診療ガイドラインの推奨に患者の価値観や意向を取り入れるために:診療ガイドラインパネル会議で、パネリストに対して、どのような情報を与えて調査・議論するとよいのか?

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January 05, 25

スライド概要

閾値パネル会議の前に見る動画変更.pptx
本動画: https://youtu.be/z5uA34t28rc
Y先生のEBM・診療ガイドライン講座リンク先一覧 https://note.com/mxe05064/n/n4b3ab8020899

Zeng L 2003 https://www.jclinepi.com/article/S0895-4356(23)00175-0/fulltext
この論文の動画:https://www.dropbox.com/scl/fi/dzshj32jf2w9m462wkxfl/VidePanel20survey_V10.mp4?rlkey=hd29v5qsb19l9mrg4x4wc0ekm&e=1&dl=0
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各ページのテキスト
1.

診療ガイドラインの推奨に患者の価値観や意向を取り入れるために :診療ガイドラインパネル会議で、パネリストに対して、 どのような情報を与えて調査・議論するとよいのか? このZengの論文に附属している動画を、再構成して作成しました。 Zeng L, Helsingen LM, Bretthauer M, Agoritsas T, Vandvik PO, Mustafa RA, Busse J, Siemieniuk RAC, Lytvyn L, Li SA, Yang M, Yan L, Zhang L, Brignardello-Petersen R, Guyatt GH. A novel framework for incorporating patient values and preferences in making guideline recommendations: guideline panel surveys. J Clin Epidemiol. 2023 Sep;161:164-172. doi: 10.1016/j.jclinepi.2023.07.003. Epub 2023 Jul 13. PMID: 37453455. https://www.jclinepi.com/article/S0895-4356(23)00175-0/fulltext この論文の動画: https://www.dropbox.com/scl/fi/dzshj32jf2w9m462wkxfl/VidePanel20survey_V10.m p4?rlkey=hd29v5qsb19l9mrg4x4wc0ekm&e=1&dl=0

4.

害・価値観・意向 利益

5.

価値観と意向という用語を理解する。 利益の大きさなど(エビデンス)を考慮して、価値観と意向の分 布を考える。 実際には、エビデンスの確実性が、加わる。 そして、価値観と意向を、客観化するために、閾値と、アウトカム の重要度を明確にする。

6.

No better or worse No right or wrong 選択

7.

正しい選択も間違った選択も、 優れた選択も劣った選択もありません。

8.

利点:心筋梗塞のリスクを減少

9.

欠点:軽度だが、日常的な頭痛

10.

賛成と推奨 反対と推奨

11.

利点:心筋梗塞のリスクを減少 欠点:軽度だが、日常的な頭痛

12.

診療ガイドライン委員会は、誰の価値観や意向を考慮するのかを明確にす る必要がある。

13.

医師やパネルメンバーの価値観や意向ではない

14.

価値観や意向はどのようなものだろうか? 「特効薬」を使うことを好むのか、それとも使わないことを好むのか?

15.

100% 0%

16.

Strong recommendation

17.

100% 0%

18.

Strong recommendation against

19.

患者の価値観や意向は、他にどんなものがあるだろうか?

20.

50% 50%

21.

Conditional recommendation

22.

Distribution of values and preferences

23.

100% 100% Distribution of values and preferences 50% 0% 50% 0%

24.

Distribution of values and preferences

25.

All or almost all (>90%) choose "wonder drug(特効薬)" Most (75-90%) choose "wonder drug" Majority (50-75%) choose "wonder drug" I Majority (50-75%) decline "wonder drug" Most (75-90%) decline "wonder drug" All or almost all (>90%) decline "wonder drug"

26.

Key messages 価値観や意向に、正しいも正しくないもない。 人々が好むものは何でもある。

27.

Key messages 診療ガイドライン委員会は、対象集団(通常は患者や一般市民) の価値観や意向に関心を持つ。 診療ガイドラインのパネルは、対象集団の価値観や意向の分布を考 慮すべきである。

31.

Key messages. ターゲット集団の視点 ターゲット層の価値観と意向の分布 有益な研究がない場合、あるいは解釈が必要な場合、ガイドライン委員会 は、対象集団の大多数が何を好むかについて推論する必要がある。 ガイドライン・パネルは、対象集団の価値観や嗜好についてパネル・メン バーの意見を引き出すために、パネル調査の適用を検討することができる。

32.

