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1.

APOLLO SPACE Patent Analysis Report Patent Landscape Analysis Report 2026 年 3 ⽉ 10 ⽇ Powered by APOLLO SPACE × Gemini AI

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 1. エグゼクティブサマリー Executive Summary セルロースナノファイバー(CNF)分野は、2019 年に特許出願がピークを迎えた後、現在は応⽤ 製品開発にシフトしており、特に CNF 複合材料の物性向上と製造プロセス技術が中⼼となってい る。⽇本製紙や⼤王製紙といった既存⼤⼿は成熟期にある⼀⽅、旭化成(CAGR +0.442)などの 新興リーダーが⾼機能ゴム・樹脂複合材料分野を牽引し、市場の成⻑を加速させている。政策的な 後押しや⾷品添加物公定書での規格化も相まって、CNF の社会実装と新たな市場機会の創出が期待 される。 総特許件数 分析期間 出願⼈数 HHI 1,176 2015– 308 0.038 2024 社/機関 競争的 件 年 1.1 分析の背景と⽬的 本分析は、セルロースナノファイバー(CNF)分野における技術動向を包括的に把握し、近年の技 術進化と市場の変化を明らかにすることを⽬的とする。これにより、企業が競争優位を確⽴し、将 来の成⻑戦略を策定するための戦略的⽰唆を提供する。 1.2 主要発⾒ ̶2̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 1.2.1 ATLAS 基本統計: 競争環境の分散化と主要プレイヤー CNF 分野の特許総件数は 1176 件(2015〜2024 年)であり、HHI 値は 0.038 と分散型の競争環 境を⽰している。上位 3 出願⼈は⽇本製紙(167 件, 14.2%)、⼤王製紙(86 件, 7.3%)、王⼦ ホールディングス(77 件, 6.5%)であり、これら製紙系企業が CNF 分野の基礎技術開発を牽引し てきたことが⽰唆される。分散型の市場構造は、新規参⼊企業や特定の技術に特化した企業にも成 ⻑機会があることを意味し、多様な技術⾰新が期待される。 1.2.2 Saturn V クラスタ: 複合材料技術の多様な展開 CNF 分野では 27 の技術クラスタが特定され、特に「CNF 強化ゴム組成物の分散性向上技術」(48 件)、「CNF 複合材料の疎⽔化・分散性制御」(35 件)、「化学変性 CNF の乾燥・再分散性改 善」(75 件)が主要な技術領域として浮上している。これらのクラスタは、CNF を様々な材料と 複合化し、その性能を向上させるための技術開発が活発であることを⽰している。特にゴム組成物 への応⽤は、⾃動⾞部品などの軽量化・⾼機能化ニーズに対応する重要な⽅向性である。 1.2.3 MEGA 動態: 既存勢⼒の成熟と新興リーダーの台頭 ATLAS 出願件数ランキングでトップの⽇本製紙(167 件)は MEGA PULSE で成熟・既存勢⼒象 限(CAGR -0.111)に位置し、成⻑が鈍化している。⼀⽅、ランキング 4 位の旭化成(76 件)は リーダー象限(CAGR +0.442)に位置しており、CNF 強化ゴム組成物や CNF 成形体などの⾼機 能材料分野で新たな市場を牽引する可能性がある。この動向は、CNF の基礎技術開発から応⽤製 品開発へと競争軸がシフトしていることを明確に⽰唆している。 1.2.4 Explorer: 急上昇キーワードと技術トレンド ̶3̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report Explorer 分析では、「性置換基」、「硬化後」、「系重合体組成物」、「機械的物性」、「マレ イン」といったキーワードが急上昇しており、CNF の化学修飾による物性制御や、⾼分⼦材料と の複合化を通じた機械的物性向上が主要な技術トレンドであることが⽰されている。特に「ゴム改 質⽤マスターバッチ」の急上昇(成⻑率 10)は、CNF 強化ゴム組成物への関⼼の⾼まりを裏付け ており、旭化成(3 件)や中越パルプ⼯業(1 件)といった企業がこの分野を牽引している。 1.2.5 CORE 分類: CNF 複合材料と物性向上が主要テーマ CORE 分類によると、CNF 複合材料(471 件)、CNF 応⽤製品(280 件)、CNF 製造・処理(186 件)が主要な技術カテゴリである。特に「CNF 複合材料」は、Saturn V クラスタ 0「CNF 強化ゴ ム組成物の分散性向上技術」(48 件)やクラスタ 1「CNF 複合材料の疎⽔化・分散性制御」(35 件)など、複数のクラスタと対応している。このことから、CNF 複合材料の物性向上(474 件) が、CNF 開発における最も重要な⽬的であることが裏付けられる。 1.2.6 NEBULA: 政策と市場の動向が社会実装を後押し NEBULA の⾮特許⽂献分析では、学術論⽂のピークが 2019 年(100 件)であるのに対し、ニュ ース記事は 2023 年(65 件)にピークを迎えており、市場への関⼼は継続している。政策イベン トでは、2020 年の NEDO や環境省による CNF 関連技術開発事業が特許出願の活性化に寄与した と考えられる。さらに、2024 年の「第 10 版⾷品添加物公定書」での微⼩繊維状セルロースの規 格化は、⾷品分野での CNF 応⽤を促進し、新たな市場機会を⽣み出す可能性を⽰唆している。 1.3 戦略的⽰唆 1. ⾼機能 CNF 複合材料への重点投資とニッチ市場開拓: CNF 複合材料は CORE 技術分類で 471 件と最多であり、ゴム、熱可塑性樹脂、⽣分解性ポリマーなど多様な基材との複合化が ̶4̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 進んでいる。特に旭化成がリーダー象限(CAGR +0.442)で牽引する CNF 強化ゴム組成物 (クラスタ 0, 48 件)や⾼剛性樹脂複合化技術(クラスタ 10, 23 件)は成⻑性が⾼い。企業 は、⾃社の強みを持つ材料分野に CNF を組み合わせることで、⾃動⾞部品や電⼦材料といっ た特定の応⽤分野に焦点を当て、⾼付加価値製品を創出するための組成物設計と製造プロセ スの最適化を推進すべきである。 2. 基礎技術の効率化と応⽤製品開発へのリソースシフト: ⽇本製紙(167 件)などの既存⼤ ⼿は、MEGA PULSE で成熟・既存勢⼒象限(CAGR -0.111)に位置し、CNF の製造・分散 技術(クラスタ 2, 75 件; クラスタ 15, 51 件)において強みを持つ。CNF の基本的な製造⽅ 法や分散・安定化技術は確⽴されつつあり、基礎技術の特許競争は⼀段落している。今後は、 既存の製造・分散技術のコストダウンと品質安定化を継続しつつ、⾃社のコア技術と連携した CNF 応⽤製品の開発(CORE 応⽤製品分類 280 件)にリソースを集中し、市場における差別 化を図るべきである。 3. 政策・市場トレンドを活⽤した社会実装の加速: NEBULA 分析によると、2020 年の NEDO や環境省の事業が技術開発を後押しし、2024 年の⾷品添加物公定書での規格化は新たな応⽤ 市場を開拓する可能性を⽰唆している。Global CNF Market は 2031 年には 6.07 億ドルに達 すると予測されており、CAGR 24.7%で成⻑が⾒込まれる。企業は、これらの政策動向を常 に把握し、関連する補助⾦制度や実証事業に積極的に参加することで、研究開発コストを抑 制しつつ、CNF 製品の早期市場投⼊と普及を⽬指すべきである。特に、⾷品添加物としての 規格化を機に、⾷品分野での CNF 応⽤を検討することは新たなビジネスチャンスを創出する。 ̶5̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 2. NEBULA: 環境分析 Figure 1 ハイプサイクル分析 2.1 セルロースナノファイバー分野の技術ライフサイクルとマクロ環 境影響 セルロースナノファイバー(CNF)分野は、特許、論⽂、ニュースの各トレンドから、技術開発の 初期段階から社会実装への移⾏期にあることが⽰唆される。特許出願件数は 2019 年に 208 件で ピークを迎え、その後減少傾向にあるものの、2023 年でも 78 件の出願が⾒られる(NEBULA デ ータ)。⼀⽅、学術論⽂の出願件数は 2019 年に 100 件でピークに達した後、2022 年には 34 件、 2023 年には 36 件と減少しているものの、2024 年には 40 件とわずかに回復している(NEBULA データ)。ニュース記事は 2023 年に 65 件でピークを記録し、2024 年にも 61 件と⾼い⽔準を維 持しており、市場への関⼼が⾼まっていることを⽰している(NEBULA データ)。この動向は、 初期の研究開発が⼀段落し、実⽤化に向けた動きが活発化しているフェーズと解釈できる(Figure 1)。 研究から実装へのタイムラグを⾒ると、学術論⽂のピークが 2019 年、特許出願のピークも 2019 ̶6̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 年と同時期に発⽣しており、基礎研究の成果が⽐較的迅速に特許出願に結びついていることが⽰唆 される(NEBULA データ)。しかし、ニュース記事のピークが 2023 年と、特許・論⽂のピークか ら約 4 年後に到来していることから、技術的な成熟から市場での認知・実⽤化検討に⾄るまでに⼀ 定の時間を要していることがわかる(NEBULA データ)。このタイムラグは、CNF が新たな素材 であるため、市場への浸透やサプライチェーンの構築に時間を要していることを⽰唆している。 マクロ環境イベントは、CNF 分野の技術トレンドに⼤きな影響を与えている。政策⾯では、「プ ラスチック資源循環戦略(2019 年)」や「バイオプラスチック導⼊ロードマップ(2021 年)」 と い っ た 環 境 規 制 や 政 策 が 、 Renewable 材 の 採 ⽤ を 促 進 し 、 CNF の 需 要 を 喚 起 し て い る (NEBULA データ)。また、「NEDO「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技 術開発」(2020 年)」や「環境省「セルロースナノファイバー(CNF)等の次世代素材活⽤推進 事業」(2020 年)」のような政府主導の研究開発⽀援は、CNF の低コスト化や⽤途拡⼤を後押し し、特許出願の増加に寄与したと考えられる(NEBULA データ)。市場⾯では、2023 年の 「Global CNF Market Outlook 2032」で世界市場が 2032 年に約 15 億ドルに達する⾒通しが⽰ されるなど、CNF 市場の成⻑期待が⾼まっている(NEBULA データ)。特に、⽇本製紙とヤマハ 発動機による「Nippon Paper & Yamaha CNF Alliance 2022」のような企業間の協業は、CNF の 商⽤化を加速させる具体的な動きとして注⽬される(NEBULA データ)。これらの政策的・市場 的インセンティブが、特許出願の増加、そしてその後のニュース記事の増加という形で現れている と推察される。 学術論⽂のトレンドを⾒ると、2025 年の論⽂サンプルには「Metal-Organic Frameworks Coated Cellulose Nanofibers for Localized Carbon Dioxide Capture」(International Journal of Energy Research)や「Synthesis of Cellulose Nanofibers for Solid Electrolytes: Advancing Sustainable Energy Storage」(ECS Meeting Abstracts)といった、CO2 回収やエネルギー貯 蔵といった環境・エネルギー分野での応⽤に関する研究が⾒られる(NEBULA データ)。これは、 CNF が持つ軽量性、⾼強度、⽣分解性といった特性を活かし、持続可能な社会の実現に貢献する 素材としての可能性が探求されていることを⽰している。ニュースのトレンドでは、2025 年の ̶7̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 「バンドー化学、世界初、CNF 複合化ゴム適⽤ベルトに注⼒」(ゴム報知新聞NEXT)や「東 ソー、CNF 複合ゴムの量産体制を整備」(⽇本経済新聞)といった記事から、CNF をゴムや合成 樹脂に複合化し、⾃動⾞部品や物流容器など、より実⽤的な製品への適⽤が進んでいることがうか がえる(NEBULA データ)。また、「伊藤忠商事は 2025 年 7 ⽉、CNF 強化プラスチック製物流 容器の実証プロジェクトを発表」というニュースは、CNF が具体的なサプライチェーンに組み込 まれ、実証段階に⼊っていることを⽰唆している(NEBULA データ)。 Key Insight 主要仮説 1: 環境規制と持続可能性への意識が CNF 市場成⻑の主要なドライバ ーである Key Insight 「プラスチック資源循環戦略(2019 年)」や「バイオプラスチック導⼊ロー ドマップ(2021 年)」などの政策、および「Global CNF Market Forecast 2031」におけ る持続可能素材への注⽬が、CNF の市場成⻑を牽引している。 Key Insight 主要仮説 2: CNF の⽤途は機能性添加剤から構造材料へと拡⼤しつつある Key Insight 2023 年の⽇本国内市場では化粧品・⾷品・インク・塗料向けの機能性添加剤 ⽤途が中⼼であると報告されているが、⽇本製紙とヤマハ発動機の協業による⽔上バイク⽤ エンジン部品への採⽤や、伊藤忠商事による CNF 強化プラスチック製物流容器の実証プロ ジェクトなど、より構造的な⽤途への展開が進んでいる。 Key Insight 主要仮説 3: 政府による研究開発⽀援が CNF の社会実装を加速させている Key Insight NEDO や環境省による CNF 関連技術開発⽀援プロジェクトは、低コスト化、 製造プロセス⾰新、安全性・LCA 評価を推進し、CNF の量産化と⽤途拡⼤を後押ししてい る。 Key Insight 主要仮説 4: 国際標準化の進展が CNF の普及を促進する Key Insight 「 ISO/TS 21346:2021 Nanotechnologies ̶ Characterization of individualized cellulose nanofibril samples」の策定は、CNF の品質⽐較可能性を確保し、 サプライヤーとユーザー間の取引を円滑化することで、市場拡⼤に寄与すると考えられる。 Key Insight 主要仮説 5: サプライチェーンの構築と量産化技術の確⽴が今後の市場成⻑の ̶8̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 鍵となる Key Insight 「ナノセルロースジャパン設⽴(2020 年)」による標準化・⽤途開拓、およ び東ソーや川之江造機による CNF 複合ゴム⽣産強化や加⼯装置開発のニュースは、CNF の 量産化とサプライチェーンの整備が市場成⻑のボトルネック解消に向けて進んでいることを ⽰している。 