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November 27, 23
スライド概要
■概要
2017年に初めてRE ENGINEを採用したバイオハザード7がリリースされてから5年以上が経過しました。
これまでのRE ENGINEの実績を振り返りつつ、現在の運用フロー、今後のビジョンについて紹介します。
※CAPCOM Open Conference Professional RE:2023 で公開された動画を一部改変してスライド化しております。
■想定スキル
特になし
詳細は下記公式サイトをご確認ください。
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CAPCOM Open Conference Professional RE:2023
https://www.capcom-games.com/coc/2023/
カプコンR&Dの最新情報は公式Twitterをチェック!
https://twitter.com/capcom_randd
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Nintendo Switch・Nintendo Switchのロゴは任天堂の商標です。
©2023 Sony Interactive Entertainment LLC
"PlayStation Family Mark", "PlayStation", "PS5 logo", "PS5", "PS4 logo" and "PS4" are registered trademarks or trademarks of Sony Interactive Entertainment Inc.
©2023 Valve Corporation. Steam and the Steam logo are trademarks and/or registered trademarks of Valve Corporation in the U.S. and/or other countries.
Microsoft, the Xbox Sphere mark, the Series X logo, Series S logo, Series X|S logo, Xbox One, Xbox Series X, Xbox Series S, and Xbox Series X|S are trademarks of the Microsoft group of companies.
Microsoft, Windows, and Microsoft Teams are trademarks or registered trademarks of Microsoft Corporation in the United States and other countries.
Screenshots of Microsoft products are used with permission from Microsoft.
Copyright © Ubitus K.K. All rights reserved.
Linux© is the registered trademark of Linus Torvalds in the U.S. and other countries.
Tux penguin
by [email protected] Larry Ewing and The GIMP
Copyright © Ubitus K.K. All rights reserved.
Luna is © 1996-2023, Amazon.com, Inc. or its affiliates
Havok software is © 2023 Microsoft. All rights reserved.
"Hansoft" and "Hansoft Mark" are registered trademarks or trademarks of Perforce Software, Inc.
Appleロゴ、Apple Arcade、iPad、iPhone、Macは、米国およびその他の国で登録されたApple Inc.の商標です。Apple ArcadeはApple Inc.のサービスマークです。
株式会社カプコンが誇るゲームエンジン「RE ENGINE」を開発している技術研究統括によるカプコン公式アカウントです。 これまでの技術カンファレンスなどで行った講演資料を公開しています。 【CAPCOM オープンカンファレンス プロフェッショナル RE:2023】 https://www.capcom-games.com/coc/2023/ 【CAPCOM オープンカンファレンス RE:2022】 https://www.capcom.co.jp/RE2022/ 【CAPCOM オープンカンファレンス RE:2019】 http://www.capcom.co.jp/RE2019/
