株式市場における高速取引とAI

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December 19, 25

スライド概要

2025年度 CIGS経済・社会との分野横断的研究会
株式市場における高速取引とAI
スパークス・アセット・マネジメント株式会社
上席研究員 水田孝信

本発表資料はスパークス・アセット・マネジメント株式会社の公式見解を表すものではありません. すべては個人的見解であります.

・高速取引は古本屋と同じように社会の役にたっている
・高速取引の主要な2戦略はマーケットメーカー戦略と裁定取引
 いずれも古くからある手法で、その手作業が機械化されたもの
 速さこそがすべてであり、AIのような遅いものは事前のチューニングなどに使われる
・大量注文を裁く執行アルゴリズムがマーケットメーカーと戦う機械同士の戦い
 しかし、執行内容は人間が決め、マーケットメイカーも人間が作ったシンプルな戦略
 人間が機械同士を戦わせているみたいなイメージ
・高速取引は各種ハードウェアへの投資が巨額のため
 以前ほどは儲かっておらず装置産業化・寡占化している ← 航空業界みたい
 安全な主要2戦略ではなくリスクの高いディレクショナル戦略が増加
 不正取引の増加も懸念されていて、法改正が進んでいる
・高速でなくても投資そのものはAIにとって苦手分野であり、調査や作業の効率化での活躍が主
・投資の世界でAIは不正取引を補佐する強力な道具であり大きな脅威
 その対策もAIを活用しなければならない

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アセットマネジメント会社で雑多な仕事。金融市場のシミュレーション(人工市場)研究で人工知能学会 金融情報学研究会(SIG-FIN)、IEEE CIS CIFErに出入り。学部は気象大学校、修士は理学、博士は工学。家内と2人暮らし。中学生の娘は寮生活。発言は個人的なもので所属組織とは関係ありません。

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各ページのテキスト
1.

2025年12月23・24日 2025年度 CIGS経済・社会との分野横断的研究会 株式市場における高速取引とAI スパークス・アセット・マネジメント株式会社 上席研究員 mizutata[at]gmail.com @takanobu_mizuta (twitter) 水田孝信 https://mizutatakanobu.com https://mizutatakanobu.com 本発表資料はスパークス・アセット・マネジメント株式会社の公式見解を表すものではありません. すべては個人的見解であります. https://mizutatakanobu.com/2025c.pdf この資料はこちらにあります: https://mizutatakanobu.com/2025c.pdf 1

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自己紹介 2000年 気象大学校卒業 2002年 東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻修士課程修了 研究内容:宇宙空間プラズマのコンピュータシミュレーション 2004年 同専攻博士課程を中退 同年 スパークス・アセット・マネジメントに入社 2006年 クオンツ・アナリスト → 2010年より ファンド・マネージャー 2009年 人工知能学会などで研究発表を始める 2011年 東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻博士課程 社会人をしながら在籍 指導教官:和泉潔先生 研究内容:人工市場を用いた金融規制のシミュレーション 2014年9月修了: 博士(工学) 2017年度より 上席研究員兼務 現在:上記の学術研究、資産運用業界全般の調査・レポート、 株式市場やポートフォリの定量的分析(のためのシステム開発・運用) 2007年 日本証券アナリスト協会検定会員 2014年度-2022年度 東京大学公共政策大学院 非常勤講師 2016年度-2024年度 人工知能学会 金融情報学研究会(SIG-FIN)幹事 2022・2023年度は主査 2019年より IEEE CIS Computational Finance and Economics Technical Committee メンバー 2024・2025年 Chair 2

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私のお仕事 資産運用業界についてのレポート https://www.sparx.co.jp/report/special/mizuta/ 株式市場やポートフォリの定量的分析 (のためのシステム開発・運用) 資産運用業界全般の調査・レポート 学術研究:人工市場を用いた金融市場の設計 (人工知能学会やIEEE CIS等所属) https://www.sparx.co.jp/report/special/mizuta/ https://mizutatakanobu.com/jindex.htm#spe (つながらないとき) https://mizutatakanobu.com/jindex.htm#spe (主なレポート) 2025/1/21 世界的な株式の決済期間短縮化:T+1への世界統一と即時決済の導入 2024/12/3 インデックス運用の難しさ -インデックスへの過度な追従による弊害2024/7/11 コメ市場と電力市場の問題点-価格安定化で失ったこと 2023/10/23 株式投資で気候変動を考慮することに賛否があるのはなぜか?[概要編] 2023/8/3 投資の世界における生成AI 2023/6/6 関東大震災から100年~今同じことが起きたら株式取引は継続されるか? 2022/12/15 新技術の悪い影響とそれを乗り越えてきた金融市場 2022/10/7 学術研究力に直結する大学の資産運用 2022/6/28 ROEと資本コスト:その企業の価値はいくらか 2022/4/7 世界的な株式の決済期間短縮化:T+1への統一が進むか? 2021/11/15 金融市場の制度設計に使われ始めた人工市場 2021/9/8 金融市場で使われている人工知能 2021/8/16 続・市場は効率的なのか?実験市場や人工市場での検討 2021/4/12 "フラッシュ・クラッシュ・トレーダー"と呼ばれた男 2020/12/22 市場は効率的なのか?検証できない仮説の検証に費やした50年 2020/9/15 なぜそれらは不公正取引として禁止されたのか? 2020/8/4 人工知能が不公正取引を行ったら誰の責任か? 2020/7/3 お金とは何か?-古代の石貨から暗号資産まで2020/1/24 国際資本の舵を取ってしまったグローバルインデックス算出会社 2019/9/18 アセット・オーナーが行っている投資 2019/7/8 社会の役にたっている"空売り“ 2019/4/3 高頻度取引(3回シリーズ第1回):高頻度取引とは何か? 2018/5/21 なぜ株式市場は存在するのか? 2018/3/2 パッシブファンドの新たなる論点「水平株式保有」 2018/2/16 アクティブファンドが超えてはいけない規模 2016/12/2 良いアクティブ運用とは 3

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【宣伝】 私の本業研究:人工市場による市場制度の設計 集大成的な英文書籍 人工市場を用いて金融の規制やルールの検証を 行った研究のまとめの英文書籍を書きました。 私共のこれまでの研究の集大成的な書籍です。 Springer Natureより、出版 日本語かつ無料の関連文献だけでもぜひ! https://mizutatakanobu.com/jbook1.htm https://mizutatakanobu.com/jbook1.htm https://mizutatakanobu.com/2026r.pdf 講義資料: https://mizutatakanobu.com/2026r.pdf https://doi.org/10.1007/978-981-96-1713-5 https://doi.org/10.1007/978-981-96-1713-5 4

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【宣伝】 人工知能学会 金融情報学研究会 (SIG-FIN) https://sigfin.org https://sigfin.org 年2回(10月ごろと3月ごろ)東京都内&オンラインで開催 誰でも聴講可 ← 人工知能学会の会員でなくてもよい 参加費:1,000-2,000円くらい 聴講:学者よりも実務家が多い https://groups.google.com/g/jsai-fin/about メーリングリスト登録ページ https://groups.google.com/g/jsai-fin/about ✓ 機械学習やテキストマイニングの技術を金融実務に応用する研究多い ✓ 人工市場シミュレーションの研究もよく発表されている 人工知能学会 金融情報学研究会(SIG-FIN)の歴史 - AIと金融の技術史の一部として議論 https://doi.org/10.11517/jsaisigtwo.2025.FIN-034_63 https://mizutatakanobu.com/2025SIGFIN1.pdf https://doi.org/10.11517/jsaisigtwo.2025.FIN-034_63 https://mizutatakanobu.com/2025SIGFIN1.pdf 和泉先生のブックマーク(人工知能学会誌):人工知能の金融応用に関する研究会、国際的な学会、ツール類やデータなど https://www.ai-gakkai.or.jp/resource/my-bookmark/my-bookmark_vol37-no1/ https://www.ai-gakkai.or.jp/resource/my-bookmark/my-bookmark_vol37-no1/ 5

