人生100年時代の勉強会(勉強会)

3.8K Views

April 28, 23

スライド概要

エンジニアにとっての勉強会の意義についてあれやこれやお話をします.
すぐには役に立たないかもしれないけれど何かのヒントになるようなお話になれば嬉しいなあと思います.

profile-image

オープンソースが好き 情報理工学系研究科博士課程学生,データベースの研究しています

シェア

またはPlayer版

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

関連スライド

各ページのテキスト
1.

⼈⽣100年時代の勉強会 (仮題) よしおかひろたか 1

2.

概要 • エンジニアにとっての勉強会の意義についてあれ やこれやお話をします. • すぐには役に立たないかもしれないけれど何かの ヒントになるようなお話になれば嬉しいなあと思 います. • 皆さんからの質問も受け付けます. 2

3.

⼈⽣100年時代の…? • 主語がでかいぞ • 勉強会? • 学び⽅? • どうやって学ぶの?? • 何を学ぶの??? 3

4.

⼈⽣100年時代の学び⽅〜 定年後の⼤学院⽣活 脳はバージョンアップできる • ⾃⼰紹介 • • • • よしおかひろたか 1958年9⽉4⽇⽣まれ(満62歳) 約5年前(2018年)9⽉、満60歳、定年退職しました。 同年9⽉より、⼤学院情報理⼯学系研究科に⼊学し、 博⼠課程学⽣です • ⼀回⽬の⼤学卒業以来プログラマとしてキャリアを つんできました。 その経験をもとにいろいろとお話をします • ⼈⽣100年時代の⽣き⽅を考えたいと思います 4

5.

今⽇のお話 • 技術者・研究者としてのキャリア • ⼈⽣100年時代の学び⽅,定年後の⼤学院⽣活 • ⾃分を題材,エモい話.すぐに役に⽴つ話は⼀切ない • 現役⼤学院⽣の学び⽅ • 仕事を辞めて専業学⽣になった元エンジニアの⽇々の失敗の記録 • 対象 • コロナ時代に⽣き抜くヒントを得たい⼈、学びなおしたい⼈向け。 • ⾼齢化社会,定年など,⽇頃あまり考えたことがないことを考 えるヒントもまぶしたい • 楽しい,⽣き⽣き,幸せなどポジティブな学⽣⽣活を紹介 5

6.

なぜ学ぶのか • 正解はない • 答えは⼈それぞれ • ⾃分で考える • ⽣きることを考える 6

7.

会社員にとっての学びってなんだ? • 仕事に必要なものを学ぶ • 例:資格試験,英語(TOEIC),Oracle Master • 仕事に関係するけど,知的好奇⼼で学ぶ • 例:勉強会,新技術,コンテナ技術,仮想化 • 趣味 • 例:⽂学の読書会,ドストエフスキーを読む • 独学 • 「独学⼤全」読書猿著, https://amzn.to/3h7FCwf • 独学者とは,学ぶ機会も条件も与えられないうちに,⾃ら学びの中に ⾶び込む⼈である(8ページ) 7

8.

わたしの学びの原点 • カーネル読書会 • 1999/4から始まったLinuxカーネ ル界隈の勉強会 • カーネルハッカーからLinux初⼼ 者まで幅広い参加者 • 不定期開催 • ビアバッシュ(ピザとビール)が デフォルト • オープンソースにまつわる技術的 な話題がメイン • https://web.archive.org/web/20 111104223032/http://ylug.jp/m odules/pukiwiki/index.php?histo ry Internet Archive に当時の年表 があった • 左の写真は2009/10 Linusさんと https://japan.zdnet.com/article/35012872/ ハッカーマインド⾏こう 8

9.

当時のわたしの野望(2009年頃) 第100回カーネル読書会の作り⽅ https://www.slideshare.net/hyoshiok/100-2338625 9

10.

なぜ学ぶのか • カーネル読書会が原点 • ⾃分の知的好奇⼼を満たすため • いろいろと達成して燃え尽きた,51歳 • 仕事,技術理事 • エンジニアにとって働きやすい環境を構築, 社内コミュニティ醸成,開発広報,テクノ ロジーカンファレンス事務局, 10

11.