RE ENGINEのこれまでとこれから このセッションでは、これまでのRE ENGINEの実績を振り返りつつ、現在のエンジンの運用フロー、今後のビジョンについて 紹介します。 ---Nintendo Switch・Nintendo Switchのロゴは任天堂の商標です。 ©2023 Sony Interactive Entertainment LLC "PlayStation Family Mark", "PlayStation", "PS5 logo", "PS5", "PS4 logo" and "PS4" are registered trademarks or trademarks of Sony Interactive Entertainment Inc. ©2023 Valve Corporation. Steam and the Steam logo are trademarks and/or registered trademarks of Valve Corporation in the U.S. and/or other countries. Microsoft, the Xbox Sphere mark, the Series X logo, Series S logo, Series X|S logo, Xbox One, Xbox Series X, Xbox Series S, and Xbox Series X|S are trademarks of the Microsoft group of companies. Microsoft, Windows, and Microsoft Teams are trademarks or registered trademarks of Microsoft Corporation in the United States and other countries. Screenshots of Microsoft products are used with permission from Microsoft. Copyright © Ubitus K.K. All rights reserved. Linux© is the registered trademark of Linus Torvalds in the U.S. and other countries. Tux penguin by [email protected] Larry Ewing and The GIMP Copyright © Ubitus K.K. All rights reserved. Luna is © 1996-2023, Amazon.com, Inc. or its affiliates Havok software is © 2023 Microsoft. All rights reserved. "Hansoft" and "Hansoft Mark" are registered trademarks or trademarks of Perforce Software, Inc. Appleロゴ、Apple Arcade、iPad、iPhone、Macは、米国およびその他の国で登録されたApple Inc.の商標です。Apple ArcadeはApple Inc.のサービスマークです。 ©CAPCOM 1
RE ENGINEのこれまで まず初めにRE ENGINEのこれまでについて紹介します。 ©CAPCOM 2
RE ENGINEのこれまで RE ENGINEとは • カプコンの内製ゲームエンジン • 2014.4 開発開始 • 2017.1 バイオハザード7がリリース 採用タイトルが順次増加 対応プラットフォームの拡大 RE ENGINEはカプコンの内製のゲームエンジンになります。 2014年に開発が開始され、2017年に初の採用サイトルであるバイオハザード7がリリースされました。 その後、RE ENGINEを採用したタイトルは順次増加し、サポートするプラットフォームも広がっています。 ©CAPCOM 3 3
RE ENGINE 採用タイトル 2017 2019 2020 2021 2022 2023 2024 以降 2017年にバイオハザード7がリリースされました。 その後、バイオハザード RE:2やデビルメイクライ5でも採用され、毎年、複数のRE ENGINE採用タイトルがリリースされています。 4 2024年以降も、RE ENGINEを採用したタイトルが順次リリースされる予定です。 ©CAPCOM 4
RE ENGINE 対応プラットフォーム Mac iOS RE ENGINEがサポートするプラットフォームも拡大しています。 Steam、PlayStationやXbox、NintendoSwitchを始め、Mac /Linuxやクラウドプラットフォームにも対応しています。 5 ©CAPCOM 5
