原発事故から15年 福島再生にむけて、いま考えなければいけないこと=復興推進と放射線対策は両立する=

>100 Views

January 24, 26

スライド概要

福島原発事故後の復興と放射線対策を、功利主義と義務論という二つの価値観から整理する。人は社会的動物であり、つながりが失われると孤立や格差が健康に深刻な影響を与えることを、ストレス科学や公衆衛生の研究結果を踏まえて解説。具体的には、孤立が感染症や心血管疾患のリスクを高め、経済成長が進む社会でも格差が拡大すれば、「勝ち組」含めてすべての人の寿命が伸び悩むことを示す。そこで、復興を推進しつつ放射線対策を強化するために、弱者や少数者の命を守る義務論的アプローチを取り入れた提案を行う。

シェア

またはPlayer版

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

ダウンロード

関連スライド

各ページのテキスト
1.

福島大学・授業 2026年1月20日 原発事故から約15年 福島再生に向けて、いま考えなければいけないこと ─復興推進と放射線対策は両立する─ 伊藤浩志 福島市在住の独立研究者(学術博士) 専門領域: 脳神経科学/ストレス科学/リスク論/科学技術社会論 [email protected]

2.

本日の発表内容 ü 自己紹介 ü 人は社会的動物として進化した ü 命の守り方には2種類ある: 功利主義(復興推進)と義務論主義(放射線対策) ü いまさらだけど、放射線の基礎知識 ü シンデミックとアロスタティックロード =放射線の影響受けやすい人がいる= ü 福島再生に向けての提案

3.

自己紹介 静岡県磐田市生まれ、現在64歳 福島市在住(原発事故の次の年に福島に来ました) 元時事通信社記者(~2001年) 東京大学大学院で脳神経科学を専攻、ストレス研究で博士号取得(2010年) 現在: 独立研究者(フリーランスライター) 調査研究対象 • 福島原発事故後の健康課題 • 健康格差、地域の分断 著書 • 復興ストレス (彩流社, 2017年刊) • 「不安」は悪いことじゃない(イースト・プレス, 2018年刊) • なぜ社会は分断するのか(専修大学出版局, 2021年刊)

4.

今日は、ストレスについてお話します コミュニティー再生も 放射線の健康影響も ストレスと関係しています

5.

人は一人では生きていけない クマと戦って勝てる人はいない 足が遅いから、逃げることもできない ひ弱な人類が繁栄できたのは、なぜだろう

6.

ツキノワグマ出没警報 発令(~1/15) ※ 1/16~4/15:引き続き、県内全域に「注意報」が発令された 福島民報 (2026年1月16日付朝刊)

7.

もはや世界的な話題に ニューヨークタイムズも報じた東北のクマ被害

8.

多くの人の命を守るために 何よりも大切なのは 人と人とのつながりの豊かさ

9.

裏を返すと ひ弱な人類は 人と人とのつながりが途絶えると 途端に命が脅かされる

10.

たとえば、 友人が少ない人(孤立した人)は風邪を引きやすい (Cohen S et al., 1997)

11.

COVID-19:典型例としてのニューヨーク市 行政区別死亡率 差別され、孤立しがちで、低所得の 黒人・ヒスパニックの死亡率が高かった ブ ロ ン ク ス 人種/エスニシティ別死亡率 所得別死亡率 富 裕 層 の 多 い 地 区 最 貧 地 区 マ ン ハ ッ タ ン ア ジ ア 系 黒 人 白 人 ヒ ス パ ニ ッ ク ・ ラ テ ン 系 グラフのデータは同市保健局の集計(2020年11月16日現在)

12.

「命」に直結する人とのつながりの豊かさ ü 社会的動物として進化した人類は、人と人との「関係の病」に敏感に反応 • 関係の病:孤立/否定的な社会的評価 (格差、不公平、差別など) • 関係の病は、実際に死亡率を高める : 孤立した人の死亡リスクは平均して2倍高い (House JS et al., 1988) : 所得格差が大きい社会ほど、健康水準が低い (Pickett KE et al., 2015) ü 格差社会は不健康社会 (Wilkinson RG, 2005; Marmot M, 2015) • 心臓病やがんの死亡率が高い • 乳幼児死亡率が高い • 総死亡率が高い • 薬物中毒/アルコール依存症患者が多い

13.

社会経済格差は「健康」格差 10 600 500 600 $ ,"( ,!+ 500 !%"% 400 - & 25 10 #$$ 25 64 " &)’ 400 #%, 64 . ’ 300 300 "*+" 200 200 0.14 0.16 0.18 0.20 50% 0.22 0.24 0.26 0.28 0.14 0.16 0.18 0.20 0.22 0.24 0.26 0.28 50% (Ross NA et al. 2005 を改変)

14.

実際にクマに襲われなくても 誰も助けてくれないような状態に置かれると (孤立/分断/格差/差別) 人は、心が痛む (うつ病など心の病気になりやすくなる) そのような状態が続くと 今度は、身体が痛み出す (心臓病、脳卒中、糖尿病など身体の病気になりやすくなる)

15.

なぜだろう 心が痛むと身体が痛むのは… 社会的動物として進化する過程で 元からあった 身体の痛みを処理する仕組みを利用して 心の痛みに対処するようになったから、 (Decety J et al., 2012) と考えられている

16.

心が痛むと身体が痛み、身体が痛むと心が痛む ü 心の病気になると、身体の病気にもなりやすくなる • うつ病患者は →がん/心臓病になりやすい ü 心の痛みを止めると、身体の痛みも止まる • 抗うつ剤(特にフルオキセチン)の投与で →心筋梗塞になりにくくなる ü 身体の病気になると、心の病気にもなりやすくなる • がん/心臓病の患者は →うつ病になりやすい ü 身体の痛みを止めると、心の痛みも止まる • アセトアミノフェン(鎮痛剤)を服用すると →心の痛みも感じにくくなる 参考文献: Dewall CN et al., 2010; Coupland C et al., 2016; Spiegel D & Giese-Davis J, 2003; Baune BT et al., 2012

17.

心が痛むと体が痛む 具体的なメカニズム 心の痛み=「心理社会的なストレス」 ストレスによる慢性炎症 →老化の加速 →慢性疾患になりやすくなる 重要ポイント ※ 慢性炎症で起こる病気: 身体の痛み:心臓病、脳卒中、糖尿病、がん… 心の痛み:うつ病、PTSD、統合失調症… 参考文献: Bellingrath S et al. 2013: Tchkonia T et al. 2013; Irwin MR & Cole SW 2013 心の痛みも身体の痛みも同じ炎症反応が起こる →心の病気になると、身体の病気になりやすくなる →身体の病気になると、心の病気になりやすくなる

18.

小括1 人類は社会的動物 集団として結束することで寿命を延ばしてきた しかし すべての人と仲良く暮らせるわけではない 孤立/格差/分断/差別はなくならない 助け合えば 多くの人の命を救うことができるが 弱者/少数者の命は脅かされ続けることになる

19.

多くの人の命を守ることを第一に考えるのか それとも 弱者/少数者の命を守ることを優先するのか 誰の命を守るのか 問われているのは価値観

20.