優先度⾼: CNF の⽤途開発において、軽量化・⾼強度化が求められる⾃動⾞・航空宇宙分野や、環 境負荷低減が重視される包装材・建材分野に注⼒し、市場ニーズに合致した製品開発を加速させる。 優先度中: 政府の研究開発助成プログラムや実証事業への積極的な参画を通じて、低コスト製造技 術や安全性評価技術の確⽴を推進し、CNF の社会実装を加速させる。 優先度低: 国際標準化動向を注視し、ISO 等の規格に準拠した製品開発や品質管理体制を構築する ことで、グローバル市場での競争優位性を確保する。 ̶9̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 3. ATLAS: セルロースナノファイバー分野の技 術動向分析 Figure 2 出願年推移 Figure 3 出願⼈ランキング セルロースナノファイバー(CNF)分野における特許出願は、2015 年から 2024 年の期間で総計 1176 件に達し、活発な研究開発活動を⽰している。この期間の技術動向を分析することで、CNF が様々な産業分野で注⽬され、その応⽤範囲が拡⼤していることが明らかになる。特に、素材開発、 製造プロセス、および複合材料への応⽤に関する技術⾰新が顕著である。 ̶ 10 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 3.1 出願トレンドとライフサイクルステージ セルロースナノファイバー分野の特許出願は、2015 年から 2024 年の期間において複数の変曲点 を伴う動的な推移を⽰している(Figure 2)。この期間は⼤きく 3 つのフェーズに区分できる。ま ず、2015 年から 2019 年にかけては出願件数が持続的に増加する成⻑期であり、95 件(2015 年) から 208 件(2019 年)へと約 2.2 倍に拡⼤した。この初期成⻑期には、「セルロース微細繊維含 有物及びその製造⽅法、並びにセルロース微細繊維分散液」(⼤王製紙, 2017 年)[2017142795] や「アニオン変性セルロースナノファイバーの乾燥固形物及びその製造⽅法」(⽇本製 紙, 2015 年)[2015-557819] といった、CNF の基本的な製造⽅法や分散技術に関する特許が多 く⾒られる。次に、2020 年から 2021 年にかけては、出願件数が 143 件(2020 年)から 83 件 (2021 年)へと⼀時的に減少する調整期を迎えた。これは、初期の研究開発フェーズが⼀巡し、 実⽤化に向けた技術の絞り込みや、COVID-19 パンデミックによる研究投資の⼀時的な停滞が影 響した可能性が考えられる。この時期には、「混合液」(⽇本製紙, 2020 年)[2020-566010] の ように、CNF の多様な応⽤を可能にするための複合材料技術への関⼼が⾼まった。最後に、2022 年以降は再び出願件数が 103 件(2022 年)へと回復基調にあるものの、2023 年には 78 件、 2024 年には 9 件(データ期間途中)と、再び減少傾向を⽰している。この最新の動向は、市場が 成熟期に移⾏しつつある可能性、あるいは特定の応⽤分野への集中が進んでいる可能性を⽰唆して いる。 この分野のライフサイクルステージを評価すると、2015 年から 2019 年の CAGR が約+26.6% (95 件→208 件)と⾼成⻑を⽰したことから、初期の成⻑期に位置づけられる。しかし、2019 年 をピークにその後の出願件数が減少傾向にあるため、現在は成熟期への移⾏期、あるいは⼀時的な 停滞期にあると判断できる。特に、2020 年以降の出願件数の変動は、技術開発の焦点が基礎研究 から特定の応⽤分野へとシフトし、より実⽤的な課題解決に注⼒していることを⽰唆している。 ̶ 11 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report Key Insight 洞察: セルロースナノファイバー分野は、2019 年をピークとする成⻑期を経 て、現在は成熟期への移⾏期にある。初期の製造・分散技術から、特定の応⽤分野に特化し た技術開発へと重⼼がシフトしている。 優先度⾼: 現在の技術開発のトレンドを詳細に分析し、どの応⽤分野(例: ⾃動⾞、建材、医療な ど)で特許出願が活発化しているのかを特定する。 3.2 競争構造と主要出願⼈の戦略 セルロースナノファイバー分野の競争構造は、HHI 値が 0.038 と「分散型」を⽰しており、特定 の企業による寡占状態ではなく、多数のプレイヤーが技術開発に参⼊していることを⽰している。 上位出願⼈を⾒ると、⽇本製紙が 167 件(14.2%)でトップを占め、次いで⼤王製紙が 86 件 (7.3%)、王⼦ホールディングスが 77 件(6.5%)、旭化成が 76 件(6.5%)と続く(Figure 3)。上位 4 社で全体の約 34.5%を占めるものの、残りの約 65.5%は多数の企業や研究機関によ って分散されていることから、多様な技術アプローチが存在する競争環境であると⾔える。 上位 5 社の出願パターンと戦略プロファイルを⾒ると、⽇本製紙は CNF の製造⽅法や乾燥技術に 関する基礎的な特許を多数出願しており、例えば「アニオン変性セルロースナノファイバーの乾燥 固形物及びその製造⽅法」(⽇本製紙, 2015 年)[2015-557819] や「混合液」(⽇本製紙, 2020 年)[2020-566010] など、CNF の安定供給と多様な利⽤形態を可能にする技術に注⼒している。 ⼤王製紙も同様に CNF の製造プロセスに強みを持ち、「セルロース微細繊維含有物及びその製造 ⽅法、並びにセルロース微細繊維分散液」(⼤王製紙, 2017 年)[2017-142795] や「セルロー ス微細繊維及びその製造⽅法」(⼤王製紙, 2017 年)[2017-035663] のように、効率的な製造 と分散技術の開発に⼒を⼊れている。王⼦ホールディングスは、「微細繊維状セルロース、分散液、 シート及び微細繊維状セルロースの製造⽅法」(王⼦ホールディングス, 2021 年)[2021084169] に⾒られるように、CNF の形態制御やシート化技術など、特定の応⽤製品への展開を⾒ 据えた技術開発を進めている。旭化成は、CNF を改質剤として利⽤する応⽤技術に焦点を当てて ̶ 12 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report おり、「ゴム改質⽤マスターバッチ、及び低分岐共役ジエン系重合体組成物」(旭化成, 2023 年) [2024-146493] のように、CNF を既存の材料と組み合わせることで新たな機能を引き出す戦略を とっている。⼤阪ガスは、CNF の製造や応⽤に関する具体的な特許情報が提供データからは読み 取れないものの、エネルギー分野における CNF の利⽤可能性を模索していると考えられる。 Key Insight 洞察: CNF 分野は分散型の競争環境にあり、製紙会社が製造プロセス技術で先 ⾏する⼀⽅で、化学メーカーは CNF を既存材料と組み合わせる応⽤技術で差別化を図って いる。 優先度中: 主要出願⼈各社の CNF 関連事業戦略を深掘りし、⾃社のポジショニングとの⽐較を通じ て、競合優位性を確⽴するための具体的なアクションプランを策定する。 ̶ 13 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 4. 技術領域の多様性と重点分野 セルロースナノファイバー分野の技術領域は、IPC 分類からその多様性と重点分野を把握できる。 最も多くの出願が集中しているのは C08L(有機⾼分⼦組成物)で 671 件(57.1%)であり、CNF を他の⾼分⼦と複合化する技術が活発であることを⽰している。次いで D21H(紙の製造)が 433 件(36.8%)、C08B(多糖類とその誘導体)が 353 件(30.0%)、C08K(⾼分⼦組成物への添 加剤)が 330 件(28.1%)、C08J(⾼分⼦の化学的または物理的処理)が 321 件(27.3%)と 続く。これらの IPC 上位分類は、CNF が主に⾼分⼦材料の補強材や添加剤として利⽤され、特に 紙製品への応⽤、CNF ⾃体の製造プロセス、およびその改質技術が研究開発の中⼼であることを 明確に⽰している。 ミクロ分析として、2015 年から 2019 年の期間では、C08B や D21H といった CNF の製造や紙へ の応⽤に関する基礎的な技術開発が中⼼であった。例えば、「セルロース微細繊維含有物及びその 製造⽅法、並びにセルロース微細繊維分散液」(⼤王製紙, 2017 年)[2017-142795] や「アニ オン変性セルロースナノファイバーの乾燥固形物及びその製造⽅法」(⽇本製紙, 2015 年) [2015-557819] は、CNF の製造技術の確⽴を⽬指すものであった。⼀⽅、2020 年から 2024 年 の期間では、C08L や C08K といった CNF を他の材料と組み合わせる応⽤技術や、特定の機能を持 たせるための改質技術へのシフトが⾒られる。「ゴム改質⽤マスターバッチ、及び低分岐共役ジエ ン系重合体組成物」(旭化成, 2023 年)[2024-146493] は、CNF をゴム材料の改質剤として利 ⽤する具体的な応⽤例であり、CNF の⾼性能化や多機能化への関⼼が⾼まっていることを⽰唆し ている。この技術領域の多様性は、CNF が単⼀の素材としてではなく、様々な産業分野で既存材 料の性能向上や新規機能付与に貢献する「プラットフォーム材料」としての可能性を秘めているこ とを⽰している。 Key Insight 洞察: CNF 技術開発は、初期の製造・基礎プロセスから、⾼分⼦材料との複合 化や特定⽤途への応⽤技術へと進化している。 ̶ 14 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 優先度⾼: ⾃社のコア技術と CNF の応⽤可能性を照らし合わせ、特に C08L や C08K といった複合 材料・添加剤関連の IPC において、未開拓のニッチ市場や⾼付加価値領域を特定し、重点的な特許 出願戦略を⽴案する。 ̶ 15 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 5. CORE: セルロースナノファイバー分野におけ る技術・課題・解決⼿段の構造分析 Figure 4 3 軸分類ヒートマップ セルロースナノファイバー(CNF)分野の特許出願 1176 件を対象とした 3 軸分類分析により、技 術開発の全体像と主要なトレンドが明らかになった。技術分類軸では「CNF 複合材料」が 471 件 (40.0%)と最も多く、次いで「CNF 応⽤製品」が 280 件(23.8%)を占め、CNF を基盤とし た材料開発と製品応⽤への関⼼の⾼さを⽰している(Figure 4)。⼀⽅、課題分類軸では「物性向 上」が 474 件(40.3%)と突出しており、CNF の基本的な性能向上へのニーズが強いことが伺え る(Figure 4)。解決⼿段分類軸では「組成物設計」が 555 件(47.2%)と約半数を占め、材料 の配合や構成によるアプローチが主流であることが⽰されている(Figure 4)。 Key Insight 全体構造の洞察: CNF 分野は、複合材料や応⽤製品の開発を通じて、物性向上 という主要課題に対し、組成物設計を核とする多⾓的なアプローチで解決を図っている。 5.1 技術分類軸の重点分析 ̶ 16 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 技術分類軸では、「CNF 複合材料」が 471 件(40.0%)と最も⼤きな割合を占め、CNF と他の材 料を組み合わせることで新たな機能や性能を引き出す研究開発が活発であることを⽰している (Figure 4)。これは、CNF 単体では達成しにくい特性を補完し、幅広い⽤途への適⽤を⽬指す 動きと解釈できる。続く「CNF 応⽤製品」は 280 件(23.8%)であり、具体的な製品への実装に 向けた開発が進んでいることを⽰唆している(Figure 4)。例えば、軽量化や⾼強度化が求められ る⾃動⾞部品や電⼦材料、または⽣体適合性が重視される医療分野など、多岐にわたる応⽤製品の 開発が推し進められていると考えられる。⼀⽅で、「CNF 化学修飾」は 84 件(7.1%)と⽐較的 少数であり、CNF 表⾯の化学的改質による機能付与は、まだ発展途上の領域である可能性が⽰唆 される(Figure 4)。 優先度⾼: 「CNF 複合材料」および「CNF 応⽤製品」における⾃社の技術ポートフォリオを強化 し、市場投⼊を加速させるための戦略的投資を検討する。 5.2 課題分類軸の分析 課題分類軸では、「物性向上」が 474 件(40.3%)と圧倒的に多く、CNF の強度、剛性、耐熱性、 ⼨法安定性といった基本的な物理的・化学的特性のさらなる向上が依然として主要な研究開発課題 であることが明らかになった(Figure 4)。これは、CNF が持つ潜在能⼒を最⼤限に引き出し、 より⾼性能な材料として実⽤化するための基盤技術の確⽴が求められていることを⽰している。次 いで「製造効率・安定性」が 218 件(18.5%)、「機能性付与」が 205 件(17.4%)、「分散 性・均⼀性」が 197 件(16.7%)と続き、CNF の量産化や特定機能の付与、および材料中での均 ⼀な分散といった実⽤化に向けた課題解決も重視されていることがわかる(Figure 4)。⼀⽅で、 「環境負荷低減」は 27 件(2.3%)と極めて少なく、CNF が元来持つ環境配慮型材料としての特 性から、この課題への特許出願はまだ限定的であると推察される(Figure 4)。 ̶ 17 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 優先度中: 「物性向上」への継続的な投資に加え、「製造効率・安定性」や「分散性・均⼀性」と いった実⽤化に直結する課題解決にも注⼒し、市場競争⼒を⾼める。 5.3 解決⼿段分類軸の分析 解決⼿段分類軸では、「組成物設計」が 555 件(47.2%)と最も多く、CNF を様々な材料と組み 合わせることで、⽬的とする特性を実現しようとするアプローチが主流であることが⽰されている (Figure 4)。これは、CNF の特性を最⼤限に引き出すために、マトリックス材料の種類、配合 ⽐率、添加剤の選択などが重要な要素となっていることを意味する。次に「製造プロセス」が 337 件(28.7%)と続き、CNF の製造⽅法⾃体や、CNF を組み込んだ材料の加⼯⽅法に関する技術開 発が活発であることがわかる(Figure 4)。これは、CNF の品質安定化や⽣産コスト削減に直結 する重要な領域である。⼀⽅、「表⾯改質」は 76 件(6.5%)、「構造制御」は 70 件(5.9%) と⽐較的少数であり、CNF の表⾯特性を直接的に改変したり、ナノスケールでの構造を精密に制 御したりする技術は、まだ発展途上であるか、あるいは特定のニッチな⽤途に限定されている可能 性が⽰唆される(Figure 4)。 優先度⾼: 「組成物設計」における多様なアプローチをさらに深掘りし、CNF の潜在能⼒を最⼤限 に引き出すための新規材料開発を推進する。 5.4 軸間クロス分析の⽰唆 技術分類軸と課題分類軸のクロス分析では、「CNF 複合材料」と「物性向上」の組み合わせが最 も多く、CNF を複合材料として利⽤する際に、強度や耐久性といった基本的な物性向上を⽬指す 開発が活発であることが⽰されている(Figure 4)。これは、CNF の軽量性や⾼強度といった特 性を活かしつつ、他の材料との組み合わせでさらに⾼性能な材料を創出しようとする主要なトレン ̶ 18 ̶

19.

