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November 30, 25
スライド概要
欧州歯周病連盟:https://www.efp.org/education/continuing-education/clinical-guidelines/
雑誌:https://onlinelibrary.wiley.com/toc/1600051x/2020/47/S22
DMの元論文:https://aap.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1902/jop.2015.140563
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jgf2.58
素晴らしい診療ガイドラインあら探しシリーズ14:歯周病のEFP S3 level CPGという最高レベルのCPG 診療ガイドラインの批判的吟味 R1.7 糖尿病コントロール介入 R4.4 口腔衛生デバイス選択 Lima/GRADE統合版チェックリストによる評価 歯科専門家向け講義 Sanz M et al. J Clin Periodontol. 2020;47:4-60
本講義の目的 1. ガイドライン全体の評価 EFP S3ガイドラインの方法論的質をLima/GRADE統合版で批判 的に吟味 KEY QUESTION 2. 特定推奨の深掘り R1.7(糖尿病コントロール)とR4.4(口腔衛生デバイス選択) を詳細分析 「GRADEを謳う」ガイドラインは本当に GRADEに準拠しているのか? 形式的な模倣(Pseudo-GRADE)と真のGRADE準拠を見分ける視点 3. 臨床適用の指針 エビデンスの限界を踏まえた実臨床での活用方法を提示
EFP S3ガイドライン概要 発行年 対象疾患 SR論文数 参加国数 2020 Stage I-III 15本 36カ国 強み AWMF/GRADE方法論に基づく 15本の新規SRを委託作成 独立した方法論専門家が参加 COI管理の透明性 産業界からの資金提供なし 懸念点:次スライドへ "EFP and the guideline panel tried to involve patient organizations but were not able to identify any regarding periodontal d iseases at European level." (p.6) https://onlinelibrary.wiley.com/toc/1600051x/2020/47/S22
批判的吟味の枠組み Lima et al. (2023)「信頼できるガイドラインの6基準」+ GRADEアプローチの統合評価 PART A 構造的透明性 PART B A1. 4段階エビデンス評価 推奨の妥当性 A2. SoF/EtDの提示 B1. 推奨の明確さ A3. Pseudo-GRADE検出 B2. 代替案の考慮 A4. パネル会議の記載 B3. 患者重要アウトカム A1→GRADEアプローチとあるが評価なし B4. 最新SR基盤 A2不適合→レベルダウン B3→一部代理のアウトカム PART C 論理的整合性 C1. Red Flag Check → Low evidence + Strong rec C2. COI管理 C1不整合→レベルダウン PART D 最終結論 D1. 信頼性ランク Level A/B/C D2. 論理的根拠 D3. 臨床家へのアドバイス D2→コンセンサスと明確にある推奨あり 評価原則: PDFに明記されている事実のみを評価対象。推測や好意的解釈は禁止。情報がなければ「記載なし」と判定。 CPG論文に記載無くても、SR論文に記載がある場合があるので、個別にチェックした。 エビデンスの確実性が低で強い推奨に関しては、根拠となるEtDフレームワークなどもなく、コンセンサスで決定したいたため。 Pseudo-GRADE検出: 「Expert consensus-based」であっても最後の投票のみをコンセンサスと表現する場合を除く。 R4.4は「Expert consensus-based」と明記しつつGrade Aと、Evidence-based recommendationと同じ表記。 「Expert consensus-based」に関しては、明確にGRADEアプローチでの作成でなく、コンセンサスベース。 パネル会議の記載 XVI European Workshop(2019年11月)で開催。36カ国からの代表、独立方法論専門家が参加。ただし患者代表は不在。 SoFテーブル欠如・一部は、明確にExpert consensus-basedで作成のため、信頼性は注意が必要。
SECTION 1 R1.7 糖尿病コントロール介入 What is the efficacy of promotion of diabetes control interventions in periodontitis therapy? 推奨の強さ エビデンス 確実性(推定) Grade A 2 RCTs Very Low
R1.7: CPGに記載された推奨文 Evidence-based recommendation (1.7) "We recommend diabetes control interventions in patients undergoing periodontitis therapy." Supporting literature Ramseier et al. (2020) Quality of evidence Two 6-month RCTs(※4段階評価なし) Grade of recommendation Strength of consensus Grade A(強い推奨) Consensus (0% abstained) 批判的吟味のポイント 「Quality of evidence」にGRADEの4段階評価が記載されていない 2件のRCT(サンプルサイズ209名):メタ分析行ってない(想定外の多様なカウンセリング戦略があ るのでメタ分析不可とあるが、詳細不明) ⇒食事の変更や口腔保健指導を含む生活習慣カウンセリングのため、純粋に糖尿病管理のみではない 1件の前向き研究(8名):なぜか、SR論文の表1には存在しないメタ分析に含まれたとあるが、不明 ●メタ分析も行われてなくサンプルサイズが少なく、SR著者らがメタ分析不可能、介入も直接性がな い2つのRCTのみをエビデンスとしいるため、エビデンスの確実性は「非常に低」である。しかも、 「強い推奨」とした、合理的な判断(例外規定)の記載がない。 これが「Evidence-based recom mendation 」であり、「強い推奨」とのこと。 糖尿病コントロールのエビデンス(3件) Saengtipbovorn 2015 (RCT, n=132):20分間のライフス タイルおよび口腔健康教育、個別のライフスタイルカウ ンセリング、自己調整マニュアルの適用、個別の口腔衛 生指導に参加しました。3か月目には、個別の生活習慣カ ウンセリングと口腔衛生指導が行われました。 Nishihara 2017 (RCT, n=77):糖尿病クリニック、口腔顎 顔面外科(OMS)部門から患者が日常的に受ける治療に関す る情報や指導、歯科衛生士からの標準的な歯科衛生指示に 加え、介入グループは糖尿病と歯周病の関係についての情 報を受け取り、歯周病のセルフケア方法も教えられました。 Holmer 2018 (Prospective, n=8) Ramse ier et al., 20 20: Impact of risk fact or control interventions for smoking cessati on and promotion of healthy l ifestyles in pat ients with period ontit is: A systematic rev iew