命の守り方には2種類ある ü 功利主義 :J.ベンサム、J.S.ミル • 最大多数の最大幸福: 幸福な人を足し算して、それが最大になるように努める ※ 公平への配慮:各人を1人として数え、一部の人の幸福を優遇しない • 帰結主義: 事前の予測(こうすれば、こうなるはずだ)に基づいて正しさを判断する ※ 情動や感情よりも、理性的な帰結の計算を重視する ü 義務論主義 :J.ロールズ • • • それ自体で善いものと自分で意欲できる原則を、自分の義務とする 直感的、動機を重視 マキシミン原理(最小を最大化): 社会の中で最も恵まれない人々の利益を最大化することが正義 ※ 功利主義を批判:多数者の幸福のために一部の少数者を犠牲にするから

21.

経済成長は平均寿命を延ばす=功利主義

22.

しかし、 弱者の命は蔑ろにされがちになる • 経済成長に乗り遅れた人たち • 経済成長の犠牲者(水俣病など4大公害病) 経済(多数の命を救う) vs 命(弱者の命を救う) 対立しがちな 功利主義と義務論主義 ところが、 多くの人が飢えから解放された社会では 2つの価値観(功利主義と義務論主義)は 対立しない

23.

格差が激しい米国は寿命の延びが頭打ちになる 先進国最低レベル、途上国(コスタリカ)より平均寿命が短い

24.

格差が拡大/固定化すると 富裕層含めて社会全体の健康水準が低下する u 格差が激しい米国では … ü 平均寿命の延びは1980年から15年間で4.9年 、他の先進国では7.8年 (Kamal R 2019) ü アーカンソー州の黒人男性の平均寿命は68歳、ミネソタ州の白人女性は83歳 (Mariotto AB et al. 2018) ü ニューヨーク市の地下鉄: マンハッタン・ミッドタウンからサウスブロンクス地区まで乗車すると、平均寿 命は約10年短くなる。乗車時間1分ごと に寿命が6ヶ月 短くなる計算 (Berwick DM 2020) u 「勝ち組」の健康水準を上げるには、弱者救済が必要 ü 平等な地域は、そうでない地域と比べ、高額所得者を含め全ての階層で死亡 率が低い (Wilkinson RG & Pickett KE 2008) ü 女性の地位が高い地域ほど、男性 の死亡率が低い (Kawachi I et al.1999)

25.

今の日本では 功利主義と義務論主義は対立しない ü 第二次世界大戦後の復興から高度経済成長までは… 経済成長が平均寿命を延ばす →功利主義(多数の命を優先)としては、水俣病は「必要悪」 →義務論主義(弱者の命を尊重)としては、水俣病患者は「経済の犠牲者」 →経済(功利主義)と命(義務論主義)は対立 ü 高度経済成長以降 (ある程度、飢えから解放された社会)は 格差は人の命を奪う →弱者・少数者の命を救わないと、 →「勝ち組」含めた多数者の命も失うことになる →経済(功利主義)と命(義務論主義)は両立 ということは ü 放射線対策 (命)と復興推進 (経済)は両立できる、ということ ※ 水俣病と原発事故では時代が違う→命の守り方が違う

26.

両立できる 放射線対策(義務論主義)と復興推進(功利主義) u 放射線「不安」が強いのは社会経済弱者 低収入層(年収400万円未満)/低学歴層(非大卒)で強い放射線不安 (「福島子ども健康プロジェクト」, 2013年〜2020年の調査結果) ⇨ 弱者に寄り添う義務論主義は、放射線対策を重視する ⇨ 復興推進(最大多数の最大幸福を追求する功利主義)と対立しがち u いまの日本では、弱者の命を救うことが多くの人の命を守ることになる ü 弱者の放射線不安に寄り添うことが →復興を推進させる=多くの人の命を救う u 弱者 /少数者にとっても復興推進は必要 ü 不況で、真っ先に健康状態が悪くなるのは弱者 • 景気悪化(失業率の上昇/非正規労働者率の増加)で低出生体重児増加 (Kohara M et al. 2019)

27.

最大の問題点 現在の福島復興は 戦後復興(=功利主義)の焼き直しでしかない それを批判する側も 旧来の左翼思想(=義務論主義)から抜け出せていない 例:原発事故と水俣病を同一視している 相変わらず 功利主義(復興推進) vs 義務論主義(放射線対策重視) <放射線の健康影響について> 功利主義→放射線影響を受けやすい弱者の立場を軽視 義務論主義→復興推進(経済成長)による健康増進を軽視 科学を権威付けの道具に利用して、 お互いが、自分たちの価値観を押し付け合っている 社会が分断

28.

小括2 時代の変化に気づこう 「経済」と「命」は対立しない 「復興推進」と「放射線対策」は両立する どういうことなのか、 これから具体的に説明しますが、 その前に…

29.

まずは土台を固めましょう いまさらだけど… 放射線の基礎知識

30.

ü まず、放射線の何を問題にしているのかをはっきりさせよう ① 人体への健康影響が気になる • 身の回りにある病気の要因との比較が重要 • 病気の重大な要因から取り除いていけば… →病気になりにくくなる →放射線の影響も受けにくくなる ② 国や東京電力の事故責任を追及したい • 事故前より放射線量が高いことを問題にする →線量が高い原因は原発事故 →国や東電を批判しやすい ü 今日のテーマは、① の健康影響についてです

31.

では、 福島原発事故による放射線の健康影響 公式には どの程度あると推定されているのか

32.

国の見解: 原発事故による放射線の将来的な健康影響は 見られそうもない(復興庁HPほか) 根拠: 国連1) の報告書2) による 1) 原子放射線の影響に関する国連科学委員会 (UNSCEAR:アンスケア) 2) UNSCEAR 2020/2021年報告書 付属書B

33.

国の見解 「放射線の健康影響は見られそうもない」 でも、 論争になっているのはなぜだろう もう少し深掘りしてみよう

34.

「no discernible increase」って、どういう意味? 国連の報告書には、次のような一文がある 「no discernible increase」(識別できるような増加はない) これ、どういう意味?

35.

識別できるような増加はない、は 「健康影響はない」という意味ではない 『UNSCEAR 2020/2021年報告書 付属書B』 「213」(84ページ)の赤線部分を訳すと、以下になります <「識別できるような増加はない」の意味> あ a リスクがないことと同等ではない し、被ばくによる疾患の過剰発生の可能性を排 除するものではないし、将来的に、被ばくにより特定の集団に特定のがんが発生 することを同定するバイオマーカーが発見されることを否定するものでもない A • あ 現在の科学水準/調査方法では健康影響を発見できないだけで、 本当は影響がある可能性もある、という意味を含んでいる ※ 統計学的意味:有意差が出ないのは統計的検出力が弱いためかもしれない

36.

「no discernible increase」の意味を正しく理解しよう ü 「 no discernible increase 」(識別できるような増加はない) もう少し具体的に説明すると… 統計学的な不確かさがあるため、はっきりとしたことは言えない 放射線被ばく量が20mSvなら120万人、10mSvなら500万人のデータが必要 (Brenner DJ et al., 2003) ※ ミリシーベルト(mSv): 実効線量(放射線が人体に与えるダメージ)の単位 • 福島県民の原発事故による一生涯の被ばく量(80歳まで)は、0.27~40mSv (UNSCEAR 2020/2021年報告書 付属書B) • 福島県の人口は200万人弱、18歳以下の子どもは30万人強 ⇨ 膨大なデータを何十年にもわたって集め続けるのは、現実には不可能 ü ただ、人数は少ないけど、健康に悪影響ある人がいるかもしれない 英米仏の核施設労働者約31万人に対する約70年間の調査で分かったこと →低線量被ばく(20~50mGy)でも固形ガンが増加した (Richardson DB et al., 2023) ※ ミリグレイ(mGy): 吸収線量(放射線が人体に与えるエネルギー量)を示す単位 ※ 吸収線量(mGy)に、0.8をかけた値が実効線量(mSv)

37.