APOLLO SPACE | Patent Landscape Report ドを反映している。また、「CNF 応⽤製品」と「機能性付与」の組み合わせも多く⾒られ、特定 の応⽤分野で求められる機能(例︓導電性、透明性、ガスバリア性)を CNF ベースの製品に付与 する研究が進んでいることがわかる(Figure 4)。 課題分類軸と解決⼿段分類軸のクロス分析では、「物性向上」の課題に対して「組成物設計」によ る解決⼿段が最も多く採⽤されており、材料の配合や構成の最適化が物性改善の主要なアプローチ であることが確認できる(Figure 4)。さらに、「製造効率・安定性」の課題に対しては「製造プ ロセス」による解決⼿段が多く、⽣産性の向上や品質の安定化には、プロセスの改善が不可⽋であ ることが⽰唆される(Figure 4)。 Key Insight クロス分析の洞察: CNF 分野では、複合材料化を通じて物性向上を⽬指し、そ の実現のために組成物設計と製造プロセス改善が主要な解決⼿段として機能している。 5.5 技術ギャップ分析 技術分類軸における「CNF 化学修飾」は 84 件(7.1%)と少数であり、CNF 表⾯の化学的な改質 による機能付与や、他の材料との親和性向上に関する技術は、まだ開拓の余地が⼤きい領域である (Figure 4)。同様に、解決⼿段分類軸の「表⾯改質」は 76 件(6.5%)、「構造制御」は 70 件 (5.9%)と少数であり、CNF のナノスケールでの精密な制御や表⾯機能化技術は、今後のブレー クスルーが期待される技術ギャップと⾔える(Figure 4)。これらの領域は、CNF の新たな機能 性発現や、既存の課題解決における画期的なアプローチを提供する可能性を秘めている。特に、特 定の応⽤分野で要求される⾼度な機能性や、特定の材料との界⾯接着性向上には、これらの技術の 進展が不可⽋となる。 優先度⾼: 「CNF 化学修飾」、「表⾯改質」、「構造制御」といった少数カテゴリへの戦略的な R&D 投資を検討し、将来的な技術優位性を確⽴する。 ̶ 19 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 5.6 「その他」カテゴリ分析 技術分類軸の「その他」は 50 件(4.3%)、課題分類軸の「その他」は 55 件(4.7%)、解決⼿ 段分類軸の「その他」は 8 件(0.7%)であった(Figure 4)。これらの「その他」カテゴリは、 現⾏の分類軸では捉えきれない、新たな技術領域や未定義の課題、あるいは⾮典型的な解決⼿段を ⽰唆している可能性がある。特に、技術分類軸と課題分類軸における「その他」の件数が⽐較的多 いことは、CNF 分野がまだ発展途上であり、多様な研究開発の⽅向性が模索されている段階であ ることを⽰唆している。これらの少数カテゴリの中には、将来的に主流となる可能性を秘めた萌芽 的な技術や、既存の枠組みでは解決が難しいユニークな課題が含まれている可能性があるため、継 続的なモニタリングが重要である。 優先度中: 「その他」カテゴリに含まれる特許を定期的にレビューし、新たな技術トレンドや潜在 的な破壊的イノベーションの兆候を早期に特定するための体制を構築する。 ̶ 20 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 6. Saturn V: AI ランドスケープ分析 Figure 5 技術クラスタマップ セルロースナノファイバー(CNF)分野の技術動向分析の結果、総特許数 1176 件が 27 の技術ク ラスタに分類された(Figure 5)。ノイズ率は 44.9%と⾮常に⾼く、これは CNF 技術が未だ広範 な応⽤領域で探索段階にあり、技術の⽅向性が多様化している「発散」フェーズにあることを⽰唆 している。この⾼いノイズ率は、特定の⽤途や課題に対する初期的な試⾏錯誤が多く、標準化され た技術アプローチが確⽴されていない現状を反映しており、今後の技術統合や収斂の可能性を秘め ている(Figure 5)。 6.1 クラスタ規模階層構造 CNF 分野の技術クラスタは、特許件数に基づきメガ、ミドル、マイクロの 3 層構造に分類できる (Figure 5)。メガクラスタとしては、クラスタ 2「化学変性 CNF の乾燥・再分散性改善」(75 ̶ 21 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 件)、クラスタ 4「CNF 成形体の⾼強度化と 3D 形状加⼯」(69 件)、クラスタ 21「CNF 強化ポ リアミド・ポリアセタール樹脂」(69 件)、クラスタ 24「CNF 含有紙の強度・機能性付与と製造 効率」(64 件)が挙げられ、これらは CNF の基礎的な課題解決や主要な応⽤領域における研究開 発が活発であることを⽰している。ミドルクラスタには、クラスタ 3「CNF 含有シートの強度・機 能性向上」(54 件)、クラスタ 8「CNF 含有樹脂組成物の安定化と難燃性付与」(51 件)、クラ スタ 13「CNF 強化⽣分解性ポリマー複合材料」(48 件)、クラスタ 14「CNF 製造プロセスの効 率化と品質安定化」(51 件)、クラスタ 15「化学変性 CNF の効率的製造と物性制御」(51 件)、 クラスタ 16「CNF 強化ゴムの低発熱・⾼耐久性化」(45 件)、クラスタ 17「CNF の化学修飾と ⾼機能分散液製造」(44 件)、クラスタ 22「CNF 複合⾼分⼦材料の機械的物性向上」(41 件)、 クラスタ 26「CNF 含有ポリウレタンの製造と物性制御」(40 件)が含まれ、これらは CNF の機 能性向上や特定の材料との複合化に関する多様な取り組みを⽰唆している。マイクロクラスタは、 クラスタ 0「CNF 強化ゴム組成物の分散性向上技術」(48 件)、クラスタ 1「CNF 複合材料の疎 ⽔化・分散性制御」(35 件)、クラスタ 5「3D プリンタ⽤ CNF 複合樹脂材料」(24 件)、クラ スタ 7「CNF 複合エポキシ樹脂の低熱膨張・⾼靭性化」(28 件)、クラスタ 9「CNF 複合導電 性・熱電変換材料」(26 件)、クラスタ 10「CNF 乾燥体の⾼剛性樹脂複合化」(23 件)、クラ スタ 11「CNF 分散剤および CNF 含有機能性組成物」(31 件)、クラスタ 12「CNF 配合⽔解性・ 清掃⽤シートの機能設計」(24 件)、クラスタ 18「CNF 複合ハイドロゲルとバイオセンサ応⽤」 (24 件)、クラスタ 19「疎⽔性 CNF の油性分散液と化粧品応⽤」(19 件)、クラスタ 20「CNF 分散液の透明性・粘度制御と塗⼯適性」(30 件)、クラスタ 23「CNF 強化⽣分解性ポリマーの耐 光性向上」(16 件)、クラスタ 25「CNF リチウムイオン電池⽤電極・セパレータ」(7 件)とい った⼩規模なクラスタ群で構成され、これらは CNF のニッチな応⽤や特定の機能付与に関する探 索的な研究開発が⾏われていることを⽰している(Figure 5)。 6.2 技術グルーピング(超領域分析) 6.2.1 🅰 CNF の基礎特性制御と製造プロセス最適化 ̶ 22 ̶

23.

