各国語訳『源氏物語』研究会配布資料

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August 05, 24

スライド概要

科学研究費補助金による第6回「海外における平安文学」研究会での発表資料です。
Materials distributed by the research group for the “The Tale of Genji” translated into various languages
Presentation materials at the 6th ''Heian literature abroad'' study group funded by Grants-in-Aid for Scientific Research.

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各ページのテキスト
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第6回 海外における平安文学研究会 日時:2015 年 8 月 22 日(土)15 時〜18 時 場所:国文学研究資料館 2 階 第一会議室 科学研究費補助金「基盤研究 A」:研究代表者 伊藤鉄也 「海外における源氏物語を中心とした平安文学及び各国語翻訳に関する総合的調査研究」 (研究課題番号:25244012) 各国語訳『源氏物語』「桐壺」について〜スペイン語訳・イタリア語訳を中心に 淺川槙子(国文学研究資料館) はじめに 本科研の課題のひとつ「1. 翻訳から見た日本文化の変容」は、世界各国 32 言語で翻訳された『源 氏物語』の総合的調査を実施し、受容・研究史を整理することである。具体的には 2013 年度から、各 国語で翻訳された『源氏物語』の日本語への訳し戻しと、翻訳情報の整理として「 『源氏物語』翻訳史」 の公開を行っている。 『源氏物語』を外国語に翻訳する場合、Arthur Waley など英訳された書籍からの重訳が多い。しか し、今回とりあげるスペイン語訳とイタリア語訳『源氏物語』には、直接、『源氏物語』の本文および 現代語訳から翻訳をされたものがある。それらを見ていきたい。 1 書誌について 今回とりあげるスペイン語に翻訳された『源氏物語』の書誌について以下にあげる。なお、スペイン語訳 『源氏物語』書誌に関する詳細なデータは、本科研 HP『海外平安文学研究ジャーナル 2.0』1を参照された い。 ◎スペイン語訳『源氏物語』 (1)Fernando Gutiérrez(フェルナンド・グティエレス)訳 Genji Monogatari(Romance de Genji) ・書名 ・出版社 Palma de Mallorca ・刊行年月日 2004 年 ・ 「桐壺」の章名 KIRISUBO ・底本 Arthur Waley,The tale of Genji,G. Allen & Unwin,1925〜1933 YAMATA KIKOU(山田菊),LE ROMAN DE GENJI,Flon,1928 にも影響を受けた。 ・翻訳の範囲 底本にならい「葵」の巻までの訳である。 ・翻訳の特徴 底本に忠実である。主語がない個所は、主語を補っている。 (2)Xavier Roca-Ferrer(ハビエル・ロカ・フェレール)訳 ・書名 ・出版社 La novela de Genji Destino ・刊行年月日 1 2005 年 拙稿「スペイン語訳『源氏物語』の書誌について」 (『海外平安文学研究ジャーナル 2.0』2015 年 3 月) 1

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・ 「桐壺」の章名 ・底本 Kiritsubo 不明。 ・翻訳の特徴 複数の言語の翻訳が混ぜて利用されている。また、段落の順番なども翻訳者が自由に変 更している。 (3)Jordi Fibla(ホルディ・フィブラ) 訳 ・書名 LA HISTORIA DE GENJI ・出版社 ATARANTA ・刊行年月日 2006 年 ・ 「桐壺」の章名 ・底本 Kiritsubo (El pabellón de la paulonia 桐のパビリオン) Royall Tyler,The Tale of Genji,Viking,2001 ・翻訳の範囲 完訳 ・翻訳の特徴 主語がない個所は、主語を補っている。 (4) (5)HIROKO IZUMI SIMONO(ヒロコ・イズミ・シモノ)•IVAN AUGUSTO PINTO ROMAN (イヴァン・アウグスト・ピント・ロマン)訳 ・書名 EL RELATO DE GENJI ・出版社 ペルー日系人協会(APJ) ・刊行年月日 2013 年 ・ 「桐壺」の章名 ・底本 Kiritsubo(La cámera de la paulonia 桐の部屋) 『日本古典文学全集 源氏物語』 (小学館、1973 年)と複数の翻訳書 ・翻訳の範囲 第 1 巻は「篝火」の巻までの翻訳である。 ※この本の翻訳は、 (4)非母語話者と(5)母語話者の 2 種類を掲載した。 【書籍として刊行されていないもの】 (6)Ariel Stilerman(アリエル・スティラーマン)訳 ・題名 スペイン語新訳『源氏物語』 ・翻訳を公開している URL http://genjienespanol.files.wordpress.com/2013/08/el-patio-de-las-paulonias-kiritsubo.pdf ・発表年月日 2013 年 ・ 「桐壺」の章名 ・底本 桐の中庭 早稲田大学教授 陣野秀則先生編集の本文。 ・翻訳の特徴 (氏の HP による) http://genjienespanol.wordpress.com/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E/ 〈1〉古典の原文をできるだけ忠実に翻訳した。 〈2〉原文になく、翻訳者が補足をした箇所は灰色で示した。 〈3〉原文における一文が長くても、スペイン語で複数に分けて翻訳することを避けた。 〈4〉原文で同じ表現が登場したときは、スペイン語もそれにあわせて翻訳した。 〈5〉物語作品が女房によって朗読された可能性を考えて、朗読に適した文体等に調整した。 2

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〈6〉主語が置かれていない文章は、そのまま翻訳した。 〈7〉動詞や形容詞の活用形により、主語を推測できるように工夫した。主語を補う必要がある場合は、 その箇所を灰色で示した。 ◎イタリア語訳『源氏物語』 (1)Adriana Motti(アドリアナ・モッティ)訳 ・書名 Storia di Genji il principe splendente ・出版社 Einaudi ・刊行年月日 初版は 1957 年、その後 1992 年・2006 年に再版された。 ・ 「桐壺」の章名 ・底本 Arthur Waley,The tale of Genji,G. Allen & Unwin,1925〜1933 ・翻訳の範囲 ・備考 Kiritsubo 底本にならい、 「鈴虫」の巻を除いた翻訳となっている。 序文はナポリ大学の教授 Giorgio Amitrano(ジョルジュ・アミトラーノ)による。 (2)Maria Teresa Orsi (マリア=テレーザ・オルシ)訳 ・書名 La Storia di Genji ・出版社 Einaudi ・刊行年月日 2012 年 ・ 「桐壺」の章名 ・底本 Il Padiglione della Paulonia 『日本古典文学全集 源氏物語 『新日本古典文学大系 一〜六』 (小学館、1994 年〜1998 年) 源氏物語 一〜五』(岩波書店、1999 年) ・参考文献 『源氏物語の鑑賞と基礎知識 ・翻訳の範囲 2 全 43 巻』 (至文堂、1998〜2006 年) 完訳 原文との比較 以下の7項目について、スペイン語については6種類、イタリア語は 2 種類の翻訳を比較した。項目 については、国文学研究資料館編『源氏物語 千年のかがやき』(思文閣出版、2008 年)のうち、「国 文学研究資料館蔵『源氏物語団扇画帖』 」事物索引」 (156〜167 頁)を参照した。 (1)人物(官職・位階・立場)に関する語 (2)儀礼・行動に関する語 (3)場所(役所・国も含む) ・家屋に関する語 (4)調度・乗り物・色などに関する語 (5)動物(昆虫を含む)に関する語 (6)植物に関する語 (7)気象・時間・空間に関する語 以上の項目に基づいて抽出した語が、スペイン語およびイタリア語によりどのように翻訳されている かについて調べた。その過程で参考にした資料をあげておく。 ・ 《語の意味》 ・・・中村幸彦、阪倉篤義、岡見正雄編『角川古語大辞典』第 2 巻〜第 5 巻(角川書店、 1982〜1999 年)を引用して作成した。本文をそのまま引用した場合のみ、ページを付す。 3