「低線量被ばく (20~50mGy)で固形がん増加」の論文 なぜ論争の種になるのか ü 国の見解は、原発事故直後から一貫している: 放射線被ばくによる健康影響は見られそうもない 「100ミリシーベルト以下 の被ばく線量では、他の要因による発がんの影響 によって隠れてしまうほど小さいため、放射線による発がんリスクの明らかな 増加を証明することは難しい…」 (「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ」報告書, 2011年12月22日) ü 国や東電の事故責任を追及したい人たちにとっては… 「低線量被ばく(50mGy以下 )でも固形がん増加」の論文が出てきたことで… →この論文を根拠に国を批判できる →100mSv以下でも、がんになる可能性があるじゃないか。原発事故の影響をな かったことにしないでほしい

38.

では、純粋に 放射線の健康影響を気にする人は どう考えたらいいんだろうか

39.

ü 放射線量は、それほど高くないようだ • 多数の命を守ることを重視する功利主義者(復興推進派)としては… →風評被害が気になるし、「健康影響ない」と断定したくなる ü ただし、一部の人には健康影響ある可能性がある • 弱者の立場に立つ義務論主義者(放射線対策重視派)としては… → 「一部の人」の健康被害を強調したくなる ü 分断解消のために、「一部の人」がどんな人なのか考えよう • • • • なぜなら、社会の「分断」自体が病気(心臓病など)の原因になる →健康被害の原因となる分断は、復興の足かせとなる 今の時代は、功利主義と義務論主義は対立しない(前述) 弱者の放射線不安に寄り添うことが、復興を推進させる(前述) 一部の人がどんな人か分かれば… →功利主義と義務論主義の接点が見つかるはずだ

40.

違いを理解しよう 「高線量被ばく」と「低線量被ばく」 ü 高線量被ばく(積算で100mSv以上) • 身体へのダメージ:染色体異常/DNAの突然変異 高線量被ばく=飛び抜けて強いストレスの原因 → 放射線のことだけ考えればい → 除染する/遮蔽する/作業は短時間/距離を取る(避難する) ü 低線量被ばく(積算で100mSv以下) • 晩発放射線影響(低線量被ばく)のパラダイムは、標的細胞の細胞死に基づく もの(染色体異常/DNAの突然変異)から、損傷細胞からのサイトカイン(炎症物質) とその他の介在物質の放出が関与する統合的な組織応答に基づくもの(慢性 炎症反応など)にシフトしてきている (ICRP Publication 118: 2012年10月刊行) ※ カッコ内は、伊藤の注 • 放射線の専門家による民間の国際組織 他の炎症の原因と比較が重要 → 最も炎症が起きないようにすれば、最も放射線の影響を受けなくて済む

41.

福島で問題になる放射線量は 一生涯の被ばく量が100mSvを下回る 低線量被ばく

42.

低線量被ばくから命を守るには比較が大事 なぜなら、 ü 安全なものと、危ないものがある訳ではない ü 身の回りのもの、すべてに毒がある 例1) 水を大量に飲むと具合が悪くなり、命を落とすことも(低ナトリウム血症) 例2) 塩には発がん性がある(冷蔵庫が普及する前、北国で胃がんが多かったのは、塩漬 けして食糧を保存していたから) 例3) 砂糖が大量に含まれているスポーツ飲料/ジュースを毎日飲み続けると糖尿病 になる ü 多くの病気の原因は慢性炎症 身体の病気(心臓病/脳卒中/糖尿病/がん)も、心の病気(うつ病/PTSD)も ü 放射線の影響も慢性炎症 ü 慢性炎症をいかに抑えるかが病気予防のポイント →炎症の主な原因から優先的に取り除いていくと →病気を予防できるし、放射線の影響も受けにくくなる ü 低線量被ばく(100mSv以下)でも発がんの可能性があるからといって、 →放射線ばかり気にしていて、他の要因を見逃してしまうと →かえって、病気になりやすくなり、放射線の影響も受けやすくなってしまう

43.

炎症の主な原因から優先的に取り除いていくと、放射線の影響を受けにくくなる 参考例:新型コロナ ü 多くの子どもは、新型コロナにかかりにくいし、かかっても症状は軽い ü 新型コロナと肥満 • 17万人の21歳未満の子どもと若者(平均12.6歳)を対象にした米国での調査 (JAMA Network Open 2024; 7(10): e2441970) →肥満度が高くなればなるほど、後遺症が起きやすかった ※ 後遺症:味覚・嗅覚障害、疲労・倦怠感、全身性疼痛、心臓疾患など • • • なぜ、肥満の子どもは、新型コロナに感染すると重篤化しやすいのか →肥満の人:もともと慢性炎症状態にある →新型コロナに感染すると:炎症に炎症が重なり、炎症状態が増悪する この場合:主な炎症の原因は肥満 新型コロナが流行すると、コロナウイルスに目が向きがちだが →子どものコロナ対策として有効なのは、重篤化を防ぐ肥満解消 ü 福島県中通り程度の低線量放射線被ばくに当てはめると • 低線量被ばくも軽い炎症を起こす(新型コロナと似ている) • 放射線対策として有効なのは、肥満解消 (主な炎症の原因)

44.

炎症の主な原因から優先的に取り除いていくと、放射線の影響を受けにくくなる 参考例:新型コロナ ü 多くの子どもは、新型コロナにかかりにくいし、かかっても症状は軽い ü 新型コロナと肥満 • 17万人の21歳未満の子どもと若者(平均12.6歳)を対象にした米国での調査 (JAMA Network Open 2024; 7(10): e2441970) →肥満度が高くなればなるほど、後遺症が起きやすかった ※ 後遺症:味覚・嗅覚障害、疲労・倦怠感、全身性疼痛、心臓疾患など • • • なぜ、肥満の子どもは、新型コロナに感染すると重篤化しやすいのか →肥満の人:もともと慢性炎症状態にある →新型コロナに感染すると:炎症に炎症が重なり、炎症状態が増悪する この場合:主な炎症の原因は肥満 新型コロナが流行すると、コロナウイルスに目が向きがちだが →子どものコロナ対策として有効なのは、重篤化を防ぐ肥満解消 ü 福島県中通り程度の低線量放射線被ばくに当てはめると • 低線量被ばくも軽い炎症を起こす(新型コロナと似ている) • 放射線対策として有効なのは、肥満解消 (主な炎症の原因)

45.

特定の病気の予防に目を奪われると、かえって死亡率を上げてしまう 参考例:Non-HDコレステロール値 ü 健康診断で、 • Non-HDLコレステロール値(総コレステロール値から善玉 コレステロール値を除いた値)が高いと、心臓病 になりや すいとされる →コレステロール値を下げよう! ü 2023年に発表された論文(1)によると、 (1) N Engl J Med 2023; 389(14): 1273-1285 • • Non-HDLコレステロール値が100を超えたあたり から、高くなるほど、心臓病になりやすくなる ところが、死亡リスクは、 →100を超えたあたりから少なくなり、数値が上 がっても変わらない • コレステロール値が低いと、かえって早死に してしまう(心臓病以外の病気になりやすくなるの かもしれない) ⇨ 同じように、放射線ばかり気にしていると、かえって 早死にしてしまうかもしれません

46.

