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August 09, 25
スライド概要
『氷菓』の心理的安全性と多重解決ミステリからチームでの課題解決を学ぶ!
2025/8/10
『【劇場版】アニメから得た学びを発表会2025』登壇資料
https://engineers-anime.connpass.com/event/360301/
https://engineers-anime-2025-lp.pages.dev/
この発表では、『氷菓』を例に、心理的安全性と多重解決がチーム内での課題解決にどのように寄与するかを探ります。不確実な世界において、アイディアの共有や議論が重要であり、心理的安全性はその実現を支えます。具体的には、多重解決の概念をソフトウェア開発に適用し、メンバー同士が率直に意見を出し合える環境作りの重要性を説明します。千反田えるのキャラクターを通じて、心理的安全性を得るための行動を示し、開発者が集団での知恵を生かす方法を考察します。
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米澤穂信 . 氷菓 . KADOKAWA . 2001
広木大地 . エンジニアリング組織論への招待 ~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング . 技術評論社 . 2018
石井遼介 . 心理的安全性のつくりかた . 日本能率協会マネジメントセンター . 2020
Amy Edmondson . 恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす . 英治出版 . 2021
Amy Edmondson . Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams . マサチューセッツ工科大学 . 2009 . https://web.mit.edu/curhan/www/docs/Articles/15341_Readings/Group_Performance/Edmondson%20Psychological%20safety.pdf
Amy Edmondson . Measuring Psychological safety . Future Talent Learning . 2019 . https://www.futuretalentlearning.com/hubfs/Nutshells/Templates/FTL_Measuring%20psychological%20safety%20NB_V3.pdf
Ruby/Javaプログラマー。エンジニアリングマネージャー。 軽度の広く浅いオタク。
『氷菓』の心理的安全性と 多重解決ミステリから チームでの課題解決を学ぶ! 【劇場版】アニメから得た学びを発表会2025 河野 裕隆 2025/08/10
伝えたいこと 不確実な世界ではアイディアが多いほうが強い そのため、アイディアをみんなで出し合える関係性が重要 => 心理的安全性 心理的安全性を「勝ち取る」行動を進めよう!! 2
本題に入る前の注意 ● 資料、登壇者の写真撮影OKです ● 作品の根本的に対するネタバレはないですが、一部内容 を予想させるものがあります ● スライドは公開しているので X で探してください 3
コンテキスト共有 - 『氷菓』とは 米澤穂信の推理小説の第1巻のタイトル 同作品のアニメ作品 ≒『〈古典部〉シリーズ』 4
コンテキスト共有 - 『氷菓』の特徴 「史料批判」 「多重解決」 エンジニアリングに近い!! 5
コンテキスト共有 - 史料批判 テキスト・クリティークとも呼ばれる 「史料は必ずしも正確ではない」 一定の恣意性や「誤解」が混ざりうるため、正当性、妥当性 の判断が必要 6
コンテキスト共有 - 多重解決 今回の本題 1つの事件に対して多数の解決(推理)が提示 => 探偵たちの推理合戦など 7
発表で話すこと 1. 多重解決とソフトウェア開発 2. 心理的安全性 3. 『氷菓』に学ぶ心理的安全性の作り方 8
発表で話すこと 1. 多重解決とソフトウェア開発 2. 心理的安全性 3. 『氷菓』に学ぶ心理的安全性の作り方 9
エンジニアリングとミステリの相違点 エンジニアリング ミステリ 要件定義 解くべき謎の定義 設計 証拠集め 実装 推理 テスト 犯人による自白 10