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【宣伝】 IEEE Computational Intelligence in Financial Engineering and Economics (CIFEr) 2026 https://cifer2026.mhirano.jp https://cifer2026.mhirano.jp IEEEのAI金融応用の研究会 初の日本開催!!東京吉祥寺 https://groups.google.com/g/ieee_cifer_info/about メーリングリスト登録ページ https://groups.google.com/g/ieee_cifer_info/about 6

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株式市場は様々な参加者がいることで成立 株式の高速取引と取引所の高速化 アセットオーナー 直接 執行 年金基金、ソブリン・ウエルス・ファンド 高速取引 業者 一部委託 一部 委託 株式 取引所 資産運 用会社 私は ココ! アセットマネジメント 注文 注文 個人 投資家 証券 会社 HFT(High Frequency Trades) 高頻度取引 *業界では”HFT”の方が普及し た単語ですが、金融庁の正式呼 称であり、一般の人に普及してい る”高速取引”をここでは使います 注文 執行 7

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高速取引とAI? 高速取引やAIの株式市場への影響:一般向け書籍 https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000417886 本日は私の実務でも専門でもない話をするわけです、、、 https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000417886 https://mizutatakanobu.com/jbook2.htm (立読み・紹介サイトまとめ) https://mizutatakanobu.com/jbook2.htm 学術研究:人工市場を用いた金融市場の設計 (規制・ルールの分析) ↑高速取引を加えた分析:東証の方と意見交換 ↑エージェントシミュレーション:AIのはしっこ:人工知能学会に出入り 資産運用業界全般の調査・レポート ↑高速取引は無視できない 高速取引やど真ん中AIは専門でなく実務的にもやってないが、 周辺知識としてある程度詳しい だからこそ、ポジショントークにならず語れる 高速取引の情報でてこない(秘密主義) : 私が執筆 → 8

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まとめ ・高速取引は古本屋と同じように社会の役にたっている ・高速取引の主要な2戦略はマーケットメーカー戦略と裁定取引 いずれも古くからある手法で、その手作業が機械化されたもの 速さこそがすべてであり、AIのような遅いものは事前のチューニングなどに使われる ・大量注文を裁く執行アルゴリズムがマーケットメーカーと戦う機械同士の戦い しかし、執行内容は人間が決め、マーケットメイカーも人間が作ったシンプルな戦略 人間が機械同士を戦わせているみたいなイメージ ・高速取引は各種ハードウェアへの投資が巨額のため 以前ほどは儲かっておらず装置産業化・寡占化している ← 航空業界みたい 安全な主要2戦略ではなくリスクの高いディレクショナル戦略が増加 不正取引の増加も懸念されていて、法改正が進んでいる ・高速でなくても投資そのものはAIにとって苦手分野であり、調査や作業の効率化での活躍が主 ・投資の世界でAIは不正取引を補佐する強力な道具であり大きな脅威 その対策もAIを活用しなければならない 9

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今日のお話 (1) 高速取引の存在意義 (2) 正確な書籍、誤解を招く書籍 (3) 高速取引の主要戦略とAI実装 (4) AIの活躍は周辺領域や不公正分野 (5) 寡占化する高速取引業界の状況 (6) 株式取引所同士の高速化競争 10

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(1) 高速取引の存在意義 (2) 正確な書籍、誤解を招く書籍 (3) 高速取引の主要戦略とAI実装 (4) AIの活躍は周辺領域や不公正分野 (5) 寡占化する高速取引業界の状況 (6) 株式取引所同士の高速化競争 11

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株式市場は様々な参加者がいることで成立 アセットオーナー 直接 執行 年金基金、ソブリン・ウエルス・ファンド 一部委託 一部 委託 株式 取引所 資産運 用会社 私は ココ! 高速取引 今日の お話 業者 HFT(High Frequency Trades) 高頻度取引とも アセットマネジメント 注文 注文 個人 投資家 証券 会社 注文 執行 高速取引業者:株式の転売で儲けたい:古本屋 アセットオーナー、投資家:企業を保有したい:本を読みたい お互いに 必要 本を入手するのに古本屋は必要だが、ぼったくられたくない (高頻度取引業者は生きててほしいがボロ儲けして欲しくない) 12

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株の取引は社会の役に立っているのか? なぜ株式市場は存在するのか? https://www.sparx.co.jp/report/detail/310.html https://www.sparx.co.jp/report/detail/310.html https://youtu.be/0kRXfsrBwpM YouTube https://youtu.be/0kRXfsrBwpM 株式市場は人類の発展に非常に重要 社会に不要、単なるギャンブルではない さらに高速取引業者となると、ますます何の役に立っているか分かりにくく、 とりあえず、古本屋みたいなもので、役に立っていると理解して下さい 13

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(1) 高速取引の存在意義 (2) 正確な書籍、誤解を招く書籍 (3) 高速取引の主要戦略とAI実装 (4) AIの活躍は周辺領域や不公正分野 (5) 寡占化する高速取引業界の状況 (6) 株式取引所同士の高速化競争 14

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とりあえず、おすすめの本をあげておきます(1/2) 第1章アルゴリズム取引とは 1-1アルゴリズム取引とは/1-2アルゴリズム取引の目的/1-3アルゴリズムの種類/1-4 アルゴリズムの運用者/1-5アルゴリズム取引環境の変化とHFT/1-6アルゴリズム取引規制 第2章アルゴリズム取引の市場環境 2-1証券市場/2-2証券取引所/2-3証券会社/2-4売買制度/2-5マーケット 情報/2-6レイテンシー削減のための接続方式/2-7不公正取引/2-8アメリカの市場環境 第3章市場取引におけるリターン、リスク、コスト、流動性 3-1損益/3-2リターン、コスト、リスク/3-3流動性 第4章アルゴリズム取引概論 4-1アルゴリズム取引の目的/4-2アルゴリズム取引戦略の大分類/4-3アルゴリズム取引の 利用形態/4-4アルゴリズム構築手順の概要 第5章アルゴリズム取引戦略 5-1執行アルゴリズム/5-2ベンチマーク執行アルゴリズム/5-3マーケット・メイキング・アルゴリ ズム/5-4裁定アルゴリズム/5-5ディレクショナル・アルゴリズム/5-6市場操作系アルゴリズ ム 第6章HFT:高頻度取引 6-1HFTの概要/6-2HFTの定義/6-3HFTのシェア/6-4HFTのアルゴリズム取引/ 6-5HFTが市場に及ぼす影響/6-6HFTの規制 第7章外国為替取引におけるアルゴリズム取引 7-1外国為替取引の市場環境/7-2株式取引アルゴリズムと外国為替取引アルゴリズムの違い /7-3外国為替取引におけるアルゴリズム取引戦略/7-4個人投資家からみたFX取引アルゴ リズム 第8章アルゴリズム取引の環境の変化と投資家の取組み 8-1アルゴリズム取引の変化/8-2プレイヤー別の対応状況/8-3アルゴリズム取引の導入に おける課題と対策/8-4個人投資家の視点から [付録] Aインプリメンテーション・ショートフォール B証券会社やFX業者が提供するオーダー・タイプ https://store.kinzai.jp/public/item/book/B/13408/ https://store.kinzai.jp/public/item/book/B/13408/ 書籍名は怪しげだが、網羅的で教科書的な内容 高速取引のみならずアルゴリズム取引全般の実態を正確に紹介 15

