属人化は本当に悪なのか?〜1年かけてたどり着いた、限られたリソースで最大限の成果を出すチーム戦略〜

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August 08, 25

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NIKKEI Tech Talkでの登壇です

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株式会社Finatext サーバーサイドエンジニア AWS/Go/Terraform

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属人化は本当に悪なのか? 〜 1年かけてたどり着いた、限られたリソースで最大限の成果を出すチーム戦略 〜 2025-08-07 株式会社Finatext 松崎稔矢 © Finatext Holdings Ltd.

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自己紹介 松崎稔矢 Toshiya Matsuzaki 1996-06-19生(29歳) X(Twitter): @tm8619_pro 職種: バックエンドエンジニア 経歴 趣味: ボウリング🎳/ゲーム🎮/ダーツ🎯/ポーカー🃏/ゴルフ🏌など 2021年4月新卒入社 入社後、3つのプロダクト新規開発のリードを行う 仕事: マネジメント・テックリード・開発・運用・採用 技術: Go/Terraform/AWS など 2024年4月 4人の開発チームリーダーに 2024 Japan AWS Jr.Champions 選出 © 2024 Finatext Holdings Ltd. 1

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Finatextグループのビジョン 金融がもっと暮らしに寄り添う世の中にする © 2024 Finatext Holdings Ltd. 2

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Finatextグループのミッション 金融を“サービス ”として再発明する © 2024 Finatext Holdings Ltd. 3

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Finatextグループのソリューション 金融の基幹システムをクラウド化し、 SaaS型で提供する © 2024 Finatext Holdings Ltd. 4

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事業概要 3つの事業を展開中 三菱UFJ銀行:「 Money Canvas」 • 金融機関の DXニーズに対応した フィン フロントエンドのアプリケーション 開発や汎 テック シフト(2014-) 用的な技術ソリューション の提供 ビッグ データ 解析 (2016-) 金融 インフラ ストラクチャ (2018-) 「AlternaData」 • 機関投資家や公的機関に オルタナティブデータ を提供 • POSやクレジットカードデータの クレンジングや解析 「BaaS」 • 資産運用・保険ビジネス向けの クラウドネイティブかつ APIベースの 金融基幹システムを提供 「Inspire」 東証株 式 米国株 式 保険商 品 商品申 込 ロボアド 端株 顧客管 理 契約管 理 ※プロダクト・機能は一例です 5 © 2024 Finatext Holdings Ltd.

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開発体制 • 国内のエンジニアは現在 111名。 • チーム単位で複数のプロジェクトを担当。 • 設計、開発、テスト、デプロイ、運用、サポートまでフルサイクルで担う。 • チームをまたいで共通して必要になるツール類は、 Platform Teamが提供する。 • 利用技術や開発手法などはチームの裁量で選定。 © 2024 Finatext Holdings Ltd. 6

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開発体制 • 国内のエンジニアは現在 111名。 • チーム単位で複数のプロジェクトを担当。 • 設計、開発、テスト、デプロイ、運用、サポートまでフルサイクルで担う。 • チームをまたいで共通して必要になるツール類は、 Platform Teamが提供する。 • 利用技術や開発手法などはチームの裁量で選定。 © 2024 Finatext Holdings Ltd. 7

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イントロ 実際のチーム構成 ● チームメンバーは現在4名(最大6名) ○ 若手ばかり ● 抱えているプロジェクト ○ PMがいて活発に開発をしているもの: 2つ ○ チームでオーナーシップをもって開発しているプロダクト: 2つ ○ PM不在で運用保守フェーズのもの: 4つ ● 組織が大きくなり、再編されたタイミングでチームリーダーに ○ 属人化している業務やサービスが多く、チームとして見れるように という目的 © Finatext Holdings Ltd. 8

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イントロ リーダーに汎用的な答えはない 自分のチームがうまくいくならそれが正解 © Finatext Holdings Ltd. 9

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リーダーになった直後の失敗 © Finatext Holdings Ltd. 10

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リーダーになりたての失敗談 開発チームといえば… © Finatext Holdings Ltd. 11

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リーダーになりたての失敗談 開発チームといえば… やっぱりスクラムだよね! (当時の自分の感想です) © Finatext Holdings Ltd. 12