ソフトウェア開発と不確実性 『エンジニアリング組織論への招待』 > 「エンジニアリング」は、不確実性を下げ、情報を生み出 す過程 ● 方法不確実性:HOW ● 目的不確実性:WHY ● 通信不確実性:コミュニケーション 11
ソフトウェア開発と不確実性 ● 方法不確実性:HOW ● 目的不確実性:WHY 予見できていれば不確実性は下げられる => 集合知で補える 12
『氷菓』における不確実性へのアプローチ 1. 2. 3. 4. メンバーが資料を持ち寄る 資料をもとにした推理を示す => 多重解決の部分 他の資料で否定される => 史料批判の部分 すべての資料をもとに解決する 13
『氷菓』における不確実性へのアプローチ メンバーで議論することにより、方法不確実性を下げている 探偵の事件解決プロセスとソフトウェア開発の類似性 14
エンジニアリングにおける多重解決 ● プランニングポーカー ● 設計/コードレビュー 自分の推理とメンバーの推理から、ベストを探る工程 形式知を補い合い集合知にしていく 15
ソフトウェア開発と不確実性 ● 通信不確実性:コミュニケーション 集合知で補うためには避けられないし、不確実性が高まる では、できるだけ通信不確実性を下げるには? => 心理的安全性を高める 16
多重解決とソフトウェア開発のまとめ ● ● ● ● ソフトウェア開発とミステリの構造は似ている(断言) ミステリでは多重解決というジャンルがある 多重解決は普段開発で行っている要素が詰まっている エンジニアが多重解決するには心理的安全性が重要そう 17
発表で話すこと 1. 多重解決とソフトウェア開発 2. 心理的安全性 3. 『氷菓』に学ぶ心理的安全性の作り方 18
心理的安全性の因子 4つの因子で成り立つ 『心理的安全性のつくりかた』 1. 2. 3. 4. 話しやすさ:率直に気兼ねなく話せる 助け合い:状況に寄らずお互いに助け合える 挑戦:アイディアの提案や挑戦的な実践が許される 新奇歓迎:多様な価値観、アイディアを歓迎する 19
心理的「非」安全な場への不安 4つの不安 『心理的安全性のつくりかた』 1. 2. 3. 4. 無知だと思われる不安 能力がないと思われる不安 邪魔をしていると思われる不安 ネガティブだと思われる不安 20
なぜ心理的安全性が必要なのか 不安を感じず、発言、提案ができる ソフトウェア開発は不確実性を減らしていく作業 不確実な世界ではアイディアが多いほうが強い そのため、アイディアをみんなで出し合える関係性が重要 21
心理的安全性のまとめ ● 日本では4つの因子で成り立つ ● ない場合は4つの不安に苛まれる ● 意見を出し合えるチーム(=多重解決が行えるチーム)に は必要そう 22
発表で話すこと 1. 多重解決とソフトウェア開発 2. 心理的安全性 3. 『氷菓』に学ぶ心理的安全性の作り方 23
『氷菓』での心理的安全性 メンバー内で推理を持ち寄る メンバー内で推理を高め合う メンバー内で推理を「否定」する メンバー内で推理を認め合う => 心理的安全性が保たれているように見える 24
『氷菓』での心理的安全性 うち3人は「腐れ縁」 「千反田える」のみが高校からの付き合い => 「千反田える」はどのようにして心理的安全性を得たか 少人数チームに中途入社パターン! 25
『氷菓』の「千反田える」とは いわゆるヒロインキャラ:「えるたそ~~~」 ● パーソナルスペースが狭め ● 好奇心旺盛 ○ 好奇心に引っ張られれば誰にでもグイグイ近づいていく 26
『氷菓』での「千反田える」の振る舞い ● 質問や相談をしやすい環境を作る ● 会話の機会を増やす ● 共通の価値観や目標を設定する 27
『氷菓』での「千反田える」の振る舞い 質問や相談をしやすい環境を作る ● 「私、気になります」 ○ 仲良くなっていない状態でも積極的に質問 ○ 無知を恐れない => 他のメンバーへ波及 28
『氷菓』での「千反田える」の振る舞い 会話の機会を増やす ● 部活時間外でのコミュニケーション(登下校) ● 家に招く ○ プライベート空間への受け入れ ○ 空間の違いによる会話の促進 29
『氷菓』での「千反田える」の振る舞い 共通の価値観や目標を設定する ● 真実を探るという共通の目標を設定 ○ 謎を解くためならアイディアを受け入れる表明 ○ その姿勢を体現し共有 ● なぜ、この謎を知りたいのかを明かす 30
「千反田える」を実践する例 ● ● ● ● ● (出社なら)一緒に帰る 飲み会 プライベートで遊びに行く プロジェクトの目標を共有 疑問を積極的に確認 31