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とりあえず、おすすめの本をあげておきます(2/2) ✓ “フラッシュ・クラッシュ”は非常に客観的で余計な脚色がなく、敵・味方 の無理な押し付けもない、良く書かれたノンフィクション ✓ ただし、この本の主題は高速取引でもなければ、フラッシュ・クラッシュで はない。個人投資家が相場操縦に手を染め、捕まる物語 ✓ 主人公はe-mini S&P 500先物の取引で大量の見せ玉を行って逮 捕された個人投資家であり、高速取引はやっていない ✓ しかも主人公の取引は2010年のフラッシュ・クラッシュとほぼ関係ない ✓ しかし、逮捕時にメディアに”フラッシュ・クラッシュ・トレーダー”として紹介 されたため、このタイトルとなった ✓ 犯罪に手を染めてしまった経緯、捜査側の行動、逮捕後に フラッシュ・クラッシュ https://www.kadokawa.co.jp/product/321707000030 犯人から手口を教えてもらう当局など、とても勉強になった 私のレポートでも取り上げてます ✓ 「金融市場には、正義も悪もいない。いるのはルールを守っ ているものと、そうではないものだけ」を実践できなかった主人 "フラッシュ・クラッシュ・トレーダー"と呼ばれた男はフラッシュ・クラッ シュとはあまり関係なかった:高頻度取引との知られざる戦い 公と実践している当局者たちの物語 https://www.kadokawa.co.jp/product/321707000030 https://www.sparx.co.jp/report/special/3149.html 映画化も予定されている(余計な脚色がつかないかちょっと心配) https://www.sparx.co.jp/report/special/3149.html https://www.hollywoodreporter.com/news/dev-patel-star-flash-crash-new-regency-see-saw-1280039 https://www.hollywoodreporter.com/news/dev-patel-star-flash-crash-new-regency-see-saw-1280039 16

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(ご参考までに) 書籍ではトレーダー・ナブを追っている ・イギリス在住のナブは個人投資家、ほぼデイトレーダー、米国の先物、特にS&P500ミニを多く取引した 逮捕時(2015年)は36歳? ・生活は非常に地味で実家ぐらし。両親はナブが家の二階の自室で巨額のトレードをしていることを知らなかった ・ナブは、HFTは見せ玉という違法行為を行って、個人投資家からお金をだまし取っていると誤解 ・そのような陰謀論にハマってしまい、自分も見せ玉をして対抗するしかないと決意してしまう ・証券会社には何度も怒られるが、グレーな証券会社に変えて、見せ玉を数年続ける ・実はHFTは見せ玉に非常に弱く、当局に規制強化を依頼 つまり、ナブが見せ玉の加害者だと勝手に思っていたHFTは実は最大の被害者だった ・その後、米では不正取引には課徴金の1割程度という懸賞金がかけられ、 多くの一般人がデータ分析に参入、これで足がついた(ナブの課徴金は数十億円規模?) ・ナブは巨額な利益をあげるも、他の投資詐欺(うその投資話)に引っかかってしまい多くを失う ・捕まった後のナブは米当局に不正取引のレクチャーをした、おかげで不正取引の検挙数増えた ・これは司法取引に含まれていて、実刑は免れ自宅軟禁(自宅はイギリス)で済んでいる。 (しかも自宅軟禁開始(2020/3?)がロックダウン開始と重なるというオチ付) 私のレポートでは ・見せ玉は違法であること ・HFTは見せ玉に異常に弱いこと、 だからと言って見せ玉をしていいことにはならないこと ・近年のHFTと取引所の接近は、不正取引の取締りをするうえで、 懸念があること https://www.bbc.com/news/explainers-51265169 などを本の内容を少し紹介しながら書きました 17 https://www.bbc.com/news/explainers-51265169

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注意が必要な本・映画 ・とにかく大げさ ・高速取引を悪者にしたい意図 ↑このために誤った記載多数 ・高速取引を排除する取引所を作った人を正義として描く ↑現実ではあまり普及しなかった取引所(IDX) https://iextrading.com/stats/ この部分は映画化はされていない ⇔ 映画化された部分の方が悪意は少ないかな https://iextrading.com/stats/ (裁定取引の話) ・やたらと敵・味方、善・悪に分けたがる(そんなのはない) ・2009年~2011年ごろの話 ↑今こんなには儲からない(後述) しかし、ハードウエアの戦いだという雰囲気はあっている フラッシュ・ボーイズ https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167913403 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167913403 18

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株の取引はミリ秒(0.001秒)単位の差で、莫大な損得が発生するので、ヴィンセントとアントンの会社もそのレイテンシー (遅延)を減らすべく、システムを構築することに血眼になっていた。トレス・サッチャー社では、マイクロ波タワーの建設や光ケー ブルを計画中だが、巨額となる予算などに難航していた。 ・裁定取引の速さ競争 → 主人公チーム:地下ケーブル、敵チーム:電波塔 全体的に大げさだし今はこんなには儲からない:やってることはこんな感じ https://youtu.be/_5XEDVirnmk (予告動画) https://youtu.be/_5XEDVirnmk 19

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電波塔は実際にあります (映画のネタバレになってしまい申し訳ないですが)”敵チーム”が建設した電波塔は実在する。主 人公チームの地下ケーブルは実在しないようだ。映画の中でも数ミリ秒差で地下ケーブルが負けた。 November 17, 2017 VAND Capital Blog, Future of High Frequency Trading https://medium.com/anton-iribozov/future-of-high-frequency-trading-bbb37e220509 https://medium.com/anton-iribozov/future-of-high-frequency-trading-bbb37e220509 20

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シカゴ取引所-ニューヨーク取引所の裁定取引 東京証券取引所の方のプレゼン資料 まっすぐの方が 速い 2013/4/26講義(慶應義塾大学) 証券市場におけるICTの活用について https://www.slideshare.net/kabucontse/20130426 https://www.slideshare.net/kabucontse/20130426 21

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フラッシュ・ボーイズ(本)&ハミングバード(映画)の間違いは多くの専門家が指摘 While ‘Flash Boys’ (and ‘the hummingbird project’) may capture the complex execution framework of the US equities market, Michael Lewis does not portray the full story. The market may not be perfect, but it’s not rigged. フラッシュ・ボーイズ(とハミングバード)は米国の株式取引市場がいかに複雑であるかをうまく表現し ているが、すべて正しいわけでもない。市場は完全ではないが不正がはびこっているわけでもない。 https://tabbforum.com/opinions/no-michael-lewis-the-us-equities-market-is-not-rigged/ https://tabbforum.com/opinions/no-michael-lewis-the-us-equities-market-is-not-rigged/ 22

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重要なポイント ・ 金融市場には、正義も悪もいない いるのはルールを守っているものと、そうではないものだけ → 他の投資家同様に検査されれば良い ・ 一般投資家の本音は、高速取引業者は生きててほしいが ボロ儲けして欲しくない → 本を入手するのに古本屋は必要だが、ぼったくられたくない ・ 高速取引の主要な戦略は昔からあるものを機械化したもの 23

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(1) 高速取引の存在意義 (2) 正確な書籍、誤解を招く書籍 (3) 高速取引の主要戦略とAI実装 (4) AIの活躍は周辺領域や不公正分野 (5) 寡占化する高速取引業界の状況 (6) 株式取引所同士の高速化競争 24

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高速取引はとにかく注文件数が多いが取引成立はそこまででもない 高速取引の割合 注文件数:80% 約定件数:30% (高速取引同士の注文がぶつかることが少な いことを考えれば、少ないとも言えない。 通常投資家の取引相手の多くが 高速取引であることは言える) 変更、キャンセルが多いことが分かる https://www.fsa.go.jp/status/kousokutorihiki_doukou/index.html https://www.fsa.go.jp/status/kousokutorihiki_doukou/index.html 25

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人間には見えない戦い 注文応答時間:200μs(マイクロ秒) (世界的にはこれでも遅いほう) 目に入ってきた光が脳に到達して 認識するまで:0.1秒=100,000μs (500回取引) ディスプレイの更新:5,000μs (25回取引) https://www.jpx.co.jp/systems/equities-trading/01.html https://www.jpx.co.jp/systems/equities-trading/01.html 1日に、デイトレーダーの800年分の取引ができる そもそも人間には全く見えない速さ 「高速取引が怪しい注文・キャンセルをしているのを見た!」という個人投資家がいますが、 人間に見えている時点で、それは高速ではないです。 高速取引の注文状況の分析は、場合によっては数年かかる (例:2010年 フラッシュ・クラッシュ) 26

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必要な速さは、、、、 ”低レイテンシー”(低遅延) 一定時間内にどれだけ多くのデータを転送できるかはどうでもよい (一般的なネットの速さ) 1注文あたりのデータ量は多くない 我々は”レイテンシー”を以下の意味で使っています 注文の付け合せ処理にかかる時間やデータ転送時に発生する遅延の合計 取引所 注文付け合せ 取引価格の更新 新しい 取引価格 注文 投資家 各種ハードウエアのレイテンシー削減について研究している学会 (エレクトロニクス実装学会光回路実装技術委員会)にて招待講演したことがあります https://web.jiep.or.jp/seminar/tcwg/tc09_opt20201126/ https://web.jiep.or.jp/seminar/tcwg/tc09_opt20201126/ 27

28.

