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November 22, 22
スライド概要
土地家屋調査士の視点からの、「空き家」問題について解説させて頂いたものです。
事務所としても協賛させて頂いているまちづくり団体様(https://kabe-yumekaidou.net/)での公演資料として作成したものです。
土地家屋調査士 Land and House Investigator( Licensed Cadastral Surveyor of Japan)
空き家みらいトーク 近隣、 コミュニティーと空き家 ~土地家屋調査士の目から~ 令和3年11月13日 土地家屋調査士 山中 匠
● ● ● ● ● ● ● 広島市安佐北区の可部生まれ 安古市高校→大阪外国語大学、在学中に大阪大学と合併 在学中は南ヨーロッパ文化(イタリア)の専攻 バンドと作曲をしながら留年・休学 卒論は大阪音楽大学にお世話になりルネサンス期の多声音楽 30歳から地元の調査士法人で補助者 31歳測量士補、32歳で土地家屋調査士を取得 自己紹介 ● ● ● ● ● ● ● ● ● 祖父、父の事務所を継いで個人事務所として開業 開業後行政書士登録のみを残した父、 妻(司法書士)ともうひとり女性司法書士も加わり合同事 務所として運営中 日本土地家屋調査士会連合会 研究所 研究員 広島県土地家屋調査士会 IT委員会 委員 広島県土地家屋調査士会 広島支部 支部長 広島県青年土地家屋調査士の会 副会長(~2017) 広島県防災ドローン研究会 会員 一般社団法人 日本写真測量学会 会員 2020年防災士 取得 【趣味】ギター・ピアノ、写真(愛機はSigma SD1)
土地家屋調査士って? ● ● ● ● ● ● 不動産(表示登記=地籍)に関する法律と技術の専門家です。 不動産鑑定士とよく間違えられますが不動産価格の査定はしません。 意外かもしれませんが、法務省が認定をおこなう国家資格です。(他の士業では弁護 士と司法書士。隣接業務だと測量士が国土地理院、行政書士は総務省になります) 登記簿が「新しく出来る」とき「無くなる」とき、土地や建物の分割・合併によって 「複数に分かれる」とき、「一つになる」とき、また種類が変更されたときなどに調 査・測量の上登記手続きを行います。 結構これも勘違いされますが、業務のうち測量は調査のうちのほんの一部で、資料解 析や、図面や書類作成、役所や地権者との折衝の割合がかなり多いです。 個人的には、法律と技術、デスクワークとフィールドワーク、等ないろんなものを行 き来できますし、学際的な領域なのでやりがいはあります。
「空き家」が社会的問題になるまでの流れ この仕事をしていて感じるのは生活・人生スタイルの変化に伴う不動産の 問題が山から人里に向かって徐々と降りてきている ということです。 1. 山の問題・・・電気・ガス等の普及による山林の荒廃 日常の資源として燃料として焚付や薪、日用品の材料としての葛、 竹等が利用されなくなること等によって、人が山に入らない 1. 農地の問題・・・耕作放棄地 農畜産物の輸入依存、農業従事者の減少、後継者不在等による田畑 の放棄 1. 宅地の問題・・・空き家問題 (=放置宅地) 土地神話の崩壊と不動産価値の二極化、地元を離れて生活基盤を築 いている子による相続等による不在地主の増加
空き家(=放棄された庭含む)の何が問題になるのか? ● 景観・治安の悪化 ● 境界近辺の それは近所の人にとっ ての問題であって、 「空き家」の持ち主に とっては特に問題では ないのでは? ○ 建物そのものが劣化することによる問題(音・落下物等) ○ ブロック塀等の境界附近の築造物の劣化による問題 ○ 排水周りが詰まる・滞るといったことによる問題 ○ 樹木・雑草(落ち葉・種子含む)などが隣接地に入り込むことによる問題
空き家の「処分(売買)」、「利活用」と登記等の手続き 1. 概ね昭和36年以前の建物については法務局に「図面」がなく、売買、賃借での利活用前(特に融 資を受けてなにかをする場合)には”現況”に合わせた登記が必要となります。(未登記のままで の借り主費用による大幅なリフォーム、増床を伴うようなリフォームは要注意です) 2. 家を取り壊して更地として売買を検討する場合には ○ ○ 住宅地として売りたい場合は再築が可能な土地であるかを確認してください ■ 再築不可な場合はリフォーム(リノベーション)を検討するか、駐車場等別の用途 の物件として売ることとなります 取り壊して売る場合に建物取り壊しの登記、「滅失登記」が必要です 3. 土地も昭和36年以降、登記に伴う測量をしたことがない場合には法務局に図面がありませんので 境界の確定業務は高額(一般の宅地で最低30万円以上~目安として70万円程度は掛かりま す)です。相続が発生してから(相続税を取られたあとの財産から)の出費となるよりも、相続 前現地をよく知る人が居るあいだに行っておくのがおすすめです。 4. 農村部の「家」には、山林(里山)と農地が付いていることが多いですが・・・ ○ 農地は建物と一緒に誰でも手に入れられるというわけではありません。 ■ 非農家が農地を農地として取得しようとする場合、その農地を自分できちんと農業 経営してゆける、と認められる為に様々な要件があります。 ■ 家とは別途、近隣の農業者に引き取ってもらうのも手です。 ○ 山林は、取得に際して特に要件はありませんが、既に「どこにあるのか」さえわからなく なっている場合もあります。(それ故に家とセットで手放してしまいたい人も多い)
空き家や不動産のスムーズな相続、売買や利活用につなげる為に ● 子供たちに建物のこと土地の場所、境界、等のことを伝え、遺す。 ○ ● 不動産の相続の仕方(誰が、どこを継ぐのか)を親子兄弟姉妹間でよく話しておく ○ ● 中々、不動産を継ぐということを意識する年齢までは興味を持ってくれないことも多いと思い ますので、「エンディングノート」ではありませんが専門家の手を借りて資料を残すことも一 つです。(ご本人自身もよく分からなかったことや、勘違い・思い込みについても専門家を挟 むことによって明らかになりトラブルを未然に防ぐことにも繋がります。) 近年は余程良い不動産でない限り、現金の取り合い、不動産の押し付け合いという傾向もある ように思います。親子、地元に住んでいるか否かなどで現地への思い入れも様々です。 地域コミュニティー、ご近所隣接との関係を良好に ○ (誤った)権利意識によって「自分の土地をどうしようと勝手だろう」といった感覚の方もお られますが、不動産に関してどのような動きをするにも、近隣の方々の協力は不可欠です。 盆正月だけ、数年に一度だけの「遠くの土地」のことでも、近隣住人方々には、「日々のこ と」、「地元のこと」、農業者さんにとっては生活の掛かったことである場合もあります。
ドローン等によって調査手法も近代化しつつあります。 ~災害等のリスクのある場所は、今の姿を未来に遺しておくことも重要です~
ありがとう ございました 山中 匠 [email protected] http://o-yamanaka.com