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May 23, 25
スライド概要
2025/05/21 マイクロソフトゲーム開発者会議2025
Microsoft MVP for Microsoft Azure
バンダイナムコスタジオにおける FinOpsプラットフォームエンジニアリングとGitHub Copilot導入推進の取り組み 株式会社バンダイナムコスタジオ 八重樫 剛史 Takeshi Yaegashi 2025/05/21
自己紹介 • 名前: 八重樫 剛史 Takeshi Yaegashi • 組織: 株式会社バンダイナムコスタジオ (BNS) • 部署: テックスタジオ 第1グループ オンラインテクノロージ部 基盤ソリューション課 • 肩書: テクニカルディレクター • 社内開発者向けのクラウドサービス導入推進 プラットフォームエンジニアリングのプロジェクトに従事 • Microsoft MVP for Microsoft Azure (2023, 2024) https://mvp.microsoft.com/ja-jp/PublicProfile/5005134 • CEDEC 2020-2024 5回登壇 • 2025の公募は落ちました 2
本日のお話 • FinOps プラットフォームエンジニアリング • バンダイナムコスタジオにおける FinOps の現状 • FinOps の初期段階としてのプラットフォームエンジニアリングの実践 • クラウドサービスビリングシステムの開発 • GitHub Copilot 導入推進 • クラウドサービスビリングシステムの活用 • 6月から始まる GitHub Copilot Premium Requests のビリング対応 [1] https://www.finops.org/framework/phases/ 3
FinOps とは? • FinOps の定義 • クラウド利用のコストと価値を最適化するためのフレームワークおよび文化的実践 • エンジニアリング・財務・ビジネス・経営など各部門のチームが協働して推進する • 業界団体: FinOps Foundation [1] • 参考書籍: クラウドFinOps 第2版 [2] • FinOps の3段階 [3] • Inform (可視化) – クラウドコストの見える化と正確な割り当て • Optimize (最適化) – リソース最適化や無駄削減によるコスト最適化 • Operate (運用) – ガバナンスと継続的改善による持続的な運用最適化 [1] https://www.finops.org/ [2] https://www.oreilly.co.jp/books/9784814401086/ [3] https://www.finops.org/framework/phases/ 4
FinOps プラットフォームエンジニアリング • バンダイナムコスタジオにおけるFinOps • FinOps はプラットフォームエンジニアリングプロジェクトからのボトムアップな取り組みとして始まったばかり • クラウドサービス支出の増大とオーナーシップの不在が問題視されているらしいという背景がある • バンダイナムコスタジオのプラットフォームエンジニアリング視点からのFinOpsのねらい • クラウドサービス利用のゴールデンパスを整備し、さらなるクラウドサービスの活用を推進する → 一般的なプラットフォームエンジニアリング • クラウドサービス支出の可視化と配賦のシステムを整備し、オーナーシップを定めて効果の測定と改善を可能にする → FinOpsにつながるプラットフォームエンジニアリング • 財務・ビジネス・経営層などのステークホルダーに情報を提供し、さらなるクラウドサービス投資の決断を促す → FinOpsの文化の醸成と実践を実現 5
FY2024 までの Azure クラウドサービスビリング • Azure EA契約の多数のAzureサブスクリプションに計上される様々なクラウドサービス利用料金を 単一の「クラウド開発推進」予算でまかなっていた 6
FY2025 からの Azure クラウドサービスビリング • サービスの利用者である会社・部署・プロジェクトをビリングアカウントとして、 利用料金請求を適切に配賦できるような集計・レポートのシステムを構築した 7
クラウドサービスビリング: アーキテクチャの概要 8
クラウドサービスビリング: アーキテクチャの説明 • 使用プラットフォーム • Microsoft Azure: Blob Storage, SQL Server, Logic Apps • Microsoft 365: SharePoint Sites, Lists, Forms, Copilot • Power Platform: Power Apps • GitHub Enterprise: Repository, Actions, Codespaces, Copilot • システム開発のポイント • エンジニア3名のプロジェクトで、複雑な Web アプリ開発を回避し SaaS・PaaS を活用することで工数を削減 • Microsoft Entra ID・Microsoft 365・SharePoint Online の機能研究 • ステークホルダー (システム管理者や経理部門担当者) との連携、インフラ運用体制とドメイン知識の理解 • GitHub Copilot および Microsoft 365 Copilot による支援が非常に役に立った 9
