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入試問題解説 第 19 回:確 率 漸 化 式 と 対 称 性 2012 東 大 理 系 第 2 問
入試問題解説 問題 図のように,正三角形を 9 つの部屋に辺で区切り,部屋 P; Q を定める。1 つの球が部屋 P を出発し,1 秒ごと P に,そのままその部屋にとどまることなく,辺を共有す る隣の部屋に等確率で移動する。球が n 秒後に部屋 Q Q にある確率を求めよ。 (2012 東大 理系第 2 問・文系第 3 問) ■ 本問の学習テーマ・目的 本問では球が移動できる部屋を確かめてから確率の漸化式を立てます。部屋を上向きと 下向きに分け,2 秒ごとの移動と出発する部屋を保つ対称性を利用すると,9 部屋の問題 でも 1 種類の確率だけで漸化式を立てられます。 経路をすべて数えたり,部屋ごとに確率を文字で置いたりする前に,どの部屋を区別し, どの部屋をまとめて扱えるかを考えましょう。 指針 / アプローチ ▼ 上向きと下向きに分ける ▼ 2 秒分の移動をまとめる ▼ 対称性で文字を減らす 球は上向きと下向きの部屋を交互 に移動するので,奇数秒後に Q にいる確率は 0 です。 偶数秒後には必ず下向きの 3 部屋 のどこかにいます。2 秒後に元の 部屋に戻る確率と残りの 2 部屋へ 移る確率をそれぞれ求めます。 P を保つ対称移動から残りの 2 部 屋にいる確率が等しいと分かりま す。この等しさを使うと 1 本の漸 化式で解けます。 部屋 P に隣接するのは上向きの部屋だけなので,1 秒後 には上向きの部屋にいます。もう 1 回移動すると下向き の部屋に戻ります。そこで残りの下向きの部屋を R と P 名付け,偶数秒後だけを考えます。 ただし 3 部屋にいる確率がすべて等しいとはいえませ ん。出発する部屋は P なので,対称性から等しいといえ R Q るのは Q; R にいる確率です。右図の軸に関して経路を 対称移動すると,出発する部屋は変わらず,到着する部 屋が入れ替わります。 解答 下向きの 3 部屋のうち P; Q 以外の部屋を R とする。辺を共有する 2 部屋は三角形の向きが 異なるため,球は上向きと下向きの部屋を 1 秒ごとに交互に移動する。したがって n が奇数 のとき求める確率は 0 である。(*1) (*1) 頂点だけを共有す k を 0 以上の整数とし,2k 秒後に部屋 Q にいる確率を qk とおく。正三角形の頂点と底辺の る部屋には移動できま せん。球は上向きと下 向きの部屋を交互に移 動します。 中点を結ぶ直線に関する対称移動は P を保ち,Q と R を入れ替える。また対応する経路では 各段階の移動確率が等しい。よって 2k 秒後に R にいる確率も qk であり,P にいる確率は 1 ¡ 2qk である。(*2) (*2) 図形の対称性に加 --- 1 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止 えて出発する部屋と各 段階の移動確率が変わ らないことも確かめ ます。
入試問題解説 下向きの部屋から別の下向きの部屋へ 2 秒で移動する経路は,両方に隣接する上向きの部 屋を通る 1 通りである。その確率は 1¡ 1 1 2 ¡ = である。したがって 6 6 3 qk+1 = q0 = 0 であり,qk+1 ¡ qk ¡ 1 1 1 ¢ = である。また同じ部屋に戻る確率は 3 2 6 1 2 1 1 1 (1 ¡ 2qk ) + qk + qk = qk + 6 3 6 2 6 ÝÝ ① 1 1 1 #qk ¡ ; より, = 3 2 3 1 k 1 1 = # ; #q0 ¡ ; ; 3 2 3 qk = 1 1 $1 ¡ k < 3 2 よって求める確率は (n が奇数のとき) 0 Y1 1 %1 ¡ n = (n が偶数のとき) 3 22 である。 答案記載上の注意点 漸化式を解く計算以上にその漸化式が成り立つ理由を説明することが大切です。移動できる部 屋と利用する対称性を示し,2 秒間の移動確率の求め方を説明しましょう。 ▼ ポイント 1:隣接する部屋には等確率で移動する 1 とは限りません。下向きの部屋には 3 部屋が隣接してい 3 ますが,上向きの部屋に隣接するのは 1 部屋または 2 部屋です。各段階で移動先が何通りある 1 1 かを確かめ, ¢ のように移動確率を掛け合わせましょう。 3 2 隣接する 1 部屋へ移る確率が常に ▼ ポイント 2:どの対称性を使うかを明示する 「対称性より Q; R にいる確率は等しい」とだけ書かず,P を保って Q; R を入れ替える対称 移動を使うことまで記しましょう。それぞれに到達する経路を対応させ,その確率が変わらな いことを示せば十分です。 ▼ ポイント 3:添字と時刻の対応を明確にする 解答の qk は k 秒後ではなく 2k 秒後の確率であり,qk+1 はさらに 2 秒後の確率です。初期値 を q0 = 0 として漸化式を解き,最後に k = n を代入して奇数の場合と合わせて答えます。 2 解説 1. 奇数秒後には Q に到達できない --- 2 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止
