システマティックレビューとメタアナリシス:キーノートレクチャー資料 (1/5)

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September 06, 24

スライド概要

日本体育・スポーツ・健康学会第74回大会の測定評価部会キーノートレクチャー(2024年8月29日)の発表資料を一部改変しました。

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西の方の研究者です。

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各ページのテキスト
1.

日本体育・スポーツ・健康学会第74回大会 測定評価/キーノートレクチャー 体育・スポーツ・ 健康科学分野における システマティックレビュー/ メタアナリシス (1) 九州大学大学院医学研究院 附属総合コホートセンター 本田貴紀

2.

自己紹介を兼ねて ● 本務では、身体活動の疫学研究や臨床予測モデルの開発を行っている。 ● 『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』策定班に参加し、 筋トレのシステマティックレビューとメタアナリシスに携わった。 このほか、臨床予測モデル、国際保健などの分野でシステマティックレビュー(SR)とメタアナリシ ス(MA)に携わってきた。 Momma et al, Br J Sports Med. 2022

3.

宣伝 Systematic Reviews in Health Research: Meta-Analysis in Context Edited by Matthias Egger, Julian P.T. Higgins, George Davey Smith (仮)保健・医療のためのシステマティックレビューとメタアナリシス 監訳 翻訳 本田 貴紀 九州大学 辻 大士 筑波大学 天笠 志保 帝京大学 桑原 恵介 横浜市立大学 陳 三妹 広島大学 菊池 宏幸 東京医科大学 門間 陽樹 東北大学 福井 敬祐 関西大学 川上 諒子 (公財)明治安田厚生事業団 大須賀 洋祐 国立長寿医療研究センター 田島 敬之 東京都立大学 清原 康介 大妻女子大学 清野 諭 山形大学 北濃 成樹 (公財)明治安田厚生事業団

4.

今日のねらい 1. SR/MA論文の構成を理解する。 2. SR/MA実施の作業を知る。 3. 自分でSR/MAに挑戦するハードルを少しでも下げる。

5.

目次 1. システマティックレビュー/メタアナリシス(SR/MA)総論 2. 体育・スポーツ・健康科学分野のSR/MA 3. SR/MAの進め方 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 下準備・計画 レビュークエスチョンの定式化 文献検索 スクリーニング 批判的吟味 メタアナリシス 報告 4. まとめ

6.

SR/MA総論 ● システマティックレビュー(系統的レビュー) 「明らかにしたいリサーチクエスチョンや課題について、あらかじめ決めた ルールに従い文献を検索して系統的に抽出し、1つ1つの文献についてその 正確性を評価し、総合的にそのリサーチクエスチョンに対する現時点におけ る結論を示すこと」 ● メタアナリシス(メタ分析・メタ解析) 「システマティックレビューに基づき、これまでの研究結果を統合すること。 したがって、システマティックレビューの方法と、既存の研究成果を統計的 に統合する手法を理解する必要がある。」 藤原武男、『メタアナリシス』 疫学の事典 p.375

7.

SR/MA総論 エビデンスの「ピラミッド」 ● 介入効果検証のため「適切に行われた ランダム化比較試験(RCT)のSR/MA」は エビデンスレベルが高い Murad et al, BMJ Evid Based Med. 2016

8.

SR/MA総論 ● 「適切に行われたRCTのSR/MA」はなぜエビデンスレベルが高いのか。 RCT 非ランダム化研究 共変量 共変量 確率割り付け 介入 交絡 アウトカム 効果量±ばらつき 不偏推定値 サンプルサイズに依存 曝露 アウトカム 効果量±ばらつき 非不偏推定値 サンプルサイズに加え、 バイアスが影響する

9.

SR/MA総論 RCT 真の値との差は偶然誤差(サンプルサイズに依存) 大規模研究ほど精度が高い 非ランダム化研究

10.

SR/MA総論 RCT 非ランダム化研究 真の値との差は偶然誤差+バイアス 大規模研究よりも小規模研究のほうが、 交絡などのバイアスに適切に対処できていることも。

11.

SR/MA総論 RCTと非ランダム化研究で 逆の関連を認めるケースも。 ✓ βカロテンサプリメント ✓ ホルモン補充療法 Egger et al. BMJ 1998

12.

体育・スポーツ・健康科学分野のSR/MA ● RCTの難しさ ランダム化が困難 二重盲検化が困難 費用(スポンサー)の工面 研究ごとの対象者や曝露の違いが表れやすい 習慣的曝露(年単位)の効果を捉えたい ● PICOに必ずしも沿わないリサーチクエスチョン 「機械学習でスポーツ外傷を予測できるか?」

13.

体育・スポーツ・健康科学分野のSR/MA 非ランダム化研究 • • • • • 非ランダム化介入研究 予後因子研究・病因学的研究(いわゆる危険因子探索) 診断検査精度研究 有病率研究 臨床予測モデル研究 SR/MAの実施にあたって、 リサーチクエスチョンの立て方やバイアスリスク評価の面で、 特別な注意を要する。

14.

SR/MAの進め方 下準備・計画 レビュークエスチョン の定式化 文献検索 レビューを構想する 問題設定・プロトコル策定のための 仮検索を行う 文献検索を行う タイトル・抄録スクリーニングする スクリーニング 本文を収集する 全文確認し、採用可否を決める 批判的吟味 情報を抽出する 批判的に吟味する 分析・統合 報告 分析・統合する 書きあげ、編集し、宣伝する Boland(ed) “Doing a systematic review: a student’s guide 2nd ed”

15.

下準備と計画 仲間集め ● レビュー実施者は少なくとも2人以上必要 = 自分と同じ熱意と根気で取り組める人 ● SR/MAの豊富な経験のあるスーパーバイザーがいると良い ● 情報専門職や図書館司書からの助言も得られるとなお良い (網羅性・効率性を高める)

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下準備と計画 2020年7月頃 ・・・ 「(有酸素性運動だけでなく)筋トレを推奨するメッセージ性を明確化」 発足 レビュー決定 MEDLINE, Embase 検索情報更新 GRADE評価 PubMed 予備検索 バイアスリスクの評価 勉強開始 メイン解析 感度分析 査読対応 英文校正 PROSPERO登録 背景と方法 → 結果 → 考察 の順番で BJSM投稿 1雑誌目 → エディターキック 最初の判定 アクセプト! 東北大学 門間先生発表資料より一部改変

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下準備と計画 ◼ プロトコル(計画書)作成 プロトコル登録データベースPROSPEROへの登録を目標に。 https://www.crd.york.ac.uk/prospero/ 介入試験用の登録データベースだが、非介入研究も登録できる。(ただし、非介入研究では記入しにくい項目もある) ● 主な登録項目: リサーチクエスチョン、検索方法、適格基準、PI(E)CO、データ抽出方法(選択・コ ーディング)、バイアスリスクの評価方法、データ統合方法、実施予定期間、資金、 COI、進捗状況、連絡先 ● 最初から確立したプロトコルを作るのは難しい。 → 実際には検索ストラテジーの策定と並行しながらプロトコルを作る。

18.

下準備と計画

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ご質問・ご感想・共同研究 etc. E-mail: [email protected] Twitter(X): @pon144 (仮)保健・医療のためのシステマティックレビューとメタアナリシス 2025年初めに大修館書店さまより刊行予定