入試問題解説 第 14 回:整 数 条 件 と 因 数 分 解 2007 京 大 理 系 大 問 3
入試問題解説 問題 p を 3 以上の素数とする。4 個の整数 a,b,c,d が次の 3 条件 a + b + c + d = 0; ad ¡ bc + p = 0; を満たすとき,a,b,c,d を p を用いて表せ。 a≧b≧c≧d (2007 京都大学・前期理系 大問 3) ■ 本問の学習テーマ・目的 本問では,和の条件を積の条件に代入し,素数の性質を利用できる形に変形する考え方 を扱います。さらに,大小関係を用いて因数の符号と順序を定め,残った整数の範囲を 絞ります。 条件は 3 つありますが,それぞれを別々に調べるだけでは進みにくいです。どの条件を 組み合わせると次の操作が可能になるのか,また,一度使った条件をどこでもう一度使 うのかを確認しましょう。 指針 / アプローチ ▼ 和の条件で 1 文字を消す ▼ 素数の性質を利用する ▼ 大小関係で範囲を絞る d = ¡(a + b + c) を p = bc ¡ ad に代入します。展開後の式を (a + b)(a + c) = p の各因数 b; c; d を a で表します。a ≧ b と c ≧ d から 2a の範囲を絞り, 整理し,整数どうしの積を作り ます。 について,符号と大小を確認しま す。その後,因数を p と 1 に定 めます。 偶奇で値を決めます。 p が素数であることを使うには,p を整数どうしの積で表すことを考えます。しかし, p = bc¡ad は積の差であり,このままでは因数を限定できません。そこで,a+b+c+d = 0 を使って d を消します。すると,p = bc + a(a + b + c) となり,a2 + ab + ac + bc を因 数分解できます。 こうして (a + b)(a + c) = p となりますが,a; b; c; d は負の整数でもよいので,直ちに 各因数を 1 と p に決めてはいけません。ここで大小関係を使います。上位 2 つの和 a + b は 下位 2 つの和 c + d 以上であり,全体の和は 0 なので,a + b ≧ 0 です。また,b ≧ c より a + b ≧ a + c です。この 2 点と積が正であることを合わせれば,因数の符号と順序を定めら れます。 a + b = p,a + c = 1 まで進めば,残るのは a の決定です。b; c; d を a で表し, a ≧ b ≧ c ≧ d に戻します。特に,両端の不等式 a ≧ b と c ≧ d は,それぞれ a の下限と上 限を与えます。最後に p が奇数であることを使います。 解答 a + b + c + d = 0 より d = ¡(a + b + c) である。これを p = bc ¡ ad に代入すると,(*1) p = bc + a(a + b + c) = a2 + ab + ac + bc = (a + b)(a + c) ÝÝ ① (*1) 和の条件で d を 消すと,積の差が因数 分解できる形になり ます。 また,a ≧ c,b ≧ d より a + b ≧ c + d = ¡(a + b) であるから,a + b ≧ 0 である。①と p > 0 より a + b Ë 0 なので,a + b > 0 であり,a + c > 0 でもある。(*2) --- 1 --- (*2) 積が正というだけ © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止 では,両因数が負の場 合もあります。一方の 因数が正であることを 先に示します。
入試問題解説 ここで,b ≧ c より a + b ≧ a + c である。p は素数であり,a + b,a + c は正の整数なので, a + b = p; a+c=1 ÝÝ ② したがって,b = p ¡ a,c = 1 ¡ a,d = a ¡ p ¡ 1 である。a ≧ b,c ≧ d より,(*3) a ≧ p ¡ a; 1¡a≧a¡p¡1 p ≦ 2a ≦ p + 2 すなわち p は 3 以上の素数なので奇数である。2a は偶数であるから,2a = p + 1 となる。よって, (a; b; c; d) = $ p+1 p¡1 p¡1 p+1 < ; ;¡ ;¡ 2 2 2 2 (*3) b ≧ c は p ≧ 1 に対応し,すでに成り 立っています。両端の 不等式が a の範囲を決 めます。 ÝÝ ③ 逆に,③の 4 数は整数であり,a + b + c + d = 0,a ¡ b = c ¡ d = 1,b ¡ c = p ¡ 1 > 0 を満たす。また,(*4) (*4) 候補を求めた後, 2 ad ¡ bc + p = ¡ 整数であることと,問 題文の 3 条件を満たす ことを確認します。 2 (p + 1) (p ¡ 1) + +p=0 4 4 である。したがって,求める a; b; c; d は③である。 答案記載上の注意点 答案では,因数分解を思いつくまでの説明は必要ありません。