(参考)東京証券取引所の方のプレゼン資料 2013/4/26講義(慶應義塾大学) 証券市場におけるICTの活用について https://www.slideshare.net/kabucontse/20130426 https://www.slideshare.net/kabucontse/20130426 28

29.

速さ追求のためのハードウエア 2013/4/26講義(慶應義塾大学) 証券市場におけるICTの活用について https://www.slideshare.net/kabucontse/20130426 https://www.slideshare.net/kabucontse/20130426 29

30.

個々の装置でニュース記事となる 2016/8/8 The Wall Street Journal 進化する超高速取引、光速の領域に踏み込む https://jp.wsj.com/articles/SB11948173908644753879104582238422701469822 https://jp.wsj.com/articles/SB11948173908644753879104582238422701469822 30

31.

2016/8/30 Bloomberg シカゴ-東京の高速トレーディング網構築 で高頻度会社が協議-関係者 高速取引業者も厳 しい時代に、、 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-30/OCP43S6K50Z601 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-30/OCP43S6K50Z601 31

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計算機内の高速化 北陸先端大学の修士論文 https://hdl.handle.net/10119/15214 https://hdl.handle.net/10119/15214 32

33.

ここの高速化の研究 CPUではなくFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて演算、高速化をはかる 33

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(参考)速さを求めてとんでもない手法が… https://jp.wsj.com/articles/high-speed-traders-are-feuding-over-a-way-to-save-3-2-billionths-of-a-second-eb6d437a https://jp.wsj.com/articles/high-speed-traders-are-feuding-over-a-way-to-save-3-2-billionths-of-a-second-eb6d437a https://www.linkedin.com/posts/mosaic-finance_white-paper-corruptive-speculative-triggering-activity-7346121479861809152-bVsc/ https://www.linkedin.com/posts/mosaic-finance_white-paper-corruptive-speculative-triggering-activity-7346121479861809152-bVsc/ モザイクによると、同社とユーレックスの対立を引き起こした手法は反応時間を約3.2ナノ秒改善 できるという。同社はこれを「破損した投機的トリガー(CST)」と呼んでいる。 この手法が役立つのは、ユーレックス上の注文がパケット、つまり1と0の羅列から成るデータの小 さな塊として符号化されるためだ。コンピューターネットワークで広く使用されているイーサネットプロ トコルの規則では、各パケットはプリアンブル(前置き信号)で始まり、データが送信されることを 知らせる。売買の注文など実際のメッセージは後で送られる。 HFT業者は、取引するかどうかを決める前にプリアンブルを最初に送信することで、数ナノ秒を 節約できる。買いまたは売りの注文を出すべき情報を得た場合、パケットの残りの部分に注文を 素早く埋め込める。何もしないと決めた場合、空のパケットや意図的に破損したパケットをユーレッ クスに送信すればいい。 34

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高速取引業者の主要”だった”2戦略:マーケットメーカー戦略、裁定取引 マーケットメーカー戦略 買いと売りの両方を常に出しておき、その差額だけ儲かる ↑古本屋と似ている 注文価格を決定するパラメーターの調整にAI(機械学習)が 使われている ← 日中AIが走っている訳ではない 速さがすべて:CPUやGPUを回してる暇ない 裁定取引 経済的価値が同じにもかかわらず、 取引所(市場)によって価格が異なる場合、 安いほうを買って高いほうを売る ↑新品より高く買ってくれる古本屋を探すのに似ている(せどり) 速さがすべて:CPUやGPUなど必要ない! 35

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金融庁が用意している登録フォーマットの中に戦略がリストアップされていて、 マーケットメイク戦略、アービトラージ(裁定)戦略、ディレクショナル戦略、その他、である。 これらが高速取引の主要戦略だと分かる。 https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/hft/03.html#03-03 https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/hft/03.html#03-03 36

37.

マーケットメーカー戦略 買いと売りを同時に出す 注文 売り 注文数量 価格 84 101 176 100 買い 注文数量 99 204 98 77 注文 99円と100円を行ったり来たりしていると儲かる ↑ 99円で買って100円で売ることを繰り返す これらの注文価格の先頭に並ぶ必要がある <- 一番速い必要 市場がどちらかの方向に動き出したら、すばやく逃げる必要 ↑ 99円で買っちゃったものがもっと安い値段でしか売れなくなる 高速に取引できることが非常に重要な戦略 昔からある戦略。以前は大人数で手作業で行われていた。 彼らの仕事が機械化され効率化された ⇒ 社会全体のコストは下がったと考えられる。 37

38.

裁定取引 経済的価値が同じものを、(例)99円で買い瞬時に他で100円で売る 取引所間や現物(株式)・先物・オプション間、ETF・現物間など (時間がたてば同じものになるもの同士) 昔からある戦略が機械化されたもの 99円で 買う 100円で 空売り 株式 99円の売り 短期間で 仕入れ・転売 投機家 取引所A 少しでも 早く売りたい 先物 先着1名 100円で買い のみ 取引所B 1番でないと意味がない 誰よりも高速に取引できることが非常に重要な戦略 映画”ハミングバード・プロジェクト”はこの話 38

39.

(参考)現実の裁定取引:ETF(上場投資信託)と株式の交換 高速取引業者 安いほうを買って 高いほうを売る 価格差が利益 ETF 交換 可能 株式 1 株式 2 株式 3 株式 4 ・・・ ETFは組み入れている株式をすべて集めたものと交換可能 ETFと組み入れ株式に価格差があるときに,安いほうを買い,交換を行い, 高いほうを売って, 価格差を利益とすることができる. マーケットメーカー戦略をやりながら裁定取引を行う複雑な取引 39

40.

最近はディレクショナルが増えている ディレクショナル戦略(金融庁定義) 近い将来の価格の変動を予測して利益を得る戦略 → 詳細は秘密だし多様と思われるので不明 マーケットメイク戦略、裁定取引は速さ競争がすべて で一番速いものの総どりであり、多様性がない。 高速取引業者間の競争が激しくなり、速さ競争で一 番になれなくなってきた業者がディレクショナル戦略に 活路を見出しているのではないか。 ただし、ディレクショナル戦略は利益の確実性が格段 に低く、これに頼る業者の収益は厳しいのではと想像 する。 https://www.fsa.go.jp/status/kousokutorihiki_doukou/index.html https://www.fsa.go.jp/status/kousokutorihiki_doukou/index.html 40

41.

ディレクショナル戦略の例 両主要戦略に比べて高リスク 公表 日本銀行ホームページ 頻繁に公表の 有無を確認 時間 公表文章の 取得 * AIといっても、前回との AI(テキストマイニング)による分析 差分の量を計る程度 自動発注アルゴリズム 分析結果に基づいて 自動発注 為替市場 2015年~2017年ごろに日本銀行金融決定会合の結果発表後、 即座に為替取引をする投資戦略が流行った 日本銀行 金融研究所「金融政策アナウンスメントとアルゴリズム取引:ウェブページへのアクセス情報を用いた検証」, 2018 https://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/japanese/18-J-11.html https://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/japanese/18-J-11.html 41

42.