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・ 【原文】 ・・・伊藤先生作成の池田本『源氏物語』の校訂本文をさす。 ・ 【現代語訳】 ・・・発表者が池田本を現代語に訳したものをさす。 ・スペイン語 Gutiérrez 訳およびイタリア語 Motti 訳の項目においての〈底本訳〉 ・・・佐復秀樹『源 氏物語ウェイリー版 1』 (平凡社、2008 年 9 月)を使用した。 ・スペイン語 Fibla 訳の項目においての〈底本訳〉 ・・・RoyallTyler 訳を発表者が日本語に直訳したも のを使用した。 ・イタリア語 Orsi 訳の項目においての〈底本 1〉 ・・・ 『日本古典文学全集 源氏物語 1〜6』 (小学館、 1994 年〜1998 年) ・イタリア語 Orsi 訳の項目においての〈底本 2〉 ・・・『新日本古典文学大系 源氏物語 1〜5』(岩波 書店、1999 年) なお、抽出した語については、下記の記述と(別紙1)の資料を参照されたい。 (1)人物(官職・位階・立場)に関する語 「御息所」 《語の意味》「みやすみどころ(御休所)」から転じた語。天皇や東宮などの妻を間接的に指す語。 (5-p.541) 【原文】その年の夏、御息所、はかなき心地にわづらひて、まかでなむとしたまふを、暇さらにゆるさ せたまはず。 【現代語訳】その年の夏、若宮の母である御息所は、ちょっとした病をわずらわれて、宮中を退出しよ うとなさるのを、 (帝は)彼女がお暇を頂くのを許されなかった。 ☆スペイン語訳☆ 1)Gutiérrez 訳 Durante el verano de aquel año,Dama se sintío enferma.Repetidas veces solicitó autorización para regresar a su casa, autorización que no le fue concedida.(p.14) [訳し戻し] その年の夏の間、貴婦人は病を感じた。繰り返し何度も家に帰る許可を懇願したが、許可は彼女には 与えられないものであった。 〈底本〉 In the summer of that year the lady became very downcast. She repeatedly asked for leave to go to her home,but it was not granted.(p.9) 〈底本訳〉 その年の夏に、この女性はたいへん気分がすぐれなくなった。くりかえし里に行く許可を求めたが許 されない。 (p.19) 【補足】底本について 上記では、原文の「御息所」に対応する部分をとりあげたので、「lady」という語を抽出することにな った。しかし「この女性」に該当する桐壺更衣は、上記の場面よりも前に登場している。ちなみに「更 衣」そのものをあらわす語は「Wardrobe」にあたる。参考までにスペイン語訳とともにその部分をあ 4

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げておく。 〔参考〕 1)Gutiérrez 訳 EN la corte de un Emperador -no importa en qué tiempo-vivia entre las numerosas azafatas y damas de la Corte una mujer de condición modesta ,a quien se había favorecido más que a las demás. 〈底本〉 At the Corte of an Emperor(he lived it matters not when)there was among the many gentlewomen of the Wardrobe and Chamber one,who though she was not of very high rank was favoured far beyond all the rest;(以下略、p.7) 〈底本訳〉 ある天皇の宮廷に(彼がいつの時代に行きていたのかはどうでもよい) 、衣装の間や寝室につかえる女 性たち[更衣・女御]が大勢いたなかに、とても身分が高いわけではなかったが、ほかの者たちよりも はるかに寵愛を受けている人がいた。 (p.15) ※「azafatas」 ・・・ 「侍女・女官」の意味がある。( 『西和中辞典』小学館、2000 年) ※「dama」 ・・・ 「貴婦人」のほかに「侍女・女官」の意味がある。(上記と同じ) ※「damas de la Corte」 ・・・ 「宮廷の貴婦人たち」 2)Roca-Ferrer 訳 A principios de verano Kiritsubo pidío licencia para marchar a su casa porque,decía,su salud era mala,pero el emperador se resistía a separarse de ella.(p.86) [訳し戻し] 夏の初めにキリツボは家に行くための許可を求めた。なぜなら、言うには彼女の健康状態が悪かった からだ。しかし皇帝は彼女と離れることを拒んだ。 3)Fibla 訳 Durante el verano de aquel año,el Refugio de Su Majested enfermó,pero él no le permitió que se retirase.(p.39) [訳し戻し] その年の夏の間に陛下の避難場所となっていた人は病気になったが、彼は彼女が退出することを許さ なかった。 〈底本〉In the summer of that year,His Majesty’Haven became unwell,but he refused her leave to withdraw.(p.4) 〈底本訳〉 その年の夏、帝の避難場所(という呼び名を持っていた人)は病気になったが、彼は彼女が退出する ことを許さなかった。 ※Haven=避難場所をさす。 底本の「Haven」には、 「7.Genji’s mother. Her unofiicial title(Haven,Miyasudokoro)seems to have 5

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designated a moman,especially one of Intimate or Consort rank,who had borne an Emperor or an Heir Apparent a child.」という脚注がついている。 4)ペルー版 El verano de dicho año,la dama de la Cámara de la Paulonia,que se sentía extrañamente enferma,expresó el deseo de retirarse donde su familia,lo cual el emperador una vez más no quiso permitir.(p,36) [訳し戻し/非母語話者] その年の夏、桐の部屋の貴婦人は、奇妙にも具合がおもわしくなく、家族のもとに引き上げたいとい う願望を示したが、皇帝はそれをまたもう一度認めたくはなかった。 [訳し戻し/母語話者] その年の夏、桐壺の方は、異常に病気がかかっていた故に、家族のところまで退きたいと願いを表し たが、今度も帝は許しを下そうともしなかった。 〈底本〉 その年の夏、御息所、はかなき心地にわづらひて、まかでなんとしたまふを、暇さらにゆるさせたま はず。 (p.97) 〈底本訳〉 その年の夏、若宮の母君の御息所は、なんとなく健康をそこねて、養生のため里に下がろうとするが、 帝はどうしてもお暇をお許しにならない。 5)Ariel 訳 En el verano de ese año,la Concubina a la que ahora llamaban da Dama del Reposo,enfermó de tanto sufrimiento y deseaba abandonar la corte,pero el no la autorizó de ninguna manera a tomar un período de descanso. [訳し戻し] その年の夏、その内縁の妻は今や安らぎの貴婦人と呼ばれていたが、あまりの苦しみで病になって宮 殿を離れたかったが、彼はどうあっても休みの期間を取ることを許可しなかった。 ☆☆スペイン語訳の脚注☆☆ 1)Gutiérrez 訳 脚注はナシ 2)Roca-Ferrer 訳 脚注はナシ 3)Fibla 訳 7 La madre de Genji,Su título no oficial(Refugio,Miyasudokoro)parecehaber designado a una mujer,en especial a una con rango de íntima o consorte,que había dado un hijo a un emperador o un feredero forzoso. (p.39) 注7.源氏の母。彼女の非公式の肩書(避難場所、御息所)は女性、特に皇帝あるいは必然的な後継者 に息子を産んだ密接な位階を持っている女性あるいは配偶者につけられたように思われる。 4)ペルー訳 脚注はナシ 5)Ariel 訳 7 Dama del Reposo(miyasudokoro),literalmente “lugar de descanso”es una expresión que 6