RE ENGINEの特徴 高いパフォーマンスと安定性 高い開発効率 モジュラー構造 下位互換性 RE ENGINEの大きな特徴としては、高いパフォーマンスと安定性、高い開発効率、モジュラー構造、下位互換性が挙げられます。 6 ©CAPCOM 6
高いパフォーマンスと安定性 高解像度で高フレームレートを実現 • プラットフォームとタイトル毎の徹底した最適化 短いロード時間 • ブロッキングロード廃止、並列ロード&動的スケジューリング 少ないヒッチングとクラッシュ • C#マネージコード + 独自GCアルゴリズム =技術面でタイトルの評価を下げない まず高いパフォーマンスと安定性についてです。 RE ENGINEでは内製エンジンのメリットを活かし、タイトルとエンジン開発者が緻密に協力しています。各プラットフォームと 7 タイトルに合わせた最適化を行うことで高解像度で高フレームレートを実現しています。 また、RE ENGINEはブロッキングロードを完全に廃止しました。これにより、マルチコアを利用した並列ロードや、 シークタイムを最小化する動的なスケジューリングによって、ロード時間の短縮を実現しています。 RE ENGINEのタイトルコードは全てC#言語で書かれおり、マネージコードとして動作することでクラッシュバグを 削減できています。 また、独自のガベージコレクションアルゴリズムを採用することで、定期的なカクツキは最小限に抑えられています。 長いロード時間、高頻度のクラッシュ、安定しないフレームレートなど、ゲーム内容ではなく技術面がネックになって タイトルの評価を下げることがないようにしています。 ©CAPCOM 7
高い開発効率 ラピッドイテレーションを実現 • 全てのタイトルコードをC#言語で統一 • ビルド時間とクラッシュバグの削減、ホットリロード対応 • • • • ネイティブキャッシュによるコンバート時間削減 全リソースのリロード対応 実機でのリモート編集 パッケージングの自動化 =タイトルの品質向上に注力できる 次にRE ENGINEの高い開発効率についてです。 RE ENGINEは高速なイテレーションを実現し、開発サイクルを効率的に回すことができます。 8 全てのタイトルコードをC#言語で統一することで、ビルド時間とクラッシュバグを大幅に削減できます。ゲームを再起動 することなく即座に変更を反映できるホットリロードにも対応しています。 コンバート済みのアセットを共有できるネイティブキャッシュによって、アセットのコンバート時間を削減できます。 また、全てのリソースがリロードに対応しており、ゲームを再起動することなく即座にアセットの変更を反映できます。 ランタイムとツールのプロセスが分かれていることで、ターゲットプラットフォーム上で即座にゲームを実行可能です。 アセットの依存関係を完全にトレースすることができ、事前準備なく自動的にパッケージを作成できます。 このような様々な効率化により、余力をタイトルの品質向上に充てることが可能です。 ©CAPCOM 8
モジュラー構造 自由にモジュールを組み合わせてエンジンを構成 CPSエミュレーション モジュールを共有 レンダリングモジュールを省いたエンジンを構成 Linuxクラウドサーバー上で動作 ミドルウェアモジュールの利用 =全てのタイトルを一つのエンジンで開発 次にモジュラー構造についてです。 RE ENGINEでは、レンダリングやモーションといった機能をモジュールという単位に分割しています。それらのモジュールを 9 自由に組み合わせてタイトルごとにエンジンを構成できます。 例えば、エグゾプライマルでは、レンダリングモジュールを省いたエンジンを作成し、ゲームロジックだけをLinuxの クラウドサーバー上で動かすことで多人数のマルチプレイを実現しています。 ストリートファイター6では、Havokのようなミドルウェアを必要に応じて組み込んだり、カプコンアーケードスタジアムで 利用したCPSのエミュレーションモジュールを組み込むことで、ゲーム内のゲームセンターを実現しています。 このようにモジュールを組み合わせることで、タイトルごとにエンジンを書き換えることなく全て一つのエンジンで開発する ことができます。 ©CAPCOM 9
下位互換性 全てのタイトルは最新のエンジンで動作 Apple M1 + Metal対応 マルチプラットフォーム展開 レイトレーシング等を追加した次世代アップグレード =カタログタイトルを資産にし幅広く活用 最後に下位互換性についてです。 RE ENGINEで作成されたタイトルは、全て最新のエンジンで動作するようになっています。これによって、例えばPS4向けに 10 作られたタイトルを、PS5のレイトレーシングのような最新機能を活用してアップグレードすることができます。 またAppleのM1チップに対応させたり、数多くのプラットフォームに展開するなど、カタログタイトルを資産として幅広く 活用することができます。 ©CAPCOM 10