APOLLO SPACE | Patent Landscape Report この超領域は、CNF そのものの物性制御、製造効率化、および分散性・乾燥性といった基礎的な 課題解決に焦点を当てている。具体的には、クラスタ 2「化学変性 CNF の乾燥・再分散性改善」 (75 件)では、⽇本製紙の「アニオン変性セルロースナノファイバーの乾燥固形物及びその製造 ⽅法」(⽇本製紙, 2015 年)[2015-557819]に⾒られるように、CNF の保存・輸送に適した乾燥 技術と再分散性の改善が重要なテーマとなっている。また、クラスタ 14「CNF 製造プロセスの効 率化と品質安定化」(51 件)では、⼤王製紙の「セルロースナノファイバー乾燥体の製造⽅法」 (⼤王製紙, 2015 年)[2017-203156]のように、製造プロセスの効率化と品質安定化に関する技 術開発が進められている。さらに、クラスタ 15「化学変性 CNF の効率的製造と物性制御」(51 件)では、⼤王製紙の「セルロース微細繊維含有物及びその製造⽅法、並びにセルロース微細繊維 分散液」(⼤王製紙, 2017 年)[2017-142795]が⽰すように、化学変性による CNF の機能付与 と効率的な製造⽅法が探求されている。この領域は、CNF の産業利⽤を拡⼤するための基盤技術 確⽴に不可⽋であり、今後の応⽤展開を左右する重要な技術基盤である(Figure 5)。 6.2.2 🅱 CNF 複合材料の機能性向上と多様な応⽤展開 この超領域は、CNF を様々な材料と複合化することで、機械的特性、熱的特性、電気的特性など の機能性を向上させ、幅広い⽤途への応⽤を⽬指す技術群である。クラスタ 4「CNF 成形体の⾼強 度化と 3D 形状加⼯」(69 件)では、⼤王製紙の「セルロースナノファイバー成形体」(⼤王製 紙, 2017 年)[2017-171337]のように、CNF を⽤いた⾼強度成形体の開発が進んでいる。クラス タ 6「CNF 強化熱可塑性・熱硬化性樹脂」(50 件)では、中越パルプ⼯業の「誘導体化CNFの 製造⽅法及び⾼分⼦化合物樹脂組成物の製造⽅法」(中越パルプ⼯業, 2015 年)[2016-534435] のように、CNF を熱可塑性・熱硬化性樹脂に複合化し、その物性向上を図る研究が活発である。 また、クラスタ 8「CNF 含有樹脂組成物の安定化と難燃性付与」(51 件)では、ADEKAの 「添加剤組成物、これを含有する熱可塑性樹脂組成物、その成形品、熱可塑性樹脂組成物の製造⽅ 法および熱可塑性樹脂組成物の安定化⽅法」(ADEKA, 2020 年)[2023-221398]が⽰すよう に、CNF 複合樹脂の安定性や難燃性向上に焦点が当てられている。さらに、クラスタ 13「CNF 強 化⽣分解性ポリマー複合材料」(48 件)では、京都⼤学他の「化学修飾セルロースナノファイバ ー及び熱可塑性樹脂を含有する繊維強化樹脂組成物」(京都⼤学;京都市産業技術研究所;王⼦ホー ̶ 23 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report ルディングス;⽇本製紙;CHEMIPAZ, 2015 年)[2015-240084]のように、環境負荷低減に 資する⽣分解性ポリマーとの複合化も進められている。この領域は、CNF の⾼性能材料としての 可能性を最⼤限に引き出し、⾃動⾞、建材、電⼦部品など幅広い産業分野への適⽤を⽬指している (Figure 5)。 6.2.3 🅲 特定⽤途向け CNF 材料と製品開発 この超領域は、CNF の特定の機能性を活⽤し、具体的な製品やシステムへの応⽤を⽬指す技術群 である。クラスタ 3「CNF 含有シートの強度・機能性向上」(54 件)では、王⼦ホールディング スの「シート及びシートの製造⽅法」(王⼦ホールディングス, 2019 年)[2019-050583]のよう に、CNF を⽤いた⾼機能シートの開発が進められている。クラスタ 5「3D プリンタ⽤ CNF 複合樹 脂材料」(24 件)では、スターライト⼯業の「3Dプリンタ⽤造形材料、その製造⽅法、および 三次元造形物」(スターライト⼯業, 2017 年)[2017-002588]が⽰すように、3D プリンタ⽤材 料としての CNF 複合樹脂の開発が進展している。クラスタ 16「CNF 強化ゴムの低発熱・⾼耐久性 化」(45 件)では、バンドー化学の「ゴム組成物及びそれを⽤いた伝動ベルト」(バンドー化学, 2017 年)[2017-548082]のように、ゴム製品の性能向上に CNF が活⽤されている。また、クラ スタ 19「疎⽔性 CNF の油性分散液と化粧品応⽤」(19 件)では、中越パルプ⼯業の「油性増粘 剤、それを配合した油性増粘剤組成物、およびそれを配合した化粧品」(中越パルプ⼯業, 2018 年)[2018-563186]が⽰すように、CNF の化粧品分野への応⽤も探索されている。さらに、クラ スタ 25「CNF リチウムイオン電池⽤電極・セパレータ」(7 件)では、東亜合成の「電池電極⽤ バインダー組成物及びその製造⽅法、電池電極作製⽤組成物及びその製造⽅法、電極、並びに電池」 (東亜合成, 2021 年)[2021-024563]のように、次世代電池材料としての CNF の可能性も探ら れている。この領域は、CNF の多様な特性を活かし、特定の市場ニーズに応える製品開発に注⼒ している(Figure 5)。 6.3 超領域間ブリッジ戦略分析 ̶ 24 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report CNF 分野の技術動向を⾒ると、「🅰 CNF の基礎特性制御と製造プロセス最適化」と「🅱 CNF 複 合材料の機能性向上と多様な応⽤展開」の間には強い連携が⾒られる。🅰領域での CNF の乾燥・ 再分散性改善や効率的な製造技術の確⽴は、🅱領域での⾼機能複合材料開発のボトルネックを解消 し、より⾼性能な製品を⽣み出すための基盤となる。例えば、クラスタ 2「化学変性 CNF の乾燥・ 再分散性改善」で開発された技術は、クラスタ 21「CNF 強化ポリアミド・ポリアセタール樹脂」 やクラスタ 22「CNF 複合⾼分⼦材料の機械的物性向上」における CNF の均⼀分散と⾼負荷充填を 可能にし、複合材料の機械的物性向上に直結する。 また、「🅱 CNF 複合材料の機能性向上と多様な応⽤展開」と「🅲 特定⽤途向け CNF 材料と製品開 発」の間にも密接な関係がある。🅱領域で開発された⾼強度、⾼靭性、難燃性などの機能を持つ CNF 複合材料は、🅲領域におけるシート、成形体、ゴム製品、さらには 3D プリンタ⽤材料や電池 材料といった具体的な製品開発に直接的に貢献する。例えば、クラスタ 4「CNF 成形体の⾼強度化 と 3D 形状加⼯」やクラスタ 6「CNF 強化熱可塑性・熱硬化性樹脂」で得られた知⾒は、クラスタ 5「3D プリンタ⽤ CNF 複合樹脂材料」における造形材料の性能向上に寄与する。 Key Insight 洞察: 垂直統合型イノベーションの重要性: CNF 分野では、基礎技術開発(🅰) から⾼機能材料開発(🅱)、そして最終製品応⽤(🅲)へと続く垂直統合的なイノベーショ ンパスが重要である。各超領域間の技術ブリッジを強化することで、CNF の産業化を加速で きる。 優先度⾼: CNF の分散性・乾燥性といった基礎物性に関する研究開発を強化し、特に製造コスト低 減と品質安定化に資する技術の確⽴を推進する。これは、⾼機能複合材料開発のボトルネックを解 消し、多様な応⽤展開を可能にするための前提条件となる。 6.4 ホワイトスペース分析 現在の CNF 特許ランドスケープにおいて、特定の機能領域で特許件数が少ないホワイトスペース ̶ 25 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report がいくつか存在する(Figure 5)。例えば、クラスタ 25「CNF リチウムイオン電池⽤電極・セパ レータ」は 7 件と⾮常に少なく、CNF の電気化学的特性を活かしたエネルギー貯蔵デバイスへの 応⽤はまだ初期段階にあることを⽰唆している。同様に、クラスタ 18「CNF 複合ハイドロゲルと バイオセンサ応⽤」(24 件)やクラスタ 19「疎⽔性 CNF の油性分散液と化粧品応⽤」(19 件) も⽐較的件数が少なく、バイオメディカル分野や化粧品分野における CNF の潜在的な応⽤は未開 拓の領域が多いと⾔える。これらの領域は、CNF のユニークな特性(⾼⽐表⾯積、⽣体適合性、 レオロジー制御など)を最⼤限に活⽤することで、新たな市場を創出する可能性を秘めている。 Key Insight 洞察: 新規市場創出の機会: エネルギー、バイオメディカル、化粧品といった 分野における CNF の応⽤は、現在のところ特許件数が少なく、⼤きなホワイトスペースと なっている。これらの領域は、CNF の新たな⾼付加価値市場を創出する潜在的な機会を提供 する。 優先度中: リチウムイオン電池、バイオセンサ、化粧品といったニッチながらも成⻑が期待される 市場セグメントに対し、CNF の特性を活かした応⽤研究を強化する。特に、既存技術では達成困 難な CNF 特有の機能性発現を⽬指す。 6.5 ノイズ分析 本分析におけるノイズ率は 44.9%と⾮常に⾼く、これは CNF 技術分野が「発散」フェーズにある ことを明確に⽰している(Figure 5)。この⾼いノイズ率は、CNF の基礎研究から応⽤開発に⾄ るまで、多様なアプローチが試みられている現状を反映している。特定の技術的課題に対する標準 的な解決策がまだ確⽴されておらず、多くの企業や研究機関がそれぞれの⽅向性で探索を進めてい る段階である。この発散的な状況は、⼀⽅で技術の未成熟さを⽰すものの、他⽅で新たな技術ブレ ークスルーや予期せぬ応⽤領域の発⾒につながる可能性を秘めている。ノイズの中に埋もれている 個々の特許の中には、将来的に主流となる萌芽技術が含まれている可能性があり、詳細な分析を通 じてこれらを特定することが重要である。 ̶ 26 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report Key Insight 洞察: 萌芽技術の宝庫: ⾼いノイズ率は、CNF 分野がまだ初期段階にあり、多 様な技術探索が⾏われていることを⽰す。このノイズの中から、将来の市場を形成する可能 性のある萌芽技術や、既存の技術課題を根本的に解決するアプローチを発⾒できる可能性が ある。 優先度低: ノイズとして分類された特許群に対し、定期的なスクリーニングを実施し、特定の⽤途 や機能に特化した新しい技術トレンドや、競合他社がまだ注⽬していない潜在的な応⽤分野の萌芽 を抽出する。 6.6 ミクロ分析 A: 主要クラスタの代表特許 6.6.1 クラスタ 2「化学変性 CNF の乾燥・再分散性改善」(75 件) このクラスタは、CNF の取り扱いにおける重要な課題である乾燥と再分散性に関する技術に焦点 を当てている。代表的な特許として、⽇本製紙の「アニオン変性セルロースナノファイバーの乾燥 固形物及びその製造⽅法」(⽇本製紙, 2015 年)[2015-557819]は、アニオン変性 CNF を乾燥 固形物として製造し、その再分散性を向上させる技術を開⽰している。また、同社の「アニオン変 性セルロースナノファイバーの濃縮物、その製造⽅法及びその分散液」(⽇本製紙, 2015 年) [2015-066587]は、濃縮物として CNF を安定的に供給し、利⽤時に容易に分散させる⽅法を提案 している。さらに、「アニオン変性セルロースナノファイバー分散液およびその製造⽅法」(⽇本 製紙, 2017 年)[2017-563814]は、分散液の安定性向上と製造効率化に貢献する。これらの特許 は、CNF の産業利⽤を促進するための物流・加⼯上の課題解決を⽬指している(Figure 5)。 6.6.2 クラスタ 4「CNF 成形体の⾼強度化と 3D 形状加⼯」(69 件) このクラスタは、CNF を⽤いた成形体の機械的特性向上と、複雑な形状への加⼯技術に関するも のである。⼤王製紙の「セルロースナノファイバー成形体」(⼤王製紙, 2017 年)[2017- ̶ 27 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 171337]および「セルロースナノファイバー成形体」(⼤王製紙, 2017 年)[2017-171371]は、 CNF を⾼強度な成形体として利⽤するための技術を⽰している。⽇本製紙の「パルプモールド」 (⽇本製紙, 2017 年)[2017-132473]は、CNF をパルプモールド製品に応⽤し、その強度や機能 性を向上させる技術を開⽰している。これらの特許は、CNF を軽量かつ⾼強度な構造材料として 活⽤するための基盤技術を確⽴しようとしている(Figure 5)。 6.6.3 クラスタ 21「CNF 強化ポリアミド・ポリアセタール樹脂」(69 件) このクラスタは、ポリアミドやポリアセタールといったエンジニアリングプラスチックに CNF を 複合化し、その機械的特性を向上させる技術に特化している。横河電機の「硫酸エステル化修飾セ ルロースナノファイバーおよびセルロースナノファイバーの製造⽅法」(横河電機, 2018 年) [2018-561455]は、CNF の表⾯修飾により樹脂との親和性を⾼め、複合材料の性能を向上させる アプローチを⽰している。