特定の病気の予防に目を奪われると、かえって死亡率を上げてしまう 参考例:Non-HDコレステロール値 ü 健康診断で、 • Non-HDLコレステロール値(総コレステロール値から善玉 コレステロール値を除いた値)が高いと、心臓病 になりや すいとされる →コレステロール値を下げよう! ü 2023年に発表された論文(1)によると、 (1) N Engl J Med 2023; 389(14): 1273-1285 • • Non-HDLコレステロール値が100を超えたあたり から、高くなるほど、心臓病になりやすくなる ところが、死亡リスクは、 →100を超えたあたりから少なくなり、数値が上 がっても変わらない • コレステロール値が低いと、かえって早死に してしまう(心臓病以外の病気になりやすくなるの かもしれない) ⇨ 同じように、放射線ばかり気にしていると、かえって 早死にしてしまうかもしれません

47.

特定の病気の予防に目を奪われると、かえって死亡率を上げてしまう 参考例:Non-HDコレステロール値 ü 健康診断で、 • Non-HDLコレステロール値(総コレステロール値から善玉 コレステロール値を除いた値)が高いと、心臓病 になりや すいとされる →コレステロール値を下げよう! ü 2023年に発表された論文(1)によると、 (1) N Engl J Med 2023; 389(14): 1273-1285 • • Non-HDLコレステロール値が100を超えたあたり から、高くなるほど、心臓病になりやすくなる ところが、死亡リスクは、 →100を超えたあたりから少なくなり、数値が上 がっても変わらない • コレステロール値が低いと、かえって早死に してしまう(心臓病以外の病気になりやすくなるの かもしれない) ⇨ 同じように、放射線ばかり気にしていると、かえって 早死にしてしまうかもしれません

48.

特定の病気の予防に目を奪われると、かえって死亡率を上げてしまう 参考例:Non-HDコレステロール値 ü 健康診断で、 • Non-HDLコレステロール値(総コレステロール値から善玉 コレステロール値を除いた値)が高いと、心臓病 になりや すいとされる →コレステロール値を下げよう! ü 2023年に発表された論文(1)によると、 (1) N Engl J Med 2023; 389(14): 1273-1285 • • Non-HDLコレステロール値が100を超えたあたり から、高くなるほど、心臓病になりやすくなる ところが、死亡リスクは、 →100を超えたあたりから少なくなり、数値が上 がっても変わらない • コレステロール値が低いと、かえって早死に してしまう(心臓病以外の病気になりやすくなるの かもしれない) ⇨ 同じように、放射線ばかり気にしていると、かえって 早死にしてしまうかもしれません

49.

特定の病気の予防に目を奪われると、かえって死亡率を上げてしまう 参考例:Non-HDコレステロール値 ü 健康診断で、 • Non-HDLコレステロール値(総コレステロール値から善玉 コレステロール値を除いた値)が高いと、心臓病 になりや すいとされる →コレステロール値を下げよう! ü 2023年に発表された論文(1)によると、 (1) N Engl J Med 2023; 389(14): 1273-1285 • • Non-HDLコレステロール値が100を超えたあたり から、高くなるほど、心臓病になりやすくなる ところが、死亡リスクは、 →100を超えたあたりから少なくなり、数値が上 がっても変わらない • コレステロール値が低いと、かえって早死に してしまう(心臓病以外の病気になりやすくなるの かもしれない) ⇨ 同じように、放射線ばかり気にしていると、かえって 早死にしてしまうかもしれません

50.

比較が大事 ü 線量計の数字に振り回されないで(あくまで参考) ü 慢性炎症をいかに抑えるかがポイント • 炎症の主な要因から優先的に取り除いていく • 放射線を気にし過ぎてより重大な炎症の要因を見逃すと →かえって病気になりやすくなる →放射線の影響も受けやすくなる

51.

比較が大事:低線量被ばく(100mSv以下)と生活習慣 福島原発事故での 被ばく量はもっと少ない 出典:日本原子力文化財団(一部改変)

52.

比較が大事:低線量被ばく(100mSv以下)と生活習慣 出典:日本原子力文化財団(一部改変)

53.

放射線の健康影響を気にしなくていい と言っているのではありません

54.

低線量被ばく対策=復興推進のポイントは2つ 1) シンデミック 2) アロスタティックロード

55.

1) シンデミック ü シンデミック(syndemic): ※ パンデミック(pandemic)の派生語として作られた新語 ※ 「syn」は「共に」(ギリシャ語由来の接頭辞、パンデミックの「pan」の意味は「すべての」) • • • 2つ以上の病気が集団内で同時発生することで、その病気の一部また は全ての病気の状態が相乗効果で悪化すること 医療人類学的には、健康上の不平等によって発生する可能性が高い →病気の流行の背後には:文化的・社会的・経済的な脆弱要因あり 病原体 / 栄養不良 / 暴力 / 社会経済格差などの相乗効果で →うつ病 / 糖尿病 / がん / 心臓病 / 脳卒中などを併発、病状が悪化 ── Singer M et al., (2017) Lancet, 389: 941-950 ü メカニズム(なぜ、このようなことが起こるのか) • 病気の原因は違っても →身体の中では似たような炎症反応が起きるから →炎症に炎症が重なって、悪化する

56.

シンデミックの概念を踏まえると ü 低線量被ばくの健康影響 不正確:放射線より、他の要因(生活習慣の変化など)による影響が大きい 正解:他に病気の要因があると、相乗効果で被ばく影響を強く受ける ※ 身体の中で起きる反応は炎症反応に変わりない →炎症の原因がたくさんあると、被ばくの影響を受けやすい →他の要因を取り除くと、被ばくの影響を受けにくくなる →他の要因による病気にも、なりにくい ü 新型コロナと同じ 誤り:子どもは新型コロナにかかりにくいし、かかっても症状は軽い 正解:肥満(他の要因)の子どもは、重篤化しやすい(相乗効果) ※ 重篤化の割合が少なくても、感染率が高ければ、重篤化の絶対数は多くなる ※ 子どもの肥満 :社会経済格差が深く関わっている(シンデミック) →居住環境が良くなかったり、家庭が経済的に豊かでなかったり、親の教育 水準が低いと、子どもは肥満になりやすい (Li ZA et al., 2023) →肥満解消 のためには格差をなくす地域づくり が必要 →新型コロナ対策 としても、格差解消が必要(相乗効果) →放射線対策 にもなる(相乗効果)

57.

シンデミックの概念を踏まえると ü 低線量被ばくの健康影響 不正確:放射線より、他の要因(生活習慣の変化など)による影響が大きい 正解:他に病気の要因があると、相乗効果で被ばく影響を強く受ける ※ 身体の中で起きる反応は炎症反応に変わりない →炎症の原因がたくさんあると、被ばくの影響を受けやすい →他の要因を取り除くと、被ばくの影響を受けにくくなる →他の要因による病気にも、なりにくい ü 新型コロナと同じ 不正確:子どもは新型コロナにかかりにくいし、かかっても症状は軽い 正解:肥満(他の要因)の子どもは、重篤化しやすい(相乗効果) ※ 重篤化の割合が少なくても、感染率が高ければ、重篤化の絶対数は多くなる ※ 子どもの肥満 :社会経済格差が深く関わっている(シンデミック) →居住環境が良くなかったり、家庭が経済的に豊かでなかったり、親の教育 水準が低いと、子どもは肥満になりやすい (Li ZA et al., 2023) →肥満解消 のためには格差をなくす地域づくり が必要 →新型コロナ対策 としても、格差解消が必要(相乗効果) →放射線対策 にもなる(相乗効果)

58.