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リーダーになりたての失敗談 いわゆるスクラムっぽいことをしようとした ● スクラムマスター・POを兼任してスクラムに則ろうとした © Finatext Holdings Ltd. 13

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リーダーになりたての失敗談 いわゆるスクラムっぽいことをしようとした ● スクラムマスター・POを兼任してスクラムに則ろうとした ● 具体的にやったこと ○ 自分が各プロジェクトのMTGに出てタスクを吸い上げる ○ チームのGithub Projectsにタスクを配置 © Finatext Holdings Ltd. 14

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リーダーになりたての失敗談 いわゆるスクラムっぽいことをしようとした ● スクラムマスター・POを兼任してスクラムに則ろうとした ● 具体的にやったこと ○ 自分が各プロジェクトのMTGに出てタスクを吸い上げる ○ チームのGithub Projectsにタスクを配置 ○ プランニングポーカーの機構を作り、みんなでポイントをつける © Finatext Holdings Ltd. 15

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リーダーになりたての失敗談 いわゆるスクラムっぽいことをしようとした ● スクラムマスター・POを兼任してスクラムに則ろうとした ● 具体的にやったこと ○ 自分が各プロジェクトのMTGに出てタスクを吸い上げる ○ チームのGithub Projectsにタスクを配置 ○ プランニングポーカーの機構を作り、みんなでポイントをつける ○ タスクに優先度をつけ、1週間スプリントでタスクを遂行 ■ 優先度が高そうなものから選ぶことを重視した © Finatext Holdings Ltd. 16

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リーダーになりたての失敗談 いわゆるスクラムっぽいことをしようとした ● スクラムマスター・POを兼任してスクラムに則ろうとした ● 具体的にやったこと ○ 自分が各プロジェクトのMTGに出てタスクを吸い上げる ○ チームのGithub Projectsにタスクを配置 ○ プランニングポーカーの機構を作り、みんなでポイントをつける ○ タスクに優先度をつけ、1週間スプリントでタスクを遂行 ■ 優先度が高そうなものから選ぶことを重視した ● 属人化しないよう、皆がすべてのタスクを持てる状態を目指した © Finatext Holdings Ltd. 17

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リーダーになりたての失敗談 うまく回らず、思うように進まなかった ● タスクの細かい背景知識、ニュアンスを伝えきれておらず認識がずれる © Finatext Holdings Ltd. 18

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リーダーになりたての失敗談 うまく回らず、思うように進まなかった ● タスクの細かい背景知識、ニュアンスを伝えきれておらず認識がずれる ● アサインされるタスクも様々なので、コンテクストスイッチコストが高 かった © Finatext Holdings Ltd. 19

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リーダーになりたての失敗談 うまく回らず、思うように進まなかった ● タスクの細かい背景知識、ニュアンスを伝えきれておらず認識がずれる ● アサインされるタスクも様々なので、コンテクストスイッチコストが高 かった ● 設計まで自分がやってしまいタスク化していたので、メンバーの裁量を ほぼ完全に奪っていた © Finatext Holdings Ltd. 20

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リーダーになりたての失敗談 うまく回らず、思うように進まなかった ● タスクの細かい背景知識、ニュアンスを伝えきれておらず認識がずれる ● アサインされるタスクも様々なので、コンテクストスイッチコストが高 かった ● 設計まで自分がやってしまいタスク化していたので、メンバーの裁量を ほぼ完全に奪っていた ● 属人化を避けようとしたが、リーダーという属人化を引き起こした © Finatext Holdings Ltd. 21

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リーダーになりたての失敗談 他にやって微妙だったこと ● 対面での朝会 ○ 書面開催以上の効果が得られなかった ○ 話題あれば都度話せば良い ● プランニングポーカー ○ キャッチアップが大変な割に、体制の都合で体系的な理解が得られ ない ○ 見積もった数字に意味は薄いので、効果が低い © Finatext Holdings Ltd. 22

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属人化について © Finatext Holdings Ltd. 23

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属人化について 属人化とは? どういうイメージを持ちますか? © Finatext Holdings Ltd. 24

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属人化について 属人化とは? どういうイメージを持ちますか? 避けたほうがいいもの? © Finatext Holdings Ltd. 25