RE ENGINEの今 次にRE ENGINEの今について紹介します。 ©CAPCOM 11
RE ENGINEの今 ほぼ全ての開発タイトルがRE ENGINEを採用 • • • • • 増え続けるプロジェクト 増え続ける対応プラットフォーム 増え続ける保守対象のカタログタイトル 増え続ける利用者と問い合わせ 増え続ける不具合対応 =エンジン運用体制の効率化が必要 今現在、ほぼ全ての開発タイトルがRE ENGINEを採用するようになりました。 これによりプロジェクトが増え続け、RE ENGINEが対応するプラットフォームも増え続けています。発売済みの保守対象の 12 カタログタイトルも増え続けています。 エンジンの利用者も増え続け、それに伴って日々の問い合わせも増え続けています。不具合の報告と、修正対応も増え続けています。 このためエンジンの運用体制をいかに効率化するかが重要になってきました。 ©CAPCOM 12
エンジン運用体制の効率化 RELauncherの導入と見える化 エンジンの安定性と互換性の担保 不具合調査コストの削減 問い合わせ対応と案件の管理 ここではRE ENGINEの運用を効率化するために行った様々な取り組みについて紹介します。 13 ©CAPCOM 13
エンジン運用体制の効率化 RELauncherの導入と見える化 エンジンの安定性と互換性の担保 不具合調査コストの削減 問い合わせ対応と案件の管理 まず初めに、RELauncherの導入と見える化について紹介します。 14 ©CAPCOM 14
RELauncherの導入と見える化 RELauncher RE Launcher • RE ENGINEとプロジェクトのHUBになるツール エンジン/プロジェクトの管理機能 • エンジン更新、バージョンの選択、ビルド、起動 • プロジェクト取得、切り替え、アセット取得、起動 エンジンと全プロジェクトの情報を集約 • エンジンの更新内容、連絡、配布状況等の表示 • スケジュール、タイトル個別のWEBサイトや サーバーへの各種リンク RELauncherはRE ENGINEとプロジェクトを繋ぐHUBになるツールです。 エンジンの更新、バージョンの選択、ビルドや起動を行ったりプロジェクトの取得、プロジェクトの切り替え、アセットの 15 取得などができます。また、全てのエンジンとプロジェクトの情報を集約し、誰もが、エンジンと各プロジェクトの最新の 情報にアクセス可能です。 ©CAPCOM 15
RELauncher ホーム画面 エンジンブランチ 切り替え プロジェクト取得、 作成 プロジェクトリスト エンジンの連絡や リリースノート等 NAS / Hansoft / マニュアル / ツール等へのリンク RELauncherのホーム画面はこのようになっています。左側のタブで、複数のプロジェクトを切り替えることができます。 中央には最新のエンジンのリリースノートや、連絡事項、プロジェクトのスケジュール等が表示されます。 16 上のボタンからは、プロジェクトを取得したり、新しく作成することができます。 右上のリンクからはエンジンのソースコード、マニュアルやツール等にアクセスできます。また複数のエンジンのブランチを 切り替えることも可能です。 ©CAPCOM 16
RELauncher プロジェクト画面 エンジンの更新と起動 エンジンリビジョン 切り替え プロジェクトの NAS / Hansoft / WEB / ツール等へのリンク プロジェクトの更新情報やWEB RELauncherのプロジェクト画面はこのようになっています。 中央には、選択したプロジェクトの最新状況が表示されます。 17 Launchボタンからは、エンジンの更新と起動ができます。起動するエンジンのリビジョンを任意に切り替えることも可能です。 右上のリンクからは、各プロジェクトのNASサーバー、Hansoft、WEBページやツール等にアクセスできます。 ©CAPCOM 17
エンジン運用体制の効率化 RELauncherの導入と見える化 エンジンの安定性と互換性の担保 不具合調査コストの削減 問い合わせ対応と案件の管理 次にエンジンの安定性と互換性を担保する方法について紹介します。 18 ©CAPCOM 18
エンジンの安定性と互換性の担保 タイトルからエンジンへの要求 • 最新のエンジンを早く使いたいが、不具合がなく安定したものが欲しい ・・・機能追加や更新には不具合はつきもの 互換性の維持 • リリース済みの過去タイトルは最新のエンジンでの動作を保証する ・..各メンバーが更新毎に全タイトルの動作チェックをするのは非現実的 =エンジンの品質を担保する仕組みが必要 タイトルからエンジンに求められることとしては、最新の機能をなるべく早く使いたいが、不具合がなく安定したものが 欲しいということです。しかし一般的には、機能の追加や更新を行うと不具合も必ず発生します。 19 また、RE ENGINEの方針として全てのリリース済みタイトルとの互換性を維持する必要があります。しかし機能追加や 変更のたびに全てのタイトルの動作を確認するのは現実的ではありません。 このような課題を解決するために、エンジンの品質を担保する仕組みが必要になりました。 ©CAPCOM 19