シンデミックの概念を踏まえると ü 低線量被ばくの健康影響 不正確:放射線より、他の要因(生活習慣の変化など)による影響が大きい 正解:他に病気の要因があると、相乗効果で被ばく影響を強く受ける ※ 身体の中で起きる反応は炎症反応に変わりない →炎症の原因がたくさんあると、被ばくの影響を受けやすい →他の要因を取り除くと、被ばくの影響を受けにくくなる →他の要因による病気にも、なりにくい 相乗効果で ü 新型コロナと同じ 命(コロナ対策/放射線対策)と復興/経済 不正確:子どもは新型コロナにかかりにくいし、かかっても症状は軽い 正解:肥満(他の要因)の子どもは、重篤化しやすい (相乗効果) は両立する ※ 重篤化の割合が少なくても、感染率が高ければ、重篤化の絶対数は多くなる ※ 子どもの肥満 :社会経済格差が深く関わっている(シンデミック) →居住環境が良くなかったり、家庭が経済的に豊かでなかったり、親の教育 水準が低いと、子どもは肥満になりやすい (Li ZA et al., 2023) →肥満解消 のためには格差をなくす地域づくり が必要 →新型コロナ対策 としても、格差解消が必要(相乗効果) →放射線対策 にもなる(相乗効果)

59.

他の要因との相乗効果で 被ばくの影響受けやすくなる 他の要因との 相乗効果 低線量被ばく (100mSv以下) 出典:日本原子力文化財団(一部改変)

60.

2) アロスタテッィクロード アロスタティックロード (allostatic load): (McEwen BS 2012) ü 幼少年期(胎児期含む)から厳しい環境が続くことで体質が変化 • 海馬など脳(ストレス関連部位)が萎縮、不安を感じやすくなる • 強い刺激を求める:薬物(アルコール/喫煙)依存症になりやすい • 太りやすい:運動不足/食生活の影響受けやすい → 慢性的に過剰な炎症反応 が起こりやすい体質に → 老化が加速 → 生活習慣病・認知症になりやすい/感染症で重篤化しやすい →子孫にまで影響が残ることもある (Bellingrath S et al. 2013; Tchkonia T et al. 2013; Irwin MR & Cole SW 2013; Peterson RL et al., 2024)

61.

アロスタテッィクロードの概念を踏まえると ü 生活習慣病の 真の原因は、慢性炎症による「老化」 • 目の前にある原因:生活習慣(喫煙、飲酒、運動不足、食生活…) → 生活習慣で説明しきれる要因は1/3以下 (Lantz PM et al. 1998) • 背後にある根本原因:社会経済要因 (孤立、格差、差別) ü 社会経済弱者は慢性炎症による老化の加速で … • 生活習慣病(心臓病、脳卒中、糖尿病、がん)になりやすい • 放射線の影響を受けやすい

62.

シンデミック + アロスタティックロード 他の要因(過去を含む)で 体質が変化 放射線影響を受けやすくなる 他の要因との 相乗効果 低線量被ばく (100mSv以下) 出典:日本原子力文化財団(一部改変)

63.

他の要因を取り除くことで ・目の前の要因 喫煙/飲酒/肥満/運動不足… ・背後にある本当の要因 格差/孤立/差別 低線量被ばく (100mSv以下) 出典:日本原子力文化財団(一部改変)

64.

放射線の影響も 和らげることができる 低線量被ばく (100mSv以下) 出典:日本原子力文化財団(一部改変)

65.

格差をなくすことが放射線対策になる 復興も推進できる 参考:新型コロナ対策で世界の超一流医学専門誌が提言 • • 「 新型コロナはパンデミックではない(シンデミックだ)」 (Lancet. Vol 396 October 17, 2020) 重篤化因子は生活習慣病(原文: non-communicable disease) →生活習慣病の原因である貧困/格差を解消しない限り、流行は止められない →経済を止める(ロックダウン/緊急事態宣言)必要はなかった Nature / New England Journal of Medicine / JAMA が同様の見解示す ※ 拙著でも提案: 『なぜ社会は分断するのか』(2021)

66.

格差をなくすことが放射線対策になる 復興も推進できる 参考:新型コロナ対策で世界の超一流医学専門誌が提言 • • 「 新型コロナはパンデミックではない(シンデミックだ)」 (Lancet. Vol 396 October 17, 2020) 重篤化因子は生活習慣病(原文: non-communicable disease) →生活習慣病の原因である貧困/格差を解消しない限り、流行は止められない →経済を止める(ロックダウン/緊急事態宣言)必要はなかった Nature / New England Journal of Medicine / JAMA が同様の見解示す ※ 拙著でも提案: 『なぜ社会は分断するのか』(2021) 相乗効果で 「命」と「経済」は両立する

67.

放射線の「健康影響」は線量計では測れない 実効線量 (mSv:ミリシーベルト) ü 放射線が人体に与えるダメージを数字化した値 ü 線量計で測ることはできない ü あくまで計算上の数字 (体重計に乗るのと違う) • 測定できるのは物理量:空気吸収線量(グレイ:Gy) →放射線荷重係数をかける(放射線の種類によるダメージの違いを反映させる) →組織荷重係数をかける(臓器の種類によるダメージの違いを反映させる) • 実効線量は、 →実在しない標準モデル(男性と女性)を使って →各臓器が被ばくする放射線の平均吸収線量を2つの荷重係数で二重に加重「平均」 →男女間で「平均化」した値 ü 「平均」から外れた常にストレスにさらされている社会経済弱者 は… • 実効線量の値は同じでも、人より放射線の影響を受けやすい 、ということ ※ 慢性ストレス(慢性炎症)による免疫力低下は、放射線の感受性を高める (Nakachi K et al. 2004; Li K et al. 2014) • 格差を解消すれば、上乗せされた放射線のダメージを軽減できる

68.

実効線量は測れない ü みんながモニタリングポストと呼んでいる測定器は、 • 正式には、「リアルタイム線量測定システム」(空間放射線量率測定器) ※ 単位はシーベルト:Sv • 測定している値は、1cm周辺線量当量率(0.128μSv/h) • 0.58をかけた値が「実効線量率」(0.128×0.58=0.0724μSv/h) ※「モニタリングポスト」が測定している値は、空気吸収線量率(単位はグレイ:Gy) →0.8または0.7をかけた値が実効線量 単位はμSv ü 実効線量は計算して得られた平均値 • 多くの人には安全でも、平均から外れた一部の人(弱者)には安全ではない かもしれない

69.

小括3 ü 線量計の数字に振り回されないで ü 放射線対策と復興推進を両立させるキーワードは、 シンデミックとアロスタティックロード ü 放射線量の背後にある真の健康影響に目を向けよう ü 炎症の主な原因である格差/孤立/差別を取り除くことが、 有効で効率的な放射線対策となる ü 格差がなくなり、病気がちな人が減れば、 社会が活性化、復興が推進する

70.

ここまでは一般論 次のスライドから、 以下について、具体例を挙げて説明します 「放射線対策」と「復興推進」は両立する ポイントは、格差 (特に中央と地方の格差)の解消 格差解消が、放射線対策と復興推進の両方に有効

71.

具体例 ふるさと喪失 からの コミュニティ再生

72.