フラッシュボーイズで話題となったレイテンシー裁定 アルゴリズム取引の正体より https://store.kinzai.jp/public/item/book/B/13408/ https://store.kinzai.jp/public/item/book/B/13408/ 複数の取引所の注文を取りに行くため に同時に注文を出すことがある しかし、市場の物理的な場所(デー タセンター)が違うことなど、さまざまな 理由により、厳密には同時注文が到 着しない なので、高速取引業者は、それに先 回りして100円で買っておいて、101 円で売りつけるなどが可能 これに対応する投資家は、遅延が予 想される市場には少し先に注文を出 すなどのアルゴリズムを使う 「いたちごっこ」 42

43.

執行アルゴリズム取引 注文を”小分けにして”さばく仕事を 機械化したものが執行アルゴリズムです 機関投資家 資産運用会社 A社 1万株 買い アルゴリズムで 証券会社 執行アルゴリズム A社 100株 99円 買い A社 100株 98円 買い A社 100株 99円 買い : 自動発注 取引所 43

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執行アルゴリズム取引 v.s.高速取引(マーケットメイカー戦略) 資 産機 運関 用投 資 会家 社 大量に安く買いたい! 大量に保有している株を高く売りたい! 人間 v.s. 大量の 注文 執行アルゴリズム 執行アルゴリズム ( 設計 自動 発注 自動 発注 取引所 執行アルゴリズム パラメータチューニング 市場状況によってどれを使うか選択 AI (本を読みたい人) 高速取引 (マーケットメイカー) 高 速 取 引 業 者 パラメータ チューニング AI 証 券 会 社 別 部 署 も ) ) 高 速 取 引 業 者 別 部 署 人間 ( 証 ま 券 た 会 は 社 安く仕入れ高く売りつけたい! (古本屋) 44

45.

AIを使った執行アルゴリズム 2017/4/13 日本銀行コンファレンス https://www.boj.or.jp/paym/forum/rel170412c.htm https://www.boj.or.jp/paym/forum/rel170412c.htm https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00386896 https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00386896 価格が大きく動くのを直前に知りたい 急いで買う、ゆっくり買う、を切り替えたい 45

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2017/4/13 日本銀行コンファレンス https://www.boj.or.jp/paym/forum/rel170412c.htm https://www.boj.or.jp/paym/forum/rel170412c.htm とはいえ、、、 アルゴリズムは日中の 短期間の予測のみ 金融市場の価格時系列は ”斉一性原理”が成立していない 自然科学のような普遍的な法則はない https://www.sparx.co.jp/report/special/3118.html ,2 50 20, スパ 年 水 」 田 ー 孝 クス 信・ ア 「 セ 市 ッ 場 ト・ は マ 効 ネ率 ジメ 的 ン な ト のか?検証できない仮説の検証に費やした 水田孝信 「市場は効率的なのか?検証できない仮説の検証に費やした50年」, 2020, スパークス・アセット・マネジメント https://www.sparx.co.jp/report/special/3118.html 重要な情報は注文板の状況 文章理解が必要がない 市場予測の中では、 AIが得意な分野 46

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AIを使ったファンドがあるとよく言われますが、、 従来からのクオンツファンドが行っているファクターへの投資に“加える”という感じがほとんど ゼロからAIの学習結果だけで投資することは皆無 (クオンツ:金融市場を定量分析する人たち) 多数のファクターを 合成するのが普通 (元からある) ファクターへの 投資戦略 AI ファクターの追加 AI 売買リスト タイミングや組 み合わせなどの 出力や修正 (その後の売買の執行方法は 通常のファンドと同じ) 2017/4/13 日本銀行コンファレンス でも言及あり https://www.boj.or.jp/paym/forum/rel170412c.htm https://www.boj.or.jp/paym/forum/rel170412c.htm 執行アルゴリズム 最近の研究: 阿部真也、中川慧、“グローバル株式市場における深層学習を用いたマルチファクター運用の実証分析”、 第33回人工知能学会全国大会、2019年 https://doi.org/10.11517/pjsai.JSAI2019.0_4Rin135 https://doi.org/10.11517/pjsai.JSAI2019.0_4Rin135 47

48.

(参考)ファクターへの投資 時価総額/純資産 下位20% リターンの平均 - 時価総額/純資産 上位20% リターンの平均 ファクターによっては リターンとの相関が 出る場合がある 30% 20% 数銘柄持っても ファクター有効性は 取り出せない 10% リターン = ファクター有効性 0% -10% -20% -30% 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 (割安) ← 時価総額/純資産 → (割高) 大量に持てば (割安を買い割高を 空売り)すれば ファクター有効性は 取り出せる 48

49.

注文生成AI (Generative AI for orders, Synthetic Data for AI in Finance) (2020-2023) ACM https://icaif25.org/ JP International で が 世 多 ス 界organ ポ く 的 発 ン な サ 表 ー 銀 さ の 行 れ 国 大 て 際 い 手 た 学Conference 術会議 on AI in Finance(ICAIF) 世界的な銀行大手 JP Morganがスポンサーの国際学術会議 https://icaif25.org/ ACM International Conference on AI in Finance(ICAIF) で多く発表されていた(2020-2023) https://sites.google.com/view/icaif-synthetic/home Synthetic 2022 ”ク Data for と 年 い か う ら ワ は ー シ ョ ッ プ もAI in Finance” 2022年からは”Synthetic Data for AI in Finance”というワークショップも https://sites.google.com/view/icaif-synthetic/home World Agent :データの学習を行い現実的な注文データを生成 Experimental Agent:実験したい投資戦略をのせる この2体だけ:Experimentalがどのような成績になるか実験する アルゴリズム取引の戦略評価に使おうとしている 短い時間スケール(秒以下)なら注文状況(板の状況)に再現性ある ↑ 人間の手で行えないので機械化されている時間スケール ・ 高速取引:高速であることを生かして利益を狙う(高速化のため戦略は単純化) ・ 執行アルゴリズム取引:手の内を知られないように注文を自動的に小口に分ける Coletta 2021 https://doi.org/10.1145/3490354.3494411 Coletta 2021 https://doi.org/10.1145/3490354.3494411 現在の注文環境であり得そうな注文を生成する → 全く経験のない環境は不得 → 制度設計には向かない → 投資家種別ごとの相互作用によるメカニズムなどは分析できない 良くも悪くもエージェントに全く前提を置かず 大量のデータから現実的な注文を推定して生成 まだまだ実用化までは遠い感じも進歩は速い(速かった?) Coletta 2022 https://doi.org/10.1145/3533271.3561753 Coletta 2022 https://doi.org/10.1145/3533271.3561753 49

50.

