システマティックレビューとメタアナリシス:キーノートレクチャー資料 (2/5)

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September 06, 24

スライド概要

日本体育・スポーツ・健康学会第74回大会の測定評価部会キーノートレクチャー(2024年8月29日)の発表資料を一部改変しました。

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西の方の研究者です。

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各ページのテキスト
1.

日本体育・スポーツ・健康学会第74回大会 測定評価/キーノートレクチャー 体育・スポーツ・ 健康科学分野における システマティックレビュー/ メタアナリシス (2) 九州大学大学院医学研究院 附属総合コホートセンター 本田貴紀

2.

レビュークエスチョンの定式化 ● 大まかな疑問を定式化されたリサーチクエスチョンに落とし込む 例: 心血管病ハイリスク者において、運動によるベネフィットは、運動の種 類によって違うか?(Lee DC et al. Eur Hear J. 2024) 介入研究 Population 対象者 • PICO(PECO) フレームワーク Intervention 介入 • Comparator 比較対照 • Outcome アウトカム • 血圧高値を呈し、過体重または肥満を有する中年 期の成人 週3回×1時間の(1)レジスタンス運動、(2)有酸素 性運動、(3)両者の併用 運動なし 収縮期血圧、LDLコレステロール、空腹時血糖、体 脂肪率

3.

レビュークエスチョンの定式化 例: 脳卒中入院中の身体機能は復職を予測するか? (Jarvis et al. Stroke. 2019) 病因学的研究 予後因子研究 予測モデル研究 PICOTS Population 対象者 Index factor/model インデックス因子/モデル Comparator 比較対照 Outcome アウトカム Timing タイミング (いつ測るか) Setting セッティング (役割や場面) • • 若年(<65歳)脳卒中患者 3次元歩行分析による歩行パラメータ • • • 退院後の復職 入院中 • 回復期~慢性期リハビリテーション

4.

レビュークエスチョンの定式化 例: 自閉スペクトラム症の診断に優れた検査は?(Randall et al Cochrane Database Syst Rev. 2018) 診断検査精度研究 PIT Population 対象者 Index test インデックス検査 Target condition 標的疾患 • • • 就学前の児童 既存の診断ツール(CARS, ADI-R等) 自閉スペクトラム症の臨床診断 例: オリンピック選手の筋損傷の実態は?(Katagiri et al. Br J Sports Med. 2024) 有病率研究 PC Population 対象者 Condition 疾患・状態 • • 東京五輪参加選手 MRIで検出した筋損傷

5.

レビュークエスチョンの定式化 ● 定式化のためには、適格基準(包含・除外基準)、曝露の定義や測定方 法・時期、アウトカムの定義や測定方法・時期を考慮する。 → 目的に沿った報告ガイドライン・チェックリストを参照すると良い CHARMS (予測モデル研究) CHARMS-PF (予後因子研究) STARD (診断検査精度研究) EQUATOR Network(http://www.equator-network.org/) 参照 ● リサーチクエスチョン << レビュークエスチョン レビューでは個々の研究よりも広範な課題を定義する。 個別研究: 40~60歳の地域住民 レビュー: 中高年者

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文献検索: データベースの決定 必ず2つ以上のデータベースを利用 MEDLINE Embase 運営 National Library of Medicine 概要 PubMedの背景にあるデータベース。 治験番号・製品名など薬剤検索に メイン。 強い。 引用/被引用文献の分析に強い。 注意点 MeSH term(統制語)の構造理解が 必要。 ヒト/動物実験のフィルタリング不可 CINAHL Plus: 看護・健康科学分野 APA PsychINFO: 心理学分野 Cochrane CENTRAL: 臨床試験 ClinicalTrials.gov:臨床試験 Elsevier Web of Science 多くの機関で直接利用ができな いため、検索委託費用が必要。 Clarivate Analytics

7.