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orginalmete denomina a una Consorte o Concubina que ha dado un príncipe al Emperador y por extensión también a una dama que se ha convertido en favorita del Emperador ,aun si no ha dado a luz a un príncipe.En este capítulo el término Dama del Reposo se utiliza exclusivamente para referirse a la Concubina favorita del Emperador. 注7.安らぎの貴婦人(御息所)、文字通り「休息の場所」は元々は皇帝に王子を産んだ夫人あるいは 内縁の妻、そして広義には皇帝のお気に入りになった貴婦人に命名する表現である。この章では安らぎ の貴婦人は皇帝のお気に入りの内縁の妻に言及するためにもっぱら使われている。 ★イタリア語訳★ 1)Motti 訳 Nell'estate di quell'anno la dama cadde in grave abbattimento.Chiese piú volte il permesso di tornate a casa sua,ma non l'ottenne.(p.10) [訳し戻し] その年の夏に更衣が意気消沈してしまった。何度も実家に帰させてもらうように頼んだが、許されな かった。 〈底本〉 In the summer of that year the lady became very downcast. She repeatedly asked for leave to go to her home,but it was not granted.(p.9) 〈底本訳〉 その年の夏に、この女性はたいへん気分がすぐれなくなった。くりかえし里に行く許可を求めたが許 されない。 (p.19) 2)Orsi 訳 Nell'estate di quell'anno la Dama del Padiglione della Paulonia,sofferente per qualche malessere di cui non era chiara l'origine,chiese di poter fare ritorno nella propria famiglia,ma Sua Maestà non le accordò il permesso.(p.5) [訳し戻し] その年の夏、桐壺の更衣は原因不明の病気を患って、実家に帰ろうとしたが、帝はそれを許さなかっ た。 〈底本1/『日本古典文学全集』〉 その年の夏、御息所、はかなき心地にわづらひて、まかでなんとしたまふを、暇さらにゆるさせたま はず。 (p.97) 〈底本1/『日本古典文学全集』訳〉 その年の夏、若宮の母君の御息所は、なんとなく健康をそこねて、養生のため里に下がろうとするが、 帝はどうしてもお暇をお許しにならない。 〈底本 2/『新日本古典文学大系』〉 その年の夏、御息所、はかなき心ちにわづらひて、まかでなんとし給ふを、暇さらにゆるさせ給はず。 (p.7) ★★イタリア語訳の脚注★★ 該当の語に脚注はナシ。 7

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(2)儀礼・行動に関する語 「袴着」 《語の意味》男女児が初めて袴を着ける成人儀式。平安中期、公家に行われ、中世以降武家にも、また 近世(男児)には民間で行われることもあった。中古の公家では、三歳を主として通常六、七歳までに 行われた。(4-p.1035) 【原文】この御子三つになりたまふ年、御袴着のこと、一の宮のたてまつりしに劣らず、内蔵寮、納殿 の物を尽くして、いみじうせさせたまふ。 【現代語訳】この御子が三歳におなりの年、御袴着の儀式を、一宮が儀式でお召しになったものに劣ら ず、内蔵寮、納殿の物をあるだけ使って、盛大に行わせる。 ☆スペイン語☆ 1)Gutiérrez 訳 El joven príncipe cumplía entoces tres años.La ceremonia del hakamaghi se celebró con la misma solemnidad que para con el príncipe heredero.(p.14) [訳し戻し] 幼い王子はその時三歳になっていた。ハカマギの儀式は皇太子と同じ厳粛さをもって執り行なわれた。 素晴らしい贈り物が皇帝の王位そして公共広場から押し寄せた。 〈底本〉 The young prince was now three years old.The Putting on of the Trousers was performed with as much ceremony as in the case of the Heir Apparent. Marvellous gifts flowed from the Imperial Treasury and Tribute House. (p.8) 〈底本訳〉 若い皇子もいまや三歳である。袴着の儀式は第一の皇子の場合と同じように厳かにとりおこなわれた。 素晴らしい贈り物が天皇家の宝物殿や御物殿がふんだんに出された。(p.19) 2)Roca-Ferrer 訳 Cuando el príncipe cumplío tres años,el Tesoro imperial no ahorró nada para que la fiesta de sus primeras calzas resultase tan fastuosa como la que en su día se celebrara en honor del heredero aparente.(p.86) [訳し戻し] 王子が3歳になった時、皇室の国庫は彼の最初の長靴の祭りが明らかな後継者に敬意を表して彼の日 に行われた祭りと同じくらいきらびやかになるように何も惜しまなかった。 3)Fibla 訳 Cuando el niño tres años,tuvo lugar la ceremonia de la puesta de pantalones,tan impresionante como lo fuera en su día la del primogénito,y para la ocasión se reunieron todos los tesoros del Depósito de la Corte y los Almacenes Imperiales.(p.38) [訳し戻し] 8

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子供が3歳になった時、ズボンの着衣の儀式が催され、長子の儀式のときのように彼の日も堂々たる もので、この折には宮廷の倉庫と皇室の倉庫にある全ての宝が集められた。 〈底本〉 In the child’s third year his father gave him a donning of the trousers just as impressive as his firstborn’s,marshaling for the purpose all the treasures in the Court Repository and the Imperial Stores.(p.4) 〈底本訳〉 子どもが 3 歳になった年、彼の父は第一子の時と同じように彼に袴を与える儀式を行い、その目的の ために宮廷の倉庫と皇室の倉庫にある全ての財物が集められた。 4)ペルー版 El año en que el nuevo príncipe cumpliera tres,para la ceremonia de imposición de los faldones,el soberano-no menos que cuando lo hiciera el Primer Príncipe-ordenó un gran ceremonial que agotó los recursos del tesoro,al efectuarse con sumo boato.(p.36) [訳し戻し/非母語話者] 新しい王子が三歳になった年、長いスカートの授与の儀式のために、君主は―第一王子がそれをした 時に劣らず―盛大な祭式を命じ、とても豪華にとり行って資産は底をついた。 [訳し戻し/母語話者] 新御子は三歳になる年、帝、袴着の儀式の際、第一御子の時に劣らず、壮大な豪華さで行われた大い なる儀礼のため国庫を尽くした。 〈底本〉 この御子三つになりたまふ年、御袴着のこと、一の宮の奉りしに劣らず、内蔵寮納殿の物を尽くして、 いみじうせさせたまふ。 (p.97) 〈底本訳〉 この若宮が三歳におなりの年、御袴着の儀式を、さきに一の宮がご使用になったものに劣らぬように、 内蔵寮や納殿の財物をありたけ用いて、盛大にとり行なわせられる。 5)Ariel 訳 El año en que el segunda príncipe cumplió los tres,Su Majested le regaló un juego de pantalones en nada inferior al que tenía el primer príncipe, para lo cual utilizó hasta el último recurso de los Almacenes Imperiales y las Arcas del Tesoro Imperial. [訳し戻し] 第二王子が3歳になった年に、陛下は彼に第一王子が持っていたものよりも何ら劣ることのないズボ ンの一式を贈った。そのために皇室の倉庫と皇室の宝の金庫の最後の手段まで使った。 ☆☆スペイン語の脚注☆☆ 1)Gutiérrez 訳 6 O《posesión de calzas》,que señalaba el paso de la primera a la segunda infancia.Se celebraba generalmente cuando el niño cumplía los cinco años.(p.14) 注6.すなわち「長靴下の所有」であり、第一から第二幼少期への通過を示していた。一般的には子 9

