入試問題解説 第 24 回:複素数の商と解の位置 2000 京 都 大 学 後 期 理 系 大 問 1
入試問題解説 問題 (1) ®; ¯ は異なる複素数とする。z を複素数とし,®; ¯; z が複素平面上で表す点を z¡¯ それぞれ A; B; Q とする。このとき, の虚部が正であるような点 Q の存 z¡® 在範囲を図示せよ。 (2) 3 個の複素数 ®; ¯; ° は複素平面上で三角形の 3 頂点 A; B; C を表すものとす る。このとき正の実数 p; q; r に対し,z についての 2 次方程式 p(z ¡ ¯)(z ¡ °) + q(z ¡ °)(z ¡ ®) + r(z ¡ ®)(z ¡ ¯) = 0 の解はすべて三角形 ABC の内部にあることを示せ。 (2000 京都大学・後期 理系 大問 1) ■ 本問の学習テーマ・目的 複素数の商の虚部から点と直線の位置関係を調べます。その結果を用いて,2 次方程式 の解が三角形の内部にあることを証明します。 指針 / アプローチ ▼ 商の虚部 ▼ 3 つの分数の和 ▼ 三角形の外部と境界 点 A を原点,点 B を 1 を表す点 に移し,商の虚部が正となる範囲 を調べます。 解が ®; ¯; ° でないことを確か め,3 つの因数の積で割ります。 解を表す点が内部にないと仮定 し,(1) を用いて虚部の符号を調 べます。 z¡® とおきます。各点を表す複素数から ¯¡® ® を引き,¯ ¡ ® で割ると,点 A; B はそれぞれ原点と 1 (1) では w = Im y>0 を表す点 に移ります。直線 AB は実軸に移るので,点 w w = x + yi が実軸の上側にあるか下側にあるかを調べます。 (2) では 3 つの項の係数がすべて正であることを使います。 各項の虚部がすべて 0 以上で,少なくとも 1 つが正なら, その和は実数になりません。このことから矛盾を導きます。 --- 1 --- O Re 1 w の虚部が正となる範囲 © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止
入試問題解説 解答 (1) z Ë ® とし,w = であり z¡® = x + yi とおく。ただし x; y は実数である。このとき w Ë 0 ¯¡® z¡¯ y w¡1 x = =1¡ 2 + 2 i 2 z¡® w x +y x + y2 となる。したがって虚部が正となる条件は y > 0 である。 ® を引き,¯ ¡ ® で割る移動は,平行移動と回転,拡大・ Q(z) へ進む向きに対して左側の半平面(ただし境界線 AB は含 µ 縮小の組合せである。よって求める範囲は,点 A から点 B 左側 まない)である。 A(®) B(¯) 着色部分。境界は含まない (2) 与えられた方程式の解を z とする。z = ® を代入したときの左辺は p(® ¡ ¯)(® ¡ °) Ë 0 である。同様に z Ë ¯; ° であるから,方程式の両辺を (z ¡ ®)(z ¡ ¯)(z ¡ °) で割って p q r + =0 + z¡® z¡° z¡¯ ÝÝ ① とする。 点 Q(z) が三角形 ABC の内部にないと仮定する。このとき Q を通る直線 ` として,3 点 A; B; C が ` に関して同じ側(または ` 上)にあり,かつ少なくとも 1 点は ` 上にないよう なものがとれる。(*1) (*1) 三角形の各辺を含 Q と異なる ` 上の点 D(±) を,点 Q から点 D へ進む向きに対して左側の領域(境界を含む) に三角形 ABC が含まれるようにとる。(1) より,3 つの商 ®¡± ; ®¡z ¯¡± ; ¯¡z °¡± °¡z の虚部はすべて 0 以上で,少なくとも 1 つは正である。したがって p; q; r > 0 より,これら をそれぞれ p; q; r 倍して加えた複素数の虚部は正である。一方,①より p ¯¡± °¡± ®¡± +q +r ®¡z °¡z ¯¡z p q r < = p + q + r + (± ¡ z) $ + + z¡® z¡° z¡¯ =p+q+r となり,この複素数は実数である。これは矛盾である。よって解はすべて三角形 ABC の内部 にある。 --- 2 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止 む 3 直線のうち,その 直線に関して点 Q と残 りの頂点が同じ側にな いものを 1 つ選びま す。その直線に平行で Q を通る直線を ` とし ます。