REQAの導入 デイリーパッケージビルド • 最新のエンジンで過去タイトルのパッケージを毎日作成 • アセットコンバートやビルドに問題がないか パッケージの自動プレイ • デイリーで作成したパッケージを自動プレイ • メモリリークやクラッシュが発生しないか QAチームによるパッケージの動作チェック • デイリーで作成したパッケージをQA人員 ( 2 ~ 3人 )が通しプレイ • 製品と比較して見た目や動作に差異がないか カナリアテスト • タイトルの一部メンバーが先行して最新のエンジンを利用し通常作業を行う • エディタや制作中のプロジェクトの動作に問題がないか そこでREQAと呼ぶ、エンジンの安定性と互換性を維持するための一連のテストフローを導入しました。 まずはデイリーパッケージビルドです。毎日、その日の最新のエンジンを利用して、リリース済みの全タイトルのパッケージを 20 作成します。これにより、アセットのコンバートやビルドの問題を検出できます。次に、作成した全パッケージに対して 自動プレイを行います。これにより、クラッシュやメモリリークの問題を検出できます。 同時に、QAチームによる人力でのパッケージのスルーチェックを行います。毎日2~3人がローテーションでパッケージを チェックし、製品と比較して見た目や動作に差がないかを確認します。カナリアテストでは、一部のタイトル開発者が先行して 最新のエンジンを利用し通常作業を行います。 これにより、エンジンのツール、エディタや、最新プロジェクトの動作に問題がないかをチェックします。 ©CAPCOM 20
エンジンの配布フロー ソースコードをMaster/Releaseの2つのGitブランチで管理 • テストに成功したらReleaseブランチをMasterでGitリセットして配布 • 軽微な不具合はReleaseブランチにHotFixを入れて配布 18:30 Masterブランチ 9:00 17:30 QAチェック デイリー パッケージビルド 自動プレイ Releaseブランチ Gitリセット カナリアテスト REQA Commit 重大な不具合 見送り Hot Fix 配布 REQAを通してエンジンが配布されるまでの流れです。 エンジンのソースコードはMasterとReleaseの二つのGitブランチで管理されています。 21 エンジン開発者はMasterブランチに対して都度コミットを行います。その日の終わりに、最新のMasterブランチでパッケージが 作成されます。次の日に、作成されたパッケージの自動プレイと、QAチームによるパッケージのスルーチェックが行われます。 同時に、カナリアテストとして一部のタイトル開発者が最新のエンジンで通常作業を行います。 もし重大な問題が見つかった場合は、リリースは見送られます。何も問題が見つからなければReleaseブランチをMasterで Gitリセットして最新エンジンを配布します。軽微な問題はReleaseブランチにHotFixを入れて配布します。 ©CAPCOM 21
REQAの運用状況 テスト成功率平均30% • 7割の確率で新しい不具合が入っている リリース率平均50% • 2日に一度の頻度で最新のエンジンを配布できている 画像はREQAの運用状況になります。 これまでの平均のテスト成功率は約30%です。言い換えれば、毎日7割の確率で新しい不具合が入っていると言えます。 22 これまでの平均のリリース率は50%になります。つまり2日に一度の頻度で、安定した最新エンジンを配布できていると言えます。 軽微な不具合はHotfixを入れて配布することで、リリース率の改善につながっています。 ©CAPCOM 22
エンジン運用体制の効率化 RELauncherの導入と見える化 エンジンの安定性と互換性の担保 不具合調査コストの削減 問い合わせ対応と案件の管理 次に不具合調査の時間を削減する方法を紹介します。 23 ©CAPCOM 23
不具合調査コストの削減 不具合の調査開始までの手順 • • • • 対象ブランチのエンジンをビルド 対象プロジェクトのアセットを取得して変換 対象プラットフォームの機材を準備 不具合報告があった状況までゲームをプレイして再現 =不具合調査コストの削減が生産性に直結 実際に不具合の調査を始めるまでにはいくつもの手順があります。 まずは、調査対象となるブランチのエンジンをビルドします。そして、調査対象となるプロジェクトのアセットを取得して 24 変換します。 次に、不具合が発生したプラットフォームの機材を準備し、報告があった状況までゲームをプレイして、不具合を再現させます。 このように、実際に1つの不具合調査を始めるまでには多くの準備と時間が必要になります。従って、不具合調査コストを 削減することが生産性に直結します。 ©CAPCOM 24