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供が5歳になったときに行われた。 2)Roca-Ferrer 訳 31 La ceremonia llamada del hakama. 注 31.いわゆる袴の儀式。 (p.86) 3)Fibla 訳 脚注はナシ。 4)ペルー版 脚注はナシ。 5)Ariel 訳 脚注はナシ。 ★イタリア語訳★ 1)Motti 訳 Il giovane Principe avera adesso tre anni. L'Indossamento dei Calzoni fu celebrato con un cerimoniale come quello in uso perl'Erede Legittimo.(p.9) [訳し戻し] 若宮はもう三才となっていた。第一皇子の時に劣らぬように、ズボンの儀式が内蔵寮や納殿の宝物を 使い果たすほどに、大層盛大に催されました。 〈底本〉 The young prince was now three years old.The Putting on of the Trousers was performed with as much ceremony as in the case of the Heir Apparent. Marvellous gifts flowed from the Imperial Treasury and Tribute House. (p.8) 〈底本訳〉 若い皇子もいまや三歳である。袴着の儀式は第一の皇子の場合と同じように厳かにとりおこなわれた。 素晴らしい贈り物が天皇家の宝物殿や御物殿がふんだんに出された。(p.19) 2)Orsi 訳 Quando il Principino ebbe ter anni,in occasione della prima vestizione degli hakama furono messe a disposizione tutte le risorse del Tesono imperial e dai Magazzini de Corte per assicurargli una cerimonia fastosa,in nulla inferior a quella riservata al primogenitor.(p.5) [訳し戻し] 若宮が三才になった年、初めて袴を着る儀式は、長男の式に劣らないように、内蔵寮や納殿の財物を ふんだんに使い尽くして盛大に行われた。 〈底本1/『日本古典文学全集』〉 この御子三つになりたまふ年、御袴着のこと、一の宮の奉りしに劣らず、内蔵寮納殿の物を尽くして、 いみじうせさせたまふ。 (p.97) 〈底本1/『日本古典文学全集』訳〉 この若宮が三歳におなりの年、御袴着の儀式を、さきに一の宮がご使用になったものに劣らぬように、 内蔵寮や納殿の財物をありたけ用いて、盛大にとり行なわせられる。 〈底本 2/『新日本古典文学大系』〉 この御子三に成たまふ年、御袴着の事、一の宮のたてまつりしにおとらず、内蔵寮、おさめ殿の物を 尽くして、いみじうせさせ給ふ。 (p.7) 10

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★★イタリア語訳の脚注★★ 1)Motti 訳 脚注はナシ 2)Orsi 訳 7 Hakama:cfr.Glossario. (3)場所(役所・国も含む) ・家屋 「雲居」 《語の意味》 〔1〕雲のかかっているところ。天空。 〔2〕雲に同じ。静止している雲にも、わき起こりつ つある雲にもいう。 〔3〕雲のかかっている遠方。 〔4〕皇居。宮中。皇居を大空にたとえて、はるかに仰 ぎ見ることからいう。平安時代以後見える。〔5〕皇居のある地。みやこ。 (2-p.238) 【原文】わざとの御学問はさるものにて、琴、笛の音にも雲居を響かし、すべて言ひ続けば、ことごと しう、うたてぞなりぬべき人の御さまなりける。 【現代語訳】経書類や漢詩文をつくるという学問は申すにおよばず、琴、笛の音にも宮中を驚嘆させ、 そのほか一つ一つ数えあげていくと、大げさで嫌になるようなご様子であった。 1)Gutiérrez 訳 A través de sus estudios le oyeron bien pronto lanzar hacia las nubes los sones de su koto y de su flauta. Pero si se continuaran describiendo todas las perfecciones de este pequeño personaje,no tardarían en cansar.(p.24) [訳し戻し] 彼の勉学を介して、彼がすぐに雲に向けてコトと笛の音を発しているのを聞いた。しかし、もしこの 小さい重要人物の全ての長所を描写し続けたら、すぐに疲れてしまうだろう。 〈底本〉 As for his serious studies,he soon learnt to send the sounds of zither and flute flying gaily to the clouds. But if I were to tell you of all his accomplishments,you would think that he was soon going to become a bore.(p.15) 〈底本訳〉 まじめな学問について言えば、すぐに琴や笛の音を華やかに雲にまで飛ばすようになった。だか、も し私かその才能のすべてを語ったら、この少年はすぐにうんざりするような人間になってしまう、とあ なた方は思うだろう。 (p.34) 2)Roca-Ferrer 訳 該当部分なし 3)Fibla 訳 Se aplicaba a los estudios formales de una manera natural, pero también hacía que los cielos resonaran con la música de los instrumentos de cuerda y de la flauta. De hecho,si tuviera que relacionar todo aquello en lo que descollaba, tan sólo lograría hacer que pareciera absurdo.(p.48) [訳し戻し] 自然と正式な学業にも精を出したが、天を弦楽器と横笛の音楽で鳴り響かせた。実際、もし傑出して 11