入試問題解説 別解 (2) 解答 (2) と同様に z Ë ®; ¯; ° を確認すると,①が成り立つ。①の両辺の共役な複素数をと り,各分数の分母と分子に z ¡ ®; z ¡ ¯; z ¡ ° をそれぞれ掛けて分母を実数化すると q(z ¡ ¯) r(z ¡ °) p(z ¡ ®) + + =0 2 2 jz ¡ ®j jz ¡ ¯j jz ¡ °j2 p q r ,b = ,c = とおくと a; b; c > 0 であり, 2 jz ¡ ®j jz ¡ ¯j2 jz ¡ °j2 (a + b + c)z = a® + b¯ + c° である。 となる。ここで a = m= b¯ + c° とおくと,点 M(m) は辺 BC を c : b に b+c C 内分する点である。さらに z= a® + (b + c)m a+b+c Q より,点 Q(z) は線分 AM を (b + c) : a に内分する。 A M B よって点 Q は三角形 ABC の内部にある。 答案記載上の注意点 ▼ ポイント 1:分母が 0 となる値(解答・別解共通) (2) で 3 つの因数の積で割る前に,®; ¯; ° が解でないことを確かめます。三角形の 3 頂点な ので互いに異なり,p; q; r も 0 でないことを使います。 ▼ ポイント 2:境界上の点(解答) 三角形の外部だけでなく,辺上に解がないことも示す必要があります。頂点が直線 ` 上にある と対応する商は実数ですが,少なくとも 1 つの頂点は ` 上にありません。その頂点に対応する 商の虚部が正となります。 ▼ ポイント 3:正の係数(解答) 虚部がすべて 0 以上でも,それだけでは和の虚部が正とは限りません。少なくとも 1 つが正で あり,その項の係数も正であることまで確かめます。 ▼ ポイント 4:内分比と点の位置(別解) a; b; c > 0 を明記します。内分比は BM : MC = c : b,AQ : QM = (b + c) : a です。各 比の両項が正であることから,M と Q がそれぞれの線分の端点でないことまで示します。 --- 3 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止
入試問題解説 解説 1. 商の虚部と半平面 点 Q が直線 AB 上にない場合を考えます。 z¡¯ = z¡® 左側 Q(z) ¯¡z ¡! ¡! の分子と分母は,それぞれ QB と QA に対応しま ®¡z す。この商の偏角は半直線 QA から半直線 QB までの回転 µ 角です。 虚部が正であるためには,この回転角 µ を 0 < µ < ¼ に A(®) とれることが必要十分です。これは点 Q が点 A から点 B B(¯) QA から QB への回転 へ進む向きに対して左側にあることを表します。 点 Q が直線 AB 上にあれば,Q Ë A のもとで商は実数になります。(2) ではこの場合も含 め,虚部が 0 以上となる条件を用います。 2. (1) に代入する複素数 (1) では A; B を固定して点 Q の範囲を調べました。(2) では解を表す点 Q(z) と補助点 D(±) を固定し,3 つの頂点の位置を調べます。例えば点 A(®) については,(1) の ®; ¯; z にそれぞれ z; ±; ® を代入します。 z¡¯ z¡® ¡! ®¡± ®¡z 点 B; C についても同じ 2 点 Q; D を基準にします。こうして 3 つの商の虚部を同じ直線 ` に対する位置関係から調べられます。 3. 補助直線の選び方 各辺を含む直線を境に,残りの頂点と同じ側の半平面を考 C えます。この 3 つの半平面の共通部分が三角形の内部です。 点 Q が内部にないなら,少なくとも 1 辺について,点 Q はその直線上または残りの頂点と反対側にあります。 例えば直線 AB に対して点 Q と点 C が反対側にあるなら, A 点 Q を通り直線 AB に平行な直線を ` とします。3 つの B Q(z) 頂点はすべて ` の同じ側にあります。 ` D(±) Q と C が直線 AB の反対側にある場合 点 Q が直線 AB 上にある場合は ` を直線 AB とします。 C このとき点 A; B は ` 上にありますが,点 C は ` 上にあ りません。 どちらの場合も 3 つの商の虚部はすべて 0 以上で,少なく とも 1 つは正になるように点 D を選べます。したがって外 部と境界のどちらにある場合も同じ議論で矛盾を導くこと A Q D B ` Q が辺 AB 上にある場合 ができます。 --- 4 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止
入試問題解説 4. 共役な複素数と内分点(別解) 別解では解を表す複素数 z を ®; ¯; ° と正の係数で表します。①の両辺の共役な複素数をと り,各分数の分母と分子に z ¡ ®; z ¡ ¯; z ¡ ° をそれぞれ掛けて分母を実数化します。これに より各項を z ¡ ®,z ¡ ¯,z ¡ ° と実数との積に書き直せます。分母は正なので,p; q; r > 0 より係数 a; b; c も正です。 得られた式 z= a® + b¯ + c° a+b+c で,まず ¯; ° の項をまとめて辺 BC の内分点 M をとります。続いて ® と m の係数から, 点 Q は線分 AM の内分点であると分かります。こうして 2 段階の内分に分けると,点 Q が 三角形の内部にあることを説明できます。 ■ 復習のポイント ★★★★★ 商の虚部:正・負・0 を点と直線の位置関係に対応させます ★★★★★ 分母の確認:®; ¯; ° が解でないことを確かめます ★★★★★ 誘導の利用:固定する 2 点と,位置を調べる点を区別します ★★★★★ 正の係数:虚部が同じ符号なら和でも打ち消し合いません ★★★★☆ 境界の確認:辺上に解がないことまで示します --- 5 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止