SECTION 2 R4.4 口腔衛生デバイス選択 How should we choose an appropriate design of manual, powered toothbrushes and interdental cleaning devices? 推奨の強さ 推奨タイプ 根拠SR Grade A Expert Slot 2020 Consensus
R4.4: CPGに記載された推奨文 Expert consensus-based recommendation (4.4) "We recommend taking into account patients' needs and preferences when choosing a toothbrush design, and when choosing an interdental brush design." Supporting literature Grade of recommendat Strength of ion consensus Slot et al. (2020) Grade A(強い推奨) Strong consensus (6.9% abstained due to potential CoI) 重大な矛盾(Red Flag) 「Expert consensus-based」と明記 しかし「Grade A」(強い推奨) エビデンスに基づく推奨ではなく、専門家のコンセンサスに基づくと自ら認めてい るのは、基本的に評価してよい。 GRADEの原則では、コンセンサスのみで「強い推奨」は不適切 GPS(good practice statements)とするならば、記載方法を変えないと。 "Scarcity or a lack of evidence does not necessarily imply that products may not be effective. Dental care professionals in c linical practice should tailor the best oral hygiene devices and methods according to patients' skill levels and preferences..." (p.47) Slot et al. (2020):Mechanical plaque removal of periodontal maintenance patients: A systematic review and network meta-analysis
R4.4根拠SR: Slot et al. (2020)の批判的吟味 Mechanical plaque removal of periodontal maintenance patients: A systematic review and network meta -analysis | J Clin Periodontol. 2020;47:107-124 方法論的評価 ✓ PROSPERO登録: ID 137441 ✓ NMA実施: ネットワークメタ分析で間接比較 ✓ 3データベース: PubMed, EMBASE, Cochrane ✕ 高バイアスリスクの研究が多かった ランキング順( (the P-score of treatment) )に並べ替えられた、 最終的なプラークスコアの標準化平均差(SMD)に基づく口腔衛 生用具のランキング 著者自身の結論: "各口腔衛生デバイスに関する選択基準を満たす研究が 不足していること、および結果として得られたエビデンスの確実性が低 いことから、歯周メインテナンスにおける患者のセルフケアに用いるい かなる特定の口腔衛生デバイスに関しても、強力な「エビデンスに基づ く」結論を導き出すことはできない。" (p.121) 4つの比較研究が、歯間ブラシ(IDB)とフロスを比較評価し(Bergenholtz & Olsson, 1984; Kiger et al., 1991; Rösing et al., 2006)、1つの研究がフロスとウッドスティックを比較した (Bergenholtz & Brithon, 1980)。 2つの比較研究は、円錐形のIDBと円筒形のものを比較評価した(I, Rösing et al., 2006)。 1つの比較研究は、**手用歯ブラシ(MTB)に対するIDBの併用効果を評価し(Kiger et al., 1991)、3つの研究(Flemmig et al., 1995; Jolkovsky et al., 1990; Newman et al., 1994)は、通常 の口腔衛生習慣に対する口腔洗浄器(OI)**の併用効果を評価した。 例: Rösing et al., 2006「目的: デンタルフロス、円筒形および円錐形の歯間ブラシの、 歯間プラーク除去能を比較すること。材料および方法: 歯周治療を受けた患者を対 象としたメインテナンスプログラムに参加している者の中から、50名が選出された。 書面による同意を得た後、3つの**顎四分円(クアドラント)にある9つの歯間空隙 において、Silness and Löeのプラーク指数(Pl.I)**が記録された。その後、患者は各 デバイスの使用方法について指導を受け、各四分円につき1つの器具を使用し、自身 が清掃状態に満足するまで清掃を行った。同一の較正(キャリブレーション)され た検者が、各四分円で使用された器具を知らされることなく、再度Pl.Iを記録し た。」 ということは、歯間ブラシの形態の比較は、歯間部のみのプラーク除去である。 その比較と、マニュアル歯ブラシと電動歯ブラシの研究を、同じネットワーク内 でメタ分析するのは、本末転倒、ありえないと考えるが? The EFP S3 level clinical practice guidelineの作成のために行われたシステマティック レビューですので、本当の歯周病のプロが作成していると思われます。同じネッ トワーク内にするのは間違いだと思うが、彼らが間違いでないと言っている限り 間違いではないのでしょう。 私の能力では、理解不能に陥ったので、ここで吟味終了とする。