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いること全てを表にしなければならないとすれば、馬鹿馬鹿しく思わせるようになるだけであろう。 〈底本〉 Naturally he applied himself to formal scholarship,but he also set the heavens ringing with the music of strings and flute. In fact,if I were to list all the things at which he excelled,I would only succeed in making him sound absurd. (p.12) 〈底本訳〉 自然と正式な学問にも専念したが、彼は弦楽器と笛の音楽で天を鳴り響かせた。事実、もし彼が飛び 抜けて優れていることを全て記録するならば、私は彼を馬鹿げた感じに思わせるだけになるだろう。 4)ペルー版 No requiero hablar de los logros del príncipe menor en las materias de estudio obligatorio,si de música se trataba, sus tonos de flauta y koto hacían eco en los cielos,suscitando el asombro de todo el palacio,mas si todo el recuento hiciera parecería exagerado.(p.49) [訳し戻し/非母語話者] 義務的な学問の科目において幼い王子の成果を話す必要はない。もし音楽となれば、彼の笛とコトの 音色は空に響き、宮廷中の驚嘆を呼び起こすのだが、全てこれらを数え上げれば、大げさに思えるだろ う。 [訳し戻し/母語話者] 御子の必修科目に功績を別に置いて、音楽のことだったら、笛とコトの音色は空にも響かせ、宮殿中 に驚きを招きながら、すべてを語ると誇張が過ぎると思われる。 〈底本〉 わざとの御学問はさるものにて、琴笛の音にも雲ゐをひびかし、すべて言ひつづけば、ことごとしう、 うたてぞなりぬべき人の御さまなりける。 (p.115) 〈底本訳〉 表向きの学問は申すに及ばず、琴、笛の音にも、宮中をあげて驚嘆させ、そのほか一つ一つ数えたてて いくと、大げさすぎていやになってしまうようなご様子だったのである。 5)Ariel 訳 Como era de esperarse,brilló en sus estudios de los clásicos en chino,y también el sonido de su arpa y su flauta hacían resonar las nubes,y si continuara contando todas sus virtudas terminaría por parecer una persona que exagera de forma desagradable. [訳し戻し] 期待されていたように、中国語の古典の勉学においても輝き、また彼のハープと笛の音は雲を鳴り響 かせ、もし全ての彼の長所を語り続ければ、不快な方法で誇張した人のように思われて終わるだろうに。 ☆☆スペイン語訳の脚注☆☆ 1)Gutiérrez 訳 脚注はナシ。 2)Roca-Ferrer 訳 脚注はナシ。 3)Fibla 訳 脚注はナシ。 4)ペルー版 脚注はナシ。 12

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5)Ariel 訳 56 La corte, La expresión “las nubes” (kumoi) es una forma convencional de referirse al palacio imperial “Hacían resonar las nubes” (kumoi wo hibikashi)significa entonces “le ganaron excelente reputación en la sociedad cortesana”. 注 56.宮殿。 「雲」 (クモイ)という表現は皇居に言及する一つの慣習的な形である。 「雲を共鳴させる」 (クモイヲヒビカシ)はそれでは「宮廷社会で素晴らしい名声を得る」ことを意味する。 ★イタリア語訳★ 1)Motti 訳 Quanto agli studi seri,egli presto imparò a sprigionare verso le nuvole in un gaio volo le note della cetra e del flauto. Ma se dovessi descrivervi tutte le sue perfezioni,pensereste che sarebbe diventato presto un seccatore.(p.19) [訳し戻し] 正式の学問に関していうと、あっという間に琴や笛を完璧に操るようになった。しかし、彼が優れて いることを一つひとつ挙げると、大げさすぎて嫌いになってしまうのかもしれないので、やめておこう。 〈底本〉 As for his serious studies,he soon learnt to send the sounds of zither and flute flying gaily to the clouds. But if I were to tell you of all his accomplishments,you would think that he was soon going to become a bore.(p.15) 〈底本訳〉 まじめな学問について言えば、すぐに琴や笛の音を華やかに雲にまで飛ばすようになった。だか、も し私かその才能のすべてを語ったら、この少年はすぐにうんざりするような人間になってしまう、とあ なた方は思うだろう。 (p.34) ※本文の「nuvole」は雲という意味であるが、訳し戻しにはこの語がない。 2)Orsi 訳 Inutile parlare dei suoi progressi negli studi; anche la sua abilità nel suonare il koto e il flauto era tale da stupire perfino gli abitanti delle nuvole, ma se dovessi enumerare una per una tutte le sue qualità , gli elogi suonerebbero esagerati e in fin dei conti fastidiosi.(p.14) [訳し戻し] 学問にも優れていたことは言うまでもなく、琴や笛を操る才能も、雲の上の人を驚かせるほどだった が、それを一つ一つ挙げていくと、大げさすぎて嫌いになってしまうのかもしれない。 〈底本1/『日本古典文学全集』〉 わざとの御学問はさるものにて、琴笛の音にも雲ゐをひびかし、すべて言ひつづけば、ことごとしう、 うたてぞなりぬべき人の御さまなりける。 (p.115) 〈底本1/『日本古典文学全集』訳〉 表向きの学問は申すに及ばず、琴、笛の音にも、宮中をあげて驚嘆させ、そのほか一つ一つ数えたて ていくと、大げさすぎていやになってしまうようなご様子だったのである。 〈底本 2/『新日本古典文学大系』〉 13

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わざとの御学問はさる物にて、琴、笛の音にも雲居を響かし、すべて言ひつゞけばこと/\しう、う たてぞ成ぬべき人の御さま成ける。 (p.19) ★★イタリア語訳の脚注★★ 1 Motti 訳 脚注はナシ 2 Orsi 訳 Koto:cfr.Glossario. (4)調度・乗り物・書画・色など 「輦車」 《語の意味》人が手で移動させる乗用の車。輦(れん)の両側に車輪を付けたもので、前後の轅(なが え)に、ふつう十二人の官人がつく。屋形部の形態は、用途によりさまざまである。摂関や功績のあっ た大臣、老齢の高僧、内親王・女御などの高貴な女性の内裏への出入りに、特別の宣旨によって許され るもの。(4-p.532) ※別紙 2 にある絵を参照されたい。 【原文】輦車(てぐるま)の宣旨などのたまはせても、また入らせたまひて、さらにえゆるさせたまは ず。 【現代語訳】輦車をお許しになる宣旨などを仰せ出されてからも、また更衣の部屋にお入りになっては、 どうしても彼女の退出をお許しになれない。 ☆スペイン語訳☆ 1)Gutiérrez 訳 Apesadumbrado y perplejo,pidió una camilla para transportarla.(p.14) [訳し戻し] 苦しんで、困惑して、彼女を運ぶための担架を頼んだ。 〈底本〉 In great trouble and perplexity he sent for a hand litter.(p.9) 〈底本訳〉 とても心配し、困惑しながら輦車の用意をさせた。(p.20) 2)Roca-Ferrer 訳 El emperador ordenó que se le concediera el honor de una litera y cuatro porteadores para el translado,pero,en cuanto todo estuvo ya a punto para el viaje,volvió una vez más al aposento de la dama.(p.87) [訳し戻し] 皇帝は移動のために輿と4人の運搬人の栄誉を彼女に授けるよう命じたが、すべてがもう移動の準備 ができた途端に、もう一度貴婦人の部屋に戻った。 3)Fibla 訳 14

