クロスファンクショナルチームになるための壁崩しのお作法 #scrumniigata

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May 10, 25

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温泉旅館でゆっくりしたいスクラムマスター。

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

クロスファンクショナルチームになるための 壁崩しのお作法 asato Scrum Fest Niigata 2025 2025-05-10

2.

自己紹介 asato 株式会社マネーフォワード スクラムマスター X: @at_946 Blog: at-blog 個人開発: Tenkiru

3.

Target Audience チームの中に壁を感じており、その壁をなんとかして崩したいと思っている人 Learning Outcome 壁崩しに有効なお作法(マインドセットとプラクティス)を獲得できる

4.

壁とは?

5.

壁 精神的・心理的な隔たりがあるというメタファー 職能間やチーム間などの集団間によくある あなたのチームにもきっとあるはず!

6.

職能間の壁は何をもたらすのか? 「壁がある」の恩恵 「壁がない」の恩恵 その職能の 目標や責任が明確になる 全体の目的や目標 に興味・関心が向く 職能内の仕事 を最適化しやすい Value Streamの全体最適 に目が向く その職能の 専門性に集中できる 複数の専門性の 化学反応が起こるかも 職能間の無駄な争い を避けられる 職能間でも 協力体制を築きやすい 情報が制限され、認知負荷が低減 情報の透明性で 意思決定の質が向上

7.

壁はあるほうがいいの?ないほうがいいの?

8.

Q. われわれはなぜここにいるのか? われわれはなぜチームを組むのか?

9.

A. 世界に価値を届けたいから

10.

「壁がない」の恩恵のほうがほしい 「壁がある」の恩恵 「壁がない」の恩恵 その職能の 目標や責任が明確になる 全体の目的や目標 に興味・関心が向く 職能内の仕事 を最適化しやすい Value Streamの全体最適 に目が向く その職能の 専門性に集中できる 複数の専門性の 化学反応が起こるかも 職能間の無駄な争い を避けられる 職能間でも 協力体制を築きやすい 情報が制限され、認知負荷が低減 情報の透明性で 意思決定の質が向上

11.

よし、壁を崩そう。

12.

でも、壁って崩れるの?

13.

これまでに僕が出会った 壁が崩れていった現場を ちょっとだけ紹介

14.

エンジニアと QA の壁が崩れていくのを眺めていた スライド: https://www.docswell.com/s/at_946/KDEYN9-2024-06-22-094806 登壇ビデオ: https://youtu.be/ZrS1b93p3oU?si=ExNRKJuzkoO4zSSQ

15.

https://moneyforward-dev.jp/entry/2024/09/24/115309 フロントエンドとバックエンドの開発の越境

16.

https://at-blog.vercel.app/blog/20241220-01 デザイナーと QA のストーリーチケットづくり

17.

壁が崩れた先にあったのは クロスファンクショナルな協働

18.

ここからはこれまでの経験を基に、 壁崩しのお作法を共有します。

19.

壁崩しのお作法 目標を共同所有する 互いに仕事を公開する 協働を一つずつ実験する

20.

目標を共同所有する

21.

壁のあるチームは、バラバラに目標を持ちがち ユーザーに便利を届けるために、機能をどんどん実装してデリバリーするぞ ユーザーに不便をかけないために、高品質なプロダクトを追求するぞ あいつらはユーザーに便利を届けたくないのか! あいつらはユーザーに不便をかけたいのか! 目標がバラバラだと、協働は生まれにくい

22.

Whole Teamの目標を一緒に定義する ユーザーに便利を届けるために、機能をどんどん実装してデリバリーするぞ ユーザーに不便をかけないために、高品質なプロダクトを追求するぞ ユーザーにできるだけ速く頻繁に安心して使える価値を届け続けるぞ!

23.

各職能の目標を手放して、チームの目標に集中する ユーザーに便利を届けるために、機能をどんどん実装してデリバリーするぞ ユーザーに不便をかけないために、高品質なプロダクトを追求するぞ ユーザーにできるだけ速く頻繁に安心して使える価値を届け続けるぞ!

24.

2. 互いに仕事を公開する

25.

改善の基本は スクラムの三本柱 透明性 検査 適応

26.

壁の向こう側が見えないと 壁崩しには進めない

27.

それは相手も同じ

28.

相手を尊敬し 勇気を持って まずはあなたから 公開していきましょう

29.

"アウトプット" を公開する

30.

QAエンジニアの仕事が ブラックボックスだったチームの話

32.

話を聞いてみた テストのことももっと関わったほうがいいと思っているけど... でも、あまり詳しくないので任せちゃったほうがいいのかなって... にもテストに関わってもらったほうがいいと思っているけど... でも、 って忙しいだろうし、自分だけでやったほうがいいのかなって...

34.

とりあえず アウトプット公開しません?

35.

テスト観点・項目書はでき次第、 PBIに添付 独自のバグチケ管理をやめ、 元のアイテムのサブタスクで起票 PBI: Product Backlog Item

36.

バグチケが公開されており、対応が終わるまでプロダクトバックログアイテムが オープンなままなので、バグの対応漏れがなくなった! 実装前からテスト観点を考慮でき、期待する動作が明確になったので、 実装に入りやすくなった! 実装目線で重点的にテストしてほしい観点や不要かもしれない観点・項目を フィードバックしやすくなった!

37.

何を公開すればいいの?

38.

デフォルトを「公開」にせよ

39.

公開すべきか、非公開にすべきか 公開 すべき 非公開に すべき

40.