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属人化について 属人化のデメリット 1. 担当者不在リスク: 担当者が病欠・退職すると、業務がストップしてしまう。 2. チーム全体の生産性低下: 知識が共有されないため、チーム全体で効率的に動けない。 3. メンバーの成長阻害: スキルアップの機会が特定のメンバーに偏ってしまう。 4. ブラックボックス化: 業務内容が不透明になり、改善や引き継ぎが困難になる。 © Finatext Holdings Ltd. 26

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属人化について 属人化のメリット 1. 短期的な効率性が高い: キャッチアップコストが大幅に減る 2. 経験値・専門性の向上によるアウトプット向上: 同じ分野を担当することで、深い理解を得られる 3. 責任の所在が明確: チーム内でも、チーム外でも担当者が明確 4. モチベーションの向上: 裁量が大きく、そのプロジェクトで存在感を出せる © Finatext Holdings Ltd. 27

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失敗の原因の分析 © Finatext Holdings Ltd. 28

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失敗原因分析 チーム運営の課題 ● キャッチアップコストが非常に高い © Finatext Holdings Ltd. 29

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失敗原因分析 チーム運営の課題 ● キャッチアップコストが非常に高い 全員が色々分かっている状態にしようとこのコストを掛けたのに ● PMとのコミュニケーションの窓口が自分だけ ● メンバーの設計の機会、経験が失われた ● プロジェクトで何が起きているのか分かりにくい と、逆に属人化の悪いところが出てしまった © Finatext Holdings Ltd. 30

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失敗原因分析 属人化のデメリット 1. 担当者不在リスク: 担当者が病欠・退職すると、業務が完全にストップしてしまう。 2. チーム全体の生産性低下: 知識が共有されないため、チーム全体で効率的に動けない。 3. メンバーの成長阻害: スキルアップの機会が特定のメンバーに偏ってしまう。 4. ブラックボックス化: 業務内容が不透明になり、改善や引き継ぎが困難になる。 © Finatext Holdings Ltd. 31

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失敗原因分析 属人化のメリット 1. 短期的な効率性が高い: キャッチアップコストが大幅に減る 2. 経験値・専門性の向上によるアウトプット向上: 同じ分野を担当することで、深い理解を得られる 3. 責任の所在が明確: チーム内でも、チーム外でも担当者が明確 4. モチベーションの向上: 裁量が大きく、そのプロジェクトで存在感を出せる © Finatext Holdings Ltd. 32

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解決のために取った体制 © Finatext Holdings Ltd. 33

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生産性向上のために 意図的に部分的な属人化を進め、効率化を図った ● 各プロジェクトを担当するサブリーダーを立てた ○ 基本的に担当になった人がPMとやり取りもタスク化も行う ○ 進め方などの裁量も任せる この目的は、 ● 皆の役割・裁量を広げた ● 理解すべき範囲を狭めて、深い理解を目指す ● 自分の負担を減らし、開発を続けられるように ○ チームメンバーにアドバイスをもらった © Finatext Holdings Ltd. 34

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生産性向上のために 属人化のデメリットを回避するために © Finatext Holdings Ltd. 35

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生産性向上のために 属人化のデメリットを回避するために ● リーダーとして、皆がやっている事は理解している状態にする ○ 休みの時、離職が起きた時に巻き取れる ○ だんだん意思決定を寄せていく © Finatext Holdings Ltd. 36

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生産性向上のために 属人化のデメリットを回避するために ● リーダーとして、皆がやっている事は理解している状態にする ○ 休みの時、離職が起きた時に巻き取れる ○ だんだん意思決定を寄せていく ● 作業内容をIssueやドキュメントにまとめる。 ○ プルリクの概要はしっかり書く ○ できるだけ考えたこともslackに都度垂れ流してもらう © Finatext Holdings Ltd. 37

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生産性向上のために 属人化のデメリットを回避するために ● リーダーとして、皆がやっている事は理解している状態にする ○ 休みの時、離職が起きた時に巻き取れる ○ だんだん意思決定を寄せていく ● 作業内容をIssueやドキュメントにまとめる。 ○ プルリクの概要はしっかり書く ○ できるだけ考えたこともslackに都度垂れ流してもらう ● 書面朝会・勉強会・振り返り会を開催 © Finatext Holdings Ltd. 38