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Incluso tras haber firmado un decreto que concedía a la dama el privilegio de un carruaje tirado por sirvientes, entró de nuevo en el aposento de ella,incapaz de permitir que se marchara.(p.39) [訳し戻し] 召使によって引かれる車を使う特権を貴婦人に与える命令に署名した後でさえも、再び彼女の部屋に 入り、彼女が去るのを許すことができなった。 〈底本〉 Even after issuing a decree to allow her the privilege of a hand carriage, he went in to her again and could not bring himself to let her go.(p.5) 〈底本訳〉 彼女に輦車を使うことを許可するように命令をした後でさえも、彼はもう一度彼女の所に行き、退出 するのを許すことができなかった。 4)ペルー版 E incluso cuando queriendo ayudarla finalmente ordenara que la portasan en palanquin, sin pausa, hasta su casa,de retorno en su alcoba él no pudo resolverse a acordarle el cese.(p.36) [訳し戻し/非母語話者] そして彼女を助けたくて休まずに家まで籠で彼女を家まで運ぶように命じた時でさえも、彼女の寝室 に戻ると彼はそれを中止することを決心できなかった。 [訳し戻し/母語話者] ついに、彼女を助けようとしたときも、手車で、休憩なく家まで送るのを命令したさえ、部屋に戻っ た途端、暇を許す決心も付けなくなった。 〈底本〉 輦車の宣旨などのたまはせても、また入らせたまひて、さらにえゆるさせたまはず。(p.98) 〈底本訳〉 輦車をお許しになる宣旨などを仰せ出されてからも、またお部屋におはいりになっては、どうしても 退出をお許しになれない。 5)Ariel 訳 Ordeńo que se le concediera el privilegio de montar en un palanquin, en contro del reglamento,entró en su habitación,(pues)no le resultaba posible dejarla ir. [訳し戻し] 彼女に輿に乗る特権を与えるように命じた。規則に反して彼女の部屋に入った。だから彼女を行かせ ることはできなくなった。 ☆☆スペイン語訳の脚注☆☆ 1)Gutiérrez 訳 脚注はナシ。 2)Roca-Ferrer 訳 脚注はナシ。 3)Fibla 訳 脚注はナシ。 4)ペルー版 脚注はナシ。 5)Ariel 訳 15

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9 Un privilegio reservado a nobles de muy alto rango, y por tanto otra excepción en favor de su Concubina. 注9 とても高い位の貴族専用の特権でそれゆえ彼の内縁の妻のひいきの強調された別の例である。 ★イタリア語訳★ 1)Motti 訳 Molto turbato e smarrito,mandò per una portantina. Ma quando fecero per deporvela,egli lo vietò,dicendo:(p.10) [訳し戻し] 帝はひどく動揺していたが、輦車が来るように手配をした。しかし、更衣が輦車に乗ろうとしていた ときに、それを許さず、次のように話した 〈底本〉 Apesadumbrado y perplejo,pidió una camilla para transportarla.(p.9) 〈底本訳〉 とても心配し、困惑しながら輦車の用意をさせた。(p.20) 2)Orsi 訳 Diede ordine che le venisse concesso l’onore di un palanchino, ma quando rientrò nelle stanze della dama ancora non riuscí a rassegnarsi a lasciarla partire.(p.6) [訳し戻し] 出発のときに輦車を出すように命令をしたが、更衣の部屋を再び訪れた際に、やはり行かないでほし いと嘆く。 〈底本1/『日本古典文学全集』〉 輦車の宣旨などのたまはせても、また入らせたまひて、さらにえゆるさせたまはず。(p.98) 〈底本1/『日本古典文学全集』訳〉 輦車をお許しになる宣旨などを仰せ出されてからも、またお部屋におはいりになっては、どうしても 退出をお許しになれない。 〈底本 2/『新日本古典文学大系』〉 手車の宣旨などのたまはせても、また入らせ給ひて、さらにえゆるさせ給はず。 (p.8) ★★イタリア語訳の脚注★★ 該当の語についての脚注はナシ (5)動物(昆虫を含む)に関する語 「鈴虫」 《語の意味》(1)松虫(まつむし)の古称。季語、秋。(2)直翅目こおろぎ科の昆虫。草原・土手・ 石垣などにすむ。体長は約二センチメートル。頭は小さく、体は平たい卵形で、黒く、形も色も水瓜の 種に似るといわれる。触角は細くて非常に長い。秋に「リーンリーン」と鳴く。漢名は金撞児、月鈴児。 中古・中世の文学作品に「すずむし」と見えるものは今の松虫で、「まつむし」と見えるものが今の鈴 虫である(古今要覧稿、松虫鈴虫考) (以下略、3-p.464) 16

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また、『日本大百科全書』(ジャパンナレッジ出典)によると、鈴虫は「スズムシ科」、松虫は「マツ ムシ科」に属しているが、どちらも「コオロギ類」の 1 種であるとしている。 ※別紙 3(コトバンク「ツヅレサセコオロギ」の項目にある「コオロギのおもな種類(標本画)」)を参 照されたい。 https://kotobank.jp/word/ツヅレサセコオロギ-1564683 【原文】鈴虫の声の限りを尽くしても長き夜あかずふる涙かな 【現代語訳】鈴虫のように声の限りを尽くして泣いても、秋の長い夜があけないくらい涙が流れていく ことよ ☆スペイン語訳☆ 1)Gutiérrez 訳 Sin descanso,como la voz eterna de los grillos reales, hasta el amanecer, toda la noche,he llorado. (p.20) [訳し戻し] 休みもなく、本当のコオロギの永遠の声のように、夜が明けるまで、私は泣いた。 〈底本〉 Ceaseless as the interminable voices of bell-cricket, all night till dawn my tears flow.(p.12) 〈底本訳〉 鈴虫のやむことのなし鳴き声のようにたえまなく、夜明けまでひと晩じゅう私の涙は流れる(p.28) 2)Roca-Ferrer 訳 La noche de otoño es demasiado breve para contener todas mis lágrimas por más que el canto de grillo insista en romper el silencio.(p.91) [訳し戻し] 秋の夜は全ての私の涙をこらえるにはあまりに短い。どんなにコオロギの鳴き声が沈黙を破ることに 固執しようとも。 3)Fibla 訳 Los grillos cascabel pueden cantar hasta cansarse,mas en mi caso no así,pues durante la noche interminable mis lágrimas caerán ensin los cesar.(p.45) [訳し戻し] 鈴のコオロギは疲れるまで泣くことができる。しかし私の場合はそうではない。終わらない夜の間、 私の涙は止まることなく落ちるだろうから。 〈底本〉 Bell crickets may cry until they can cry no more,but not so for me,for all though the endless night may tears will fall on and on. (p.9) 〈底本訳〉 鈴のコオロギはこれ以上泣くことができなくなるまで泣くだろう。しかし私にとってはそうではない。 17

