coronasha.co.jp/np/isbn/9784339028225/ 20 ://www.coronasha.co.jp/np/isbn/9784339028225/ 科 ナ 泉 書 社 潔 的, な 水 本 田孝 高 信 安 , 美 第佐 5 章 子「 ほ エ か ー , ジ マ ェ ル ンチ ト モ エデ ール ジに ェ ン よ ト る に 金 よ 融 る市 金場 融市 の制 場度 のシ 設ミ 計 ュレ 」ーショ ン 1知 ://doi.org/10.11517/jjsai.36.3_262 工 号 工 知 能 能 学 学 会 会 誌 誌人 の特工 集知 記能 事 水田孝信, 八木勲「 人工市場による金融市場の設計と広がる活用分野」 人工知能学会誌の特集記事 水田孝信,八木勲 「人工市場による金融市場の設計と広がる活用分野」 人工知能学会誌 人工知能 2021年5月号 https://doi.org/10.11517/jjsai.36.3_262 Financial uta s://doi.org/10.2139/ssrn.2710495 (2016) Aら Brief Regulations Review ofレ Recent And/Or Rules, SSRN Market Working Simulation PaperStudies Series 行 研究 をひMarket たす 紹介 した英文 ビ ュ ー論Artificial 文 先行研究をひたすら紹介した英文レビュー論文 Mizuta (2016) A Brief Review of Recent Artificial Market Simulation Studies for Financial Market Regulations And/Or Rules, SSRN Working Paper Series https://doi.org/10.2139/ssrn.2710495 uta, nger ncial ://doi.org/10.1007/978-981-96-1713-5 T. Nature Market and I. ! (2025), by an Agent-Based Model”, 大 成 的 な 英文Yagi, 書Design 籍! 集大成的な英文書籍!! Mizuta, T. and Yagi, I. (2025), “Financial Market Design by an Agent-Based Model”, Springer Nature https://doi.org/10.1007/978-981-96-1713-5 (立ち読み) https://www.amazon.co.jp/dp/B0DWSRM4QV/?asin=B0DWSRM4QV&revisionId=f90ac54d&format=3&depth=1 (日本語で近いことを書いた文献リスト) https://mizutatakanobu.com/jbook1.htm https://www.amazon.co.jp/dp/B0DWSRM4QV/?asin=B0DWSRM4QVrevisionId=f90ac54dformat=3depth=1 https://mizutatakanobu.com/jbook1.htm 32