原発事故により失われてしまった里山 ü 里山の価値 • 山菜やキノコのおすそ分け、喜びの分かち合い • 人間関係の調和を図る重要な役割がある ※ 家族内、地域の家族間、遠方の知人/親戚との関係 • 毎年繰り返すことで、自然との一体感を得る ü 里山の喪失は… • ふるさとに対する誇りの喪失 • 人間関係の喪失 • いきがいの喪失 • 自然との一体感の喪失

73.

「田植踊」 浪江町南津島の田植踊(2023年2月26日撮影)

74.

「田植踊」の価値 ü 福島県の田植踊は、会津地方が発祥 • 天明の大飢饉(1782~1788年)の後、福島県全域に広がっていった • 最高の装いをして豊作祈願 • 困った時に黙っていても助け合う、連帯感を深めるため に広がっていった • 東日本大震災の後、田植踊が最初に復活したのは、集落が津波で根こそぎ なくなってしまった最も被害が激しかった請戸など ──懸田弘訓 理事長(民俗芸能を継承するふくしまの会) ü 田植踊を踊った浪江町津島地区住民の話 • 地域に伝わる無事を祈る長い歴史の中に自分が立った 、という思いが身 体中から突き上げてきて嬉しかった。こういうことを踏まえて、地域社会の生 活が成り立つ。歴史が生まれ、受け継いだ人々が将来へと、綿々と繋がって いく。 • 地域の人たちとのつながり、そのつながりの基礎になる地域性、風土とか、 その上に人格が形成 されて、私の現在がある 。避難先で築こうとしたら、 生まれてから繰り返さないと無理でしょうね。 ü その田植踊は、原発事故によるコミュニティ崩壊で継承が難しくなっている

75.

原発事故により 一瞬にして 中山間地域の伝統的な暮らしは 引き裂かれてしまった ふるさと喪失 人は一人では生きられない いま、何が起きているのだろうか

76.

原発事故の背景にある「格差」に起因した シンデミックとアロスタティックロード 被災者の置かれた状況: さまざまなストレスで 慢性炎症反応が起きている • 爆発時の恐怖 / 故郷喪失 / 避難先での過酷な体験 / 孤立 / 経済的困窮 →被災者の4割がPTSDの可能性(辻内琢也ら, 2021) • 医療崩壊/医師不足に伴う医療ミス/診断治療の遅れ ※ 避難者が周辺自治体に殺到/鼻血騒動/人手不足の中での甲状腺検査 • 低出生体重児の一時的増加(事故直後)/外遊び自粛→子どもの肥満(慢性炎症) • 一連の政策: 強制避難区域の避難指示解除 / ALPS処理水海洋放出など →常に頭越しに物事が決まっていく、と被災者は感じている(受け身の状態) →受け身の状態に置かれ続けると、生活習慣病/精神疾患のリスク↑ (Bosma HR et al., 1998) 原因:心理社会的ストレスによる炎症性サイトカインの過剰発現 (Marmot M et al., 1997) • 風評被害:生業が正当に評価されない/失業への不安/生きがい喪失(=社会からの排除) • 事故責任の所在のあいまいさ/廃炉の見通しのなさ/度重なるトラブル →自然災害より人災で健康被害( PTSDなど )が甚大になる原因 (Hull AM et al., 2002; Neria Y et al., 2008; Arnberg FK et al., 2011)

77.

原発事故の背景にある「格差」に起因した シンデミックとアロスタティックロード 被災者の置かれた状況: さまざまなストレスで 慢性炎症反応が起きている • 爆発時の恐怖 / 故郷喪失 / 避難先での過酷な体験 / 孤立 / 経済的困窮 →被災者の4割がPTSDの可能性(辻内琢也ら, 2021) • 医療崩壊/医師不足に伴う医療ミス/診断治療の遅れ ※ 避難者が周辺自治体に殺到/鼻血騒動/人手不足の中での甲状腺検査 • 低出生体重児の一時的増加(事故直後)/外遊び自粛→子どもの肥満 (慢性炎症) シンデミック(炎症反応の相乗効果で症状増悪) • 一連の政策: 強制避難区域の避難指示解除 / ALPS処理水海洋放出など →常に頭越しに物事が決まっていく、と被災者は感じている(受け身の状態) →受け身の状態に置かれ続けると、生活習慣病/精神疾患のリスク↑ (Bosma HR et al., 1998) 原因:心理社会的ストレスによる炎症性サイトカインの過剰発現 (Marmot M et al., 1997) • 風評被害:生業が正当に評価されない/失業への不安/生きがい喪失(=社会からの排除) • 事故責任の所在のあいまいさ/廃炉の見通しのなさ/度重なるトラブル →自然災害より人災で健康被害( PTSDなど )が甚大になる原因 (Hull AM et al., 2002; Neria Y et al., 2008; Arnberg FK et al., 2011)

78.

原発事故の背景にある「格差」に起因した シンデミックとアロスタティックロード 被災者の置かれた状況: さまざまなストレスで 慢性炎症反応が起きている • 爆発時の恐怖 / 故郷喪失 / 避難先での過酷な体験 / 孤立 / 経済的困窮 →被災者の4割がPTSDの可能性(辻内琢也ら, 2021) • 医療崩壊/医師不足に伴う医療ミス/診断治療の遅れ ※ 避難者が周辺自治体に殺到/鼻血騒動/人手不足の中での甲状腺検査 • • 低出生体重児の一時的増加(事故直後)/外遊び自粛→子どもの肥満(慢性炎症) 医療格差(事故前から福島県の医師数は全国最低レベル) 一連の政策: 強制避難区域の避難指示解除 / ALPS処理水海洋放出など →常に頭越しに物事が決まっていく、と被災者は感じている(受け身の状態) →受け身の状態に置かれ続けると、生活習慣病/精神疾患のリスク↑ (Bosma HR et al., 1998) 原因:心理社会的ストレスによる炎症性サイトカインの過剰発現 (Marmot M et al., 1997) • 風評被害:生業が正当に評価されない/失業への不安/生きがい喪失(=社会からの排除) • 事故責任の所在のあいまいさ/廃炉の見通しのなさ/度重なるトラブル →自然災害より人災で健康被害( PTSDなど )が甚大になる原因 (Hull AM et al., 2002; Neria Y et al., 2008; Arnberg FK et al., 2011)

79.

原発事故の背景にある「格差」に起因した シンデミックとアロスタティックロード 被災者の置かれた状況: さまざまなストレスで 慢性炎症反応が起きている • 爆発時の恐怖 / 故郷喪失 / 避難先での過酷な体験 / 孤立 / 経済的困窮 →被災者の4割がPTSDの可能性(辻内琢也ら, 2021) • 医療崩壊/医師不足に伴う医療ミス/診断治療の遅れ ※ 避難者が周辺自治体に殺到/鼻血騒動/人手不足の中での甲状腺検査 • 低出生体重児の一時的増加(事故直後)/外遊び自粛→子どもの肥満(慢性炎症) • 一連の政策: 強制避難区域の避難指示解除 / ALPS処理水海洋放出など →常に頭越しに物事が決まっていく、と被災者は感じている(受け身の状態) アロスタティックロード(体質が変化、病気になりやすくなる) →受け身の状態に置かれ続けると、生活習慣病/精神疾患のリスク↑ (Bosma HR et al., 1998) 原因:心理社会的ストレスによる炎症性サイトカインの過剰発現 (Marmot M et al., 1997) • 風評被害:生業が正当に評価されない/失業への不安/生きがい喪失(=社会からの排除) • 事故責任の所在のあいまいさ/廃炉の見通しのなさ/度重なるトラブル →自然災害より人災で健康被害( PTSDなど )が甚大になる原因 (Hull AM et al., 2002; Neria Y et al., 2008; Arnberg FK et al., 2011)

80.