⽇本製紙の「セルロースナノファイバー乾燥固形物の製造⽅法」(⽇本 製紙, 2019 年)[2020-509168]は、CNF を乾燥固形物として効率的に樹脂に配合するための技術 を提供している。また、同社の「セルロースナノファイバー分散液の評価⽅法」(⽇本製紙, 2017 年)[2018-533490]は、CNF 分散液の品質を評価し、複合材料の安定した性能を確保するための 重要な技術である。これらの特許は、⾃動⾞部品や電気・電⼦部品など、⾼い機械的強度と耐久性 が求められる分野での CNF の応⽤を⽬指している(Figure 5)。 6.7 ミクロ分析 B: 主要出願⼈ 5 社以上の技術戦略プロファイル 6.7.1 ⽇本製紙 ⽇本製紙は、CNF の製造プロセスから応⽤製品まで幅広い技術領域で活発な出願を⾏っている (Figure 5)。特に、クラスタ 2「化学変性 CNF の乾燥・再分散性改善」(75 件)では、「アニ オン変性セルロースナノファイバーの乾燥固形物及びその製造⽅法」(⽇本製紙, 2015 年) [2015-557819]など、CNF の保存・輸送・利⽤における課題解決に注⼒している。また、クラス ̶ 28 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report タ 24「CNF 含有紙の強度・機能性付与と製造効率」(64 件)では、「セルロース繊維と無機粒⼦ の複合体」(⽇本製紙, 2016 年)[2017-543198]のように、本業である紙製品への CNF 適⽤に よる⾼機能化を図っている。さらに、クラスタ 16「CNF 強化ゴムの低発熱・⾼耐久性化」(45 件) では、「ゴム組成物」(⽇本製紙;兵庫県, 2015 年)[2015-229921]を出願しており、ゴム分野 への応⽤も展開している。同社は CNF の基礎研究から産業応⽤までを⼀貫して⼿掛ける総合的な 戦略を展開していると⾔える。 6.7.2 ⼤王製紙 ⼤王製紙も CNF の製造技術と成形体への応⽤において強いプレゼンスを⽰している(Figure 5)。 クラスタ 4「CNF 成形体の⾼強度化と 3D 形状加⼯」(69 件)では、「セルロースナノファイバ ー成形体」(⼤王製紙, 2017 年)[2017-171337]など、CNF を⽤いた⾼強度成形体の開発に注⼒ している。また、クラスタ 12「CNF 配合⽔解性・清掃⽤シートの機能設計」(24 件)では、「⽔ 解性シート」(⼤王製紙, 2016 年)[2016-193101]のように、⾃社の主要製品である衛⽣⽤品へ の CNF 応⽤を進めている。クラスタ 15「化学変性 CNF の効率的製造と物性制御」(51 件)では、 「セルロース微細繊維含有物及びその製造⽅法、並びにセルロース微細繊維分散液」(⼤王製紙, 2017 年)[2017-142795]など、CNF の製造効率化と物性制御に関する技術開発も活発である。 同社は、CNF の製造から⾃社製品への応⽤まで、垂直統合的な技術戦略を採っている。 6.7.3 王⼦ホールディングス 王⼦ホールディングスは、シート製品への CNF 応⽤と分散技術に強みを持つ(Figure 5)。クラ スタ 3「CNF 含有シートの強度・機能性向上」(54 件)では、「シート及びシートの製造⽅法」 (王⼦ホールディングス, 2019 年)[2019-050583]など、CNF を⾼機能シートに適⽤する技術を 多数出願している。また、クラスタ 20「CNF 分散液の透明性・粘度制御と塗⼯適性」(30 件)で は、「微細繊維状セルロース、分散液、シート及び微細繊維状セルロースの製造⽅法」(王⼦ホー ルディングス, 2021 年)[2021-084169]のように、CNF 分散液の品質制御技術に注⼒している。 同社は、CNF の分散技術を基盤として、既存の紙・パルプ事業の製品の⾼付加価値化を⽬指す戦 ̶ 29 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 略を展開している。 6.7.4 旭化成 旭化成は、CNF 複合材料、特に樹脂複合体における機械的物性向上に焦点を当てている(Figure 5)。クラスタ 22「CNF 複合⾼分⼦材料の機械的物性向上」(41 件)では、「セルロース含有ギ ヤ」(旭化成, 2019 年)[2020-175565]や「⾼靭性ポリアミド­セルロース樹脂組成物」(旭化 成, 2018 年)[2018-154622]など、CNF を配合した⾼機能樹脂部品の開発を進めている。また、 クラスタ 10「CNF 乾燥体の⾼剛性樹脂複合化」(23 件)では、「セルロース繊維乾燥体及びその 製造⽅法、並びに樹脂複合体の製造⽅法」(旭化成, 2020 年)[2024-095343]のように、CNF 乾 燥体を効率的に樹脂に複合化する技術を開発している。同社は、CNF を⾼性能樹脂材料の強化材 として位置づけ、⾃動⾞や電⼦機器分野への応⽤を⽬指す戦略である。 6.7.5 中越パルプ⼯業 中越パルプ⼯業は、CNF 強化ゴム組成物や油性分散技術に特徴的な出願が⾒られる(Figure 5)。 クラスタ 0「CNF 強化ゴム組成物の分散性向上技術」(48 件)では、「ゴム組成物」(中越パル プ⼯業, 2023 年)[2024-080711]のように、CNF をゴムに均⼀に分散させる技術を開発してい る。また、クラスタ 6「CNF 強化熱可塑性・熱硬化性樹脂」(50 件)では、「誘導体化CNFの 製造⽅法及び⾼分⼦化合物樹脂組成物の製造⽅法」(中越パルプ⼯業, 2015 年)[2016-534435] を出願しており、樹脂複合化技術も⼿掛けている。さらに、クラスタ 19「疎⽔性 CNF の油性分散 液と化粧品応⽤」(19 件)では、「油性増粘剤、それを配合した油性増粘剤組成物、およびそれ を配合した化粧品」(中越パルプ⼯業, 2018 年)[2018-563186]のように、CNF の疎⽔化と油性 媒体への分散技術を化粧品分野に応⽤する探索を⾏っている。同社は、CNF の分散技術を核に、 多様な材料への応⽤を試みる戦略である。 6.7.6 スターライト⼯業 スターライト⼯業は、3D プリンタ⽤材料への CNF 応⽤において先⾏している(Figure 5)。クラ ̶ 30 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report スタ 5「3D プリンタ⽤ CNF 複合樹脂材料」(24 件)では、「3Dプリンタ⽤造形材料、その製 造⽅法、および三次元造形物」(スターライト⼯業, 2017 年)[2017-002588]を代表とする特許 を多数出願しており、CNF を 3D プリンタ⽤材料に配合することで、造形物の強度や軽量化を実現 する技術を開発している。また、「組成物製造⽤粉末状セルロースナノファイバー、組成物製造⽤ 粉末状セルロースナノファイバーの製造⽅法、ならびに組成物」(スターライト⼯業, 2017 年) [2017-008232]のように、CNF の粉末化技術も⼿掛けている。同社は、CNF の新たな⾼付加価値 応⽤として、3D プリンティング分野に特化した戦略を採っている。 ̶ 31 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 7. MEGA: 出願⼈動態分析 セルロースナノファイバー分野における特許出願の動態を分析すると、市場の成熟化と同時に、特 定の企業が成⻑を牽引している構図が明らかになった。全体として、21 社の出願⼈を 4 つの象限 に分類した結果、リーダー象限に 3 社、新興・⾼ポテンシャル象限に 6 社、成熟・既存勢⼒象限に 4 社、衰退・ニッチ象限に 8 社が位置している。この分布は、市場全体としては出願活動が停滞ま たは減少傾向にある中で、⼀部の企業が積極的な技術開発を継続していることを⽰唆している。 7.1 リーダー象限の詳細分析 リーダー象限には、旭化成、東亜合成、東ソーの 3 社が位置し、セルロースナノファイバー分野の 成⻑を牽引している。旭化成は 76 件の出願を有し、CAGR が 0.442 と最も⾼い成⻑率を⽰してお り、特に「ゴム改質⽤マスターバッチ、及び低分岐共役ジエン系重合体組成物」(旭化成, 2023 年)[2024-146493]や「セルロースナノファイバーを含む組成物」(旭化成, 2022 年)[2023182623]に⾒られるように、CNF を応⽤した⾼機能材料開発に注⼒している。東亜合成は 15 件の 出願で CAGR は 0 だが、活動量が 12 と⾼く、「酸化セルロース及びセルロースナノファイバーの 製造⽅法、酸化セルロース及びセルロースナノファイバー、並びに⾷品」(東亜合成, 2021 年) [2021-571177]のように、CNF の製造プロセスおよび⾷品分野への応⽤を模索している。東ソー も 15 件の出願で CAGR が 0.320 と⾼い成⻑を⽰しており、「ゴム組成物及びその製造⽅法」(東 ソー, 2020 年)[2020-190440]や「導電性⾼分⼦組成物及びその⽤途」(東ソー, 2024 年) [2024-153135]に⾒られるように、CNF を配合したゴム材料や導電性材料の開発に強みを持つ。 これらの企業は、CNF の製造技術から応⽤製品開発まで、幅広い領域で⾰新的な技術を創出し、 市場の成⻑ドライバーとなっている。 Key Insight 洞察: リーダー企業の成⻑戦略: リーダー企業は、既存材料の改質や新たな機 ̶ 32 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 能性付与といった応⽤技術開発に注⼒し、⾼付加価値製品への展開を図っている。 優先度⾼: リーダー企業の技術開発動向を詳細に分析し、⾃社の R&D 戦略における重点分野を特 定する。特に、旭化成のゴム改質技術や東ソーの導電性材料技術は、CNF の新たな市場創出に繋 がる可能性が⾼いため、注視すべきである。 7.2 新興・⾼ポテンシャル企業分析 新興・⾼ポテンシャル象限には、スギノマシン、中越パルプ⼯業、⼤⽇精化⼯業、STORA ENSO、 信州⼤学、北越コーポレーションの 6 社が位置している。これらの企業は、活動量が⽐較的低いも のの、CAGR が閾値以上であるか、活動量が閾値以上でありながら CAGR が 0 であることから、 今後の成⻑が期待される。例えば、スギノマシンは 13 件の出願を有し、CAGR は 0 だが、「ゴム 複合物」(スギノマシン, 2022 年)[2022-169471]のように、CNF を応⽤したゴム材料の開発に 注⼒しており、将来的な市場拡⼤への貢献が期待される。中越パルプ⼯業も 18 件の出願で CAGR は 0 だが、「ゴム組成物」(中越パルプ⼯業, 2023 年)[2024-080711]など、CNF の素材として の可能性を追求している。⼤⽇精化⼯業は 10 件の出願で CAGR が 0.042 と微増しており、「樹 脂組成物及び樹脂組成物の製造⽅法」(⼤⽇精化⼯業, 2022 年)[2022-018261]に⾒られるよう に、CNF の分散技術や樹脂複合化技術に強みを持つ。これらの企業は、特定のニッチ分野や基礎 技術開発に注⼒することで、将来の市場における競争優位性を確⽴しようとしている。 7.3 衰退リスク企業分析 衰退・ニッチ象限には、スターライト⼯業、京都⼤学、信越化学⼯業、第⼀⼯業製薬、東京⼤学、 ⼤阪ガス、ASTEMO、太陽ホールディングスの 8 社が位置している。これらの企業は、活動量が 閾値以下で CAGR もマイナスであるか、活動量が 0 で CAGR がプラスの企業も含まれるが、全体 ̶ 33 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 的に出願活動が低調であり、市場からの撤退や活動縮⼩のリスクを抱えている。例えば、京都⼤学 は 14 件の出願を有し、CAGR が-0.322 と⼤幅に減少しており、「化学修飾セルロースナノファイ バー及び熱可塑性樹脂を含有する繊維強化樹脂組成物」(京都⼤学;京都市産業技術研究所;王⼦ホ ールディングス;⽇本製紙;CHEMIPAZ, 2015 年)[2015-240084]のような共同研究による 出願はあるものの、単独での活動は低調である。信越化学⼯業は 10 件の出願で CAGR が-0.129 と減少傾向にあり、「疎⽔性セルロースナノファイバー、該疎⽔性セルロースナノファイバーの有 機溶媒分散液、及び疎⽔性セルロースナノファイバーの製造⽅法」(信越化学⼯業;⽇本製紙, 2019 年)[2019-067154]のように、特定の機能性 CNF 開発に注⼒しているが、全体的な活動は 停滞している。これらの企業は、競争環境の変化や技術の陳腐化に対応できず、市場での存在感を 失いつつある可能性がある。 7.4 成熟・既存勢⼒分析 成熟・既存勢⼒象限には、王⼦ホールディングス、⽇本製紙、⼤王製紙、TOPPAンホールディ ングスの 4 社が位置している。これらの企業は、活動量が閾値以上であるものの、CAGR がマイナ スであり、市場での地位は確⽴されているものの、成⻑が鈍化している状況にある。