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July 24, 21
スライド概要
「定本 トランジスタ回路の設計」をベースにトランジスタ回路を学びます。今回は初回ということで、第2章のエミッタ接地回路を扱います。前半では抵抗器やコンデンサの基礎、コンデンサに交流電流を流した場合の挙動、半導体の基礎といった前提知識を説明しますので、そのあたりに知識を忘れてしまっている方にも読んでいただけます。
サイボウズ・ラボ株式会社で教育向けのOSやCPU、コンパイラなどの研究開発をしています。
トランジスタ増幅回路 2021年7月24日 @uchan_nos 1 /42
自己紹介 内田公太 @uchan_nos サイボウズ・ラボ株式会社 教育用OS、言語処理系の研究開発 趣味1:自作OSコミュニティ「osdev-jp」の運営 「自作OSもくもく会」をたまに開催 趣味2:「uchanの電子工作ラボ」運営 電子回路のはんだ付けや計測の設備 私とお話ができる https://uchan.net/lab/
この発表の目的 「定本 トランジスタ回路の設計」を読み、 トランジスタを用いた増幅回路を解説 今更、単体のトランジスタ回路を勉強する のはなぜ? 単体の動作を理解すると、ICを使った回路をよ り良く設計できる 原理が理解できて面白い アセンブラを学ぶと面白い、という感覚に似て いる気がする 1991年12月20日発行 未だに絶版になってない! 3 /42
目次 抵抗器とコンデンサの基礎 コンデンサと交流信号 PN接合とトランジスタの原理 エミッタ接地回路の動作 エミッタフォロワ回路の動作 4 /42
抵抗器の動作 500Hzの矩形波を入力 実験回路 (理想的な)抵抗器は V=IRに忠実に従う 1kHzのサイン波を入力 5 /42
抵抗器の動作 GND(グラウンド) 電位の基準 500Hzの矩形波を入力 実験回路 シミュレーション設定 .tran=過渡解析 5m=5ミリ秒 (理想的な)抵抗器は V=IRに忠実に従う 1kHzのサイン波を入力 6 /42
コンデンサの動作 ほぼ 満充電状態 実験回路 コンデンサは信号が変化 したときだけ、伝える (微分のようなもの) 7 /42
コンデンサの充電 C1 E[V] とする + - + - + - + - E[V] 満充電状態 両端電圧がE[V]になるように 電荷が貯まっている 8 /42
充電開始直後の電位の関係 GNDを基準とした電位 E 短絡されている部分は 必ず同じ電位になる 0 この時点 9 /42
満充電時の電位の関係 GNDを基準とした電位 E 短絡されている部分は 必ず同じ電位になる 0 この時点 10 /42
コンデンサの放電 C1 一気に 0[V] にする + - + - + - + - E[V] V1=0[V]にした直後は C1の両端電圧はE[V]のまま →Vout=-E[V] ※GNDを基準にした電位 11 /42
放電開始直後の電位の関係 GNDを基準とした電位 E 短絡されている部分は 必ず同じ電位になる 0 -E この時点 12 /42
放電中の電位の関係 GNDを基準とした電位 E 短絡されている部分は 必ず同じ電位になる 0 -E この時点 13 /42
目次 抵抗器とコンデンサの基礎 コンデンサと交流信号 PN接合とトランジスタの原理 エミッタ接地回路の動作 エミッタフォロワ回路の動作 14 /42
コンデンサと交流信号 充放電が間に合わないほど速く変化する電圧を入力したら? コンデンサの両端電圧≒0[V]のままになるはず 15 /42
コンデンサと交流信号 実験回路 1kHzのサイン波を コンデンサに入力 V(OUT,IN)は「INを基準としたOUTの電位」= C1の両端電圧 交流信号をほぼそのまま通過させることが分かる。 16 /42