⼈⽣100年時代の学び⽅ • パラダイムシフト時代に⽣きる • 脳はバージョンアップできる 11

12.

⾃⼰紹介的なIT史 • パラダイムシフト • 起こっていることを知らない • 起こっていることに気がつかない • 起こったあとはアタリマエになる 12

13.

⾃⼰紹介的なIT史 • パラダイムシフト • • • • 起こっていることを知らない 起こっていることに気がつかない 起こったあとはアタリマエになる もともとはトーマス・クーンが「科学⾰命の構造」で唱えた • ⽇本の近代史 • 明治維新(1867年)、⻄洋と出会い産業⾰命を知り、富国強兵 • 敗戦(1945年)、軍国主義をやめ平和で経済的に豊かな国を⽬指す • コロナ禍(2020年〜),AIの時代,世界との共存を模索? 科学⾰命の構造,トーマス・クーン https://amzn.to/2QZiw00 13

14.

1970年代〜約50年(詳細は略) 年代 1971年 マイクロプロセッサ (Intel 4004) 1975年 Microsoft BASIC 1977年 Apple II, TRS-80, PET 中学1年⽣(13歳) ⼤学⼊学(18歳) RSA Public Key Cryptography 14

15.

2010年代 年代 2011年 東⽇本⼤震災 52歳 2012年 深層学習(機械学習) 54歳 2013年 1000 speakers conference in English 55歳 2018年9⽉ 60歳定年退職 60歳 東京⼤学⼤学院情報理⼯学研究科⼊学 15

16.

※arXivに掲載されている「Machine Learning」に関連する論⽂数の推移 https://ja.wikipedia.org/wiki/ArXiv 16

17.

GPTは突然来たのか? • Deep Learning 2012年頃 • RNN • CNN • Transformer 2017 • BERT 2018 • GPT-3 2020 17

18.

ライフ・シフト、ワークシフト 脳はバージョンアップできる • ⼈⽣100年時代,⼈間の能⼒はいくつになっても開発できる • 就職、引退の常識が変わる • 60歳定年は引退ではない • 就職、複職、フリーランス、学び直し • ⼈間の能⼒はある年齢でピークに達して、その後は落ちるとい うパラダイム • 「20代で就職して、60代で引退する」というモデル • ⽼害モデル • 学ぶことを拒否した⽣き⽅ 18

19.

脳はバージョンアップできる • いくつになっても、脳は使っているとシナプスもニューロンも 活性化する。 • 学びをやめたら⽼化が始まる。⽼害モデルと違う。 • 脳はバージョンアップできる。 19

20.

パラダイム • 古いパラダイム(当たり前すぎて⾒えなくなっていること) • ある年齢で引退する(定年退職) • 年功序列(年令によって収⼊があがる) • 能⼒には限界がある • 新しいパラダイム • 定年退職は引退ではない、働き続ける(⽣涯現役)、引退しない • 年収を下げることを躊躇しない(新しいことにチャレンジするため) • 能⼒には限界がない • 制度・仕組みはパラダイムシフトに追従できない • 仕組みができるのを待っているのは危険、⾃分で考えて動く 20

21.

前例がなくて、変化が前提 • パラダイムシフトの時代には⾃分で動く • ⾃分の例 • プログラマとして就職する(前例がほとんどいない) • 転職(36歳) • 60歳で博⼠課程の学⽣ • 変化があるのが当たり前、パラダイムシフト • メインフレームからミニコンピュータ、ワークステーション、PC、モ バイル • 変化がゆっくりのものもある • プログラム内蔵型コンピュータ(ノイマン型と呼ばれることがある) • APIはUnix(Posix)に収斂した 21

22.

⽣涯現役、引退しない、定年≠引退 • 脳はバージョンアップできる • 新しいことに習熟できる • 定年退職したのは、働き続けるため • ⾃分をバージョンアップすることに興味がある • 働き続ける、引退しない • 楽しいから • 学び続ける • 楽しいから(学⽣になった) • 年齢を⾔い訳にしない • 歳だから覚えられない、できないということはない。若い頃ほど勉強してい るのか? 22

23.