Key messages. この調査は、対象者を対象としたものではなく、ガイドラインパネルのメ ンバーを対象としたものである。

33.

Key messages. この調査は、対象者の価値観や意向の分布を考慮し、対象者の立場に立っ て考えるようパネル・メンバーに求めるものである。 最小限の重要な差異(minimally important difference:MID) 近年では、大きな効果・中等度の効果・些細な効果の3つの考える。

34.

Example 1 心筋梗塞のリスクのある患者に対する推奨を行うガイドラインパネルにつ いて検討する。

35.

Example 1 患者が重要だと感じる心筋梗塞リスクの最小限の減少とは何か?

36.

Example 1 質問1 https://www.dropbox.com/scl/fi/dzshj32jf2w9m462wkxfl/VidePanel20survey_V10.mp4?rlkey=hd29v5qsb19l9mrg4x4wc0ekm&e=1&dl=0

37.

Example 1 効果の大きさを些細( trivial)なものと 考える患者の割合と、重要 ( important)なものと考える割合は? https://www.dropbox.com/scl/fi/dzshj32jf2w9m462wkxfl/VidePanel20survey_V10.mp4?rlkey=hd29v5qsb19l9mrg4x4wc0ekm&e=1&dl=0

38.

Example 1 ほぼすべての人(90%以上)が、これは重要な効果であると考える。 多くの人が(75~90%)が重要な効果であると考える。 過半数の人が(50~75%)が重要な効果であると考える。 過半数の人が(50~75%)が、これは些細な効果であると考える。 多くの人が(75~90%)が、これは些細な効果であると考える。 ほぼすべての人(90%以上)が、これは些細な効果であると考える。

39.

Example 1 パネル・メンバーは、関連する一次研究、フォーカス・グループ、友人や 家族との会話、友人との意思決定の共有などに基づいて、質問について考 えることができる。

40.

Example 1 ほぼすべての人(90%以上)が、これは重要な効果であると考える。 多くの人が(75~90%)が重要な効果であると考える。 過半数の人が(50~75%)が重要な効果であると考える。 過半数の人が(50~75%)が、これは些細な効果であると考える。 多くの人が(75~90%)が、これは些細な効果であると考える。 ほぼすべての人(90%以上)が、これは些細な効果であると考える。 https://www.dropbox.com/scl/fi/dzshj32jf2w9m462wkxfl/VidePanel20survey_V10.mp4?rlkey=hd29v5qsb19l9mrg4x4wc0ekm&e=1&dl=0

41.

Example 1 質問2 https://www.dropbox.com/scl/fi/dzshj32jf2w9m462wkxfl/VidePanel20survey_V10.mp4?rlkey=hd29v5qsb19l9mrg4x4wc0ekm&e=1&dl=0

42.

Example 1 効果の大きさを些細なものと考える患者の割合と、重要なものと考える 割合は? ほぼすべての人(90%以上)が、これは重要な効果であると考える。 多くの人が(75~90%)が重要な効果であると考える。 過半数の人が(50~75%)が重要な効果であると考える。 過半数の人が(50~75%)が、これは些細な効果であると考える。 多くの人が(75~90%)が、これは些細な効果であると考える。 ほぼすべての人(90%以上)が、これは些細な効果であると考える。 https://www.dropbox.com/scl/fi/dzshj32jf2w9m462wkxfl/VidePanel20survey_V10.mp4?rlkey=hd29v5qsb19l9mrg4x4wc0ekm&e=1&dl=0

43.

Example 1 効果の大きさを些細なものと考える患者の割合と、重要なものと考える 3人 / 1000人 (0.3%) 割合は? ほぼすべての人(90%以上)が、これは重要な効果であると考える。 多くの人が(75~90%)が重要な効果であると考える。 過半数の人が(50~75%)が重要な効果であると考える。 過半数の人が(50~75%)が、これは些細な効果であると考える。 多くの人が(75~90%)が、これは些細な効果であると考える。 ほぼすべての人(90%以上)が、これは些細な効果であると考える。 https://www.dropbox.com/scl/fi/dzshj32jf2w9m462wkxfl/VidePanel20survey_V10.mp4?rlkey=hd29v5qsb19l9mrg4x4wc0ekm&e=1&dl=0

44.