ただし,素数の性質を適用する 前の符号確認と,候補を一つに定める根拠は省略しません。 ▼ ポイント 1:因数が正の整数であることを示す 整数の積が素数 p になる場合,正の因数どうしの積だけでなく,(¡1)(¡p) も考えられます。 「p は素数だから a + b = p,a + c = 1」とだけ書くと,負の場合を除いた根拠が欠けます。 まず a + b ≧ 0 を示し,積が 0 でないことから正と判断します。そのうえで積の相手も正であ ることを述べます。 ▼ ポイント 2:因数の順序と最後の偶奇を明記する 正の因数が 1 と p に定まっても,どちらが a + b に対応するかを決める必要があります。 b ≧ c より a + b ≧ a + c と書けば十分です。また,p ≦ 2a ≦ p + 2 の後では,p が奇数, 2a が偶数であることを記します。両端の値を除けるため,2a = p + 1 と定まります。 ▼ ポイント 3:求めた候補が元の条件を満たすことを確認する ここまでの計算は,条件を満たす 4 数があるなら③に限られることを示しています。最後に, その 4 数が実際に条件を満たすことを確認します。和は符号が反対の数どうしで相殺され,大 小関係は隣り合う差で確かめられます。積の条件も,平方の差を使えば短く確認できます。 解説 --- 2 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止
入試問題解説 1. 素数という条件から,どのような式を目指すか 素数という語から,余りや倍数に関する議論を考えることもあります。しかし,本問の p = bc ¡ ad には,まず因数分解を試す理由があります。p を正の整数どうしの積にできれ ば,因数は 1 と p に限られ,4 文字を含む条件を二つの 1 次式に分けられるからです。 もちろん,bc ¡ ad 自体をそのまま因数分解することはできません。そこで,まだ使っていな い和の条件に着目します。d = ¡(a + b + c) を代入すると,bc + a(a + b + c) となります。 ここで,a2 + ab + ac + bc = a(a + b) + c(a + b) とまとめれば,共通因数 a + b が現れ ます。(*5) (*5) bc ¡ ad が素数で この変形は,最初から (a + b)(a + c) を思いつかなければ進めないものではありません。 「素 数の性質を使える積を作りたい」「和の条件で 1 文字を消せる」という二つの判断から,展開 と因数分解を試してみましょう。代入によって文字を減らすだけでなく,残った式の形がどう も,bc と ad のそれぞ れが素数や 1 になるわ けではありません。積 の差と積を区別します。 変わるかまで確認することが大切です。 2. 大小関係は,一度使えば役目が終わるわけではない a ≧ b ≧ c ≧ d は,解答の異なる場面で使われています。最初は a + b ≧ c + d として符号 を調べ,次に b ≧ c として二つの因数の順序を定めます。さらに,②から b; c; d を a で表 した後も,a ≧ b と c ≧ d を使って範囲を絞っています。 特に,符号を調べる場面では,個々の文字の符号をすべて決める必要はありません。最大の a が非負,最小の d が非正であることは分かりますが,それだけでは a + b や a + c の符号は 定まりません。因数分解後に必要なのは和の符号なので,上位 2 つと下位 2 つをまとめて比較 します。(*6) (*6) 各文字の符号で細 また,最後に a ≧ b だけを使うと 2a ≧ p しか分からず,候補は無数に残ります。c ≧ d も使 かく場合分けする前に, 次の議論でどの式の符 号が必要かを確認し ます。 うことで 2a ≦ p + 2 が加わり,初めて狭い範囲に限定できます。変形が進んだら,元の大小 関係に戻って残りの条件を確かめましょう。 3. 整数条件は,範囲を絞った後に効く p p ≦a≦ + 1 の範囲に無数の候補があります。一方, 2 2 p+1 p が奇数なら両端は整数ではなく,この範囲に入る整数は中央の だけです。解答では 2 分数を増やさないため,p ≦ 2a ≦ p + 2 と書き,偶奇で決定しました。 ②の後では,a を実数と考えると, この段階で新たな整数問題の技巧は必要ありません。大小関係で幅を狭くし,その範囲に入る 整数を調べるだけです。「整数だから何か特別な方法を使う」と考えるより,まず式と不等式 でどこまで限定できるかを確かめる方が進めやすいです。 なお,p = 2 でも因数分解と符号の議論は変わらず,a + b = 2,a + c = 1 となります。しか し,最後は 2 ≦ 2a ≦ 4 なので,a = 1; 2 の二つが残ります。対応する 4 数は (1; 1; 0; ¡2) と (2; 0; ¡1; ¡1) であり,いずれも条件を満たします。(*7) 本問の「3 以上」という条件が使 われる場所も,ここで確認できます。 (*7) 「3 以上」は素数 p を奇数に限定する条 件です。最後の候補数 に影響しています。 --- 3 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止