SharePoint Lists・Forms による集計・配賦設定の入力 • Azure サブスクリプションや Azure DevOps 組織 などサービスごとの費用計上先(ビリングコード) を SharePoint Lists で保持する • Lists Form によりユーザーから申請を受け付ける → Power Apps アプリで置き換え予定 10
ビリングアカウント向けレポートの出力・公開 • 請求月ごとにSharePointフォルダを作成 • Logic Apps を使って各ビリングアカウント 向けのレポートExcelファイルを出力 2025年4月のフォルダ • 各ファイルはビリングアカウントが指定した Microsoft Entra IDグループのユーザーのみが 閲覧可能に設定 11
ビリングアカウント向けレポート (Excelファイル) の内容 • サービスごとの金額と利用者がわかる明細を出力 Azure DevOpsやGitHubなど個別SaaSビリングAPIによる利用実績、EA契約価格表も反映している 12
GitHub Copilot Premium Requests • 06/04(水) Premium Requests 開始 • 無料枠を含む基本料金 + 超過分の料金の従量課金 • ChatやEditなどを使用するたびに1リクエストを消費 • リクエスト単価 $0.04 モデルごとに乗数が設定 [1] https://docs.github.com/en/enterprise-cloud@latest/copilot/about-github-copilot/plans-for-github-copilot [2] https://docs.github.com/en/enterprise-cloud@latest/copilot/managing-copilot/monitoring-usage-and-entitlements/about-premium-requests 13
GitHub Copilot Premium Requests ビリング対応 • Premium Requests 利用実績はすでに取得可能になっている[1] • ユーザーごとの利用実績をCSVファイルとして出力・ダウンロード可能 • 06/04(水)まではどのモデルを使っても無料 • BNSクラウドサービスビリングもPremium Requestsに対応予定 • ユーザーごとの Premium Requests 超過利用料金を集計し、所属部署の費 用として計上する (Azureサブスクリプションに計上 → 所属部署に配賦) • Excel ファイルのレポートが1日1回生成されるので、各部署やプロジェク トで前日までに利用したリクエスト数と金額がわかる • CSVファイルのダウンロードの自動化が難しいのが問題 → CSVファイル出力をリクエストするとダウンロードURLがメールで届く → GitHub APIによるユーザー利用実績取得の早期対応を希望します! [1] https://github.blog/changelog/2025-05-16-github-copilot-premium-request-report-available-today/ 14
GitHub Copilot Premium Requests ユーザー個人の利用状況の把握 • Copilot ユーザー個人も自身の Premium Requests 利用状況が把握可能 • Visual Studio Code などのエディタに専用の UI が用意されるらしい • 右図: 入手した情報を元に Microsoft Designer に再現してもらった画像 • プリウス効果 • 「クラウドFinOps」書籍の冒頭で紹介されている用語 • システムのフィードバックレスポンスが強化され、現在の状況が リアルタイムで正確に把握できるようになると、ユーザーの行動が 変化し、利用効率が大幅に向上する現象を指す言葉 • FinOps の文脈では、コスト消費の遅延のないフィードバックにより、 ユーザーは効果的にコスト対策を講じることができるようになり、 また高額なサービスの利用も自信を持って行えるということ • BNSのクラウドサービスビリングシステムも、プリウス 効果が得られるような遅延のない正確な情報提供を 目指していく 15
まとめ • FinOps プラットフォームエンジニアリング • バンダイナムコスタジオは FinOpsの初期段階であり、現在は FinOps Phases の Inform (可視化) に取り組んでいる • クラウド支出の可視化と配賦を行うクラウドサービスビリングシステムを構築、FY2025 より運用開始 • GitHub Copilot 導入推進 • クラウドサービスビリングによりコストの見える化と手続きの簡略化を実現して開発組織による活用を後押しする • "プリウス効果" ユーザーに正確なコスト消費情報を遅延なく提供することで高効率な利用を実現する • 06/04(水) に始まる Premium Requests のビリングにも対応予定 • 来年はAIエージェントがこれらをすべてやってくれるかも? • 社内の情報を整理し、分析システムやAIエージェントが利用可能な場所に置くように整備することはまだ人間の仕事 • MCP サービスとマイクロソフトのSaaS/PaaS (M365, Logic Apps, etc.) の強力なプラットフォームを活用できれば、 今回のようなシステム開発のすべてをAIエージェントにまかせられる日も案外早く到来するかもしれない 16
Thank You!! 17