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終わるのない夜の間、私の涙は止まることなく落ちるだろうから。 4)ペルー版 Si afanarme yo debiera,igual que el grillo-campana,con mi más fuerte quejido,noche otoñal no bastara para terminar mi lloro.(p.43) [訳し戻し/非母語話者] もし私が鈴虫の鳴き声と同様に私の一番強いうめき声をもって精一杯頑張らないといけないなら、秋 の夜は私の涙を止めるには十分ではないだろうに。 [訳し戻し/母語話者] 鈴虫のように いそしむなら より高くむせび入って 鳴き声収まるまで 秋のよる程の足りない と、 〈底本〉 鈴虫の声の限りを尽くしても長き夜あかずふる涙かな(p.108) 〈底本訳〉 鈴虫の……(あの鈴虫のように声の限りをしぼって泣きつくしても、涙は尽きず、秋の夜長も足りな いくらいに、とめどなくこぼれる涙ですこと) 5)Ariel 訳 La larga noche en que los grillos cantan,como campanillas,hasta quedarase sin voz,me resulta insuficiente para llorar todas mis lágrimas. [訳し戻し] コオロギが鈴のように声が無くなるまで鳴く長い夜、私の涙を全て流すためには十分ではない。 ☆☆スペイン語訳の脚注☆☆ 1)Gutiérrez 訳 脚注はナシ 2)Roca-Ferrer 訳 脚注はナシ 3)Fibla 訳 脚注はナシ 4)ペルー版 19 El grillo era llamado suzumushi(grillo‐sonaja).La palabra vinculada,engo fulu,significa 《derramar láglimas como lluvia》y también 《agitar la ampanilla el grillo(suzumushi) 》 (p.43) 注 19 そのコオロギは鈴虫(鈴のついたコオロギ)と呼ばれていた。つながれた言葉 engo furu は「涙 を雨のように降らす」で、また、 「鈴のコオロギ(鈴虫)を揺らす」を意味する。 5)Ariel 訳 35 “Grillo” (suzumushi)es un juego de palabras con “campana” (suzu)Furu significa “llorar”,y tambien “agitar”.En este último sentido,suzu y furu son palabras asociadas(engo). 注 35 コオロギ(スズムシ)は「鈴」 (スズ)との言葉遊び。フルは「泣く」、また「振る」を意味する。 この最後の意味ではスズとフルは結びついた言葉である(縁語) 。 ★イタリア語訳★ 1)Motti 訳 recitò la poesia che dice:《Ininterrotte come le incessanti voci dei garruli grilli,tutta la notte sino 18

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all'alba scorrono le mie lacrime》.(p.15) [訳し戻し] 鈴虫の声が一晩中絶えず響き渡ると同じように、夜が明けても私の涙が止まらない 〈底本〉 Ceaseless as the interminable voices of bell-cricket, all night till dawn my tears flow. (p.12) 〈底本訳〉 鈴虫のやむことのなし鳴き声のようにたえまなく、夜明けまでひと晩じゅう私の涙は流れる(p.28) 2)Orsi 訳 Dovessi pure come que grilli consumare la mia voce nel pianto la lunga notte d'autunno non sarebbe sufficiente per le mie lacrime.(p.10) [訳し戻し] 鈴虫と同じように、声がある限り 一晩中泣いたとしても 私のすべての涙を流すには 長い秋の夜 も短すぎるでしょう 〈底本1/『日本古典文学全集』〉 鈴虫の声の限りを尽くしても長き夜あかずふる涙かな(p.108) 〈底本1/『日本古典文学全集』訳〉 鈴虫の……(あの鈴虫のように声の限りをしぼって泣きつくしても、涙は尽きず、秋の夜長も足りな いくらいに、とめどなくこぼれる涙ですこと) 〈底本 2/『新日本古典文学大系』〉 鈴虫の声の限りを尽くしても長き夜あかずふる涙かな(p.14) ★★イタリア語訳の脚注★★該当部分の脚注はナシ (6)植物に関する語 「紅葉」 《語の意味》草木の葉が寒さや雨・露・霜などによって黄や赤に変色すること。また、その変色し た葉。 『万葉集』では大部分が、 「黄葉」の文字を使い、萩などについていうことが多い。中世以後、 楓(かへで)の紅葉を代表とするようになる。春の花と対応的に表現されることも多い。 (5- p.679) 【原文】はかなき花、紅葉につけても心ざしを見えたてまつる。 【現代語訳】 (源氏は)ちょっとした春の花、秋の紅葉にことつけてお気持ちを表わされる。 ☆スペイン語訳 1)Gutiérrez 訳 Y fue así como,a esta edad tan tierna,la belleza efímera,como las flores y las numerosas hojas de tomó posión de sus pensamientos.(p.27) [訳し戻し] そしてこのように、このくらいあまりに若い年齢で、花や秋の多くの葉のようにはかない美しさは彼 19

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の思考に取りついた。 〈底本〉And so ,young though he was,fleeting beauty took its hold upon his thought; he felt his first clear predilection.(p.17) 〈底本訳〉そしてこのようにして、まだ幼かったとはいえ源氏の想いを、はかない美しさが捉えてしま った。 (p.38) ※底本には「紅葉」に該当すると思われる語がない。 2)Roca-Ferrer 訳 該当部分ナシ 3)Fibla 訳 Así pues,Genji no perdía ninguna ocasión ofrecida por una florecilla o una hoja otoñal para hacer saber a la muchacha lo mucho que le gustaba.(p.50) [訳し戻し] したがって、ゲンジはその女の子にどのくらい自分が好きかを知らせるために花あるいは秋の葉によ って差し出されたどの機会をも逃さなかった。 〈底本〉 Genji therefore lost no chance offered by the least flower or autumn leaf to let her know in his childish way how much he liked her.(p.15) 〈底本訳〉 源氏はしたがって、彼女をどれほど好きであるか幼稚な方法で彼女に知らせるために、少なくとも 花や秋の葉を渡す機会を失っていなかった。 4)ペルー版 El afecto de Genji por la nueva dama se acrecentó , y la flor más ordinariao una hoja descolorida se tornaron ocasión para expresarlo.(p.54) [訳し戻し/非母語話者] ゲンジのその新しい貴婦人に対する愛情は増して、どんなありふれた花や色あせた葉もそれを示すた めの機会に変わった。 [訳し戻し/母語話者] 新しい方へのゲンジの気持ちは増すばかり、極ありふれた花でも色あせた一葉でもその気持ちを表す きっかけとなった。 〈底本〉 幼心地にも、はかなき花紅葉につけても心ざしを見えたてまつる。(p.120) 〈底本訳〉 源氏の君は、幼心にも、この宮に対してちょっとした春の花、秋の紅葉につけても、お慕いしている 気持をお見知りいただくようになさる。 5)Ariel 訳 Genji utilizaba cada trivial flor u hoja de otoño para mostrarle su afecto. [訳し戻し] 20

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(ゲンジは)それぞれの取るに取らない花や秋の葉を彼の愛情を彼女に見せるために使っていた。 ☆☆スペイン語訳の脚注☆☆ 脚注はナシ。 ★イタリア語訳★ 1)Motti 訳 E cosí,pur essendo tanto giovane,I'effimera bellezza s'impose ai suoi pensieri;per la prima volta egli sentí una palase predilezione.(p.22) [訳し戻し] このように、まだ幼い源氏の君の心の中に、初めて特別な感情が湧き始めた。 〈底本〉 And so ,young though he was,fleeting beauty took its hold upon his thought; he felt his first clear predilection.(p.17) 〈底本訳〉 そしてこのようにして、まだ幼かったとはいえ源氏の想いを、はかない美しさが捉えてしまった。 (p.38) ※該当する語がない。 2)Orsi 訳 Il giovane Signore d'altronde,nella sua infantile innocenza,coglieva ogni occasione,anche la piú banale-i fiori di ciliegio in primavera,le foglie rosse d'autunno-per manifestarle i propri sentimenti. (p.17) [訳し戻し] 若宮は、子供心に、どんなときでも口実を作って―例えば春の桜や秋の紅葉など―藤壺に自分の愛情 を伝えていた。 〈底本1/『日本古典文学全集』〉 幼心地にも、はかなき花紅葉につけても心ざしを見えたてまつる。(p.120) 〈底本1/『日本古典文学全集』訳〉 源氏の君は、幼心にも、この宮に対してちょっとした春の花、秋の紅葉につけても、お慕いしている 気持をお見知りいただくようになさる。 〈底本 2/『新日本古典文学大系』〉 おさなごこちにも、はかなき花紅葉につけても心ざしを見えたてまつる。(p.23) ★★イタリア語訳の脚注★★ 脚注はナシ (7)気象・時間・空間に関する語 「夕月夜」 《語の意味》夕方に出る月。夕月(ゆふづき)。夕暮れに月の出ている空。また、そのころ。 (5-p.804) 【原文】夕月夜のをかしきほどに、出だし立てさせたまひて、やがてながめおはします。 21