ハイエンドPCの導入 エンジン開発者向けにハイエンドPCを導入 • CPU : AMD Ryzen Threadripper PRO 5975WX 32コア 64スレッド • GPU : GeForce RTX 4090 • メモリ : 256GB • ストレージ : 10TB SSD エンジンビルド時間の大幅削減 • 分散ビルドで15分からローカルビルド5分以下に短縮 全プロジェクトのアセットをSSDに保持可能 まずは物理的な解決方法として、エンジン開発者全員にハイエンドPCを配布しました。 スペックとしては、CPUはThreadRipperProの32コア、64スレッド、GPUはGeForceRTX4090、メモリは256GB、 25 ストレージは最低10TBのSSDが搭載されています。ハイエンドPCを用いて、ローカルでビルドを行うことにより、 分散ビルドで15分以上かかっていたエンジンのビルドが5分以下まで短縮できました。また10TBのストレージには、 ほぼ全てのプロジェクトのアセットを保持できます。 ©CAPCOM 25
デバイスファームの導入 不具合調査等で必要になった時に開発機を確保 • Target Managerに自動的に登録 開発機にリモート接続して調査 • Studioからターゲットにリモート接続 不要になったら開発機を解放 =全員が全プラットフォームの機材を保持する必要がない 次にデバイスファームを導入しました。 不具合調査などで必要になった時に機材を確保し、不要になった時に機材を解放する仕組みです。 26 各プラットフォームのターゲットマネージャーへの登録なども行うため直ぐにStudioからリモートで機材に接続して調査を 行うことができます。これにより、全員が全プラットフォームの機材を持つ必要がなくなりました。 ©CAPCOM 26
開発用クラウドセーブの導入 自動でセーブデータを開発用サーバーに転送 • 異なるプラットフォーム間や、 ユーザー間でセーブデータを簡単に共有 スナップショット機能 • 任意のセーブデータを永続保存 • IDで全体に共有 =不具合状況の再現を容易にする 次に開発用のクラウドセーブを導入しました。 ゲーム上でセーブを行うと、自動的にセーブデータが開発用サーバーに転送されます。これによって、異なるプラットフォームや 27 ユーザーの間でセーブデータを簡単に共有できるようになりました。 スナップショット機能を利用することで、任意のセーブデータを永続的に保存することもできます。不具合が発生する箇所の セーブデータのスナップショットを作成し、スナップショットIDを記載すれば、直ぐにその状態を再現できます。これにより、 不具合の再現までの手間を削減することができます。 ©CAPCOM 27
パッケージマネージャーの導入 全プロジェクトのパッケージを一元管理 • ツール上から各プラットフォーム機材にインストールが可能 パッケージからエンジンビルド環境を復元 =実行ファイルのみを差し替えてデバッグ 次にパッケージマネージャーを導入しました。 全てのプロジェクトの全てのゲームパッケージを一元的に管理し、ツール上から各プラットフォームの機材にパッケージを 28 インストールできます。またパッケージを作成した時のエンジンのビルド環境も復元できます。 これにより、アセットを取得したり、コンバートしたりすることなく、実行ファイルのみを差し替えて直ぐにデバッグできるように なりました。 ©CAPCOM 28
REProfilerの導入 パッケージに直接接続可能なプロファイルツール • 全シーン階層と全インスタンスのフィールドをリアルタイム表示 • プロパティをリアルタイムに変更可能 • リソース、メモリ、パフォーマンスプロファイル機能等 =パッケージから直接不具合調査を行う 最後に、REProfilerを導入しました。REProfilerはパッケージに直接接続できるプロファイルツールです。 ゲーム中の全てのシーン階層や、全てのインスタンスのフィールドを表示し、プロパティなどをリアルタイムに変更できます。 29 また、リソースやメモリ、パフォーマンスのプロファイルなどデバッグに必要な様々なプロファイル機能を持っています。 REProfilerを接続することで、パッケージから直接不具合調査を行うことができるようになりました。 このように、ハイエンドPCや様々なツールを導入することで、不具合調査にかかる時間を短縮することができました。 ©CAPCOM 29
エンジン運用体制の効率化 RELauncherの導入と見える化 エンジンの安定性と互換性の担保 不具合調査コストの削減 問い合わせ対応と案件の管理 次にエンジンの問い合わせ対応や、案件の管理方法について紹介します。 30 ©CAPCOM 30