学び続ける(なぜ学⽣なのか) • 脳はバージョンアップできる • なれないことには時間がかかるが訓練しているうちに徐々にできるようにな る。逆上がりとか⾃転⾞に乗るのと⼀緒 • カーネル読書会は学び続ける場だった • エンジニアとして⼊⼒が必要だ • 社会⼈学⽣は⼤変。⼆⾜のわらじは厳しい。 • 専業学⽣になった(社会⼈学⽣との違い) • 情報⽣産者になりたい • 解くべき問題を⾒つけ、それを解決する • パラダイムを疑う訓練をしている(研究者の卵) • 基本的なスキルを⾝につける訓練をしている • 実験、観察、分析、発⾒ 23

24.

学⽣と会社員の違い • 学⽣、⾃由 • すべての⾏動は⾃分が決める,究極の独学者 • 考える,学ぶ必要がある • 脳にはいい刺激になる • 毎⽇毎⽇違う • 会社員、環境は与えられる • ビジネス環境,競合会社,上司、部下、同僚、⾃分が決められるものはあま りない。 • 考える必要性が低い。考えない。 • 脳にダメージを与える • 昨⽇と同じ今⽇。今⽇と同じ明⽇。 • 仕事ばっかりしているとバカになっちゃうよ(ヨシオカの学びの法 則) • 脳はバージョンアップできる 24

25.

コロナ時代に明らかになったこと? (個⼈的な感想です) • 通勤って必要なの • ⾃炊もいいね • 満員電⾞ • 読書量が減った • 東京に集中しすぎていない • 濃厚接触したい • 出張って必要なの • 旅⾏したいけどなあ • 宴会 • ⾺⿅騒ぎしたい • ハンコは重要ですね • 引きこもりは意外と楽だ • 仕事って何のためにやるの?お⾦のため • ⼦育てが⼤変そうだ(他⼈事) • やっぱとは⾔っても経済重要だよね?本当 • ネットがあれば⽣きていける • そーいえば,オリンピックってあったよね • 変化に抵抗している⼈がいっぱいいる • オフィスいらなくね • インフラがすごい • 定期券無駄になっちゃた • それでも学ぶのはなぜ 25

26.

現役の⼤学院⽣(博⼠課程) • 脳はバージョンアップできる • 年齢を⾔い訳にしない。わからないことをわからないという。できないことをでき ないと認識して、できるようになる訓練をする。 • 証明とかわからない。学⽣さんに聞く。⾃明ですね。え。教えてもらう。あー、なるほど、そ うなんですね。⼀度わかるとわかる回路ができる。 • 情報理⼯学系研究科電⼦情報学専攻 博⼠課程3年⽣ • 論⽂を読む、読む、読む、まとめる、発表する、深く読めていないことに 気が付く、どのようすれば深く読めるようになるか考える、論⽂を読む、 …、実験をする、データをみる、データを纏める、グラフを描く、観察す る、分析する、アノマリーを発⾒する、…、解くべき問題を発⾒する、 • サークルにも⼊った、60歳 • 学⽣⽣活マジ楽しい、ウェーイ,酒飲まなくても楽しい • 収⼊ゼロ,雑所得 26

27.

論⽂を読めないということ • 論⽂を読む,まとめて発表する • 資料を作って説明する(ゼミ形式の輪読会) • 時間さえあれば,誰でもできると思っていた • ⾃分にはできない • 読んでもわかっていないことが分かっていなかった • 知らないことと知っていることの区別はつくと思っていた • それがそうでもない • 論⽂紹介の質疑応答で発覚する • 質問される,答えようと思う,説明できない,理解していないことを初めて発⾒す る. • ⾃分が無⾃覚に表⾯的に読んでいたということを発⾒する • 昔からある⽅法(輪読会)の意義を初めて知った.実感した. • 学ぶことの奥深さを実感した.⼤変だが楽しい. 27

28.