入試問題解説 4. 答えの対称性を,初めから仮定してよいか 答えでは a = ¡d,b = ¡c となっています。しかし,和が 0 というだけで,4 数がこのよう な組になるわけではありません。例えば,(4; 1; 0; ¡5) は和が 0 で大小関係も満たしますが, a = ¡d ではありません。したがって,最初に d = ¡a,c = ¡b と置くと,条件から示して いない性質を仮定することになります。 本問では,a + c = 1 と全体の和が 0 であることから b + d = ¡1 であり,この二つの式の 差を取ると, (a ¡ b) + (c ¡ d) = 2 となります。ここで,a + b = p が奇数なので a ¡ b = p ¡ 2b も奇数であり,c + d = ¡p が奇数なので c ¡ d = ¡p ¡ 2d も奇数です。しかも,大小関係から両方とも非負なので,ど ちらも 1 以上です。和が 2 であることから a ¡ b = c ¡ d = 1 と分かります。(*8) (*8) これは 答えに現れる対称性は,和が 0 であることに加え,素数の性質,大小関係,偶奇を組み合わせ わりに,隣り合う差を 使って最後の候補を絞 る方法です。 a + b = p と a ¡ b = 1,c + d = ¡p と c ¡ d = 1 をそれぞれ解けば,③に到達します。 p ≦ 2a ≦ p + 2 の代 た結果なのです。 ■ 復習のポイント 本問では,下記のポイントを重点的に復習しましょう。 ★★★★★ 因数分解への準備:和の条件で 1 文字を消し,素数を整数どうしの積で 表す ★★★★★ 素数の性質を使う前の確認:因数が正の整数であることと,その大小を 示す ★★★★★ 大小関係の再利用:残った文字の下限と上限を求める ★★★★☆ 整数条件の利用:狭い範囲に限定してから,偶奇で値を決める ★★★★☆ 候補の確認:求めた 4 数が整数であり,元の 3 条件を満たすことを確か める --- 4 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止
入試問題解説 補充問題 p を 3 以上の素数とする。3 個の整数 a,b,c が次の 3 条件 a + b + c = 0; a3 + b3 + c3 = 6p; a≧b≧c を満たすとき,p および (a; b; c) をすべて求めよ。 指針 / アプローチ 本問と同様に,和の条件を利用して素数を含む積の等式を作ることを考えます。今回は 3 次式 なので,c = ¡(a + b) を立方和に代入して整理するか,a3 + b3 + c3 ¡ 3abc の因数分解を 利用します。どちらの方法でも abc = 2p となります。 次に,和が 0 で積が正であることから各文字の符号を定め,負の数の符号を反転して正の整数 で表します。すると,正の整数 u; v に対する uv(u + v) = 2p という条件に直せます。p が 素数なので,u; v; u + v の少なくとも一つは p の倍数です。u または v が p の倍数だと積 が大きくなりすぎることを確かめ,u + v に限定します。 解答 恒等式 a3 + b3 + c3 ¡ 3abc = (a + b + c)(a2 + b2 + c2 ¡ ab ¡ bc ¡ ca) と a + b + c = 0 より,a3 + b3 + c3 = 3abc である。したがって,(*9) abc = 2p > 0 (*9) 和が 0 という条 ÝÝ ④ 3 数はすべて 0 でなく,積が正なので,すべて正であるか,正の数が一つ,負の数が二つであ 件を立方和に利用しま す。c = ¡(a + b) を 代入して展開しても, 同じ関係になります。 る。すべて正では和が 0 にならないから,大小関係より a > 0 > b ≧ c である。(*10) (*10) 積の符号だけで b = ¡u,c = ¡v とおくと,u; v は 1 ≦ u ≦ v を満たす整数であり,a = u + v である。 は各文字の符号は定ま りません。和が 0 とい う条件と大小関係も合 わせて使います。 ④より, uv(u + v) = 2p ÝÝ ⑤ p は素数なので,u; v; u + v の少なくとも一つは p の倍数である。もし u または v が p の 倍数なら,uv ≧ p,u + v ≧ p + 1 > 2 となるので,uv(u + v) > 2p となり,⑤に反する。 よって,u + v は p の倍数である。(*11) (*11) 積が p の倍数な そこで u + v = kp(k は正の整数)とおくと,⑤より kuv = 2 である。uv = 1 のときは ら,いずれかの因数が p の倍数になります。 ここで p が素数である ことを使います。 u = v = 1 となり,u + v = 2 < p なので不適切である。したがって,uv = 2,k = 1 であ り,u ≦ v より u = 1,v = 2 となる。よって, p = 3; (a; b; c) = (3; ¡1; ¡2) ÝÝ ⑥ 逆に,⑥では p = 3 は素数であり,3 ¡ 1 ¡ 2 = 0,33 + (¡1)3 + (¡2)3 = 18 = 6 ¢ 3, 3 ≧ ¡1 ≧ ¡2 を満たす。したがって,求める p および (a; b; c) は⑥である。 --- 5 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止