問い合わせ対応と案件の管理 Microsoft Teamsを活用 • 不具合報告、機能追加依頼、相談など • ユーザーとエンジン担当者がリアルタイムにやり取り タイトルQA • Hansoftで管理しTeamsに転載して担当者とやり取り Teamsの課題 • 一覧性が悪い、スレッドが流れやすい • 検索機能が弱い • タスク管理には使えない 基本的に不具合の報告や、機能追加の依頼、相談などはTeamsを利用し、ユーザーとエンジンの担当者がリアルタイムに 直接やり取りします。 31 タイトルのQAについては、不具合ごとにHansoftで管理されますが、内容はTeamsに転載され、担当者にメンションされます。 Teamsはリアルタイム性が高く、コミュニケーションには非常に便利です。ただ、スレッドの一覧性が悪く、スレッドが 流れやすい、検索機能が弱い、タスク管理には使えないなどの問題もあります。 ©CAPCOM 31
TeamsViewを導入 RELauncherに統合したタスク管理ツール • Microsoft Graph APIを利用しサーバーに Teamsの内容をキャッシュ • Teamsスレッドの一覧表示、高速な検索、 フィルタリングが可能 • ハッシュタグによるTeamsスレッドのタスク化と ステータス管理 • Hansoft/Gitなど外部ツールとの同期 =カジュアルなタスク管理 そこで、TeamsViewと呼ぶツールを導入しました。RELauncherに統合されたTeamsベースのタスク管理ツールになります。 クローラーが全てのTeamsの内容を社内のサーバーにキャッシュします。これによりTeamsスレッドの一覧表示や、高速な検索、 32 スレッドのフィルタリングといったことが可能になりました。 また、Teamsの投稿に#不具合、#完了などハッシュタグをつけることで、Teamsのスレッドを、種類と状態を持ったタスクとして 管理することができます。これにより、未完了のタスクや、自分に関連するタスクも簡単に検索でき、HansoftやGitなど 外部ツールとステータスを同期することもできます。 このようにTeamsViewを利用することで、Teamsのリアルタイム性を重視しつつ、カジュアルなタスク管理も行えるように なりました。 ©CAPCOM 32
RE ENGINEのこれから 最後に、RE ENGINEのこれからについて紹介します。 ©CAPCOM 33
RE ENGINEのこれから RE ENGINEの課題 • プロジェクト規模の拡大と多様化 • 大量で大容量のアセットを効率的に扱う必要性 • タイトルごとの高度なカスタマイズの必要性 • 海外協力会社での利用、チームメンバーの多国籍化 • ドキュメント、サンプル、ローカライズの重要性 • 中途、新卒の市販ゲームエンジン経験者の増加 • カスタマイズ性やユーザビリティへの要求の高まり =新しい水準のエンジンが必要 コードネーム REX : RE neXt ENGINE これまでRE ENGINEを運用してきた中で、いくつかの課題が見えてきました。まずは、プロジェクト規模の拡大と多様化です。 最初にリリースしたバイオハザード7から比較すると、昨今のプロジェクトのアセット数やコード規模は5倍以上に膨れ上がり 34 ました。これにより当初よりもイテレーション速度が低下しており、より大量で大容量のアセットをより効率的に扱う仕組みが 必要になりました。 RE ENGINEを使って開発されるタイトルも多様化しており、ジャンルに合わせた高度なカスタマイズも求められるようになりました。 RE ENGINEは海外の外注先でも使われるようになり、またプロジェクトメンバーにも外国籍の方が増えてきました。これにより、 今まで以上にドキュメント、サンプル、チュートリアルの充実や、多言語対応が求められるようになりました。 さらに、市販のゲームエンジンを経験した中途や新卒採用者が増えてきており、市販エンジンと同じ水準のユーザビリティや カスタマイズ機能が求められるようになってきました。 これらの課題を解決するためには、内製エンジンの枠を超えた新しい水準のエンジンが必要になります。 我々はこの次世代エンジンを、コードネームREXと呼び、開発に取り掛かっています。 ©CAPCOM 34
REX開発方針 既存のRE ENGINEに新技術 ( RE + X ) を段階的に導入 • • • • • • • • REDox REUI RELog REFlows REAssetStream REProfiler RELauncher RERuntime RERuntime REDox RELauncher REUI REProfiler RELog REAssetStream REFlows REXでは、全く新しいエンジンを一から作るのではなく、既存のRE ENGINEに新しい技術 RE+Xを段階的に導入していきます。 このようにして現在のRE ENGINEを次世代の水準に引き上げていきます。 35 各技術の詳細については、また別の機会に紹介していきたいと考えています。 ©CAPCOM 35
RE ENGINE is the neXt generation 次世代のRE ENGINEにご期待ください。 ©CAPCOM 36