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生産性向上のために 属人化のデメリットを回避するために ● リーダーとして、皆がやっている事は理解している状態にする ○ 休みの時、離職が起きた時に巻き取れる ○ だんだん意思決定を寄せていく ● 作業内容をIssueやドキュメントにまとめる。 ○ プルリクの概要はしっかり書く ○ できるだけ考えたこともslackに都度垂れ流してもらう ● 書面朝会・勉強会・振り返り会を開催 属人化の方向に進めるが、しすぎないようにする © Finatext Holdings Ltd. 39

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生産性向上のために その結果、チームが軌道に乗るように © Finatext Holdings Ltd. 40

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生産性向上のために その結果、チームが軌道に乗るように ● 自発的なリーダーシップ発揮 ○ PMとのやり取りをドライブするように © Finatext Holdings Ltd. 41

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生産性向上のために その結果、チームが軌道に乗るように ● 自発的なリーダーシップ発揮 ○ PMとのやり取りをドライブするように ● モチベーションの向上 ○ 裁量が与えられたことで、新技術のトライアルを進めたりリファク タを進めて行くようになった © Finatext Holdings Ltd. 42

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生産性向上のために その結果、チームが軌道に乗るように ● 自発的なリーダーシップ発揮 ○ PMとのやり取りをドライブするように ● モチベーションの向上 ○ 裁量が与えられたことで、新技術のトライアルを進めたりリファク タを進めて行くようになった ● チームとしてのアウトプットが向上 ○ 問題なく人数を超えるプロジェクトをこなせている © Finatext Holdings Ltd. 43

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生産性向上のために その結果、チームが軌道に乗るように ● 自発的なリーダーシップ発揮 ○ PMとのやり取りをドライブするように ● モチベーションの向上 ○ 裁量が与えられたことで、新技術のトライアルを進めたりリファク タを進めて行くようになった ● チームとしてのアウトプットが向上 ○ 問題なく人数を超えるプロジェクトをこなせている ● 担当になった部分のキャッチアップが一気に進み、むしろ他のプロダク トも見れるようになった © Finatext Holdings Ltd. 44

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生産性向上のために その結果、チームが軌道に乗るように ● 自発的なリーダーシップ発揮 ○ PMとのやり取りをドライブするように ● モチベーションの向上 ○ 裁量が与えられたことで、新技術のトライアルを進めたりリファク タを進めて行くようになった ● チームとしてのアウトプットが向上 ○ 問題なく人数を超えるプロジェクトをこなせている ● 担当になった部分のキャッチアップが一気に進み、むしろ他のプロダク トも見れるようになった ● 新規リーダーの誕生 © Finatext Holdings Ltd. 45

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最後に © Finatext Holdings Ltd. 46

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最後に 何より大切なのは、自分のチームに当てはまる進め方を見つけること ● 自分のチームは、サブリーダー制でそれぞれ担当を決めること、がとに かくうまくハマった © Finatext Holdings Ltd. 47

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最後に 何より大切なのは、自分のチームに当てはまる進め方を見つけること ● 自分のチームは、サブリーダー制でそれぞれ担当を決めること、がとに かくうまくハマった ● フレームワークは先人の知恵が詰まっているが、現場としてそれがマッ チするかはまた別の話。無理やり適用するべきでない © Finatext Holdings Ltd. 48

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最後に 何より大切なのは、自分のチームに当てはまる進め方を見つけること ● 自分のチームは、サブリーダー制でそれぞれ担当を決めること、がとに かくうまくハマった ● フレームワークは先人の知恵が詰まっているが、現場としてそれがマッ チするかはまた別の話。無理やり適用するべきでない ● チームの数だけ事情がある。それにあった進め方を常に試行錯誤するこ とが大切 ○ その中で、一般的でない方法を取り入れる必要もあるかもしれない © Finatext Holdings Ltd. 49

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最後に 何より大切なのは、自分のチームに当てはまる進め方を見つけること ● 自分のチームは、サブリーダー制でそれぞれ担当を決めること、がとに かくうまくハマった ● フレームワークは先人の知恵が詰まっているが、現場としてそれがマッ チするかはまた別の話。無理やり適用するべきでない ● チームの数だけ事情がある。それにあった進め方を常に試行錯誤するこ とが大切 ○ その中で、一般的でない方法を取り入れる必要もあるかもしれない ● もし何やれば良いか困ったら、チームメンバーを頼り、信じてみる © Finatext Holdings Ltd. 50