入試問題解説 答案記載上の注意点 ▼ ポイント 1:正の整数に置き換える前に符号を確定する b = ¡u,c = ¡v と置くだけでは,u; v が正であるとは限りません。abc > 0 より 0 を含ま ず,負の数は 0 個か 2 個です。和が 0 であることから負の数が 2 個と分かり,大小関係によっ て b; c が負と決まります。この順に説明してから 1 ≦ u ≦ v と記します。 ▼ ポイント 2:素数の性質と,大きさによる除外を区別する ⑤から分かるのは,まず u; v; u + v の少なくとも一つが p の倍数であることまでです。最 初から u + v = p と決めてはいけません。u; v が p の倍数となる場合を不等式で除き, u + v = kp と置きます。その後,kuv = 2 と和の条件を使って k = 1 に限定します。 ▼ ポイント 3:p の決定と候補の確認まで書く 本問では与えられた素数 p に応じて 4 数を表しましたが,補充問題では条件を満たす p 自体 も求めます。u = 1; v = 2 だけで終えず,p = u + v = 3 と (a; b; c) = (3; ¡1; ¡2) を 明記します。最後に,p が指定された素数であり,3 数が元の条件を満たすことを確認します。 解説 1. 恒等式を思い出せなくても,和の条件から始められる 3 次式の恒等式を知っていれば,a + b + c = 0 から直ちに a3 + b3 + c3 = 3abc と進められ ます。しかし,恒等式を思い出せなくても,和の条件を使って 1 文字を消す方法があります。 c = ¡(a + b) を代入すると, a3 + b3 + c3 = a3 + b3 ¡ (a + b)3 = ¡3ab(a + b) = 3abc となります。展開すると a3 ; b3 が消え,積の形だけが残ります。本問で d を消したときと同 じく,和の条件で文字を減らした後,式を整理することで因数分解につながります。 この問題で再利用したいのは,特定の因数分解の形ではなく, 「和の条件を,積を作るために使 う」という判断です。代入と恒等式の利用は,どちらも同じ関係を導いています。恒等式を用 いた解答だけを覚えるのではなく,代入によって自分で確かめられるようにしておきましょう。 2. 三つの因数のうち,どれが素数の倍数になるのか 本問では二つの正の整数の積が素数だったため,因数を 1 と p に定められました。補充問題 では三つの正の整数の積が 2p です。因数の値をいきなり決めるより,まず素因数 p がどこ に含まれるかを調べる方が整理しやすいです。 ここで重要なのは,三つの因数が独立ではなく,三つ目が前の二つの和になっていることです。 u または v が p 以上になると,その和 u + v は p + 1 以上になります。つまり,一つの因 --- 6 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止
入試問題解説 数を大きくすると別の因数も大きくなり,積が 2p を超えてしまいます。この関係を使うこと で,p の倍数となる因数を u + v に限定できます。(*12) (*12) 正の整数なの その後も u + v = p と即断せず,u + v = kp と置きます。kuv = 2 から積の候補を挙げ, で,p の倍数なら p 以 上です。他方の整数が 1 以上であることも 使っています。 u + v = kp に戻して不適切な場合を除きます。積だけでなく,因数間の和の関係を最後まで 使う点が,本問から一歩進んだ内容です。 3. 本問と補充問題で,条件の役割を比較する どちらの問題も,和の条件から積の等式を作り,符号を確かめて素数の性質を利用します。た だし,その後の絞り方は異なります。本問では二つの因数を決めた後,元の大小関係と偶奇で 残った文字を一つに限定しました。補充問題では,因数の一つが他の二つの和であることを使 い,p の倍数となる因数を限定しました。 また,補充問題の大小関係は,負の 2 数を b; c に定め,最後に u = 1; v = 2 と順序をそろ える役割を持ちます。本問のように,最後の整数の範囲を直接狭める条件ではありません。似 た条件が並んでいても,どの段階で何を限定できるかは,変形後の式に応じて判断する必要が あります。 --- 7 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止