「分かち、分かり、分かり合う」〜チームで育むアーキテクチャの実践〜

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July 28, 26

スライド概要

2027.7.28 レバテックLAB での登壇資料
https://levtechlab.connpass.com/event/396792/

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著書『アーキテクトの教科書 価値を生むソフトウェアのアーキテクチャ構築』(翔泳社)

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各ページのテキスト
1.

「分かち、分かり、分かり合う」 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 米久保 剛 Takeshi Yonekubo IT アーキテクト 著書『アーキテクトの教科書』(翔泳社) 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 レバテックLA B | 2026.07.28

2.

アーキテクティングとは? アーキテクティング = ソフトウェアのアーキテクチャを形づくっていく活動。 米久保 剛『アーキテクトの教科書』(翔泳社)図3.1.1 より 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 02

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今日、お話しすること 今日話さないこと 設計論 —— どう分けるか・どう決めるか、の技法そのもの 今日話すこと チームとしてのアーキテクティング 個々人の技量や経験に依存せず、チームとしてどう営むか 「わかる」 キーワードは 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 03

4.

「Xモジュールは、Aさんに聞け」 どの現場にもある光景——「XといえばAさん」。 Aさん Xモジュール(複雑怪奇なレガシー) 周囲がAさんに聞く・任せる 「あれはAさんしか分からない」——コードの中身も、直し方の判断も、ぜんぶAさんの頭の中。 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 04

5.

ある日、Aさんの異動が決まった。 引き継ぐのは、若手の Bくん。 引き継ぎ Aさん(異動) 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 Bくん(後任) 05

6.

チームの中を覗いてみる Aさんの「自己肯定感」と周囲の「楽」が噛み合い、系のバランスが取れてしまっていた。 Aさん 周囲 「自分にしか手に負えない」 「任せておけば楽」 「頼られている」 「複雑な所に触れたくない」 自己肯定感 楽 均衡(バランス) 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 06

7.

局所は安定。しかし、系は痛んでいく 大局的に、系として見れば、大きな問題が静かに進行している。 局所(ミクロ)で見ると 系として 見ると Aさん 周囲 バランスしている 1 Aさんがボトルネックになる 設計判断が待ち行列になり、リードタイムが延びる。 2 人が育たない 経験の機会が偏り、中長期の開発力が落ちる。 属人化を個別の問題として見る限り、状況は解消されない。 解くべきは系の構造。介入は、系そのものに対して行う。 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 07

8.

引き継ぎ先のBくんは、容易に設計判断ができない 1 なぜこの構造なのか、 設計意図の記録がない 2 構造が見えないから 影響範囲が読めない 3 設計を議論できる 相手がチームにいない そもそもソフトウェア開発は「わからないこと」だらけ——完全にわかることは事実上困難。それを前提に置く。 問い わからない前提で、チームとして最善の設計判断をし続けるには? 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 08

9.

“ 「わかれ」のほうは、もう一度一つになることを予想している 「枝わかれ」にしても「わかれ道」にしても、一つのものから の分離なのである ——「わかれる」「わける」と「分かる」は、語源的につながっている(同根の言葉)。 分ける → 分かる → 分かり合う 坂本賢三『「分ける」こと「わかる」こと』 (講談社現代新書・1章) 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 09

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PA RT I 分ける 設計の肝は「分割」と「分類」 分ける 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 → 分かる → 分かり合う 10

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設計の肝は「分割」と「分類」 分割 —— 大きすぎるものへの対処 分類 —— バリエーションの多さへの対処 大きな塊 ↓ ↓ 認知の限界内の小さな塊に切り出す 共通性で束ね、差異を整理する 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 11

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「正しい分け方」は存在しない 同じドメインでも、どこに継ぎ目があるかは、対象そのものに書かれているわけではない。 分け方 A 分け方 B 境界は、発見するものではなく、選び取るもの。 唯一の正解がないからこそ、「なぜこう分けたのか」を語れることが大事。 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 12

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PA RT II 分かる 分けるだけでは分からない。統合して、はじめて分かる 分ける 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 → 分かる → 分かり合う 13

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“ 分析といっても、分析することで原理に到達し、 そこから再構成してみてはじめて、「わかった」 ということになる 分解(分析) 再構成 この往復で「わかった」 坂本賢三『「分ける」こと「わかる」こと』(講談社現代新書・2章) 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 14