直流電圧に交流電圧を重畳する 直流5[V]を、0[V]を中心に±4[V]で動くsin波に重畳する →OUTは5[V]を中心に±4[V]で動くsin波となる このようなコンデンサを「カップリング(結合)コンデンサ」と呼ぶ 17 /42
カップリングコンデンサの役目 バイアス電圧をカットし、入力端子に加えられた交流成分だけを 通過させる バイアス電圧=交流信号に重畳する直流電圧のこと 正負が入れ替わる交流を、正電圧だけで動くまでに押し上げる 常に正電圧 18 /42
目次 抵抗器とコンデンサの基礎 コンデンサと交流信号 PN接合とトランジスタの原理 エミッタ接地回路の動作 エミッタフォロワ回路の動作 19 /42
半導体超入門 アノード P N カソード PN接合型ダイオード 電気を一方向にだけ流す(P→N) P型半導体:真性半導体より自由電子少 = 正孔(ホール)多 N型半導体:真性半導体より自由電子多 20 /42
半導体超入門2/2 アノード + - P N + カソード アノード - + P + N - カソード - 順方向に電圧をかける→電気が流れる 逆方向に電圧をかける→電気は流れない 順方向には、0.6V程度の電圧を与えないと、電気が流れ始めない 0.6Vを超えて電圧を与えると、急に流れるようになる 21 /42
トランジスタ コレクタ 正式名称:バイポーラトランジスタ 3本の端子からなる半導体素子 ベース、エミッタ、コレクタ ベース ベース-エミッタ電流を、定数倍してコレ クタに流す エミッタ 数10倍~数100倍 ※現代のICに使われるのはMOSFET MOS:金属酸化膜半導体 FET:電界効果トランジスタ https://akizukidenshi.com/catalog/g/gI-06475/ 22 /42
NPN型バイポーラトランジスタの構造 コレクタ N ベース • ダイオード2つが逆向きに接続 されたような構造 • ベース→エミッタに電流を流す と、 • ベース電流の定数倍がコレクタ →エミッタに流れる P N • 電流制御・電流出力の増幅器 • 「コレクタ(C)とエミッタ(E)をひっくり返し て逆接続しても“一応”トランジスタとして動 作できる」 エミッタ • https://detail-infomation.com/transistorreverse-connection/ 23 /42
トランジスタの動作原理 電流源I1の電流値を徐々に 増やしていったときの コレクタ電流の変化を見る 横軸は電流源I1の電流値 = ベース電流値 右側の縦軸はコレクタ電流値 コレクタ電流 ≒ 290×ベース電流 左側の縦軸はベース-エミッタ間電圧 24 /42
目次 抵抗器とコンデンサの基礎 コンデンサと交流信号 PN接合とトランジスタの原理 エミッタ接地回路の動作 エミッタフォロワ回路の動作 25 /42
5倍のアンプ(書籍 p.29) Vin Vout エミッタ接地増幅回路の例 Inに信号を入力し、 Outから信号を出力する 入力信号Vinは1Vp-pのsin波 出力信号Voutは5Vp-pのsin波 →電圧利得5倍の反転増幅回路 Vp-pのp-pは “Peek to peek” 信号上端と下端 の距離 26 /42
実際に測定してみた Ve Vin Vout 27 /42
エミッタ接地回路:ベース電圧 Vb Vin Vout ベースバイアス電圧(無信号時にベースにかかる電圧)はV2をR1、R2で分圧した電圧 ベースバイアス電圧 = 15[V]×R2/(R1+R2) ≒ 2.7[V] ベース電圧Vbは、2.7[V]に入力信号Vinを重畳したものとなる 28 /42
ベース-エミッタ間電圧とコレクタ電流 • ベース-エミッタ間電圧Vbeとは エミッタを基準としたときの ベース電圧 • Vbeを徐々に上げると、0.6[V] あたりから急にIcが増える • 増え方が対数グラフで直線 • 簡易な設計では、Vbe=0.7[V]な どと固定して計算すると楽 2SC1815 Datasheet, 2011, Unisoc Technologies Co., Ltd より引用 29 /42