文献検索: 検索ストラテジー(検索式)の設定 1) 概念の明確化とキーワード 介入研究 PICO/PECO 病因学的研究 予後因子研究 予測モデル研究 PICOTS Population 対象者 Intervention 介入 Comparator 比較対照 Outcome アウトカム P・Iに関するキーワードを検索式に含める。 アウトカム(O)のキーワードを含めると選択 的報告や出版バイアスの影響を受けるため、 推奨されない。 Population 対象者 Index factor/model インデックス因子/モデル Comparator 比較対照 Outcome アウトカム Timing タイミング Setting セッティング アウトカムまで指定することも多い。 = 限定しないと際限がない? ※特定の介入に対して標的となる疾患・状態には限りがある。

8.

文献検索: 検索ストラテジー(検索式)の設定 1) 概念の明確化とキーワード 検索キーワードの選定 ・個々の一次研究で使われる用語 ・類語辞書 ・ウェブページ など 同義語・関連語をカバー:cancer, tumor, neoplasm, carcinoma… つづりのバリエーション: ワイルドカード(あいまい検索)や部分一致検索 behavior/behaviour → behavio$

9.

文献検索: 検索ストラテジー(検索式)の設定 2) 統制語(主題検索) PubMed/Medlineに収載されるすべてのレコードには、手作業で MeSH (Medical Subject Headings、医学主題見出し)と呼ばれる 統制語が付与される。 選定したキーワードに対応する MeSH termのツリー構造を 確認し、検索範囲を決める。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/mesh/

10.

文献検索: 検索ストラテジー(検索式)の設定 MeSH termを調べるには?

11.

文献検索: 検索ストラテジー(検索式)の設定

12.

文献検索: 検索ストラテジー(検索式)の設定 Medline(Ovid)で exp Transportation とすると、下位項目を 含めたツリーを検索の 対象とする。 (explode検索) ※Embaseも統制語機能あり

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文献検索: 検索ストラテジー(検索式)の設定 3) ブール演算子 OR演算子:検索範囲を広げる exercise OR training AND演算子:検索を範囲を焦点化する training AND adult [対象者(P)] AND [介入(I)] 中身をOR 中身をOR

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文献検索: 検索ストラテジー(検索式)の設定 3) ブール演算子 NOT演算子:誤りやすいので、キーワードへの使用は避ける フィルタリングで使うことが多い “animal”タグ付け “human”タグ付け どちらのタグも無い ヒトの研究に絞りたければ… ([対象者] AND [介入/曝露]) AND [ヒト] × ([対象者] AND [介入/曝露]) NOT [動物] 〇

15.

文献検索: 検索ストラテジー(検索式)の設定 検索範囲 作業量 感度 特異度 狭い 少ない 低い(拾い漏れが多い) 高い(ノイズが少ない) 検索範囲 広い 多い 高い(拾い漏れが少ない) 低い(ノイズが多い) 検索範囲 対象とすべき 文献 対象とすべき 文献 不要(ノイズ) 正しく抽出 拾い漏れ

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文献検索: 検索ストラテジー(検索式)の設定 ● 最終的にどう「決める」か ・ 網羅性のためには、感度を高める(広範な検索)戦略のほうが望ましい。 ・ 図書館司書・情報専門職にも適宜相談を。 ・ 先行SR/MAの検索式を参考に試行錯誤。 ・ 実務上では、事前検索を通じて「ドンピシャ論文」(必ず含めたい文献)を決めてお いて、「少なくとも『ドンピシャ論文』を拾い漏らさない」検索式を目指すと良い。 検索範囲 対象とすべき 文献 ドンピシャ論文

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文献検索: 検索ストラテジー(検索式)の設定 ● 「筋トレのレビュー」での検索式 PubMedで予備検索を実施 専門業者に検索式の作成を依頼 Momma et al. Br J Sports Med. 2022

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ご質問・ご感想・共同研究 etc. E-mail: [email protected] Twitter(X): @pon144 (仮)保健・医療のためのシステマティックレビューとメタアナリシス 2025年初めに大修館書店さまより刊行予定