『氷菓』に学ぶ心理的安全性の作り方のまとめ ● 千反田えるに学ぶ ● 積極的な行動、自己開示が心理的安全性を生む ○ 自分から仲良くなりたい意思をどんどん伝えていくことが重要 ● 俺が、俺たちが千反田えるだ!!!! 32
伝えたいこと - 再掲 不確実な世界ではアイディアが多いほうが強い そのため、アイディアをみんなで出し合える関係性が重要 => 心理的安全性 心理的安全性を「勝ち取る」行動を進めよう!! 33
伝えたいこと(スライドをもとに言い換え) エンジニアリングは不確実性を減らしていく過程 探偵たちの多重解決のように我々もどうしたら良いか考え、 議論を深めることが重要 発言しやすい場を得るために、千反田えるの姿勢を見習おう 34
自己紹介 Twitter(X):@hk_it7 https://x.com/hk_it7 ロール:エンジニアリングマネージャー、テックリード コミュニティ ● 東葛.dev:主催 ● きのこカンファレンス:コアスタッフ ● Kashiwa.rb:メンバー 35
以降は時間が余ったときのおまけスライド ● 心理的安全性の確かめ方 ● 史料批判と生成AI時代 ● 参考文献リスト 36
心理的安全性を確かめる 心理的安全性の有無を問いを通して確認する Amy Edmondson氏の著作 『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベー ション・成長をもたらす』 『Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams』 37
心理的安全性を確かめる 簡易的には7つの質問で計測する 『Measuring Psychological safety』 1. ミスをすると、不利に扱われることが多い 2. メンバーは、問題や難しい課題を提起できる 3. メンバーは、自分と違うという理由で、他の人を拒絶す ることがある 38
心理的安全性を確かめる 『Measuring Psychological safety』 4. リスクを負っても問題ない 5. メンバーに助けを求めるのは難しい 6. メンバーに私の努力を故意に損なうような行動をとる人 はいない 7. メンバーと働くことで、私の独自のスキルと才能が評価 され、活用される 39
伝えたいこと(スライドをもとに言い換え) - 再掲 エンジニアリングは不確実性を減らしていく過程 探偵たちの多重解決のように我々もどうしたら良いか考え、 議論を深めることが重要 発言しやすい場を得るために、千反田えるの姿勢を見習おう 40
余談 - 史料批判 AIに聞いた答えをどのくらい信じるか ● ハルシネーション ● 生成AIの忖度(≒恣意的) => 中立的な回答が得られているかわからない 41
参考文献 1. 2. 3. 4. 5. 6. 米澤穂信 . 氷菓 . KADOKAWA . 2001 広木大地 . エンジニアリング組織論への招待 ~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリ ング . 技術評論社 . 2018 石井遼介 . 心理的安全性のつくりかた . 日本能率協会マネジメントセンター . 2020 Amy Edmondson . 恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をも たらす . 英治出版 . 2021 Amy Edmondson . Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams . マサ チューセッツ工科大学 . 2009 . https://web.mit.edu/curhan/www/docs/Articles/15341_Readings/Group_Performa nce/Edmondson%20Psychological%20safety.pdf Amy Edmondson . Measuring Psychological safety . Future Talent Learning . 2019 . https://www.futuretalentlearning.com/hubfs/Nutshells/Templates/FTL_Measuring %20psychological%20safety%20NB_V3.pdf 42