実はだいたいどっちでもいい 公開 すべき どっちでもいい 非公開に すべき

41.

Open mind vs. Closed mind 結果、公開している open mind 公開 すべき 意図的に 公開する どっちでもいい 結果、公開していない 意図的に 公開しない 非公開に すべき closed mind

42.

何を公開すればいいの? 何は公開しないほうがいいの?

43.

"知識" を公開する

44.

協働はどこで起きる? みんなの関心があるところ みんなが安心して意見し実験できるところ みんなの知識だけで行動に移せるところ 「チームの共有知識」で起こる

45.

共有知識 エージェントの集団 G で p が共有知識であるとは、G に属するエージェント全員が p を知っていて、また「全員が p を知っている」ということを全員が知っていて、 また「『全員が p を知っている』ということを全員が知っている」ということを全 員が知っていて、というように際限なく続くときをいう。 共有知識 - Wikipedia (アクセス日: 2025-05-08 09:30) みんな知っているし、 みんな知っていることをみんな知っていること

47.

共有知識こそ協働の遊び場 共有知識の周辺は協働を起こしやすい 共有知識を増やせていければ、 壁を崩すチャンスは増える

48.

でもこう見えているかもしれない が見ている世界 が見ている世界

49.

心理的安全性 心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する 個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性 のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味しま す。心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取る ことに不安を感じていません。自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイ デアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余 地があります。 Google re:Work - ガイド: 「効果的なチームとは何か」を知る (アクセス日: 2025-05-08 09:30)

50.

圧倒的な知識差の前で協働なんて持ちかけられない が見ている世界 が見ている世界

51.

なんで知識差があると認知してしまうのか? 知識の呪い + ハロー効果

52.

知識の呪い 知識の呪い(ちしきののろい、英: Curse of knowledge)は、他人とコミュニケーシ ョンを取っている個人が、自分の知っていることは、他の人も知っていると思い込 んでしまい、そのことについてあまり知らない人の立場を理解することができなく なってしまう認知バイアスである。一部の著者によって専門知識の呪いとも呼ばれ ている。 知識の呪い - Wikipedia (アクセス日: 2025-05-08 09:30)

53.

ハロー効果 ある対象を評価する時に、それが持つ顕著な特徴に引きずられて他の特徴について の評価が歪められる(認知バイアス)現象のこと。例えば、ある分野の専門家が専 門外のことについても権威があると感じてしまうことや、外見のいい人が信頼でき ると感じてしまうことが挙げられる。 ハロー効果 - Wikipedia (アクセス日: 2025-05-08 09:30)

54.

「知識の呪い + ハロー効果」でこうなってしまう が見ている世界 が見ている世界

55.

まず、認知の歪みを解消する

56.

そして、共有知識を増やしていく

57.

ということで 知識を公開して、共有知識を増やそう 1. 自分の知識を与える 2. 相手の知識を受け取る

58.

明日から始められるTips 「知識を与える」 最近見て面白かったブログやスライドを自分のtimesチャンネル 自分のバイブル に投稿しましょう をチームのチャンネルでシェアしましょう スクフェス新潟の素敵な体験 についてチームメンバーと雑談しましょう 「知識を受け取る」 誰かが上の行動を取っていたら、とりあえずリアクション できればシェアされたものを見て 、聞いて しましょう 、感想を伝えましょう 誰もやってくれない?大丈夫!そんなもん!Giverしながら気長に待ちましょう。

59.

3. 協働を一つずつ実験する

61.

実験は一つずつ! 一度に複数の実験をすると カオスに陥り、実験自体が行えなくなる 良い結果でも、何が要因だったのかわからない 悪い結果でも、何が原因だったのかわからない

62.

一度に多くのことをやろうとすると、長期記憶に 定着せず、知覚能力も低下し、他のスキルの全体 的なパフォーマンスも低下してしまう可能性があ る。 そのため、コーチが一度に1つずつステップを踏む ほうが、学習がより早く進むことが多い。 練習の最初に選手がトライすべきことを5つ与える よりも、同じ5つのことを練習全体に分散して順番 に与えていくのがいい。 ダグ・レモフ(著), マーレー志雄(訳), 有馬丈博(訳)『最高のコーチになるためのス ポーツコーチング学 ―知っておくべき「フレームワーク」と「スキル」』(カイゼン、 2023)

63.

みんなで決めるにこだわりすぎない! リーダーシップ & 合議 独裁 みんなの意見の合意点で みんなの意見を聞かずに みんなの意見を参考に 決める エキスパートが決める エキスパートが決める 協力が得られにくい 化学反応 & 納得感 実験が小さくなりがち スクラムだからみんなで決める? | at-blog フォロワーシップ

64.

ちょっとしたTips 職能で呼ばない、名前で呼ぶ

65.

壁を崩そうと思ったときに 心に刻んでおきたい言葉

66.

誰もが正しい、ただし部分的に Zuzana Šochová(著), 株式会社ユーザベース(訳)『アジャイルリーダーシップ: 変化に 適応するアジャイルな組織をつくる』(共立出版、2022)

67.

誰かが始めなければならない。 他の人が協力的でないとしても、 それはあなたには関係ない。 私の助言はこうだ。 あなたが始めるべきだ。 他の人が協力的であるかどうかなど 考えることなく。 岸見 一郎(著), 古賀 史健(著)『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』 (ダイヤモンド社、2013)

68.

Takeaways - 壁崩しのお作法 目標を共同所有する 互いに仕事を公開する 【おまけ】職能ではなく、名前で呼ぶ 協働を一つずつ実験する