⽇本製紙は 187 件と最も多くの出願を有しているが、CAGR は-0.111 と減少傾向にあり、「アニオン変性セ ルロースナノファイバーの乾燥固形物及びその製造⽅法」(⽇本製紙, 2015 年)[2015-557819] のように、CNF の製造プロセスや基本技術に関する特許が多い。王⼦ホールディングスは 82 件の 出願で CAGR が-0.108 と減少しており、「微細繊維状セルロース、分散液、シート及び微細繊維 状セルロースの製造⽅法」(王⼦ホールディングス, 2021 年)[2021-084169]のように、CNF の 製造・加⼯技術に強みを持つ。⼤王製紙は 90 件の出願で CAGR が-0.137 と減少しており、「セ ルロース微細繊維含有物及びその製造⽅法、並びにセルロース微細繊維分散液」(⼤王製紙, 2017 年)[2017-142795]のように、CNF の製造技術に注⼒している。これらの企業は、CNF 市場の初 期段階から積極的に参⼊し、多くの特許を蓄積してきたが、近年は新規出願のペースが鈍化してい る。これは、基礎技術の確⽴が進み、市場が次のフェーズへと移⾏していることを⽰唆している。 ̶ 34 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 7.5 象限遷移予測と市場シナリオ 現在の出願⼈動態から、セルロースナノファイバー市場は、既存の主要プレイヤーが基礎技術を確 ⽴しつつ、新たな応⽤分野での競争が激化するシナリオが予測される。リーダー象限の企業は、⾼ 成⻑を維持しつつ、新たな応⽤分野の開拓を加速するだろう。特に、旭化成や東ソーのように、 CNF を既存製品の性能向上や新製品開発に結びつける動きが活発化すると考えられる。新興・⾼ ポテンシャル象限の企業は、特定のニッチ市場や技術分野でブレイクスルーを起こし、リーダー象 限への移⾏を⽬指す可能性がある。例えば、スギノマシンや中越パルプ⼯業のような企業が、CNF の特性を活かした独⾃の製品開発に成功すれば、急速な成⻑を遂げるだろう。⼀⽅、成熟・既存勢 ⼒象限の企業は、これまでの技術的優位性を維持しつつ、コスト競争⼒の強化や新たな市場ニーズ への対応が求められる。⽇本製紙や王⼦ホールディングスのような企業は、既存の CNF 製造技術 をさらに発展させ、⾼機能化や量産化に取り組むことで、市場での地位を盤⽯にする可能性がある。 衰退・ニッチ象限の企業は、技術⾰新や市場の変化に対応できなければ、さらに活動を縮⼩するか、 市場から撤退する可能性が⾼い。 7.6 ミクロ分析 A: 象限別代表特許 リーダー象限: ● 「ゴム改質⽤マスターバッチ、及び低分岐共役ジエン系重合体組成物」(旭化成, 2023 年) [2024-146493]: CNF をゴム材料に応⽤し、性能向上を図る技術。 ● 「酸化セルロース及びセルロースナノファイバーの製造⽅法、酸化セルロース及びセルロー スナノファイバー、並びに⾷品」(東亜合成, 2021 年)[2021-571177]: CNF の製造プロセ スと⾷品分野への応⽤に関する特許。 ● 「導電性⾼分⼦組成物及びその⽤途」(東ソー, 2024 年)[2024-153135]: CNF を導電性材 料に応⽤する最先端技術。 ̶ 35 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 新興・⾼ポテンシャル象限: ● 「ゴム複合物」(スギノマシン, 2022 年)[2022-169471]: CNF を⽤いたゴム複合材料に関 する技術。 ● 「ゴム組成物」(中越パルプ⼯業, 2023 年)[2024-080711]: CNF を配合したゴム組成物に 関する技術。 ● 「樹脂組成物及び樹脂組成物の製造⽅法」(⼤⽇精化⼯業, 2022 年)[2022-018261]: CNF の分散技術を活⽤した樹脂組成物に関する特許。 成熟・既存勢⼒象限: ● 「微細繊維状セルロース、分散液、シート及び微細繊維状セルロースの製造⽅法」(王⼦ホ ールディングス, 2021 年)[2021-084169]: CNF の製造・加⼯技術に関する特許。 ● 「アニオン変性セルロースナノファイバーの乾燥固形物及びその製造⽅法」(⽇本製紙, 2015 年)[2015-557819]: CNF の基本製造技術に関する特許。 ● 「セルロース微細繊維含有物及びその製造⽅法、並びにセルロース微細繊維分散液」(⼤王 製紙, 2017 年)[2017-142795]: CNF の製造技術に関する特許。 衰退・ニッチ象限: ● 「組成物製造⽤粉末状セルロースナノファイバー、組成物製造⽤粉末状セルロースナノファ イバーの製造⽅法、ならびに組成物」(スターライト⼯業, 2017 年)[2017-008232]: CNF の粉末化技術とその応⽤に関する特許。 ● 「化学修飾セルロースナノファイバー及び熱可塑性樹脂を含有する繊維強化樹脂組成物」 (京都⼤学;京都市産業技術研究所;王⼦ホールディングス;⽇本製紙;CHEMIPAZ, 2015 年)[2015-240084]: CNF の複合材料への応⽤に関する共同研究特許。 ● 「疎⽔性セルロースナノファイバー、該疎⽔性セルロースナノファイバーの有機溶媒分散液、 及び疎⽔性セルロースナノファイバーの製造⽅法」(信越化学⼯業;⽇本製紙, 2019 年) [2019-067154]: 疎⽔性 CNF の開発に関する特許。 ̶ 36 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 7.7 ミクロ分析 B: 上位 5 社個別戦略プロファイル 1. ⽇本製紙: 187 件の出願で最⼤⼿だが、CAGR は-0.111 と減少傾向にあり、成熟・既存勢 ⼒に位置する。同社は CNF の基礎的な製造技術や分散技術に関する特許を多数保有しており、 「アニオン変性セルロースナノファイバーの乾燥固形物及びその製造⽅法」(⽇本製紙, 2015 年)[2015-557819]などが代表的である。今後は、既存技術の応⽤範囲拡⼤やコスト ダウン、量産化技術の確⽴に注⼒し、市場での優位性を維持することが重要となる。 2. ⼤王製紙: 90 件の出願を有し、CAGR は-0.137 と減少傾向にある成熟・既存勢⼒である。 同社は「セルロース微細繊維含有物及びその製造⽅法、並びにセルロース微細繊維分散液」 (⼤王製紙, 2017 年)[2017-142795]のように、CNF の製造プロセスに関する特許に強み を持つ。市場の成熟化に対応するため、CNF を組み込んだ製品開発や新たな⽤途開拓へのシ フトが求められる。 3. 王⼦ホールディングス: 82 件の出願を有し、CAGR は-0.108 と減少傾向にある成熟・既存 勢⼒である。同社は「微細繊維状セルロース、分散液、シート及び微細繊維状セルロースの 製造⽅法」(王⼦ホールディングス, 2021 年)[2021-084169]に⾒られるように、CNF の 製造からシート成形までの幅広い技術をカバーしている。今後は、⾼機能 CNF の開発や、他 社との協業による新市場創出が戦略的選択肢となるだろう。 4. 旭化成: 76 件の出願を有し、CAGR は 0.442 とリーダー象限で最も⾼い成⻑率を⽰してい る。同社は「ゴム改質⽤マスターバッチ、及び低分岐共役ジエン系重合体組成物」(旭化成, 2023 年)[2024-146493]や「セルロース含有ギヤ」(旭化成, 2019 年)[2019-224782] のように、CNF を既存の化学製品や⾃動⾞部品に応⽤する戦略を取っている。今後も、⾼機 能材料開発を加速し、CNF の新たな⽤途市場を積極的に開拓していくと予測される。 5. ⼤阪ガス: 30 件の出願を有し、CAGR は-0.159 と減少傾向にある衰退・ニッチ象限に位置 する。提供データからは具体的な代表特許は確認できないが、CNF 分野での活動は停滞して いる。同社は、CNF 技術の再評価や、既存事業とのシナジー創出の可能性を検討し、選択と 集中を図る必要がある。 Key Insight 洞察: 企業戦略の多様化: CNF 市場の成熟に伴い、企業は基礎技術の確⽴から ̶ 37 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 応⽤製品開発、特定のニッチ市場への特化へと戦略を多様化させている。 優先度中: 各社の戦略プロファイルを定期的にモニタリングし、市場の変化に対応した⾃社のポジ ショニング戦略を再検討する。特に、リーダー企業の応⽤技術開発動向は、新たな市場機会を⽰唆 する可能性があるため、継続的な分析が不可⽋である。 ̶ 38 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 8. Explorer: 共起ネットワーク・キーワード動 向分析 Figure 6 キーワード共起ネットワーク セルロースナノファイバー(CNF)分野の技術動向を分析するため、キーワード共起ネットワーク およびキーワードの時系列変化を詳細に調査した。この分析により、CNF の製造⽅法、応⽤分野、 および化学的変性に関する主要な技術テーマと、その進化の⽅向性が明らかになった。 8.1 ネットワーク全体像と主要コミュニティ CNF 分野の共起ネットワークは、49 ノードと 321 エッジで構成され、技術テーマ間の複雑な関係 性を⽰している(Figure 6)。このネットワークは 8 つのコミュニティに分類され、各コミュニテ ィは特定の技術領域に特化していることが確認された。コミュニティ 0 は「分散液、繊維幅、nm 以下、繊維状、製造⽅法提供、イオン、乾燥、透明性」といった CNF の基礎特性と製造プロセス ̶ 39 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report に関する 11 ノードから構成されており、CNF の基本的な物理的特性と製造における課題を扱って いる(Figure 6)。コミュニティ 1 は「選択図、セルロースナノファイバー、製造⽅法、セルロー ス、繊維、パルプ、製造、ナノセルロース」といった CNF の製造⽅法と原料に焦点を当てた 10 ノ ードからなり、CNF 製造の中核技術を⽰唆している(Figure 6)。これらのコミュニティの存在 は、CNF 技術が多岐にわたる側⾯から研究・開発されていることを⽰している。 8.2 共起コミュニティ詳細とブリッジキーワード分析 各コミュニティは CNF 技術の特定の側⾯を深く掘り下げている。コミュニティ 0 は「CNF の物理 的特性と分散・乾燥技術」をテーマとし、「繊維幅-繊維状」(J=0.565)や「微細繊維状-繊維幅」 (J=0.506)といった⾼い Jaccard 係数を持つ共起ペアが⾒られ、CNF の微細構造制御が重要な 研究テーマであることを⽰している(Figure 6)。コミュニティ 1 は「CNF の製造プロセスと原 料」に特化しており、「セルロースナノファイバー-選択図」(J=0.541)や「製造⽅法-選択図」 (J=0.458)といったペアが、製造プロセスの最適化と図⾯を⽤いた技術開⽰が活発であること を⽰唆している(Figure 6)。コミュニティ 3 は「CNF 複合材料の成形と分散性」をテーマとし、 「樹脂組成物、平均繊維径、分散性、熱可塑性樹脂、⼀態様、成形品、微細繊維」といったキーワ ードで構成され、CNF を樹脂に複合化する際の課題と解決策に焦点が当たっている(Figure 6)。 ブリッジキーワードとしては、「セルロースナノファイバー」がコミュニティ 1 の中⼼に位置し、 他のほとんどのコミュニティと関連を持つ中核概念である(Figure 6)。また、「製造⽅法」もコ ミュニティ 0 とコミュニティ 1 の間で⾼い共起を⽰し、CNF の製造プロセスがその特性や応⽤と 密接に結びついていることを⽰している(Figure 6)。さらに、「分散」はコミュニティ 0 とコミ ュニティ 6(分散、形成、均⼀)を結びつけ、CNF の均⼀な分散技術が様々な応⽤分野で共通の課 題となっていることを⽰唆している(Figure 6)。 Key Insight 洞察: CNF 技術の多⾯性と相互関連性: CNF 分野は、製造⽅法、材料特性、応 ̶ 40 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report ⽤分野、化学的変性といった多様な側⾯から研究されており、これらの側⾯が「セルロース ナノファイバー」という中核概念を中⼼に密接に連携している。 8.3 急上昇キーワード分析 CNF 分野における近年の技術トレンドは、急上昇キーワードから読み取ることができる。特に 「性置換基」(成⻑率 11.788)、「硬化後」(成⻑率 11.788)、「系重合体組成物」(成⻑率 11.788)、「機械的物性」(成⻑率 11.788)、「マレイン」(成⻑率 11.788)、「短繊維」 (成⻑率 11.788)といったキーワードが顕著な成⻑を⽰している。これらのキーワードは、CNF の化学的変性による機能性向上、特に樹脂やゴムなどの⾼分⼦材料との複合化における機械的特性 の改善に注⼒されていることを⽰唆している。例えば、「性置換基」や「マレイン」は CNF 表⾯ の化学修飾による⾼分⼦マトリックスとの親和性向上を⽰唆し、「硬化後」や「機械的物性」は、 CNF 複合材料の最終的な性能評価に重点が置かれていることを⽰している。また、「ゴム改質⽤ マスターバッチ」(成⻑率 10)は、CNF がゴム材料の改質剤として注⽬されていることを具体的 に⽰している。