執行アルゴリズム(大口の注文を自動的に小分けにして発注)の シミュレーション:灰色の部分が買い注文を出した領域 執行アルゴ(買い) 発動期間 指値注文の場合 見せ玉の分析できそう ! 指値注文もインパクトがあることを示唆! 見せ玉の分析できそう! Coletta 2023 https://doi.org/10.1145/3604237.3626854 Coletta 2023 https://doi.org/10.1145/3604237.3626854 金融における合成(生成)データのレビュー論文 Potluru et al. 2023 https://doi.org/10.48550/arXiv.2401.00081 Potluru et al. 2023 https://doi.org/10.48550/arXiv.2401.00081 モデルの比較、コードの公表:試したり比べたり 提案手法:青(LOBGAN) Berti et al. 2025 https://doi.org/10.48550/arXiv.2502.07071 Berti et al. 2025 https://doi.org/10.48550/arXiv.2502.07071 https://github.com/LeonardoBerti00/DeepMarket https://github.com/LeonardoBerti00/DeepMarket Nagy et al. 2025 https://doi.org/10.48550/arXiv.2502.09172 Nagy et al. 2025 https://doi.org/10.48550/arXiv.2502.09172 https://github.com/peernagy/lob_bench https://github.com/peernagy/lob_bench 見せ玉をAIトレーダーにさせないための実装を検討 Byrd 2020 https://doi.org/10.1145/3533271.3561767 Byrd 2020 https://doi.org/10.1145/3533271.3561767 流動性ごとに見せ玉がどれくらい有効であるかを検討 流動性が低い方が見せ玉は有効 Gu, et al. 2024 https://doi.org/10.1145/3677052.3698634 Gu, et al. 2024 https://doi.org/10.1145/3677052.3698634 文章の生成AIを使う https://doi.org/10.11517/pjsai.JSAI2025.0_1H4OS8b04 2025 ,水 高 野友 橋 貴則 之 高橋友則, 水野貴之 2025 https://doi.org/10.11517/pjsai.JSAI2025.0_1H4OS8b04 マーケットインパクトモデルを組み合わせて実用的に Vytelingum et al., 2025 https://doi.org/10.48550/arXiv.2505.15296 Vytelingum et al., 2025 https://doi.org/10.48550/arXiv.2505.15296 50

51.

(1) 高速取引の存在意義 (2) 正確な書籍、誤解を招く書籍 (3) 高速取引の主要戦略とAI実装 (4) AIの活躍は周辺領域や不公正分野 (5) 寡占化する高速取引業界の状況 (6) 株式取引所同士の高速化競争 51

52.

資産運用会社におけるAIの使われ方 資産運用会社でAIをどう使っているか紹介 できるかもとか、AIを使ってみたと言った軽いものは含まれず、 本当に実務的に役立っているものだけを掲載 投資そのものよりも周辺業務がほとんど 推進組織や法務対応の話なども 第3章 資産運用に生成AIを活用する 1 運用フロント業務 2 ESGおよびスチュワードシップ 3 営業マーケティング分野 4 バックオフィス・レポーティング分野 5 法務コンプライアンス https://store.kinzai.jp/public/item/book/B/14490/ https://store.kinzai.jp/public/item/book/B/14490/ 52

53.

SIG-FIN(人工知能学会 金融情報学研究会)の最新研究も周辺領域多い 統合報告書に得点を付ける 決算説明会での説明の客観性を判定 https://doi.org/10.11517/jsaisigtwo.2023.FIN-031_55 https://doi.org/10.11517/jsaisigtwo.2023.FIN-031_55 https://doi.org/10.11517/jsaisigtwo.2023.FIN-031_68 AIが統合報告書の文章に得点を付ける AIに好まれる統合報告書の書き方の追求 ロジカルにハッキリ書くという意味で悪くはない 統合報告書の得点向上の文章を提示 https://doi.org/10.11517/jsaisigtwo.2023.FIN-031_68 AIが決算説明会を聞いて判断する世界 AI好みの話し方も研究され始めるか? pdfからの効率的な情報収集 https://doi.org/10.11517/jsaisigtwo.2023.FIN-031_75 https://doi.org/10.11517/jsaisigtwo.2023.FIN-031_75 AIが判定する点数が高くなる文章を提案 実際には行っていないことが文章として出てきた 場合は、企業が行うべき行動を示したと言える AIが高評価する文章を提示するAI:AIが読みAIが書く時代に https://doi.org/10.11517/jsaisigtwo.2025.FIN-035_75 https://doi.org/10.11517/jsaisigtwo.2025.FIN-035_75 pdf内に膨大なデータがありそれをDB化する 53

54.

新聞記事の自動作成 https://www.nikkei.com/article/DGXLRST0444423R30C17A7000000/ https://www.nikkei.com/article/DGXLRST0444423R30C17A7000000/ https://www.nikkei.com/promotion/collaboration/qreports-ai/ 日 経新聞決算サマリ ー 日経新聞 決算サマリー https://www.nikkei.com/promotion/collaboration/qreports-ai/ 機械が記事を書き、その記事を機械が記事を読み込んで、 数値化したら要約したりする時代はもうすでに来ている AIが読みやすい公表資料とは? 54

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失敗例 元の文章が容赦なければ 容赦ない記事になってしまう 新聞記事に“ふさわしくない” ⇔ そのあたりが機械には 理解できない 55

56.

生成AIが作るフェイクニュースによる相場操縦 https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2305/23/news082.html https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2305/23/news082.html 米国国防総省近くで爆発が起きたとする偽ニュース 米国株式が一時下落する騒ぎとなった 生成AIを使えば、偽ニュースやウソをSNSや掲示板へ、 自動的に、しかも大量に書き込むことができてしまう。 しかも、生成AIは正確性は劣るにしても、文章自体は 非常に自然であり、偽ニュース作りにはこれ以上にない 技術と言えるだろう。 例えば、一見有名経営者に見える人が記者会見を行っ ている偽の動画なども現れるかもしれない 一方で、普及した生成AIが作った画像や動画であれば、 それを検出する技術もあるので、この技術の発展には期待 https://www.yomiuri.co.jp/life/digilife/column/20230913-OYT1T50158/ https://www.yomiuri.co.jp/life/digilife/column/20230913-OYT1T50158/ 56

57.

金融庁:株価操縦を狙った書き込みをAIで探す 株価操縦の疑いのある書き込みを探す研究 https://doi.org/10.11517/jsaisigtwo.2015.FIN-015_03 https://doi.org/10.11517/jsaisigtwo.2015.FIN-015_03 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45654000U9A600C1EE9000/ https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45654000U9A600C1EE9000/ 掲示板の書き込みの中から、通常ではありえないような異常な書き込みを探す → 株価操縦などの捜査の足がかりに 掲示板を使った仕手株筋が相次いで捕まったことと無関係ではない? 57

58.

東証: 売買審査業務へのAIの導入 https://www.jpx.co.jp/corporate/news-releases/0060/20180319-01.html プ レスリ リ ース プレスリリース https://www.jpx.co.jp/corporate/news-releases/0060/20180319-01.html https://sigfin.org/?020#e5b4fc80 )招 (@ 2018/3/20 東 人 待知 証 工 講 ホー 演 能 ル 資会金 学 料 融情報学研究会 人工知能学会 金融情報学研究会(@東証ホール) 2018/3/20 招待講演資料 https://sigfin.org/?020#e5b4fc80 58

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証券会社の不公正取引監視 警視庁のマネーロンダリング取締り https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1350990.html https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1350990.html AIで相場操縦を見つける https://www.yomiuri.co.jp/national/20211025-OYT1T50124/ https://www.yomiuri.co.jp/national/20211025-OYT1T50124/ https://doi.org/10.1109/DASA53625.2021.9682322 https://doi.org/10.1109/DASA53625.2021.9682322 59