入試問題解説 右図では上向きの 6 部屋を淡い青,下向きの 3 部屋を 濃い青で塗り分けました。同じ色の部屋どうしは辺を 1 共有していないので,球は移動するたびに違う色の部 P 屋へ移ります。 2 2 出発する部屋 P も目的の部屋 Q も下向きなので,奇 1 ります。偶数秒後には必ず P; Q; R のどれかにいる ので,3 部屋にいる確率の和は 1 です。 Q R 数秒後に目的の部屋にいる確率は計算せずに 0 と分か 2 1 上向きの部屋の数字は隣接する部屋の数です。 1 秒ごとに漸化式を立てると,上向きの 6 部屋にいる 確率も扱う必要があります。2 秒ごとなら下向きの 3 部屋だけで済みます。漸化式は必ずしも 1 秒ごとに立 てる必要はありません。 2. 2 秒間の移動確率 例えば P から Q へ 2 秒で移動するには,両方と 2 3 辺を共有する上向きの部屋を通ります。最初の移動 先は 3 通り,途中の部屋からの移動先は 2 通りなの P 1 で,その確率は です。P から R へ 2 秒で移る 6 1 6 確率も同じです。 P に戻る経路は 3 通りあります。一番上の部屋か 1 らは必ず戻り,残りの 2 部屋からは確率 で戻る 2 2 3 R ので, 1 6 1 6 Q 2 3 矢印 1 本が 2 秒間の移動を表します。 1 1 1 1 2 1 ¢1+ ¢ + ¢ = 3 3 2 3 2 3 両向きの矢印ではどちら向きの移動確率も 1 6 です。 となります。余事象を使っても求められます。Q; R から出発する場合も同様に計算できます。これらの 確率を示したのが右の遷移図です。 同じ部屋へ戻る矢印は「2 秒後に元の部屋にいる」ことを表します。1 秒後には必ず別の部屋 にいるので,問題文の「そのままその部屋にとどまることなく」という条件に反しません。(*3) 3. Q と R にいる確率が等しい理由 1 3 部屋のどこから出発しても,2 秒後に残りの 2 部屋にいる確率はそれぞれ ,元の部屋にい 6 2 る確率は です。このことだけでは 3 部屋にいる確率が等しいとはいえません。実際に 2 秒 3 後の確率を求めると P: 2 ; 3 Q: 1 ; 6 R: 1 6 となります。移動の規則が 3 部屋で同じでも,最初に球がいる部屋は P だけだからです。 一方で正三角形の縦の対称軸に関する対称移動は部屋 P を保ちます。P から Q に至る任意の 経路をこの軸に関して対称移動すれば,P から R に至る経路がただ 1 つ対応します。各部屋 --- 3 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止 (*3) 遷移図では矢印が 何秒分の移動を表すか を必ず確認しましょう。 同じ部屋に戻る矢印も 2 回分の移動を表して います。
入試問題解説 に隣接する部屋の数も変わらないので,対応する経路の確率は等しくなります。これが Q; R にいる確率が等しい理由です。 解答ではこの等しい確率を qk とおきました。残る P にいる確率は 1 ¡ 2qk です。移動前に どの部屋にいるかで場合分けすると,2 秒後に Q にいる確率は U P から U [ 1 2 1 (1 ¡ 2qk ) + q + q 6 3 k 6 k Q から R から となり,整理すると ① になります。対称性は文字を置いた後の計算を省くだけでなく,初め から使う文字を減らすためにも役立ちます。 4. 2 部屋の確率の和を使う別解 漸化式を立てるだけなら P; R にいる確率を別々に求 2 3 める必要はありません。どちらの部屋からも 2 秒後に Q へ移る確率は 1 だからです。 6 Q 2k 秒後に Q 以外の部屋にいる確率は 1 ¡ qk なので, 直接 1 3 2 1 qk+1 = qk + (1 ¡ qk ) 3 6 と書けます。右図では P; R をひとまとめにしていま 1 6 P; R 1 1 1 す。Q からどちらかの部屋へ移る確率は + = 6 6 3 5 6 この方法では P と R にいる確率が等しいとは仮定していません。2 部屋にいる確率が異なっ です。 ていても,どちらからも Q へ移る確率が等しければ,2 部屋にいる確率の和を使って計算でき ます。(*4) (*4) 2 部屋にいる確率 解答では Q; R にいる確率が等しいことを利用して,3 部屋にいる確率を表しました。一方で が等しいことと,そこ から目的の部屋へ移る 確率が等しいことは別 です。後者だけでも 2 部屋をまとめて扱え ます。 この方法は P; R から Q へ移る確率が等しいことを利用しています。何を根拠にどの 2 部屋 をまとめているのかを区別できると,ほかの確率漸化式の問題にも応用できます。 5. 偶数秒後と奇数秒後の確率の極限 1 1 1 1 #qk ¡ ; は 2 秒経つごとに = との差が半分になることを表しています。 3 2 3 3 1 7 1 1 となり,偶数秒後に Q にいる確率は に 実際に q0 = 0; q1 = ; q2 = ; q3 = 6 4 24 3 1 近づきます。R についても同様で,P にいる確率 1 ¡ 2qk も に近づきます。 3 ただし奇数秒後に Q にいる確率は常に 0 です。したがって n 秒後に Q にいる確率は n ! 1 1 に近づくのは偶数秒後だけであることに注意しましょう。 のとき収束しません。 3 qk+1 ¡ --- 4 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止
入試問題解説 ■ 復習のポイント 本問では,下記のポイントを重点的に復習しましょう。 ★★★★★ 偶奇による分類:上向きと下向きの部屋を交互に移動することから,球が いる部屋を絞る ★★★★★ 試行のまとめ方:2 秒分の移動をまとめ,3 部屋の間の移動確率を求める ★★★★★ 対称性の根拠:出発する部屋と移動確率を保つ対称移動によって,確率が 等しいことを示す ★★★★★ 部屋のまとめ方:目的の部屋へ移る確率が等しければ,出発する部屋をま とめて扱う ★★★★☆ 添字と時刻:qk を 2k 秒後の確率と定め,最後に k = --- 5 --- n を代入する 2 © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止