原発事故の背景にある「格差」に起因した シンデミックとアロスタティックロード 被災者の置かれた状況: さまざまなストレスで 慢性炎症反応が起きている • 爆発時の恐怖 / 故郷喪失 / 避難先での過酷な体験 / 孤立 / 経済的困窮 →被災者の4割がPTSDの可能性(辻内琢也ら, 2021) • 医療崩壊/医師不足に伴う医療ミス/診断治療の遅れ ※ 避難者が周辺自治体に殺到/鼻血騒動/人手不足の中での甲状腺検査 • 低出生体重児の一時的増加(事故直後)/外遊び自粛→子どもの肥満(慢性炎症) • 一連の政策: 強制避難区域の避難指示解除 / ALPS処理水海洋放出など →常に頭越しに物事が決まっていく、と被災者は感じている(受け身の状態) →受け身の状態に置かれ続けると、生活習慣病/精神疾患のリスク↑ (Bosma HR et al., 1998) 原因:心理社会的ストレスによる炎症性サイトカインの過剰発現 (Marmot M et al., 1997) • 風評被害:生業が正当に評価されない/失業への不安/生きがい喪失(=社会からの排除) • 事故責任の所在のあいまいさ/廃炉の見通しのなさ/度重なるトラブル 中央(国)との力関係の格差 →自然災害より人災で健康被害( PTSDなど )が甚大になる原因 (Hull AM et al., 2002; Neria Y et al., 2008; Arnberg FK et al., 2011)

81.

原発事故の背景にある「格差」に起因した シンデミックとアロスタティックロード 被災者の置かれた状況: さまざまなストレスで 慢性炎症反応が起きている • 爆発時の恐怖 / 故郷喪失 / 避難先での過酷な体験 / 孤立 / 経済的困窮 →被災者の4割がPTSDの可能性(辻内琢也ら, 2021) • 医療崩壊/医師不足に伴う医療ミス/診断治療の遅れ ※ 避難者が周辺自治体に殺到/鼻血騒動/人手不足の中での甲状腺検査 • 低出生体重児の一時的増加(事故直後)/外遊び自粛→子どもの肥満(慢性炎症) • 一連の政策: 強制避難区域の避難指示解除 / ALPS処理水海洋放出など →常に頭越しに物事が決まっていく、と被災者は感じている(受け身の状態) →受け身の状態に置かれ続けると、生活習慣病/精神疾患のリスク↑ (Bosma HR et al., 1998) 原因:心理社会的ストレスによる炎症性サイトカインの過剰発現 (Marmot M et al., 1997) • 風評被害:生業が正当に評価されない/失業への不安/生きがい喪失(=社会からの排除) • 事故責任の所在のあいまいさ/廃炉の見通しのなさ/度重なるトラブル →自然災害より人災で健康被害( PTSDなど )が甚大になる原因 シンデミック (心理社会的ストレスによる炎症反応の増悪) (Hull AM et al., 2002; Neria Y et al., 2008; Arnberg FK et al., 2011)

82.

原発事故の背景にある「格差」に起因した シンデミックとアロスタティックロード 被災者の置かれた状況: さまざまなストレスで 慢性炎症反応が起きている • 爆発時の恐怖 / 故郷喪失 / 避難先での過酷な体験 / 孤立 / 経済的困窮 →被災者の4割がPTSDの可能性(辻内琢也ら, 2021) • 医療崩壊/医師不足に伴う医療ミス/診断治療の遅れ ※ 避難者が周辺自治体に殺到/鼻血騒動/人手不足の中での甲状腺検査 • 低出生体重児の一時的増加(事故直後)/外遊び自粛→子どもの肥満(慢性炎症) • 一連の政策: 強制避難区域の避難指示解除 / ALPS処理水海洋放出など →常に頭越しに物事が決まっていく、と被災者は感じている(受け身の状態) 中央(国)との力関係の格差 →受け身の状態に置かれ続けると、生活習慣病/精神疾患のリスク↑ (Bosma HR et al., 1998) 原因:心理社会的ストレスによる炎症性サイトカインの過剰発現 (Marmot M et al., 1997) • 風評被害:生業が正当に評価されない/失業への不安/生きがい喪失(=社会からの排除) • 事故責任の所在のあいまいさ/廃炉の見通しのなさ/度重なるトラブル →自然災害より人災で健康被害( PTSDなど )が甚大になる原因 (Hull AM et al., 2002; Neria Y et al., 2008; Arnberg FK et al., 2011)

83.

強制避難区域の避難指示は解除されたけど ü 除染された自宅とその周辺道路の放射線量は、平均で5mSv/年 • • 標準的な人なら、それほど健康影響を気にする必要はなさそうだけど、 15年近く避難生活を続けていた被災者は、身体の中が慢性的な炎症状態 →標準的な人よりはるかに強い被ばくのダメージ を受けるはず ※ 放射線の健康影響は線量計では測れない ※ 5mSv/年で、標準的な人の100mSv/年 、 500mSv/年 に相当するダメージ を受ける可能性がある ※ この放射線被ばく量は、避難指示の解除に相応しくない線量 ü 農業用水路や里山など、中山間地域の人にとっての生活圏が未除染 ü 原発事故前より、はるかに病気になりやすくなっている ü 標準的な人より、放射線の影響を強く受けやすくなっている ü 都会並みの手厚い医療・福祉の支援が必要 ü できないなら、避難指示の解除はすべきではない

84.

原発事故の背景にある格差 東京電力の原子力発電所が、福島県に作られたこと自体が「格差」 • 原発建設地: 「東北のチベット」と揶揄された福島県内で経済的に最も貧しい土地 • 作られた電力: 豊かな東京が利用 • 発生した放射性廃棄物: 青森県六ヶ所村の中間貯蔵施設/再処理工場で処理 日本社会の格差勾配にしたがって、不均衡な社会構造が 事故前からでき あがっていた • ベネフィット:豊かな中央が享受 • リスク:貧しい地方が負担

85.

では、どうすればいいのか

86.

復興のカギ握るのはソーシャルキャピタル(地域力) ü 復興スピードは、地域力の豊かな地域ほど早い ・ 人々のつながり→ 経済的、心理的、情報的サポートを引き出しやすい ・ 「声が大きくなる」ことで、当局への要求が通りやすくなる ・ 阪神淡路大震災では… 人口当たりの設立されたNPOの数が多い地域ほど → 復興(人口増加)のスピードが早かった (Aldrich. 2011) ü 健康状態も、 地域力の豊かな地域ほど良い ・ 東日本大震災では… 震災前から地域の結びつき強い地域、そうでない地域と比較して → 高齢者のPTSD発症率が25%低かった (Hikichi et al. 2016) 地域力の回復が復興対策と健康対策になる 復興対策と健康対策は対立しない

87.

誰もが実感する分断してしまった福島 地域を一つにまとめるには 求心力となる 新たな「価値の創出」が必要

88.