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「分かった」は、多段のループで確かめる 分解しただけでは分からない。作り、統合し、動かし、使われて、はじめて確かめられる。 分ける(設計) コンポーネントを作る 統合する デプロイ・本番運用 ユニットテスト (Do things right) コンポーネント単体で、正しく動くか 受け入れテスト (Do things right) 統合され、ソフトウェアが系として動くか 本番で使われる (Do right things) そもそも、正しいものを作っていたか 内側のループだけでは、「正しいものを作っているか」は確かめられない。 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 15

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情報と知識は、別物 ドキュメントを渡しても、知識は渡らない。 ① 情報 ② 実践 ③ 知識 ループを回し、 自分の文脈と結びつける 「自分の文脈」とは ・すでに持っている知識 ・過去の経験 分厚いドキュメント 知識 = 実践知・経験知 血肉になったもの 情報は渡せる。しかし、知識は渡せない。 実践のループを通して自分の文脈と結びつき、血肉になったものだけが「知識」になる。 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 16

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PA RT III 分かり合う 分かり合う仕組みを、設計する 分ける 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 → 分かる → 分かり合う 17

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人は本来、分かり合えない 複雑なソフトウェアには、チームで立ち向かう必要がある。——しかし、 話し手が思い描くこと 言葉にして伝えること 聞き手が解釈すること 言葉にして、伝える 話し手 聞き手 思い描いた形・言葉にした形・受け取った形は、少しずつずれている。 だからコミュニケーションは、難しい。 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 18

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分類の仕方も、解釈の枠組みも、人ごとに違う 今井むつみ(要旨) 坂本賢三(教訓その三) 今井むつみ氏によれば—— “ 人は同じ言葉を聞いても、各自のスキーマ(知 「わかる」とは、その分類体系がわかるとい 識・経験の枠組み)を通してしか解釈できない。 うことであり、「わかり合う」とは、相互に 専門性を深めることは、視点を偏らせることでも 相手の分類の仕方がわかり合うことである ある。 『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?』(日経BP) (講談社現代新書・5章) 「言ったのに伝わらない」は、例外ではなくデフォルト。 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 19

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概念を「そろえていく」——ユビキタス言語 バラバラの概念 そろった概念 対話とモデリング のプロセス 属人化とは、Aさんの頭の中にある概念・分け方・判断の理由が、チームに共有されていない状態のことだった。 価値は「用語辞書」ではない。 そろえていくモデリングのプロセスそのものにある。 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 20

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「分かり合う」は、設計対象である。 設計ウォークスルー 協働モデリング ADR 具体例を一緒に歩き、 完成モデルの共有ではなく、 分け方の背後の判断を残し、 ずれを発見する場 分ける・そろえる過程の共有 未来のメンバーに届ける こういった活動を、系に組み込んで「知識のフロー」を設計する。 そして、これらの場は そのまま「学びの場」になる。 Bくんは熟達者の思考過程に触れ、「分ける→分かる」を追体験する。 育成は「余力があればやること」ではなく、系の設計の一部。 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 21

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分ける・分かる・分かり合うは、ひと続きだった 冒頭の問い——「わからない前提で、チームとして最善の設計判断をし続けるには?」 分ける 唯一の正解はない。目的に照らして、境界を選ぶ。 分かる 分けただけでは分からない。統合し、動かして確かめる。 分かり合う ずれる前提で、概念と判断をそろえ続ける仕組みをつくる。 この三つの積み重ねが、チームの「分かり方」になる。 ——それが、アーキテクチャ。 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 22

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アーキテクチャは、 チームが分かり合うためのメディアである。 ——チームがそろえてきた概念・分け方・判断の結晶。 情報を知識に変える「知識のフローの基盤」。 ご清聴ありがとうございました。

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参考文献 坂本賢三『「分ける」こと「わかる」こと』(講談社現代新書) Diana Montalion『システム思考の世界へ』(オライリー・ジャパン) 今井むつみ『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?』(日経BP) 米久保 剛『アーキテクトの教科書』(翔泳社) 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 B1

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(補足)抽象化 = 捨象 抽象化とは、目的に照らして「本質でないもの」を捨てること(=捨象)。 「分類」の裏側の営み。何を残し何を捨てるかは目的に依存し、ここにも唯一の正解はない。 色 形 重さ 目的に必要な 属性だけ残す 価格 材質 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 本質 産地 B2

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(補足)2つの視点:還元主義 と システム思考 還元主義 全体を要素に分けて理解する。 「分ける」「分かる」の基盤。 システム思考 要素の関係と全体の振る舞いで理解する。 属人化=系のバランス、「分かり合う」基盤。 両輪で対象をとらえる。 分かち、分かり、分かり合う 〜チームで育むアーキテクチャの実践〜 B3