研究者になりたい • 学ぶから研究するへのフェーズに移⾏する必要がある • 必要なスキルを訓練中 • 実験をする • • • • 計画を⽴てる,どのように計画を⽴てるか皆⽬検討がつかない 実験をする,どのように実験するのか皆⽬検討がつかない 実験結果をまとめる.どのようにまとめるか皆⽬検討がつかない 実験結果を発表する.どのように発表するか皆⽬検討がつかない • 実験をすると,実験の不備,抜け,漏れがあれやこれやいっぱい出てくる. 再実験,再々実験.収束しない. • 設定する軸,評価する軸がふらつく. • 結果を観測する • 結果をまとめる • グラフが描けない,図が描けない,論⽂が書けない • 延々とできないことリスト • ⼤学は研究者を育てる場 28

29.

⼆度⽬の⼤学院⽣について • ⼤学について主体的に考えるようになった • • • • • 最初の時は何も考えていなかった 私学と国⽴⼤学の⽴ち位置の違いを理解した 東京⼤学設⽴140年、前半の70年と後半の70年 ⼤学という社会的共通資本の意味が⾒えていなかった 勉強会で話をすることによって、それを⼗分⾔語化していないことに気がついた。 • 働き⽅、⽣き⽅について主体的に考えるようになった • 働きたい職場とはなにか • インターしたい♪ • ガチで働く気です • ⼈⽣はわたしに何を求めているのか • 博⼠課程を修了した学⽣にどのような価値があるのか? • 「夜と霧」 29

30.

⼆度⽬の⼤学院⽣になってよかったこと 順不同 • 勉強が楽しい • 本をいっぱい読める • ⾃由だ • ⾃分のやることを⾃分が 決める • 会社員時代は、上司や会 社の意向 • 収⼊がない • 今まで知らないことをいっぱ い知れる • 無知の知を知る • 世間は優しい • 学⽣は優遇されている • 図書館使い放題 • Wifi使い放題 • • • • • • • • • 授業取り放題 研究室に⾃分の机がある 研究室のプリンタ使い放題 研究室の学⽣さんいいひと ばっかだ 輪読会でいろいろ教えてもら える 知らないことを聞ける 知らないことを知らないと⾔ える ⾃分のスキルの無さがよく分 かる 昨⽇の⾃分より今⽇の⾃分の ほうができることが増えてい る • ⼈⽣で⼀番勉強している • 60歳過ぎても成⻑を実感でき る • 収⼊がなくても幸せだ • 仕事をやめて専業学⽣になっ てよかった • ⾒えていないものに満ちてい るということを知った • 酒をやめてよかった • ⼆度⽬の⼤学⽣になってよ かった • 延々と続くよかったことリス ト 30

31.

⼆度⽬の⼤学院⽣になって思ったこと • ⼤学は何度進学してもいい. • ⼤学は4年で卒業しなくてもいい • ⼤学というインフラは教育機関 として完成されている • 変化している • もっと多くの⼈にその機能を 知って欲しい(⼀ユーザとし て) • 2度⽬の学⽣をすると学ぶこと の楽しさがさらに広がる • ⾃分のスキルが拡張していく感 覚がある • ⼊学したときの⾼揚感 • コースを修了したときの達成感 • 研究室の⼈たちがすごく尊敬で きる • コロナの時代でいい⾯が増幅さ れている感覚がある • 学⽣を⽀援する体制になってい る • ⻑く考える機会に満ちている • ⾒えていない,認識できていな い地平線を⾒たい • ⾃分をバージョンアップしたい 31

32.

まとめ • いろいろなパラダイムシフトがあった. • コロナはパラダイムシフトだ • いまここにいるのはその時その時、⾃分で選択した結果 • 本、⼈、出会いに恵まれた(本を読もう、旅に出よう、恋をしよう) • 脳はバージョンアップできる • ⾃分をバージョンアップしよう • 社会もバージョンアップしてほしい(⽣き⽅⾰命) • ⼤学という機関の価値を再認識した • 多くの⼈に知って欲しい 32

33.

わたしのゆめ • 年齢関係なく学び続けられ る世界 • ポストコロナ時代に幸せに なるために博⼠課程でバー ジョンアップするという⽣ き⽅が当たり前になる世の 中 33