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AIが勝手に相場操縦をしたら法的責任は? 世界的に法学界隈で議論されている https://doi.org/10.2139/ssrn.3788872 Azzutti et al., 2021, Machine Learning, Market Manipulation and Collusion on Capital Markets: Why the 'Black Box' matters Azzutti et al., 2021, Machine Learning, Market Manipulation and Collusion on Capital Markets: Why the 'Black Box' matters https://doi.org/10.2139/ssrn.3788872 Ullah et al., 2021, A Brief Review of Responsible AI and Socially Responsible Investment in Financial and Stock Trading https://doi.org/10.36227/techrxiv.15093762 https://doi.org/10.36227/techrxiv.15093762 Ullah et al., 2021, A Brief Review of Responsible AI and Socially Responsible Investment in Financial and Stock Trading https://doi.org/10.34382/00018588 :利 2023, の 日 利 用活 原 者AI 拓 用 と製 哉 にお 造 け 者 る の 刑 刑 法 事 上 責 の 任 諸を 問 中 題 心に 日原拓哉 2023, AIの利活用における刑法上の諸問題 : 利用者と製造者の刑事責任を中心に https://doi.org/10.34382/00018588 A European Filippo 2023,Perspective Artificial Intelligence https://doi.org/10.4337/9781035310722 and Market Abuse Legislation Filippo 2023, Artificial Intelligence and Market Abuse Legislation A European Perspective https://doi.org/10.4337/9781035310722 Dellagiacoma 2025, Negoziazione algoritmica, intelligenza artificiale e market abuse oltre l’high frequency trading https://hdl.handle.net/11565/4074064 Dellagiacoma 2025, Negoziazione algoritmica, intelligenza artificiale e market abuse oltre l’high frequency trading https://hdl.handle.net/11565/4074064 Dolmestch 2025, Inteligencia artificial como «actuante» en el derecho penal. Una primera aproximación https://doi.org/10.7238/idp.v0i43.432787 Dolmestch 2025, Inteligencia artificial como «actuante» en el derecho penal. Una primera aproximación https://doi.org/10.7238/idp.v0i43.432787 Phillips 2025, When Siri becomes a deposit broker? Finance and Society https://doi.org/10.1017/fas.2025.10018 Phillips 2025, When Siri becomes a deposit broker? Finance and Society https://doi.org/10.1017/fas.2025.10018 (おまけ:ダークプールなどの議論) Salger 2020, Dark Trading: Shedding Light on Us and Eu Regulation of the Securities Markets’ Dark Sector https://www.amazon.com/dp/3110661446 Salger 2020, Dark Trading: Shedding Light on Us and Eu Regulation of the Securities Markets’ Dark Sector https://www.amazon.com/dp/3110661446 http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/CMPP/forum/2019-02-22/ (3) (2019/2/22) 基 第 調回 4 報金 告融資本市場のあり 方に関する産官学フォーラム 第4回金融資本市場のあり方に関する産官学フォーラム (2019/2/22)基調報告(3) http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/CMPP/forum/2019-02-22/ https://www.boj.or.jp/about/release_2018/rel180911a.htm (2018/9/11) AI の 日 利 本用 銀を 行 巡 金 る 融 法 研 律 究 問 所 題「 研 アル 究ゴ 会 リ 」 ズ 報 ム告 ・書 日本銀行金融研究所「アルゴリズム・AIの利用を巡る法律問題研究会」報告書 (2018/9/11) https://www.boj.or.jp/about/release_2018/rel180911a.htm AIトレーダーが相場操縦を勝手に行うことを指摘(人工市場) , 2020 水 田孝https://doi.org/10.11517/jsaisigtwo.2020.FIN-025_82 信 水田孝信, 2020 https://doi.org/10.11517/jsaisigtwo.2020.FIN-025_82 Byrd, 2025 https://doi.org/10.1145/3768292.3770424 Byrd, 2025 https://doi.org/10.1145/3768292.3770424 https://www.sparx.co.jp/report/special/3071.html ,ス 2020 水 パ 田 ー 孝 クス 信・ ア 「 セ 人 ッ 工 ト・ 知 マ 能 ネジ がメ 不 ン 公 ト 正取引を行ったら誰の責任か?」 水田孝信 「人工知能が不公正取引を行ったら誰の責任か?」, 2020 スパークス・アセット・マネジメント https://www.sparx.co.jp/report/special/3071.html 60

61.

eKYCを不正に突破 銀行口座の開設時などの本人確認をスマートフォンで完 結させるeKYC(electronic Know Your Customer) 生成AIを使えば他人に成りすまして本人確認を突破さ れてしまう恐れがあるという研究報告 左が突破を試みている人を映したもの 右がそれをもとに生成AIが作り出したなりすまし動画 これをスマートフォンに見せて、本人確認しようとしている https://doi.org/10.11517/pjsai.JSAI2021.0_1F2GS10a02 35 e-KYC Deepfake (2021) 回人 に を 川 「 対 用 名い す の 工 た る ん 知 な 他 能 り す 学ま 会 し 全 攻国 撃大 と 対 会策の検討」第 川名のん他 (2021) 「Deepfakeを用いたe-KYCに対するなりすまし攻撃と対策の検討」 第35回 人工知能学会全国大会 https://doi.org/10.11517/pjsai.JSAI2021.0_1F2GS10a02 61

62.

銀行業界ですでに問題視されており対策も研究されているが、、、 https://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/japanese/24-J-05.html https://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/japanese/24-J-05.html 実務的に決定的となる対策手法はまだ提示されていない 62

63.

(1) 高速取引の存在意義 (2) 正確な書籍、誤解を招く書籍 (3) 高速取引の主要戦略とAI実装 (4) AIの活躍は周辺領域や不公正分野 (5) 寡占化する高速取引業界の状況 (6) 株式取引所同士の高速化競争 63

64.

金融庁・関東財務局 高速取引行為者 登録義務化 日本においては2018年より当局への登録が義務付けられた ← 検査ができるようになった 証券会社の自己売買部門同様に検査できるようになった(これまで住所すら分からなかった) 証券会社の自己売買部門が高速取引を行う場合はここに登録する必要はない (金融商品取引業者などを除く) https://www.dir.co.jp/report/research/law-research/securities/20170622_012089.pdf https://www.dir.co.jp/report/research/law-research/securities/20170622_012089.pdf これまで 証券会社 高速取引も やってる 2018年高速取引 専業 金融商品取引業者として 金融機関なの? 住所すら分からない 検査されてた 証券会社 高速取引も やってる 金融商品取引業者として 検査される(変わらず) 高速取引 専業 高速取引行為者として 住所分かった&検査可能 同じ高速取引をやっていても、ルールを守っているかどうかの検査が 入る・入れないと不平等があった。登録義務化でこれが解消された? 64

65.

全53社、日本所在は1社のみ(2025/10/23現在) https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/kousoku.pdf https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/kousoku.pdf 秘密主義で公には話をしてくれない。しかし、上場企業もあり開示資料ある会社も。 ダルマ・キャピタル(唯一の日本所在)は最近取材に応じている。 65

66.

(参考)高速取引を行いたい方はこちらを熟読ください https://www.fsa.go.jp/common/shinsei/hst/index.html https://www.fsa.go.jp/common/shinsei/hst/index.html 66

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最大手のバーチュ 2016/4/5 日本経済新聞 米CEOに聞く超高速取引の世界 シングルヒットで収益蓄積 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO99122930R30C16A3I00000/ https://www.nikkei.com/article/DGXMZO99122930R30C16A3I00000/ 唯一の上場企業で、唯一ある程度の情報開示がされている業者 マーケットメーカー戦略と裁定取引が主要な戦略 67

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1238日のうち負けたのは1日だけについて https://www.jpx.co.jp/corporate/research-study/working-paper/tvdivq0000008q5y-att/JPX_WP_SP.pdf https://www.jpx.co.jp/corporate/research-study/working-paper/tvdivq0000008q5y-att/JPX_WP_SP.pdf 勝率が50%ちょっとでも1日のうちに おびただしい回数勝負するので 勝ち越す可能性は非常に高い 68

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バーチュは上場企業:いろいろ分かる VIRTU: Financial 2025Q2 Earnings Supplement https://ir.virtu.com/static-files/ee882342-336d-4a17-971c-6572f75ead98 https://ir.virtu.com/static-files/ee882342-336d-4a17-971c-6572f75ead98 当然、利益なども開示されている 高速取引そのもののほかに取引所やブローカー(代理執行)のような商売もしているらしい 主要な戦略はマーケットメイク戦略と恐らく裁定取引 高速取引の利益は減少傾向だが、市場全体の取引が増えると利益は増加 ブローカー業務の重要度が増している 69