Example 1 効果の大きさを些細なものと考える患者の割合と、重要なものと考える 7人 / 1000人 (0.7%) 割合は? ほぼすべての人(90%以上)が、これは重要な効果であると考える。 多くの人が(75~90%)が重要な効果であると考える。 過半数の人が(50~75%)が重要な効果であると考える。 過半数の人が(50~75%)が、これは些細な効果であると考える。 多くの人が(75~90%)が、これは些細な効果であると考える。 ほぼすべての人(90%以上)が、これは些細な効果であると考える。 https://www.dropbox.com/scl/fi/dzshj32jf2w9m462wkxfl/VidePanel20survey_V10.mp4?rlkey=hd29v5qsb19l9mrg4x4wc0ekm&e=1&dl=0

45.

Example 1 効果の大きさを些細なものと考える患者の割合と、重要なものと考える 5人 / 1000人 (0.5%) 割合は? ほぼすべての人(90%以上)が、これは重要な効果であると考える。 多くの人が(75~90%)が重要な効果であると考える。 過半数の人が(50~75%)が重要な効果であると考える。 過半数の人が(50~75%)が、これは些細な効果であると考える。 多くの人が(75~90%)が、これは些細な効果であると考える。 ほぼすべての人(90%以上)が、これは些細な効果であると考える。 https://www.dropbox.com/scl/fi/dzshj32jf2w9m462wkxfl/VidePanel20survey_V10.mp4?rlkey=hd29v5qsb19l9mrg4x4wc0ekm&e=1&dl=0

46.

Example 1 効果の大きさを些細なものと考える患者の割合と、重要なものと考える割 合は? 心筋梗塞の減少が最も小さく、患者が重要であると認識するであろうとい うパネルの見解。

47.

Example 2 例2では、特効薬の害を考慮しつつ、5年間で軽度の日常的な頭痛を経験する患者の割合が1,000人中10人から20人に 増加する場合を考える。 患者が特効薬を受け入れるために必要な心筋梗塞の最小限の減少を知りたい。心筋梗塞のリスクを減少させる特効薬に 関連する異なる効果の大きさを持つシナリオを提示。 最初の質問では、特効薬を服用する患者の心筋梗塞リスクが5年間で40から39に、1000人に1の割合で減少する場合 を尋ねる。 日常的な頭痛の負担を考慮して、何パーセントの患者が特効薬を選択または拒否するかを尋ねる。パネルメンバーは、 患者の選択についての推測を行うために関連情報や経験を使用。

48.

このシナリオでは、特効薬を服用する患者の心筋梗塞リスクが5年間で40から30に、1000人に10の割合で減少する場 合を考える。再度、日常的な頭痛の負担を考慮して、何パーセントの患者が特効薬を選択または拒否するかを尋ねる。 調査は、5年間で千人あたり1から10の心筋梗塞の減少に関連する特効薬の利益の大きさを変化させ続ける。パネルメ ンバーに何パーセントの患者が特効薬を選択または拒否するかを尋ねる。 例2では、特効薬の害(例:日常的な頭痛)に関する証拠を提供し、調査は患者が特効薬を選ぶために必要な心筋梗塞 の最小の減少についてのパネルの見解を理解するのに役立つ。 MIDを知りたいので、1から10人まで変えて考えていく 効果の大きさを些細なものと考える患者の割合と、重要なものと考える 割合は? ほぼすべての人(90%以上)が、これは重要な効果であると考える。 多くの人が(75~90%)が重要な効果であると考える。 過半数の人が(50~75%)が重要な効果であると考える。 過半数の人が(50~75%)が、これは些細な効果であると考える。 多くの人が(75~90%)が、これは些細な効果であると考える。 ほぼすべての人(90%以上)が、これは些細な効果であると考える。

49.

Example 3 例3では、害と利益を考慮して、5年間に何パーセントの患者が特効薬を選択するかを知りたい。たとえば、 特効薬は、心筋梗塞のリスクを1000人あたり7減少させ、40から33にする。 一方で、日常的な頭痛を経験する患者の割合を1000人あたり10人増加させ、10から20にする。 調査は、心筋梗塞のリスクがある患者にとって、そのような影響をどのように見なすかをパネルメンバーに尋ねる。パ ネルメンバーは、患者の選択についての推測を行うために関連情報や経験を使用。 例3では、心筋梗塞のリスクの減少と日常的な頭痛のリスクの増加に関する証拠を提供し、調査は患者が特効薬に対す る選択についてのパネルの見解を理解するのに役立つ。 1000人あたり7減少 5年間 1000人あたり10人増加

50.