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【現代語訳】夕月の美しいころに、靫負命婦を出立させなさって、帝はそのまま物思いにふけっておい でになる。 ☆スペイン語訳☆ 1)Gutiérrez 訳 Era en un tiempo de luna magnífica.A la partida de la mensajera dejó el Emperador transcurrir su tiempo contemplando la noche.(p.16) [訳し戻し]月が素晴らしい時であった。使者の出発の際、皇帝は夜思いにふけって時を過ごした。 〈底本〉 It was beautiful moonlit weather ,and after he had despatched the messenger he lingered for a while gazing out into the night. (p.10) 〈底本訳〉 美しく月の照る空模様で、使いを送ったあとでしばらくのあいだなごり惜しそうに夜を見つめていた。 (p.23) 2)Roca-Ferrer 訳 該当部分ナシ 3)Fibla 訳 Al anochecer(中略)cuando ella hubo partido bajo una hermosa luna crepuscular,se sumió nuevo en de sus ensoñaciones.(p.42) [訳し戻し] その後、彼女が黄昏時の美しい月の下出発した時、再び自分の夢想にひたった。 〈底本〉 At dusk(中略),then,after she had left under a beautiful evening moon,he lapsed again into reverie. (p.7) 〈底本訳〉 それから、彼女が夕暮れ時の美しい月の下出発した後、彼はふたたび空想に浸った。 4)ペルー版 A la mágica hora de la luna del anochecer,la envió a aquel lugar. Y tornó a sus remembranzas. (p.39) [訳し戻し/非母語話者] 日暮れの月のうっとりするような時間に彼女をあの場所に遣わせた。 [訳し戻し/母語話者] 宵の月の魅惑な頃おいにあの所まで送りました。またその思い出に戻った。 〈底本〉 夕月夜のをかしきほどに、出だし立てさせたまひて、やがてながめおはします。 (p.102) 〈底本訳〉 夕月の美しいころに、命婦を出しておやりになって、ご自身はそのままもの思いにふけっておいでに なる。 22

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5)Ariel 訳 La hizo partir por la noche,bajo una espléndida luna,que se quedó contemplando abstraído en sus pensamientos. [訳し戻し] 夜に見事な月の下に彼女を出発させて、思いにふけって月を見つめていた。 ☆☆スペイン語訳の脚注☆☆ 1)Gutiérrez 訳 脚注はナシ。 2)Roca-Ferrer 訳 脚注はナシ。 3)Fibla 訳 19 Yûzukuyo,la《luna crepusculara 》que se cierne en el cielo al anochecer hasta el décimo diá del mes lunar.(p.42) 注 19.夕月夜つまり太陰月で 10 日目まで日暮れの時に空に留まる「夕暮れ時の月」 。 4)ペルー版 脚注はナシ。 5)Ariel 訳 脚注はナシ。 ★イタリア語訳★ 1)Motti 訳 C'era un bel chiaro di luna,e dopo aver congedato la messaggera egli indugiò un istante a contemplare la notte.(p.12) [訳し戻し] その夜、月は明るく辺り一面を照らしていたが、帝はお使いの女性を見送ってからしばらくの間その 光景を眺めた。 〈底本〉It was beautiful moonlit weather ,and after he had despatched the messenger he lingered for a while gazing out into the night.(p.10) 〈底本訳〉美しく月の照る空模様で、使いを送ったあとでしばらくのあいだなごり惜しそうに夜を見つ めていた。 (p.23) 2)Orsi 訳 Era una dolce notte illuminata dalla luna sorte al tramontare del giorno ,e dopo aver congedato la donna egli sprofondò nei suoi pensieri.(p.8) [訳し戻し] 現れたばかりの月に優しく照らされていた夕焼け空の美しい夜だったが、その女性を送り出してから、 帝はぼんやりと思いを巡らしていた。 〈底本1/『日本古典文学全集』〉 夕月夜のをかしきほどに、出だし立てさせたまひて、やがてながめおはします。 (p.102) 〈底本1/『日本古典文学全集』訳〉 夕月の美しいころに、命婦を出しておやりになって、ご自身はそのままもの思いにふけっておいでに なる。 23

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〈底本 2/『新日本古典文学大系』〉 夕附夜のおかしき程に、出し立てさせ給て、やがてながめをはします。 (p.10) ★★イタリア語訳の脚注★★ 脚注はナシ おわりに 今回はスペイン語とイタリア語にしぼり、特定の語を抽出してみた。第 3 回(2014 年6月)での反省もふ まえ、底本が判明している本についてはその底本と訳をあげている。時間の関係上、ほんの一部しか扱う事 ができなかったが、重訳が多い中で古典から翻訳されている本の存在が貴重であると感じた。今後は今回の ことをふまえて、 『源氏物語』をはじめとする平安文学が海外にどのように受容されているかについて、さら に見ていきたい。 最後に今回の研究会にあわせて、スペインでの平安文学事情について清水憲男先生にお話をお聞きしたの で紹介しておく。氏によれば、スペインでの平安文学研究は比較的初期の段階と言えるが、ここ 30 年くらい の間に、翻訳された古典文学が続々と出版されているとのことである。ただし、基本的には重訳が多いとい う特徴がある。スペインにおける平安文学を翻訳したもので最古のものは、1933 年に『日本の伝説と物語』 と題する書に収録された『竹取物語』であり、翻訳者はドミニコ宣教師会である。スペインで近年に翻訳さ れたものでは、今回の研究会でも取り上げた Jordi Fibla と Xavier Roca-Ferrer による『源氏物語』が著名 で、出版の際は大きく新聞に掲載された。 『源氏物語』以外の作品で言えば、1977 年と 1988 年には Antonio Cabezas による『伊勢物語』が出版 されており、これは古典からの訳である。また、2004 年にアルゼンチンの文豪である故ボルヘスと夫人のマ リア・コダマによる『枕草子』の翻訳が、マドリードの大手出版社から出版され、スペイン人の読者の間で 広まっている本とのことである。ちなみにこの本はフランス語訳からの重訳である。また、同年と翌年には Carlos Rubio により、『竹取物語』と『古今和歌集』の翻訳が出版されている。 一方、読者層に目を向けた場合は平均的なレベルが高くない反面で、日本とは破格の教養人がおり、そう いった人々が日本文学や日本文化を享受するとのことである。母語以外の多言語を駆使しながら自分の美学 の一部として追求して取り入れているという感覚でいるので、あえて作品が母語で翻訳されていることにこ だわらないとしている。 以上 24