これらのキーワードは、主にコミュニティ 3(樹脂組成物、平均繊維径、分散性、 熱可塑性樹脂、⼀態様、成形品、微細繊維)やコミュニティ 4(ゴム、質量部、酸化、ゴム組成 物)、コミュニティ 5(変性、アニオン、⽔酸基、カルボキシル)に関連しており、CNF の応⽤展 開、特に複合材料分野での性能向上に向けた研究が活発化していることが伺える。 8.4 衰退キーワード分析 ⼀⽅、衰退キーワードは、過去の主要な研究テーマやアプローチが相対的に重要性を失いつつある ことを⽰唆している。「過程」(成⻑率-1)、「セルロース繊維ヒドロキシ」(成⻑率-1)、 「固形分換算」(成⻑率-1)、「強度温度依存性」(成⻑率-1)、「温度依存性」(成⻑率-1)、 「セルロースナノファイバー成形体」(成⻑率-1)、「セルロース繊維パルプ」(成⻑率-1)、 「叩解パルプ」(成⻑率-1)、「叩解」(成⻑率-1)、「樹脂成分」(成⻑率-1)といったキー ̶ 41 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report ワードが衰退傾向にある。これは、CNF の基本的な製造プロセスである「叩解」や、初期の「セ ルロース繊維パルプ」を⽤いた研究、あるいは「セルロースナノファイバー成形体」の基本的な物 性評価といった領域が、ある程度の成熟期を迎え、より⾼度な機能付与や応⽤展開へと研究の焦点 がシフトしていることを⽰唆している。特に「叩解パルプ」や「叩解」の衰退は、より効率的また は新しい CNF 製造⽅法への関⼼が⾼まっている可能性を⽰唆している。 Key Insight 洞察: 技術進化の⽅向性: CNF 分野は、基礎的な製造プロセスや初期の物性評 価から、化学修飾による機能性向上、特に⾼分⼦複合材料における機械的特性の最適化へと 研究の重⼼が移⾏している。 8.5 統合的戦略インサイト CNF 分野の技術動向分析から、以下の 3 つの戦略的⽰唆が得られる。 1. ⾼機能複合材料への注⼒: 急上昇キーワードが⽰すように、CNF の化学修飾による⾼分⼦ 材料(特に樹脂やゴム)の機械的特性向上に関する技術開発が活発化している。この領域は、 CNF の実⽤化を加速させる上で極めて重要であり、市場ニーズに応える⾼付加価値製品の開 発に直結する。 優先度⾼: CNF の表⾯改質技術と、それを⽤いた熱可塑性樹脂やエラストマーへの複合化技術 の開発に重点を置くべきである。特に、CNF とマトリックス樹脂との界⾯接着性を向上させるた めの新規変性剤やプロセス技術の探索を強化する。 2. 製造プロセスの⾼度化と多様化: 「叩解」などの初期の製造関連キーワードが衰退してい る⼀⽅で、「製造⽅法」は依然として中核キーワードである。これは、既存の製造⽅法の最 適化だけでなく、より効率的で環境負荷の低い、あるいは特定の⽤途に特化した新しい製造 プロセスの開発が求められていることを⽰唆している。 優先度中: 既存の CNF 製造プロセスの効率化に加え、化学的変性 CNF の製造に適した新しいプ ̶ 42 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report ロセス技術、例えば、特定の官能基導⼊を容易にするワンステッププロセスなどの開発を検討する。 3. 基礎特性と応⽤展開のバランス: 「分散液」や「繊維幅」といった基礎特性に関するキー ワードは依然として重要であり、CNF の均⼀な分散性や微細構造制御が、最終製品の性能を 左右する基盤技術である。⾼機能化を進める⼀⽅で、これらの基礎技術のさらなる深化も不 可⽋である。 優先度中: CNF の分散安定性や繊維径制御に関する基礎研究を継続し、特に⾼濃度分散液や特 定の溶媒系における分散技術の確⽴に注⼒する。これにより、⾼機能複合材料開発の基盤を強化す る。 ̶ 43 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 9. クロスモジュール統合分析 セルロースナノファイバー(CNF)分野の技術動向は、基礎技術の成熟と応⽤展開へのシフトが特 徴的であり、特に⾼機能複合材料分野で新たな成⻑ドライバーが台頭している。2019 年に特許出 願のピークを迎えた後も、政策的な後押しと市場の関⼼は継続しており、多様な産業分野での社会 実装が加速している。 9.1 技術領域と動態の統合分析 Saturn V クラスタ 0「CNF 強化ゴム組成物の分散性向上技術」(48 件)は、MEGA PULSE 分析 において、旭化成がリーダー象限(CAGR +0.442)に位置し、中越パルプ⼯業が新興・⾼ポテン シャル象限(CAGR 0)に位置している。これは、CNF 強化ゴム組成物の分散性向上技術が、既存 の有⼒企業と新興企業の両⽅から活発な開発が進められている成⻑分野であることを⽰唆しており、 この技術領域は市場競争が激化していると考えられる。この領域での技術⾰新は、⾃動⾞部品や産 業⽤ゴム製品の⾼性能化に直結するため、市場での優位性を確⽴する上で極めて重要である。 Key Insight ⾼成⻑分野での競争激化: CNF 強化ゴム組成物の分散性向上技術は、リーダー 企業と新興企業が共に注⼒する⾼成⻑分野であり、今後の市場競争が激化する可能性が⾼い。 優先度⾼: CNF 強化ゴム組成物の分散性向上技術に関する研究開発投資を強化し、特に旭化成や中 越パルプ⼯業といった主要プレイヤーの技術動向を継続的にモニタリングすること。 9.2 キーワード構造と技術領域の統合分析 ̶ 44 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report Explorer 共起ネットワークで最⼤コミュニティを形成する「分散液、繊維幅、nm 以下、繊維状、 製造⽅法提供、イオン、乾燥、透明性」(11 ノード)は、Saturn V クラスタ 20「CNF 分散液の 透明性・粘度制御と塗⼯適性」(30 件)と⾼い対応を⽰す。しかし、「製造⽅法」というキーワ ードはクラスタ 20 だけでなく、クラスタ 15「化学変性 CNF の効率的製造と物性制御」(51 件) にも出現しており、CNF の製造プロセス全般にわたる横断的な概念であることが⽰唆される。こ のことは、CNF の性能を決定する上で、初期の製造プロセスから最終的な分散液の調整まで、⼀ 貫した技術管理が求められることを意味する。 Key Insight 製造プロセスと分散液性能の密接な関連: CNF の製造⽅法と分散液の透明性・ 粘度制御は密接に関連しており、⾼機能な CNF 製品を実現するためには、両技術領域の統 合的なアプローチが不可⽋である。 優先度中: CNF の製造プロセスと分散液の物性制御に関する技術開発を連携させ、特に透明性や粘 度といった応⽤特性に直結するパラメータの最適化を図ること。 9.3 市場構造と競争環境の統合分析 ATLAS 出願件数ランキングでは⽇本製紙が 167 件でトップだが、MEGA PULSE では成熟・既存 勢⼒象限(CAGR -0.111)に位置し成⻑が鈍化している。⼀⽅、ランキング 4 位の旭化成(76 件) はリーダー象限(CAGR +0.442)に位置しており、CNF 強化ゴム組成物や CNF 成形体などの⾼ 機能材料分野で新たな市場を牽引する可能性がある。これは、CNF 市場が基礎技術開発から応⽤ 製品開発へと重⼼を移していることを⽰しており、市場の成⻑ドライバーが変化していることを意 味する。 Key Insight 市場リーダーの交代: CNF 市場は、基礎技術を確⽴した既存勢⼒から、⾼機能 応⽤製品を開発する新興リーダーへと市場牽引役が移⾏しつつある。 ̶ 45 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 優先度⾼: 旭化成のようなリーダー企業の応⽤技術戦略を分析し、⾃社の CNF 事業ポートフォリオ を応⽤製品開発にシフトさせるための戦略を検討すること。 9.4 競争⽐較と技術ポートフォリオの統合分析 Explorer 分析によると、⽇本製紙は「分散液、乾燥、アニオン、製造⽅法」で⾼い優位性を持ち、 Saturn V クラスタ 2「化学変性 CNF の乾燥・再分散性改善」(75 件)やクラスタ 17「CNF の化 学修飾と⾼機能分散液製造」(44 件)に対応している。対照的に、旭化成は「ゴム、組成物、成 形体」で優位であり、クラスタ 0「CNF 強化ゴム組成物の分散性向上技術」(48 件)やクラスタ 10「CNF 乾燥体の⾼剛性樹脂複合化」(23 件)に特化した戦略を採⽤している。このことは、⽇ 本製紙が CNF の基礎的な製造・分散技術に強みを持つ⼀⽅、旭化成は特定の応⽤製品分野での⾼ 機能化に注⼒しているという明確な差別化戦略を⽰している。 Key Insight 企業ごとの明確な戦略差別化: ⽇本製紙は CNF の基礎技術に強みを持つ⼀⽅、 旭化成は特定の応⽤製品分野での⾼機能化に注⼒しており、異なる戦略的ポジショニングを 確⽴している。 優先度中: ⾃社のコアコンピタンスと市場ニーズを照らし合わせ、基礎技術と応⽤技術のどちらに 重点を置くべきか、明確な技術ポートフォリオ戦略を策定すること。 9.5 トレンドキーワードと動態の統合分析 Explorer で急上昇キーワードとして「ゴム改質⽤マスターバッチ」(成⻑率 10)が検出され、当 該キーワードを含む出願⼈のうち旭化成が 3 件を占め、MEGA PULSE でリーダー象限(CAGR +0.442)に位置していることから、同社の成⻑を牽引するテーマの⼀つであると考えられる。ま た、中越パルプ⼯業も同キーワードで 1 件の出願があり、新興・⾼ポテンシャル象限(CAGR 0) ̶ 46 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report に位置していることから、この分野が新たな成⻑ドライバーとなっていることが⽰唆される。これ は、特定の応⽤分野における⾼付加価値化が、CNF 市場全体の成⻑を加速させる可能性を⽰して いる。 Key Insight ⾼付加価値応⽤分野の台頭: 「ゴム改質⽤マスターバッチ」のような特定の⾼ 付加価値応⽤分野が、CNF 市場の新たな成⻑ドライバーとして浮上しており、リーダー企業 と新興企業がこの分野を牽引している。 優先度⾼: 「ゴム改質⽤マスターバッチ」のような急上昇キーワードに注⽬し、関連する技術開発 や市場動向を詳細に分析することで、新たなビジネスチャンスを特定すること。 9.6 3 軸分類とクラスタリングの統合分析 CORE の技術分類「CNF 複合材料」(471 件)は、Saturn V クラスタ 0「CNF 強化ゴム組成物の 分散性向上技術」(48 件)、クラスタ 1「CNF 複合材料の疎⽔化・分散性制御」(35 件)、クラ スタ 6「CNF 強化熱可塑性・熱硬化性樹脂」(50 件)など複数のクラスタと対応し、複合材料技 術が多様な⽤途展開を伴う広範な領域であることを⽰した。特に、CORE の課題分類「物性向上」 (474 件)は、多くの複合材料関連クラスタと⾼い⼀致を⽰しており、CNF 複合材料開発の主要 な⽬的が物性向上にあることが裏付けられる。これは、CNF が既存材料の性能を向上させるため の重要なツールとして認識されていることを明確に⽰している。 Key Insight CNF 複合材料開発の主眼は物性向上: CNF 複合材料は多様な⽤途展開が可能 であり、その主要な開発⽬的は、既存材料の物性向上にあることがデータから強く⽰唆され る。 優先度中: ⾃社の製品ポートフォリオにおいて物性向上が課題となっている領域に CNF 複合材料技 術を適⽤し、具体的な性能⽬標を設定して研究開発を推進すること。 ̶ 47 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 9.7 環境分析と技術動態の統合分析 NEBULA の⾮特許⽂献分析によると、CNF 関連の学術論⽂は 2019 年に 100 件でピークを迎え、 ニュース記事は 2023 年に 65 件でピークに達している。特許出願は 2019 年に 208 件でピークを 迎え、その後減少傾向にあるが、2022 年以降はニュース記事の増加と連動して市場への関⼼が⾼ まっている。政策イベントでは、2020 年の NEDO「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファ イバー関連技術開発」や環境省「CNF 等の次世代素材活⽤推進事業」が特許出願の活性化に寄与 したと考えられる。また、2024 年の「第 10 版⾷品添加物公定書」での微⼩繊維状セルロースの 規格化は、⾷品分野での CNF 応⽤を促進し、新たな市場機会を⽣み出す可能性がある。このデー タは、学術研究のピーク後に市場への関⼼が⾼まり、政策が技術開発と社会実装を後押ししている という、技術ライフサイクルにおける典型的なパターンを⽰している。 Key Insight 政策と市場の連携による社会実装加速: 学術研究の成熟後、政策的な⽀援と市 場の関⼼が⾼まることで、CNF の社会実装が加速しており、特に⾷品分野での新たな市場機 会が⽣まれている。 優先度⾼: 政策動向や標準化の動きを継続的に監視し、関連する補助⾦制度や実証事業に積極的に 参加することで、CNF 製品の早期市場投⼊と普及を⽬指すこと。