Key messages. 例1では、調査は、患者が重要と見なす単一の結果に関するパネルの見解を理解するのに役立ちます。 例2では、介入の主要な害や負担に関する証拠を提供し、調査は、介入を選ぶために患者が要求する主 要な利益に対する最小の効果についてのパネルの見解を理解するのに役立ちます。 例3では、介入の主要な利益と、主要な害や負担の両方に関する証拠を提供し、調査は、介入に対する 患者の選択についてのパネルの見解を理解するのに役立ちます。 今回の思考訓練を調査として、実際の作成中の診療ガイドラインのシナリオに従って、回答を得たと する。もし、その結果、些細な効果から重要な効果へ大きく変わった人数を利用して、最小重要差 MIDが、10人になったとする。この10人を、「些細な効果、または、効果なしの閾値」となる。(こ の例では、1-10人だが、さすがに小さすぎるような気がする。10-20人のがよいかも) 心筋梗塞のリスクを1000人あたり10人減少させることと、日常的な頭痛を経験する患者の割合を 1000人あたり10人増加させることでは、同じ10人でも、価値観が異なることもにも気がついたはず。 このようなアウトカム(結果)の重要度の違いは、価値観とも言る。そして、例えば、心筋梗塞のリ スク減少の価値観を1とすると、日常的な頭痛は、0.3ぐらいの価値観になるという、0-1の範囲で 数字で示したものを、1-効用値(disutility)と呼ぶ。

51.

Key messages. パネルのメンバーは、対象者の立場に立って考え、価値観や意向の分布について推論することが難し いと感じるかもしれない。 このような推論を行うことは、勧告を行う上で極めて重要である。これはガイドライン・パネルの重 要な責務の一つである。

52.

Key messages. パネル・サーベイでは、推薦の決定に影響するいくつかの要因は考慮されていない。 パネル・ディスカッションの後半では、パネルが要因を持ち込むことになる。 調査結果は、パネル・メンバー全員の意見を理解し、パネル・メンバーが提言について議論するのに 役立つ。

53.

価値観と意向を、客観化するために、閾値と、アウトカムの重要度を明確にする重要性 アウトカムの効用値(現在は不効用として、0-1が多いが、ここでは、死亡を5を使用)を明確化にして、効果推定値 を、アウトカムの重要度(価値観)で調整した効果推定値を求め、利益と害から、Net Effectを計算している例 Outcome 重要度調整効果推定値 All-cause mortality 10 more (0 change to 20 more) Myocardial infarction 8 fewer (12 fewer to 2 fewer) Major bleeding 6 more (3 more to 10 more) Any stroke 0 change (6 fewer to 6 more) Net Effect 8 more (5 fewer to 21 more) 益 害 現在は、信頼区間と閾値を使って、不精確さの評価を行う必要がある。ここでは、MID を使った例だが、最近は、大きな効果・中等度の効果・些細な効果の3つの閾値が必要。 グラフ左方向が益、右方向が害

54.

Defining decision thresholds for judgments on health benefits and harms using the Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation (GRADE) Evidence to Decision (EtD) frameworks: a randomised methodological study (GRADE-THRESHOLD) GRADEでの評価を行う際に、効果の大きさを「Small」、「Small」と「Moderate」、「Moderate」と「Large」を 分ける閾値を求めるための調査方法がどれがよいかを調査。 著者の見解:シナリオを与えて閾値を、GRADEアプローチに詳しい参加者のアンケートで決めているが、シナリオが変 われば閾値も変わるだろう。でも、こんなことを毎回行うことって現実的なのか?この研究はサンプルサイズがかなり 少ない人数しか集められていないという限界があると記載がある。しかし、GRADEグループ以外でCPGのことをわかっ ている人たちを集められるのは不可能と考えると、今後、これ以上の閾値の研究は不可能かも。そうなると、この数字 を受け入れるしかない。 この論文でのシナリオで得られた閾値を以下のURLに示した。以下の表は、死亡のアウトカムの場合です。 https://docs.google.com/spreadsheets/d/1lU-O2Vgzn4qWtwAjDN6tebk-mGqV50ZJDZuYkjy2zXU/edit?usp=sharing Decision Threshold 95% Confidence Interval Absolute effect Lower Bound Upper Bound T1: Trivial to Small 13 events per 1000 10 events per 1000 17 events per 1000 T2: Small to Moderate 32 events per 1000 26 events per 1000 38 events per 1000 T3: Moderate to Large 62 events per 1000 53 events per 1000 72 events per 1000