福島再生のためのイノベーション ü イノベーションとは、 • 新たな価値の創出 • 既存の企業や社会体制を「創造的に破壊」していく過程である ──内閣府「長期戦略指針「イノベーション25」について(2007年6月1日) ü ブリコラージュによる創造的破壊 ※ ブリコラージュ:ありあわせの材料を使って、組み合わせをかえて新たな価値 を創出すること ü 福島発のイノベーション • 中央(東京)からのお仕着せの「価値」を創造的に破壊し、 • 歴史、文化、気候風土をブリコラージュした福島ならではのイノベー ションを起こそう

89.

進む福島イノベーション・コースト構想 建設中のロボットテストフィールド国際産学官共同利用施設 南相馬市北萱浜地区(2018年11月14日撮影)

90.

知ってますか? 福島イノベーション・コースト構想 ü イノベーションコースト構想推進機構によると… • 復興の切り札となる国家プロジェクト • 浜通りに新産業を創出(ロボット/エネルギー産業)、人材を育成 • 研究者の定着、住民帰還の促進につながるよう環境整備 世界の人々が瞠目 する地域再生を目指す! ü 地元の人にしてみたら… • 家族、親戚、知人が津波で亡くなった慰霊の地に、いつのまにか実験 棟が建設されている • どこが自分の屋敷だったのか、さっぱり分からないほどの変りよう • 建設現場の下には、天明の大飢饉のときに富山から移住し、農地を 開拓し、何世代もかけて土地を守ってきた人たちの思いが眠っている • 開発にあたっては、地域に根ざした歴史、文化に畏敬の念を持って関 わってほしい このままでは、先祖から受け継がれてきた文化がなくなってしまう

91.

いまの 「福島イノベーション・コースト構想」は 中央からのお仕着せ 中央と地方の「格差」を象徴している 福島再生のためには 地域の暮らしに根ざしたイノベーション 「新たな価値」の創出が必要

92.

中山間地域に残る日本人の世界観 ü 田植踊を踊る津島の住民 • 地域性、風土とか、その上に人格が形成 されて、私の現在がある • 地域に伝わる無事を祈る長い歴史の中に自分が立った 、という思い が身体中から突き上げてきて嬉しかった。 ü 医療人類学者が見た日本人の世界観 • かつて日本人の間には一人一人の人間の個別性よりも、ある『家』やある 土地に生まれ、一定期間の人生を生きて死んでゆく者は、一つの大きな いのちのプールのようなものの中から、ある時間帯だけこの世に生まれ出 て来て、死ぬと、またそのいのちのプールに帰るとでも比喩できるような、 個人のこの世での生命を強調しないいのちの観念があった (波平恵美子『いのちの文化人類学』)

93.

西欧的世界観と東洋的世界観 ü 西欧的世界観:「我思う、ゆえに我在り」(デカルト:西欧近代哲学の父) • • 明治以降の日本は、西欧近代哲学を土台とし発展した 我思う、つまり、まずあるのは「我」→ 個の集合体が社会 (西欧近代社会) ü 東洋的世界観:「我々としての我思う、ゆえに我々としての我在り」 • みんなの中の私→ 人格は共同体の中で形成される • 木村敏の思想(京都大学名誉教授、日本を代表する精神病理学者) 自分が誰であるのか、相手が誰であるのかは、自分と相手との間の 人間的関係の側から決定されてくる。個人が個人としてアイデンティ ファイされる前に、まず人間関係がある。(中略)自分を自分たらしめている 自己の根源は、自己の内部にではなくて自己の外部にある。 ──『人と人との間』弘文堂, 1972年初版1刷発行 • M. メルロー=ポンティの哲学(フランスの現象学者) 内面的人間なぞというものは存在しないのであって、人間はいつも世界内に 在り、世界のなかでこそ人間は己れを知る のである。 ──『知覚の現象学 1』みすず書房, 1967年第1刷発行

94.

最後のまとめ 明治以降の日本を支えてきた西欧近代思想は いろいろな意味で限界を向かえている (自然破壊/地球温暖化/社会の分断・孤立…) 温故知新 中山間地域に残る日本人の世界観は 21世紀の日本を強力く推進する潜在能力を秘めている (日本を代表する思想家や世界的な哲学者に支持されている) 被災者の人数は、日本全体から見たら少数だが 格差は社会全体の活力を失わせる 毎年のように日本各地で起きている大災害の被災者も、同じ悩みを抱えている 福島発の「新たな価値」を全国にアピールしていくことが 本当の意味での復興につながる

95.

ご清聴ありがとうございました 自分から始めましょう 身の回りにある格差をなくすことが 放射線対策と復興推進につながります 駆け足の説明で分かりにくかったかもしれません 興味を持たれた方は、ご連絡ください [email protected] なお、詳細は以下の拙著にまとめてあります 『なぜ社会は分断するのか ─情動の脳科学から見たコミュニケーション不全』 (2021年3月11日刊, 専修大学出版局)

96.

交感神経系のストレス反応 交感神経系 ス ト レ ス 交感神経線維 副腎髄質 ノルアドレナリン アドレナリン ⽩⾎球 サイトカイン (IL6, TNFα) ウィキペディアより

97.

HPA軸のストレス反応 HPA軸 HPA軸とは… ストレスに応じて副腎からの コルチゾールの分泌を調節 するストレス応答システム 視床下部 HPA H: 視床下部(hypothalamus) P: 下垂体(pituitary gland) A: 副腎⽪質(adrenal cortex) ス ト レ ス CRH 副腎⽪質刺激ホルモン放出ホルモン CRH 下垂体 副腎⽪質 コルチゾール ACTH 副腎⽪質刺激ホルモン サイトカイン (IL6, TNFα) ⽩⾎球 ACTH

98.

鍵を握るのは炎症性サイトカイン(IL-6, TNF-α) 放射線を含めて、ストレッサーの種類は違っても、ストレス反応は共通 HPA軸 交感神経系 視床下部 ! " # ! ! " # ! CRH 下垂体 交感神経線維 ノルアドレナリン 副腎髄質 副腎皮質 アドレナリン コルチゾール 白血球 サイトカイン (IL6, TNFα) 白血球 ACTH

99.

不安を感じるストレス状態が長く続くと コルチゾールの慢性的な過剰放出 HPA軸の機能が破綻 サイトカインの慢性的な過剰放出 全身の血管/臓器が慢性的な炎症状態に 動脈硬化/心筋梗塞/糖尿病/うつ病などのリスクが増大 がんの進行/アルツハイマーにも関与

100.

放射線量に振り回されないで! 被ばく量からの推計 健康リスクを大幅に過小評価 ü 現在のリスク推定:寄与リスクを前提にしている ※ 国も、国を批判する脱原発派も、この点では同じ ü しかし、疫学の世界で最も信頼されてる教科書 『Modern Epidemiology』 を執筆した UCLAのGreenland教授は、次のように指摘している • 寄与リスク(attributable risk)と原因確率(probability of causation)を混同してはな らない • 被ばく者の寄与リスクが 0% でも、理論的には、真の原因確率は 100% になる (= すべての被ばく者が被ばくで寿命が短くなる)可能性がある • 被ばく量に頼る寄与リスクは、他の要因との相互作用で発病が「早まる」こと を カウントできない ので、真の原因確率を過小評価してしまう (Modern Epidemiology, Third Edition, 2008) (Bulletin of the Atomic Scientists, 68: 76-83, 2012) 「社会の病」と被ばくの相互作用(シンデミック)を見逃している現在のリスク推定 被災者の健康リスクを大幅に過小評価している可能性が高い