エミッタ接地回路:直流的な電圧と電流 1mA 2.7V 5.0V 0.7V 2.0V 1mA • Ie=Ve/R4 =2[V]/2[kΩ] =1[mA] • Ie = Ic + Ib • Ic = 290×Ib • Ib≪Icなので無 視すると Ic≒Ie=1[mA] • Vc=V2-Ic×R3 =15[V]1[mA]×10[kΩ] =5[V] 30 /42
エミッタ接地回路:エミッタ電流 エミッタ電圧Veは2±0.5Vのsin波 R4の電流は1±0.25mAのsin波 …… (2±0.5V)/2kΩ=1±0.25mA Ie≒Icなので、R3の電流も1±0.25mAのsin波 31 /42
エミッタ接地回路:コレクタ電圧 Vc Ic Vout R3の電流は1±0.25mAのsin波 R3の電圧降下は10±2.5Vのsin波 …… (1±0.25mA)×10kΩ=10±2.5V コレクタ電圧Vcは、15VからR3の電圧降下を引いた値なので、 Icと位相が反転した5±2.5Vとなる 32 /42
エミッタ接地回路の出力抵抗は高い R5=100kΩ 出力に負荷抵抗R5を接続してみた 出力電圧はR5に大きく影響される =アンプの出力抵抗が高い R5=1kΩ 33 /42
目次 抵抗器とコンデンサの基礎 コンデンサと交流信号 PN接合とトランジスタの原理 エミッタ接地回路の動作 エミッタフォロワ回路の動作 34 /42
出力を増強する回路(書籍 p.67) エミッタ接地型増幅回路は出力インピーダンスが高い →負荷として接続する回路の影響を受けやすい インピーダンス=交流における抵抗値 出力を強化する…出力インピーダンスを低くする工夫が必要 →エミッタ・フォロワ(Emitter Follower) エミッタが入力信号に追従(follow)して動作する、という意味 エミッタ・フォロワ回路は出力インピーダンスが低い 35 /42
エミッタフォロワ Vinは8Vp-pのsin波 負荷抵抗は1kΩと低いのに、Vout≒Vinを保てている =回路の出力インピーダンスが低い 36 /42
エミッタ電流と電圧の関係 Vb Ie Ve ベースバイアス電圧は、V2をR1、R2で分圧した7.5V Vb = 7.5±4V Ve = Vb – 0.7V = 6.8±4V Ie = Ve/R3 = (6.8±4V)/680 = 10±5.9mA 37 /42
負荷抵抗が低すぎると出力がクリップ Voutの負側がクリップ 負荷抵抗を680Ωまで下げると、Voutの負側がクリップする 大体-3.4V付近でクリップしている 38 /42
等価回路で理由を説明 -3.4V 出力波形が負になったときの 等価回路 交流的な等価回路 • 無信号時のエミッタ電流 = 10mA →エミッタは、10mAを基準に見ると±10mAだけ流せる電流源 • 交流的にはコンデンサは短絡して考える →電流源に340Ω(REとRLの並列)が接続されているのと等価 39 /42
別の切り口で説明 C→Eの方向にしか電流は流れない Vbeは常に0.7V程度ある トランジスタは、Veの電位をつり上げる 方向でしか作用しない! Veの電位を負にする力はない エミッタ電流=0の世界では、トランジス タの存在を無視できる 40 /42
エミッタ電流最小の世界 エミッタ電流が下限(交流的に-10mA) になったときの等価回路 3.4V 0 -3.4V Veの直流的な電圧 = Vb - 0.7V = 6.8V →コンデンサの両端電圧は6.8V どんなに頑張っても、Voutは-3.4Vまで しか下がらない Vin = ±4Vのとき、下側がクリップする 41 /42
出力波形クリップへの対処 無信号時の電流(アイドリング電流)をもっと大きくする 回路の動作効率が悪化する プッシュプル構成にする 問題は、トランジスタ1石では電位を引っ張り上げるしかできないこと もう1石を追加し、GND側に引っ張れるようにする エミッタに定電流回路を接続する 42 /42