特に、⾷品添加物としての規格 化を機に、⾷品分野での CNF 応⽤を具体的に検討すること。 9.8 全体統合︓近年の CNF 技術動向 セルロースナノファイバー分野の技術動向は、2015 年から 2019 年にかけて特許出願数が年々増 加し、2019 年に 208 件でピークを迎えた後、2020 年以降は減少傾向にあるものの、応⽤製品開 発は活発である。これは、基礎研究と初期開発が⼀段落し、実⽤化に向けたフェーズに移⾏してい ̶ 48 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report ることを⽰唆している。特に、CNF 複合材料の物性向上(CORE 課題分類 474 件)と製造プロセ ス(CORE 解決⼿段分類 337 件)に関する技術開発が中⼼であり、ゴム組成物(Saturn V クラス タ 0, 48 件、クラスタ 16, 45 件)や樹脂組成物(Saturn V クラスタ 6, 50 件、クラスタ 8, 51 件)への応⽤が顕著である。 主要出願⼈である⽇本製紙(167 件)、⼤王製紙(86 件)、王⼦ホールディングス(77 件)は MEGA PULSE で成熟・既存勢⼒象限(CAGR -0.111 から-0.136)に位置し、主に基礎的な製造・ 分散技術に強みを持つ。⼀⽅で、旭化成(76 件、CAGR +0.442)、東亜合成(15 件、CAGR 0)、 東ソー(15 件、CAGR +0.319)といった企業がリーダー象限に位置し、新たな技術領域を牽引し ている。特に、旭化成は CNF 強化ゴム組成物や⾼剛性樹脂複合化技術に強みを持つことが、競争 ⽐較分析からも明らかになっている。この⼆極化は、CNF 市場が多様なプレイヤーによって多⾓ 的に開拓されていることを⽰している。 ⾮特許⽂献では、学術論⽂のピークが 2019 年(100 件)であるのに対し、ニュース記事は 2023 年(65 件)にピークを迎えており、学術的な関⼼から市場への関⼼へとシフトしていることが⾒ て取れる。政策⾯では、2020 年の NEDO や環境省の事業が技術開発を後押しし、2024 年の⾷品 添加物公定書改定は新たな応⽤市場を開拓する可能性を⽰唆している。これらの外部環境の変化は、 CNF の社会実装を強⼒に推進する要因となっている。 今後は、CNF の製造効率化と品質安定化(Saturn V クラスタ 14, 51 件、クラスタ 15, 51 件)に 加え、特定の⾼機能材料(例: CNF 強化ゴム、3D プリンタ⽤材料、リチウムイオン電池⽤材料) への応⽤が加速すると予測される。企業は、既存の強みを活かしつつ、市場のニーズに合わせた⾼ 付加価値製品の開発に注⼒し、新興技術の担い⼿との連携を強化すべきである。 9.9 重要洞察 ̶ 49 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report Key Insight CNF 技術開発の多極化と応⽤シフト: CNF 分野では、基礎技術を確⽴した既 存勢⼒と、⾼機能複合材料などの応⽤分野を牽引する新興リーダー企業が存在し、技術開発 の重⼼が基礎から応⽤へとシフトしている。この多極化は、市場の多様なニーズに応えるた めの健全な競争環境を形成している。 Key Insight 政策・市場の連携による社会実装の加速: 政府の⽀援策や標準化の進展が CNF の社会実装を強⼒に後押ししており、学術研究のピーク後も市場への関⼼は継続的に⾼まっ ている。特に、⾷品分野での規格化は新たな市場機会を創出する可能性が⾼い。 9.10 推奨アクション 優先度⾼: ⾃社の CNF 技術ポートフォリオを再評価し、⾼成⻑が⾒込まれる CNF 強化ゴム組成物 や⾼剛性樹脂複合材料などの応⽤分野への研究開発投資を強化すること。特に、リーダー企業であ る旭化成の技術戦略をベンチマークとして、差別化された製品開発を⽬指すべきである。 優先度中: CNF の製造効率化と品質安定化に関する技術開発を継続し、コスト競争⼒を⾼めること。 同時に、⾷品添加物公定書改定を契機に、⾷品分野での CNF 応⽤可能性を具体的に検討し、新た な市場開拓の機会を模索すること。 優先度低: 萌芽テーマとして挙げられた「CNF リチウムイオン電池⽤電極・セパレータ」(Saturn V クラスタ 25, 7 件)や「3D プリンタ⽤ CNF 複合樹脂材料」(Saturn V クラスタ 5, 24 件)に ついて、⻑期的な視点での技術動向調査と基礎研究を継続し、将来的な事業機会の可能性を評価す ること。 ̶ 50 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 10. 戦略的提⾔ セルロースナノファイバー(CNF)分野は、2019 年の特許出願ピーク以降、件数⾃体は減少傾向 にあるものの、応⽤製品開発は活発であり、特に CNF 複合材料の物性向上と製造プロセスに関す る技術開発が中⼼となっている。主要出願⼈である⽇本製紙、⼤王製紙、王⼦ホールディングスは 成熟期に位置する⼀⽅、旭化成、東亜合成、東ソーといった企業がリーダーとして新たな技術領域、 特に CNF 強化ゴム組成物や⾼剛性樹脂複合化技術を牽引している。⾮特許⽂献では、学術論⽂の ピークが 2019 年であるのに対し、ニュース記事は 2023 年にピークを迎えており、市場への関⼼ は継続していることが⽰唆される。政策⾯では、2020 年の NEDO や環境省の事業が技術開発を後 押しし、2024 年の⾷品添加物公定書改定は新たな応⽤市場を開拓する可能性を⽰唆している。 CNF 複合材料は CORE 技術分類で 471 件と最も多く、Saturn V クラスタ 0「CNF 強化ゴム組成 物の分散性向上技術」(48 件)やクラスタ 6「CNF 強化熱可塑性・熱硬化性樹脂」(50 件)な ど、多様な応⽤分野で特許が出願されている。これは、CNF がその優れた物性を活かし、ゴム、 熱可塑性樹脂、⽣分解性ポリマーなど、幅広い基材との複合化を通じて、様々な産業分野での⾼機 能材料としての利⽤が活発に進められていることを⽰している。CNF の⽤途開発は多岐にわたる が、特に既存材料の性能向上や新規機能付与に貢献する複合材料技術が市場の主要な牽引役となっ ており、企業は⾃社の強みを持つ材料分野に CNF を組み合わせることで、⾼付加価値製品を創出 できる。 今後、CNF の製造効率化と品質安定化(クラスタ 14, 51 件、クラスタ 15, 51 件)に加え、特定 の⾼機能材料(例: CNF 強化ゴム、3D プリンタ⽤材料、リチウムイオン電池⽤材料)への応⽤が 加速すると予測される。企業は、既存の強みを活かしつつ、市場のニーズに合わせた⾼付加価値製 品の開発に注⼒し、新興技術の担い⼿との連携を強化すべきである。特に、CNF リチウムイオン 電池⽤電極・セパレータ(クラスタ 25, 7 件)や 3D プリンタ⽤ CNF 複合樹脂材料(クラスタ 5, 24 件)といった萌芽テーマは、将来の成⻑ドライバーとなる可能性があるため、動向を注視し、 ̶ 51 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 早期の技術獲得を⽬指すことが重要である。 10.1 戦略的インプリケーション 10.1.1 技術的含意 CNF の製造・分散技術は⽇本製紙(167 件)などの主要企業によってある程度確⽴され、成熟期 に移⾏している。MEGA PULSE でこれらの企業は成熟・既存勢⼒象限(CAGR -0.111 から-0.136) に位置し、クラスタ 2「化学変性 CNF の乾燥・再分散性改善」(75 件)やクラスタ 15「化学変性 CNF の効率的製造と物性制御」(51 件)に多くの特許を持つ。これは、基礎技術の特許競争が⼀ 段落し、今後は応⽤製品における差別化が重要となることを⽰唆している。新興リーダーである旭 化成(76 件, CAGR +0.442)は、クラスタ 0「CNF 強化ゴム組成物の分散性向上技術」(48 件) やクラスタ 22「CNF 複合⾼分⼦材料の機械的物性向上」(41 件)に注⼒しており、特にゴムや⾼ 分⼦材料の改質による機械的物性向上は、⾼い成⻑性を持つ分野として積極的に開拓されている。 10.1.2 競争的含意 ATLAS 出願件数ランキングでトップの⽇本製紙は MEGA PULSE で成熟・既存勢⼒象限に位置し、 成⻑が鈍化している。⼀⽅、ランキング 4 位の旭化成(76 件)はリーダー象限(CAGR +0.442) に位置し、CNF 強化ゴム組成物や CNF 成形体などの⾼機能材料分野で新たな市場を牽引する可能 性がある。Explorer 分析によると、⽇本製紙は「分散液、乾燥、アニオン、製造⽅法」で⾼い優 位性を持ち、CNF の基礎的な製造・分散技術に強みを持つ。対照的に、旭化成は「ゴム、組成物、 成形体」で優位であり、特定の応⽤製品分野での⾼機能化に特化した戦略を採⽤している。このこ とから、CNF 市場は基礎技術の確⽴された既存勢⼒と、特定の応⽤分野で⾼付加価値化を図る新 興リーダーに⼆極化しつつある。 10.1.3 市場的含意 ̶ 52 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report NEBULA の⾮特許⽂献分析によると、CNF 関連の学術論⽂は 2019 年に 100 件でピークを迎えた が、ニュース記事は 2023 年に 65 件でピークに達しており、市場への関⼼は継続している。政策 イベントでは、2020 年の NEDO「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開 発」や環境省「CNF 等の次世代素材活⽤推進事業」が特許出願の活性化に寄与したと考えられる。 さらに、2024 年の「第 10 版⾷品添加物公定書」での微⼩繊維状セルロースの規格化は、⾷品分 野での CNF 応⽤を促進し、新たな市場機会を⽣み出す可能性がある。Global CNF Market は 2025 年に 1.62 億ドル、2031 年には 6.07 億ドルに達し、CAGR 24.7%で成⻑すると⾒込まれており、 政府の⽀援策や標準化の進展が CNF の社会実装を加速させ、特に環境規制やサステナビリティへ の意識の⾼まりが市場拡⼤を後押ししている。 10.2 推奨アクション 優先度⾼: 短期(1-2 年)のアクション CNF 強化ゴム組成物の低発熱・⾼耐久性化(クラスタ 16, 45 件)や、CNF 複合⾼分⼦材料の機械 的物性向上(クラスタ 22, 41 件)に特化した研究開発投資を強化し、市場ニーズに対応した製品 を早期に投⼊すること。旭化成がリーダー象限(CAGR +0.442)に位置し、この領域を牽引して いることから、競争優位を確⽴するためには迅速な製品化が不可⽋である。 優先度⾼: 中期(3-5 年)のアクション 政策動向を常に把握し、関連する補助⾦制度や実証事業に積極的に参加することで、研究開発コス トを抑制しつつ、CNF 製品の早期市場投⼊と普及を⽬指すこと。2020 年の NEDO や環境省の事 業が特許出願の活性化に寄与した実績があり、政府⽀援は技術開発の加速に有効である。 優先度中: 短期のアクション 既存の製造・分散技術のコストダウンと品質安定化を継続しつつ、⾃社のコア技術と連携した CNF 応⽤製品の開発(CORE 応⽤製品分類 280 件)にリソースを集中すること。⽇本製紙などの主要 ̶ 53 ̶

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APOLLO SPACE | Patent Landscape Report 企業が成熟・既存勢⼒象限に位置し、基礎技術がある程度確⽴されているため、差別化のためには 応⽤製品へのシフトが重要となる。 優先度中: 中⻑期のアクション ⾷品添加物としての規格化を機に、⾷品分野での CNF 応⽤を検討すること。2024 年の「第 10 版 ⾷品添加物公定書」での微⼩繊維状セルロースの規格化は、新たな市場機会を⽣み出す可能性があ り、早期参⼊により優位性を確保できる。 優先度低: 探索的×⻑期のアクション CNF リチウムイオン電池⽤電極・セパレータ(クラスタ 25, 7 件)や 3D プリンタ⽤ CNF 複合樹 脂材料(クラスタ 5, 24 件)といった萌芽テーマについて、先⾏技術調査と基礎研究を継続するこ と。これらの分野は現時点では⼩規模だが、将来的に⼤きな市場を形成する可能性を秘めており、 ⻑期的な視点での技術獲得が重要となる。 10.3 分析の限界と留意点 本分析は提供された特許分析データに基づいており、特定の技術分野、出願⼈、および期間に限定 されている。そのため、CNF 分野全体の動向を完全に網羅しているわけではない可能性がある。 特に、⾮特許⽂献データ(NEBULA)は学術論⽂やニュース記事の件数に限定されており、市場規 模や具体的な応⽤製品の普及状況に関する詳細な情報までは提供されていない。また、特許出願デ ータはあくまで技術開発の動向を⽰すものであり、必ずしも製品化や市場での成功を保証するもの ではない点に留意する必要がある。萌芽テーマとして挙げられたクラスタも、現時点では出願件数 が少ないため、今後の動向を継続的に監視し、より詳細な分析を⾏うことが望ましい。 ̶ 54 ̶