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唯一日本所在 ダルマ・キャピタル 2019/1/16 NHK 株価の波乱要因?! 超高速取引の実態は https://archive.is/L34Ih ( アーカイブ) https://archive.is/L34Ih (アーカイブ) やはり、マーケットメーカー戦略と 裁定取引が主要な戦略 2021/5/14、テレビ東京「ガイアの夜明け」にでてました https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/business/entry/2021/023748.html https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/business/entry/2021/023748.html https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/gaia/vod/post_226800 テレ東BIZ https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/gaia/vod/post_226800 https://youtu.be/fM91_V_33U4 要約版 https://youtu.be/fM91_V_33U4 70

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進む装置産業化 2017/3/22 The Wall Street Journal 高速取引に陰り フラッシュ・ボーイズに苦難の時代 先週米HFT大手バーチュ・ファイナンシャルが同業のKCGホールディングスに買収を提案したとのニュース が流れたが、その背後にはこうした状況があったのだ。この買収が実現すれば、 電子取引で米最大手2社が統合することになる。バーチュの株価は15年の上場時から約4分の1に下 落し、KCGは過去2四半期にわたり主力のマーケットメーキング事業が赤字だった。多くの業界大手が撤 退した。インタラクティブ・ブローカーズ・グループのトーマス・ピタフィ会長兼最高経営責任者(CEO)は 今月、オプション市場のマーケットメーキング業務から撤退する方針を明らかにした。これはピタフィ氏が 1980年代に創設に参画した事業だ。かつてヘッジファンド大手シタデルでグローバルなHFT業務を率い、 その後はHFT会社テザ・テクノロジーズを立ち上げたミーシャ・マリシェフ氏は昨年11月、テザが自己勘定 取引から手を引くと述べた。 https://jp.wsj.com/articles/SB11171128282105153616004583037991111080344 https://jp.wsj.com/articles/SB11171128282105153616004583037991111080344 現在の航空業界のような状況になるだろう これ以上の高速化技術がさらなる流動性向上につながるかは疑問 71

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投資家は高速取引業界をどう思っているか? 金融庁は60社程度のHFTの登録を見込む。世界大手はほぼ日本市場でも取引している。競 争は激しく、収益力は低下している。スパークス・アセット・マネジメントの水田孝信ファンドマネー ジャー兼上席研究員は「彼らがもうけすぎていると、他の投資家が高く買わされていることにな るから、今ぐらいがちょうどいいのでは」と指摘する。 かつて、証券会社の自己売買部門が提供していた流動性をHFTが代わって担うようになったい きさつもあり、HFTなくしては厚みのある市場は成り立たなくなった。 不公正な取引は他の投資家と同じように摘発しなければならない。株式の値幅制限のような ルールを入れにくい為替市場も急変動を抑制する仕組みが必要だ。だが、ルールを守っている以 上はHFTは市場のインフラにもなり、「生かさず殺さず」ということだろう。 2019/2/4松崎雄典 「高速取引は「生かさず殺さず」 市場の設計、道半ば」,日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40796210R00C19A2000000/ https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40796210R00C19A2000000/ 72

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高速取引業者への課徴金の引き上げ https://www.nikkei.com/article/DGKKZO90649880U5A810C2MM8000/ https://www.nikkei.com/article/DGKKZO90649880U5A810C2MM8000/ 取り締まれていないケースがあるのだろう 一件あたりが切り捨てでゼロになっていた課徴金を少しでも取れるようにすれば、注文件数が莫大なので、 けっこうな金額になるハズ 73

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(1) 高速取引の存在意義 (2) 正確な書籍、誤解を招く書籍 (3) 高速取引の主要戦略とAI実装 (4) AIの活躍は周辺領域や不公正分野 (5) 寡占化する高速取引業界の状況 (6) 株式取引所同士の高速化競争 74

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取引所はサーバーである == 過去 == == 現在 == 人が集まる「市場」 データーセンターにある「サーバー」 https://www.jpx.co.jp/systems/connectivity/ https://www.jpx.co.jp/corporate/about-jpx/history/00-01.html https://www.jpx.co.jp/corporate/about-jpx/history/00-01.html https://www.jpx.co.jp/systems/connectivity/ 75

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(参考)テレビでよくみるあれは?1/2 どちらかと言えば飾りです 中の人もトレーダーでは ありません 東証職員のうち一部の部 署の人が中で働いている https://www.jalan.net/kankou/spt_13102aj2200024782/ https://www.jalan.net/kankou/spt_13102aj2200024782/ 76

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(参考)テレビでよくみるあれは?2/2 ニューヨーク証券取引所には現在でも人手のブローカーや マーケットメイクするトレーダー(スペシャリスト)が存在 (もちろん、電子取引が主です) )ラ https://toyokeizai.net/articles/-/145694 (2016/11/9: ト ンプ当確時 (写真) https://toyokeizai.net/articles/-/145694 (2016/11/9: トランプ当確時) http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2004/2004aut02.pdf (詳細) http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2004/2004aut02.pdf 77

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感染者が出たあと、2020/3/23より入場停止になっていた(左) https://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPKCN21R3IU?feedType=RSSfeedName=special20 (写真) https://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPKCN21R3IU?feedType=RSS&feedName=special20 https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2020/03/ny142.php (詳細) https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2020/03/ny142.php 5/26から徐々に再開(右) https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59611040W0A520C2000000/ https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59611040W0A520C2000000/ 諸説あるが、いなくても大きな影響はなかったといわれている 78

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取引所同士の高速化競争 取引所が多数存在 ⇒ 投資家に選んでもらえる取引所 100円で 売る 99円で 買う 株式 99円の売り 取引所C 高速取引 業者 (裁定取引) 少しでも 早く売りたい 株式 100円で買い 高速 取引所A 株式 100円で買い 低速 取引所B 他が同じ条件なら注文処理が早い取引所に注文 何度も取引できる、機会を逃したくない 他の取引所より注文処理が 少しでも速いことが重要 高速化競争 マーケットメイク戦略においても 高速な取引所の方がチャンスが多い ということもある 79

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コロケーションサービス いち早く注文が取引所に届くように隣のサーバーラックに ⇒ コロケーションサービス(取引所提供) 同一データセンター 高速取引 プログラム 一般 投資家 高速取引業者 自動発注 取引所サーバー 取引所 80

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東京証券取引所提供コロケーション・サービス https://www.jpx.co.jp/systems/connectivity/ https://www.jpx.co.jp/systems/connectivity/ 81

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(参考動画) コロケーションサービスのメニューや施設の性能を以下の動画にて短時間で分かりやすくご紹介しております。どうぞご覧ください。 https://www.jpx.co.jp/systems/connectivity/ https://www.jpx.co.jp/systems/connectivity/ 使用しているケーブルについての説明とかも (2分36秒あたり) サーバー2重化、電源、空調とかも(2分30秒~4分くらい) 82

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まとめ ・高速取引は古本屋と同じように社会の役にたっている ・高速取引の主要な2戦略はマーケットメーカー戦略と裁定取引 いずれも古くからある手法で、その手作業が機械化されたもの 速さこそがすべてであり、AIのような遅いものは事前のチューニングなどに使われる ・大量注文を裁く執行アルゴリズムがマーケットメーカーと戦う機械同士の戦い しかし、執行内容は人間が決め、マーケットメイカーも人間が作ったシンプルな戦略 人間が機械同士を戦わせているみたいなイメージ ・高速取引は各種ハードウェアへの投資が巨額のため 以前ほどは儲かっておらず装置産業化・寡占化している ← 航空業界みたい 安全な主要2戦略ではなくリスクの高いディレクショナル戦略が増加 不正取引の増加も懸念されていて、法改正が進んでいる ・高速でなくても投資そのものはAIにとって苦手分野であり、調査や作業の効率化での活躍が主 ・投資の世界でAIは不正取引を補佐する強力な道具であり大きな脅威 その対策もAIを活用しなければならない 83